非財務指標
はじめに
パーパスの実現に向けて長期かつ安定的な貢献を行うためには、すべてのステークホルダーと信頼関係を築き自らがサステナブルに成長していくことが必要です。そのため、非財務面での指標を事業活動の中核に組み込み、財務目標と合わせて達成に向けた取り組みを推進しています。当社グループではこうした考え方に基づき、自らの改革の進捗を測る指標として、お客様からの信頼を表す「お客様ネット・プロモーター・スコア(NPS®)(注1)」、会社と社員との結びつきを表す「従業員エンゲージメント」、そして富士通グループのDXの進捗度を表す「DX推進指標」の3つを非財務指標として設定しています。
- (注1)ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標又はサービスマークです。
お客様ネット・プロモーター・スコア(NPS)
お客様NPSとは、お客様との信頼関係=顧客ロイヤリティの客観的な評価を可能とする指標です。購入した商品やサービスに対する満足あるいは不満の度合いを示す顧客満足度と異なり、顧客ロイヤリティは、お客様の愛着度合いやリピート購入の見込みを判断できるという特徴があります。富士通グループがお客様NPSを非財務指標の1つとしているのは、お客様中心の経営を実現するためです。お客様NPSを通じてお客様の声を聴き、ニーズに的確に応えるサービスを提供する、あるいは、お客様のニーズの先を見越した提案をすることで、お客様の体験価値が向上し、お客様NPSがより一層高まる。こうしたポジティブな循環をつくり出すことが、結果として富士通グループの企業価値向上につながると考えています。
お客様NPS ネット・プロモーター・スコア
目標設定にあたっては、グローバルな調査で得た約2,000名のお客様からの回答を1件ずつ丹念に検証し、今期とるべきアクションを通じて何ポイント改善できるかを検討して積み上げるというアプローチを取りました。同様のアプローチを取った2021年度改善実績の+2.3ポイントを参考に、2022年度目標として前期比+3.7ポイントを設定しました。
指標改善の推進体制として、現場レベルでは改善活動をリードするCX(カスタマーエクスペリエンス)リーダーを各地域で任命し、経営サイドでは、社長を議長として各地域の事業責任者が集うCXステアリングボードを四半期ごとに開催しています。これによりお客様課題を現場レベルで確実に解決すると同時に経営課題として取り上げ、改善アクション提案、投資領域検討、施策効果検証まで実施する「フィードバックループ」を回していく体制を取っています。
従業員エンゲージメント(EE)
富士通グループにとって最大の経営資源は、お客様に提供する価値の源泉である社員です。エンゲージメントの高い社員は質の高いサービスをお客様に提供することができ、お客様からの良い評価は社員の仕事に対する手応えを高めるという相関関係があると、これまでの経験則から推測されるからです。社員一人ひとりのエンゲージメントの向上は、個人と富士通グループ両方の成長につながると考えています。
こうした考えに基づき、富士通グループの持続的な成長を測る1つの指標として、社員のマインドセットや組織文化への共感を示す「従業員エンゲージメント」を掲げています。従業員エンゲージメントは、富士通グループがDXのパートナーとしてお客様の信頼を得るうえで求められる人的資源、あるいは組織文化も含めた「ケイパビリティ」を持っていることを示す指標とも言えます。




目標値である「75」は、グローバル企業をベンチマークとして割り出した数値です。実際の数値は、企業の業容、国や地域による事業環境や社員の出身国の多様性などにも影響を受けるため、大きなばらつきがあります。当社グループにとっては「75」が高い目標であるのも確かですが、そうした条件を踏まえながらも、私たちはグローバル企業に比肩するという意思を持って目標の達成を目指しています。
推進体制として、エンゲージメントの高い組織づくりの専門チームCoE(Center of Excellence)と各現場組織の人事戦略のパートナーのチームHRBP(Human Resource Business Partner)が、国内外リージョンで連携しながら、エンゲージメント向上に取り組んでいます。具体的な取り組みとして、パーパスを明確にしたうえで、社員の働き方の選択肢を広げる施策を導入しています。施策の一環で、組織文化、社員の働き方や意見、意識の変化をタイムリーに把握し、その結果を経営にスピーディに反映させるべく、従業員エンゲージメントを測定するサーベイをグローバル共通で年2回実施しています。
