自然共生(生物多様性の保全)
富士通グループのアプローチ
生物多様性の喪失は重大なグローバルリスク。ネットゼロとネイチャー・ポジティブに向けた統合的対処が重要
世界経済フォーラム(WEF)の「Global Risks Report 2022」では、深刻度の高いグローバルリスクの3位に「生物多様性の喪失」を挙げており、自然/生物多様性の喪失は気候変動と並ぶ、喫緊の重大な問題であると認識されています。その問題の解決には「ネイチャー・ポジティブ」の実現が必須と考えられ、2021年6月に開催されたG7サミットでは「2030年までに生物多様性の損失を停止し回復させる」を含む「G7 2030 Nature Compact」に合意しました。また、2022年開催予定の国連生物多様性条約第15回締約国会議(以下:CBD-COP15)第二部では、2030年の国際目標を含む「ポスト2020生物多様性枠組 」の採択が予定されています。さらに、ビジネス団体(WBCSD等)や国際環境NGO(WWF等)の共同提案として、2030年のネイチャー・ポジティブ実現という目標が発表されています。現在、気候変動対応である「ネットゼロ」のみならず、「ネイチャー・ポジティブ」実現に向けた統合的対処が重要と考えられています。
自然/生物多様性への影響を評価し、影響の大きな自社の事業活動の特定に向けた目標設定
富士通グループは、2009年、「富士通グループ生物多様性行動指針」を策定しました。そこで取り組みの考え方として「自らの事業活動における生物多様性の保全と持続可能な利用の実践」と「生物多様性の保全と持続可能な利用を実現する社会づくりへの貢献」を掲げ、事業活動による環境負荷の継続的な低減のみならず、ICTを活用し、絶滅危惧種の保護や熱帯雨林保全を継続的に支援しています。
さらに、「ネイチャー・ポジティブ」の実現のためには、富士通グループとして、いち早く取り組みを推進することが重要と考え、第10期環境行動計画目標の1つとして、自然/生物多様性保全に係る目標を設定し、企業活動における自然/生物多様性への依存と影響を評価し低減を図る活動に着手しています。
2021年度実績
第10期環境行動計画 目標項目 | 2021年度実績 |
---|---|
企業活動による生態系・生物多様性への影響を見える化し低減する | 国際議論を踏まえ、評価指標として「エコロジカル・フットプリント」を選定し、評価方法の確立に向けた活動を開始 |
国際議論を踏まえ、評価指標として「エコロジカル・フットプリント」を選定
CBD-COP15で採択が予定されている2030年国際目標草案では、ビジネスセクタに関係が深い目標として、目標15「各地域から地球規模まで、すべてのビジネス(公的・民間、大・中・小)がそれぞれの生物多様性に対する依存状況及び影響を評価及び報告し、漸進的に負の影響を低減して、少なくともこれを半減し正の影響を増加させ、ビジネスへの生物多様性に関連するリスクを削減し、採取/生産活動、ソーシング/サプライチェーン、使い捨てにおける完全な持続可能性を目指す」が提示されています。そして、生物多様性条約第24回科学技術助言補助機関会合(以下:SBSTTA24)では、各目標の評価指標に関しても議論され、目標15の指標候補の1つとして、「エコロジカル・フットプリント」が挙げられています。
このような国際議論を踏まえ、富士通グループは、第10期環境行動計画目標の評価指標として、「エコロジカル・フットプリント」を選定しました。
2021年度の取り組み事例
富士通グループは、今後の取り組みを検討する上で、国際的な取り組みの方向性に沿うことが最も重要と考え、以下のように国際動向の把握を行いました。その結果、「2030年のネイチャー・ポジティブの実現に向けた取り組みであること」、「ポスト2020生物多様性枠組の2030年目標の達成に貢献すること」が重要と考え、第10期環境行動計画において、2030年国際目標草案の目標15に沿った目標設定および指標の選定を実施しました。
今後は、2030年のネイチャー・ポジティブの実現に向け、さらに自然/生物多様性保全活動を拡大していきます。
国際動向の把握 -ネイチャー・ポジティブ-
2021年6月に英国・コーンウォールで開催されたG7サミットでは、「G7 2030 Nature Compact」に合意しました。その中には、「2030年までに生物多様性の損失を停止し、回復させること」、「人類と地球の両方の利益のために、我々の世界はネットゼロになるだけでなく、ネイチャー・ポジティブにならなければならないこと」、「自然とそれを支える生物多様性は、最終的には私たちの経済、生活、福祉を支えていること」等が含まれています。
また、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)や世界自然保護基金(WWF)等14団体が「A Nature-Positive World : The Global Goal for Nature」を発表し、「①2020年から総体で自然の損失が発生しないこと、②2030年までに総体でポジティブになること(ベースライン:2020年)、③2050年までに十分に回復させること」という目標が提言されています。
Global Goal for Nature : Nature Positive by 2030
出典:A Nature-Positive World : The Global Goal for Nature
国際動向の把握 -ポスト2020生物多様性枠組-
2030年の国際目標を含むポスト2020生物多様性枠組が議論されており、2022年開催のCBD-COP15第二部で採択が予定される中で、2021年7月にはその第一草案が発表されました。この第一草案には、企業活動に特に関わりが深い目標として目標15が提示されています。SBSTTA24ではその目標の指標候補が議論されており、「エコロジカル・フットプリント」が指標候補の一つとなっています。
CO-CHAIRS’ SUMMARY AND PROPOSED LIST OF INDICATORS FOR CONSIDERATION IN DEVELOPING THE MONITORING FRAMEWORK
FOR THE POST-2020 GLOBAL BIODIVERSITY FRAMEWORK出典:CBD/SBSTTA/REC/24/2 27 March 2022