富士通グループのサステナビリティ経営
方針・推進体制・定期レビュー
富士通グループは、これまでも責任ある企業として、製品やサービスの提供を通じて社会からの信頼を獲得してきました。しかし、変化が大きく先の見通しが難しいVUCA(注1)時代と言われる現在こそ、経営トップ主導の下、地球社会の一員として環境・社会・経済の視点から課題解決に向けた事業活動を行い、社会に対する有益なインパクトを生み出していくことが重要です。そのため、そのようなサステナビリティに配慮した経営を主導する「サステナビリティ経営委員会」を、2020年4月に設置しました。
この委員会では、環境・社会・経済に与える影響を考慮し、ステークホルダー(注2)に配慮したうえで企業を長期的に繁栄させていくという、責任あるグローバル企業としての「サステナビリティ経営」を目指します。具体的には、Fujitsu Wayの改訂により新たに定めたパーパスや大切にする価値観に基づいて、人権の尊重、多様性および公平性の受容、人材の育成、地球環境保全、地域社会の発展への貢献などの非財務分野の取り組みを強化することにより、企業活動を通じたグループの価値の持続的かつ長期的な向上を目指しています。
委員会の開催は半期に一度を計画しており、非財務分野の活動進捗や目標達成状況の確認、新規活動の審議、そして非財務指標の討議などを行い、その結果は経営会議と取締役会に報告されます。委員長は社長とし、サステナビリティ経営の視点から委員長が指名する役員が委員に任命されます。(2022年4月時点、委員長含め17名)。2020年4月に第1回をキックオフし、その後半年に1回のペースで計5回全ての会議をリモートで開催してきました。新型コロナウィルス感染症の感染拡大や世界で加速するカーボンニュートラルへの動きなどを踏まえ、富士通グループの目指すべき姿や本委員会のミッション、非財務指標やグローバルレスポンシブルビジネスの活動概要および目標に対する進捗などについて活発な議論を行いました。
体制図
- (注1)VUCA:(Volatility(変動性), Uncertainty(不確実性), Complexity(複雑性), Ambiguity(曖昧性))
- (注2)富士通グループのステークホルダー:富士通グループは、「社員」「お客様」「パートナー(お取引先)」「コミュニティ(国際社会・地域社会)」「株主」をステークホルダーとしています。また、特に「政府」「NPO」「NGO」なども「コミュニティ(国際社会・地域社会)」の中の重要なステークホルダーと考えています。
非財務指標
Fujitsu Wayに定めるパーパスの実現には、富士通グループ自身の持続的な成長が必要であり、それには、すべてのステークホルダーと信頼関係を構築し強化することが不可欠です。この考えに基づき、2020年度より、従来の財務指標に加え、お客様からの信頼を示す「お客様ネット・プロモーター・スコア(NPS)」と社員のマインドセットや組織のカルチャーへの共感を示す「従業員エンゲージメント」を新たに非財務指標として設定しました。当社グループは、サステナビリティの重要課題を「グローバルレスポンシブルビジネス」と定め取り組んでいますが、こうした取り組みがお客様や社員からの信頼獲得につながり、その結果が非財務指標に表れると考えています。今後は、2つの非財務指標のデータをグローバルかつ継続的にモニタリングする仕組みづくりを進め、そこから得た洞察を様々な活動に反映していきます。
グローバルレスポンシブルビジネス
富士通グループは2010年にCSR推進委員会に設置された基本戦略ワーキンググループにて、グローバルなCSR規範や社会課題を認識したうえで当社への期待と要請について外部有識者よりヒアリングを行い、CSR基本方針の「5つの重要課題」を制定し、重要課題に基づく活動を推進してきました。
しかし、持続可能な開発目標(SDGs)の採択や気候変動問題に関するパリ協定の発効など、近年、地球規模の課題解決に向けた取り組みがより一層強く求められるようになりました。そこで、ここ数年の富士通におけるビジネスの変化も反映させるべく改めてグループ横断でのマテリアリティ分析を実施し、その結果を踏まえて、「グローバルレスポンシブルビジネス(Global Responsible Business : GRB)」という新たな名称で、グローバル共通のサステナビリティ重要課題を再設定しました。
- 関連リンク:マテリアリティ
グローバルレスポンシブルビジネス
グローバルレスポンシブルビジネスの目的は、重要課題に基づく具体的な活動を行うことでFujitsu Way の実現に必要なマインドセットとカルチャーを醸成すること、そして、グローバルな事業活動の前提となる社会的信用を獲得・維持していくことです。全グループ社員が「企業は社会の一員である」と常に意識し、利益追求のみではなく、事業活動から生じるサステナビリティの負の影響を低減し、正の影響を最大化していくことを目指しています。
そのため、重要課題ごとに2023年3月期末を達成期限とする目標を定め、目標達成に向けて実効力のあるマネジメント体制を構築していきます。各国国内法や労働市場など国・地域ごとの違いを踏まえつつ、グローバルでより高いレベルの活動が実施できるよう、本社の担当部署を中心に海外の各地域担当者も含めて目標を設定し、目標達成に向けた具体的アクションについて検討を進めていきます。
社内外への啓発活動・情報発信
パーパスの実現に向けて、社会課題の解決に有益なインパクトを生むビジネスに取り組むとともに、全ての事業活動において責任あるビジネスを行うために、社員のGRBへの理解を促進する様々な啓発を実施しています。また、富士通グループのサステナビリティ経営の姿勢や取り組みをステークホルダーに伝えるため、社外に情報を発信しています。
- 社内外のイベント・講演において、富士通のサステナビリティ経営における非財務の枠組みとしての紹介や、各重要課題に役員からリーダーを設定しグローバルに施策を実行していることなどを発信しています。
- GRBと経営とのつながり、概要などの基本情報をまとめたサステナビリティ経営における7つの重要課題:GRB(動画)を日英の二言語で制作し、公式Web、公式SNS等で社内外に発信しています。
- イントラサイトを日英の二言語で作成し、GRBの実務担当者と連携しながらコンテンツを随時掲載することで社員の理解を促進しています。
- 社内報で各重要課題の概要と具体的な取り組みを紹介する連載記事(全10記事)を日英の二言語で掲載しました。本連載に関するアンケートでは、記事を読んだ社員の約9割がGRBへの理解が深まったと回答し、約6割が考え方・行動が変わったと回答し、理解・共感につながりました。
- サステナビリティに関する社員意識調査を実施し、得られた回答を社内外の施策立案・実施に活かしています。
- ビジネスの現場では、お客様のサステナビリティに関する経営課題解決につながることを目指し、商談プロセスの中にGRBの視点を取り入れています。お客様への提案資料に、環境、ウェルビーイングなどGRBの取り組みを紹介する素材を盛り込むなどして、実際のビジネスにおける活用、展開を進めています。

