GRB(Global Responsible Business)目標への対応

 

はじめに

気候変動は社会の持続可能性に影響を及ぼす地球規模の課題で、水や資源循環の課題とも密接に関連します。パーパスを実現するうえで地球環境保全に取り組むことは欠かせません。富士通グループは、バリューチェーン全体で環境負荷低減とリスク最小化を徹底し、またお客様と共に環境課題を解決していくことで持続可能な社会の実現に貢献します。

環境に関するビジョン、目標などの達成年度のイメージ

1.5℃目標に沿ったGHG排出量抑制活動

目標の引き上げ

富士通グループは、2017年5月に環境ビジョン「Fujitsu Climate and Energy Vision」を策定し、同年8月には、2030年までの削減水準についてSBT認定(2℃水準)を取得しました。カーボンニュートラルに向けた動きが加速する中、改めて富士通グループが果たすべき役割を検討し、2021年4月に2030 年のGHG排出削減目標を2013年度比33%削減から71.4%削減に引き上げました。この削減目標は、SBTiから「1.5℃水準」との認定を受けました。
グローバル社会でのサプライチェーンを含めた脱炭素の動きを加速するため、これまで2050年度に100%削減としていた目標を20年前倒し、2030年度としました。 さらに、サプライチェーンを含むバリューチェーン全体(スコープ3)では2040年度にネットゼロを目指すこととしました。
この目標を確実なものにするため、2025年度までの活動として、第11期環境行動計画を策定し、展開していきます。
(なお2020年度を基準年として2040年度にネットゼロとする目標は、2023年6月にSBTiよりネットゼロ認定を取得しています。)

事業活動 (スコープ1,2) の温室効果ガス排出量事業活動 (スコープ1,2) の温室効果ガス排出量
バリューチェーン全体 (スコープ3) の温室効果ガス排出削減バリューチェーン全体 (スコープ3) の温室効果ガス排出削減

ネットゼロの実現に向けたロードマップ

目標達成に向けた取り組み

富士通グループは、再生可能エネルギー(以下:再エネ)の普及・拡大を目指す国際イニシアチブ「RE100」に、2018 年より加盟しています。これまでは、欧米の拠点を中心に進めていましたが、今後の国内での本格導入を見据え、富士通のフラッグシップモデルとして、富士通グループで最大規模の川崎工場で使用する電力量を2021年4月よりすべて再エネに切り替えました。なお、この取り組みは国内グループ電力使用量の約5%に相当します。さらに2022年4月には、富士通オーストラリアで、グループ内最大規模の再エネ電力購入契約(PPA)を締結し、年間消費電力量の約38%を再エネとしています。

川崎工場川崎工場
Sapphire Wind Farm CWP Renewables社が運用するニューサウスウェールズ州最大の風力発電所Sapphire Wind Farm
CWP Renewables社が運用する
ニューサウスウェールズ州最大の風力発電所

事業活動に伴う環境リスクの回避と環境負荷の最小化

富士通沼津工場「令和5年緑化推進運動功労者内閣総理大臣表彰」を受賞

富士通グループは、環境負荷の最小化に向け、生物多様性への負の影響を低減し正の影響を増加させる活動を推進しています。例えば、富士通沼津工場では、1976年の工場開設時より、積極的に工場緑化を進めており、敷地内には、芝生庭園・ビオトープ・茶畑等の管理庭園のほか、生態系も含め自然のままの樹林地等の緑地があり、自然環境を継続的に維持しています。また、広範囲を憩いの場として地域住民に開放し、「茶摘みフェスティバル」や「自然体験ウォーキング」など、季節ごとにイベントを開催して、緑地を活用した多くの地域交流を実施しています。環境面では、ヤギの放牧による除草や特定外来種の駆除、ビオトープでの日本古来種である「ミナミメダカ」の育成など、生物多様性保全についても積極的に取り組んでいます。このような継続した緑化への取り組みが評価され、2023年4月に、緑化活動の推進、緑化思想の普及啓発に顕著な功績のあった個人または団体に対して内閣総理大臣が表彰する「令和5年緑化推進運動功労者内閣総理大臣表彰」を受賞しました。

沼津工場(航空写真)
沼津工場(航空写真)
茶畑(茶摘みフェスティバル)
茶畑(茶摘みフェスティバル)
ヤギの放牧による除草
ヤギの放牧による除草
ビオトープ
ビオトープ

ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献事例

環境価値取引の市場活性化を目指し、新たに「簡易創出基盤」の取り組みを共同事業プロジェクトで開始

富士通と(株)IHI(注1)(以下 IHI)は、2022年度よりカーボンニュートラルへの貢献と環境価値取引を支える「環境価値流通プラットフォーム」の実現に向けて共同事業プロジェクトを進めており、このたび、J-クレジット(注2)発行に向けた環境価値創出プロセス(CO2排出量などのデータ収集、検証、報告)を簡易化する「簡易創出基盤(注3)」の取り組みを2023年6月より開始しました。

この取り組みの一環として両社は、環境省の「令和5年度J-クレジット制度に係るデジタル技術活用に向けた調査検討委託業務」の実証事業の協力者として応募し採択され、2023年6月から2024年3月まで本事業に取り組みます。

両社は、「簡易創出基盤」を「環境価値流通プラットフォーム」の機能として2024年度中に提供開始予定です。

【共同事業プロジェクトの概要】

富士通とIHIはこれまで、IHIのIoT基盤「ILIPS」(アイリップス/IHI group Lifecycle Partner System)(注4)を通じて収集されたデータから算出したCO2削減量を環境価値としてトークン(注5)化し、異なるブロックチェーン同士を安全に相互接続する富士通の「ConnectionChain(コネクションチェーン)」(注6)を活用して環境価値取引市場に流通させるプラットフォーム「環境価値流通プラットフォーム」の実現に向けた共同事業プロジェクトを2022年度より進めてきました。

「環境価値流通プラットフォーム」にJ-クレジット「簡易創出基盤」を追加することで、企業などの環境価値創出者がCO2削減量などの環境価値を、容易にJ―クレジット化できるようになります。併せてJ-クレジット取引へのデジタル技術の適用促進を図ることで、CO2排出量削減などの環境貢献に取り組む企業や団体(環境価値創出者)が創出した環境価値を、購入者がJ-クレジットとしてスムーズに取引できる持続可能な価値連鎖モデルの構築を目指します。

また両社は、J-クレジット「簡易創出基盤」を起点として製品カーボンフットプリントなどの多様な環境価値のデジタル検証にビジネスを拡張し、カーボンニュートラルの実現に向けて貢献していきます。

図1 「多様な環境価値のデジタル検証」のイメージ図1 「多様な環境価値のデジタル検証」のイメージ

【環境省のJ-クレジット「簡易創出基盤」実証事業の概要(公募概要より)】

「太陽光発電設備の導入(EN-R-002)」方法論を用いて、IoTおよびブロックチェーン技術を活用し、J-クレジットのモニタリングから発行に係るプロセスの簡素化を検討するために行うものです。本実証は以下の3フェーズに基づいて実施される予定です。

  1. 2023年6月~2023年8月 実証の計画・論点整理
  2. 2023年9月~2023年12月 実証実施
  3. 2024年1月~2024年3月 実運用に向けた最終調整

図2 「簡易創出基盤」実証のイメージ図2 「簡易創出基盤」実証のイメージ

  • (注1)
    (株)IHI:本社 東京都江東区、代表取締役社長 井手 博
  • (注2)
    J-クレジット:温室効果ガスを削減・吸収した量を、国がクレジットとして認証する制度の1つ
  • (注3)
    簡易創出基盤:IoTやブロックチェーン技術を用いて 、J-クレジットの環境価値創出プロセスを簡素化する仕組み。
  • (注4)
    ILIPS:IHIグループ製品・サービスの高度化を目的に、装置や設備のデータをクラウドサーバに集積し、ライフサイクルビジネスに活用するIHIグループ製品共通のプラットフォーム。
  • (注5)
    トークン:ブロックチェーン技術を用いて、企業や団体などが独自に発行するデジタル化された権利、資産。
  • (注6)
    ConnectionChain:異なるブロックチェーン同士を安全に相互接続し、取引の透明性を保証するブロックチェーン技術。

中国電力ネットワークと富士通、再生可能エネルギーの導入拡大および送電設備の保全業務高度化に向けた実証試験を実施

富士通と中国電力ネットワーク(株)(注7)(以下、中国電力ネットワーク)は、再生可能エネルギーの導入拡大のために次世代電力ネットワーク技術として期待されているダイナミックレーティング(注8)の実現、および送電設備の保全業務高度化におけるドローンの活用に向けて、中国電力ネットワークの送電設備を活用して取得・変換した風況などの環境データ(注9)の実用性について2021年9月から1年間の実証試験を実施しました。

