気候変動

 

外部動向

カーボンニュートラルに向けてGHG排出量抑制の加速が求められる

2015年12月に採択されたパリ協定において、産業革命前の水準から平均気温の上昇を2℃よりかなり低くし、できれば1.5℃に抑える目標に加え、今世紀後半にカーボンニュートラル(実質の排出をゼロ)にすることが世界共通の長期目標として掲げられました。これを機に、カーボンニュートラル社会の実現に向けた動きが世界規模で加速しています。

主要国の中央銀行、金融監督当局、財務省等の代表が参加する金融安定理事会が2015年12月に設立した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」では、複数の気候シナリオを用いて自社の気候関連リスク・機会を評価し、財務上の影響を把握、開示することを求めています。また、1.5℃目標に合致した削減目標を求めるSBTi(Science Based Targets initiative)や、自社の事業活動で使用する電力の100%再生可能エネルギー(以下:再エネ)化を目指すRE100といった国際イニシアチブが発足しています。さらに、ESG投資の指標となるCDP(注1)も、企業の自助努力でGHG排出を少なくとも年率2.1%以上削減することを求めています。

  • (注1)
    CDP:
    企業や都市の重要な環境情報を測定、開示、管理し、共有するための唯一のグローバルなシステムを提供する国際的な非営利団体。企業が環境や天然資源に及ぼす影響を開示するように、またその影響を軽減する対策を取るように、世界の主要な機関投資家と共に働きかけている。

富士通グループの状況

GHG排出量削減は富士通グループの重要課題

気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルに活動する当社にとっても重要な課題であると認識しています。例えば、気候変動によりもたらされる災害は調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、各事業所への部品調達やエネルギー調達を困難にします。また、GHG排出量に関する法規制は、製品・サービスの製造、開発等に影響を与え、対応への遅れはビジネスチャンスの損失を招く恐れもあります。

このように富士通グループでは、GHG排出量の削減を重要課題と捉え、環境行動計画の当初から目標に掲げて取り組んでいます。

富士通グループが排出するGHGは、石油やガスなどの燃焼由来は少なく大部分は購入電力の使用によるものです。とりわけ、クラウドコンピューティング、IoTや移動体通信における5Gが進展するなか、データセンターにおける消費電力量は増加傾向にあり、今後も増え続けていくと予想されます。そのため、国内外の工場や生産ラインに加え、データセンターにも省エネ診断や消費電力量の定期チェックを行い消費電力の抑制を進めています。

第11期環境行動計画のアプローチ

カーボンニュートラルの取り組み強化

富士通グループは、2017年5月に中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」を策定し、同年8月には、GHG排出削減目標についてSBT認定(2℃水準)を取得しました。SBTiは、企業が自主的に定めるGHG削減目標で、「IPCC(注2)」などがまとめた科学的知見に基づき、中長期で大幅にGHGを減らすことを目指しています。グローバル社会におけるカーボンニュートラルへの流れの中、富士通グループが果たすべき役割を再検討し、2030年度の事業所におけるGHG排出削減目標を2013年度比で33%削減から71.4%削減に引き上げ、2021年4月15日付でSBTiより「1.5℃水準」として認定を取得しました。さらにグローバル社会でのサプライチェーンを含めたカーボンニュートラルを加速させるために、再エネの利用を拡大し、事業活動におけるGHG排出量を2030年度に、バリューチェーン全体(スコープ1,2,3)のGHG排出量を2040年度にネットゼロ(注3)を目指すこととしました。
なお2040年度にネットゼロとする目標は、2023年6月にSBTiより「ネットゼロ認定」を取得しています。

これらのGHG排出削減目標をバックキャストし、2023年度から2025年までの環境目標の実行計画として、「第11期富士通グループ環境行動計画」を策定しました。カーボンニュートラル達成に向け、事業で使用する電力における再エネ利用を2025年度に50%以上、2030年度には100%を目指します。併せてバリューチェーン全体のGHG排出量を、サプライヤーの環境負荷の把握や削減の推進、自社製品のさらなる省電力化などで削減し、ネットゼロを実現していきます。

富士通グループは今後の国内での本格導入を見据え、フラッグシップモデルとして、富士通グループで最大規模の川崎工場(本店)で使用する電力量を2021年4月よりすべて再エネに切り替えました。この取り組みは、富士通および国内グループ会社の電力使用量の約5%に相当します。さらに2022年4月には、富士通オーストラリアで、グループ内最大規模の再エネ電力購入契約(PPA)を締結し、年間消費電力量の約4割を再エネとしています。
引き続き、地域性および経済合理性を踏まえグリーン電力・再エネ証書の購入、オンサイトによる導入を拡大していきます。また、ブロックチェーン技術など富士通グループならではの先端ICT技術を活用した再エネの普及・拡大にも貢献していきます。

  • (注2)
    IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):
    「国連気候変動に関する政府間パネル」の略称で、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。
  • (注3)
    ネットゼロ:
    温室効果ガス排出量を目標年度までに基準年度の90%以上削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること。
ページの先頭へ