また、サーベイの結果は、グループ全社員が閲覧できるイントラネットで開示しています。部署ごとの結果も示し、各職場における日々のマネジメントとエンゲージメント向上への変革に活用しています。また、部署ごとの結果は、ポスティング制度を活用して新たな環境での挑戦を志す社員の情報ニーズにも応えています。情報の分析を通じ、1 on 1ミーティングと従業員エンゲージメントには強い相関があることが明らかになりました。これは、日常的な業務の報告や相談を離れ、上司と部下が共感し得るビジョンを議論し明確化することが、従業員エンゲージメントの観点からも、パーパスドリブンな組織をつくり上げる観点からも、極めて重要な意味を持つことを示しています。今後は、エンゲージメントのデータを含み、非財務指標が非常に有効である、あるいは非財務指標それぞれを向上させるための取り組みをデータ分析によりリファレンスモデルとして公開できるとさらに良いと考えています。
DX推進指標
パーパス実現に向けた過程において富士通グループがたどる変化を捉えるために、DX推進指標(注2)を非財務指標の1つに掲げており、グローバルのグループ全社共通の形式でDX推進の成熟度診断を実施しています。部門ごとに細かく診断することで、デジタル変革の進捗状況や施策の成果を把握してアクションにつなげています。指標設定のもう1つの狙いは、お客様のDXをリードし得るパートナーとしての知見の蓄積です。DX推進指標に準拠した取り組みを富士通グループが自ら実践し、DXの成熟度を高めることで、その過程で得た知見を、事業を通じてお客様に提供できると考えています。
- (注2)デジタル経営改革のための評価指標を0から5の6段階の成熟度で評価するもの。「DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標」7項目と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」
2項目から構成される。
DX推進指標
2022年度のDX推進指標として3.5という数値目標を設定しています。経済産業省の「DX推進指標」では、すべての定性指標において調査地点の平均が3以上をマークした企業は「DX先行企業」に区分けされており、日本のDX先行企業の中でトップかつ世界水準の目標値と考えています。
DX推進指標は、企業が自ら自己診断を行うことを前提に設定されています。富士通グループでは、年度末ごとに行う自己診断における客観性を担保するため、半年に1回集計する変革実感に関するサーベイに寄せられるグループ全社員の声も採点の根拠とし、リッジラインズ(株)による第三者評価も織り込み、厳密に運用しています。ここで集めた声は、全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation=フジトラ」の中で、経営層、部門長、各部門のDX推進責任者に共有、全社及び各部門の進捗状況を把握し、そこから次に打つべき施策の意思決定や軌道修正をするためにも活用しています。
また、指標の改善にあたっては、「マインドセット、企業文化」「人材育成・確保」「事業への落とし込み」の3つの分野での社内変革が、今後の継続的な改善のカギを握ると見ています。「マインドセット、企業文化」については、ジョブ型人事制度や事業創出プログラムであるFujitsu Innovation Circuitなどの施策が機能することがポイントです。「人材育成・確保」は、リスキリング教育やDX人材育成exPracticeなどの人材育成施策、ポスティング制度など人材流動施策の定着と活性化が必須です。そして「事業への落とし込み」は、Fujitsu Uvance、サービスデリバリー変革、業務プロセス変革をはじめとする施策の加速が大きく関わります。これまで進めてきた取り組みの定着・浸透も図りながら、グループ全社員、そして社外のステークホルダーが富士通グループの変革の進捗確認ができるよう、DX推進指標を活用していきます。