送配電事業者は、再生可能エネルギーの導入拡大のため、電力系統(注10)の増強や系統制御技術の開発などによる電力ネットワークの次世代化を目指しており、中国電力ネットワークにおいても積極的に取り組んでいます。また、中国電力ネットワークは、設備の巡視点検業務や故障発生箇所の特定などの保全業務にドローンを活用していますが、ドローンの飛行は風に大きく左右されるため、さらなる活用には広範囲に設置された送電線近傍の環境データ(風況)をリアルタイムかつ正確に把握する必要があります。

本実証試験では、送電線の光ファイバー複合架空地線(以下、OPGW(注11))に、光ファイバーセンシング技術(注12)を用いて取得したOPGWの振動データを富士通独自のデータ変換技術で変換し、送電線近傍の環境データを推定するとともに、現地の実測データと比較検証した結果、概ね一致していることが確認できました。これにより、広範囲に設置されている送電線近傍の環境データ(風況)を効率的かつ正確に取得できるため、ダイナミックレーティングやドローンを活用した巡視点検への適用拡大が可能になり、再生可能エネルギーの導入拡大や送電設備の保全業務のさらなる高度化が実現できます。

両社は今後、ダイナミックレーティングによる送電容量の弾力的な運用、およびドローンを活用した保全業務の高度化に向けて、環境データ(風況)や送電線温度のデータが活用できる送電網高度運用支援システムの早期構築に向けた開発を進めるとともに、デジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに進展させ、保全業務の改革やサステナブルなエネルギー供給などの社会課題解決を目指します。

図1 実証試験の概要イメージ図1 実証試験の概要イメージ

図2 送電網高度運用支援のプロトタイプシステムの画面イメージ図2 送電網高度運用支援のプロトタイプシステムの画面イメージ

  • (注7)
    中国電力ネットワーク(株):本社 広島県広島市、代表取締役社長:長谷川 宏之
  • (注8)
    ダイナミックレーティング:送変電設備の送電容量を弾力的に運用する技術。
  • (注9)
    環境データ:光ファイバー複合架空地線(OPGW)およびそのごく近傍の環境状態(風況など)を推定したデータ群。
  • (注10)
    電力系統:発電所から需要家まで電気を届けるための、「送電」「変電」「配電」からなる一連の電力設備・システムのこと。
  • (注11)
    Optical Ground Wire(光ファイバー複合架空地線)の略。送電線を落雷から保護するための架空地線に光ファイバーケーブルを内蔵した設備。
  • (注12)
    光ファイバーセンシング技術:通信用光ファイバーケーブルに特定のレーザーパルス光を入力し、後方散乱光などの光の変化や成分を測定することで、光ファイバーケーブルがどのように振動しているのかをリアルタイムに測定できる技術。測定には専用の測定装置とデータを処理する計算用コンピューターを用いる。

富士通データセンターをご利用いただいているお客様へご利用電力を再生可能エネルギー最大100%で提供するサービスを販売開始

富士通は、お客様のサプライチェーン全体での温室効果ガス(以下、GHG)排出量削減活動の加速に貢献することを目的とし、富士通データセンター(以下、DC)をご利用いただいているお客様へ環境価値(注13)を提供する「環境価値提供サービス(注14)」を2022年度より販売開始しました。

カーボンニュートラル達成に向け、企業は自らのGHG排出量削減に加えて、利用する他社サービス等の間接的なGHG排出量削減が必要となります。一方で、約8割以上の企業がカーボンニュートラル達成に対し課題を抱えていることが明らかになっています。富士通はグローバルな環境リーディング企業として社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献を目標に掲げており、DC事業においてもこの目標に貢献するべく新たな視点でのサービスとして「環境価値提供サービス」の提供を開始しました。

【環境価値提供サービスの概要】

富士通DC(館林・横浜・明石)をご利用のお客様に対し、契約電力を再生可能エネルギー最大100%で提供するものです。再生可能エネルギーを使ってDCサービス利用をしている証拠として、富士通から証明書を発行しているため、お客様自身がGHG排出量削減に貢献している(注15)ことを公的に証明することが可能です。

図1 環境価値提供サービス概要図1 環境価値提供サービス概要

図2 環境価値提供サービスで実現できること図2 環境価値提供サービスで実現できること

  • (注13)
    GHGを排出しない方式で発電されたエネルギーは「GHGを排出しない」という、環境活動上で認められる価値
  • (注14)
    FUJITSU Hybrid IT Service コロケーションサービス 環境価値提供サービス
  • (注15)
    お客様のスコープ3削減が対象
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