ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献
富士通のビジネスは2030年にESG貢献およびSustainability Transformation(SX)(注1)を重点テーマとしたポートフォリオ、オファリングへの変革を目指しています。また、マテリアリティにおける「地球環境問題への解決」への貢献として、サプライチェーンの最適化からエネルギー消費の効率化まで、クロスインダストリーの様々なオファリングを提供しています。特に、2023年から2025年までの第11期環境行動計画の「お客様・社会」の目標として、SXに資するソリューション開発や取り組みを推進しています。以下、ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献につながる取り組みをご紹介します。
- (注1)サステナビリティ・トランスフォーメーション
次世代型「ダイナミックサプライチェーンマネジメント」による全体最適
製品の原材料の調達から製造、流通、販売に至るプロセスを最適化するサプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management; SCM)。今、SCMを取り巻く環境は大きく変化しており、企業は対応を迫られています。人権問題への関心のさらなる高まり、地球環境対策、次のパンデミックへの備えや激甚化する気象災害など、新たな課題や突発的な変化に対し従来型のサプライチェーンマネジメントには限界がきています。その一因は、企業がサプライチェーン全体を統合して意思決定できていないことにあり、現代の変化に迅速かつ柔軟に対応できる次世代型のSCMへの移行が急務になっています。
富士通は、業務特化型のAIを実現するために、「Fujitsu Data Intelligence PaaS(以下、DI PaaS)」を提供しています。DI PaaSは、組織内外に散在する膨大なデータを意味の理解できる形に統合して意思決定を支援する、クラウドベースのオールインワンオペレーションプラットフォームです。4種のデータ基盤で構成され、世界最先端のAIソリューション「Fujitsu Kozuchi」と、トレーサビリティを実現するブロックチェーン技術「Fujitsu Track and Trust」、複雑なデータ統合、アプリケーション開発、高度なAIを実現する「Palantir Foundry」、そしてMicrosoft Azureなどのデータ統合技術です。それらの技術によって、業種間で分断されたデータを統合的に連携・分析し、これまでにないバリューチェーンを横断した解決策や知見を導き出します。更に、その意思決定結果を富士通が長年培ってきた計画系や実行系の業務システムに即座に繋げることで、意思決定から実際のアクションまでの業務の自律運行を可能とし、変化対応力強化を実現します。
Fujitsu Data Intelligence PaaS
データと関係者を信頼でつなぎ、お客様のビジネス課題を解決
環境問題や社会問題への人々の意識の高まりとともに、企業が提供する製品やサービスに対して、機能や品質のみでなく、生産・流通過程における環境負荷の低さや公正さなども求められるようになってきています。
とくに、EU諸国では欧州グリーン・ディール政策に基づき、EU内での一部を除くほぼすべての流通製品が循環経済行動計画によるエコデザイン規則の対象となります。エコデザイン規則の施行に伴いデジタルプロダクトパスポート(DPP)の添付が数年以内に必須になります。欧州でのビジネス継続には避けて通れない法令であり、通関業務を含め様々な対応が求められます。
多くの製品はグローバルにまたがるサプライチェーンを経て消費者の元に届けられますが、上記の様な要求に応えるためには、様々なステークホルダー間の取引の透明性を担保する信頼性の高いトレーサビリティの実現が重要です。
Fujitsu Track and Trustは、コンサルティングとブロックチェーン技術を活用したアジャイル開発によるスピーディな仮説検証を通じてお客様ビジネスにおける課題を解決し、さらなる成長を支えるトレーサビリティ基盤をご提供します。トレーサビリティの実現により、原材料の調達、製品の製造、さらにその先の物流といった各工程での業務の効率化やコスト削減が可能です。また、SDGs達成への貢献を顧客に開示する(ESGレポート)ことで、企業価値・ブランド価値の向上にも活用できます。
Fujitsu Track and Trust プラットフォーム
陸海空のロジスティクスデータをつなぎ、効率性、柔軟性を高め、ビジネスを持続可能なものに
物流の需要増加が予測される一方、物流業界では労働力不足、輸送力低下、輸送手段の多様化、GHG排出に対する対策など様々な課題に直面しています。
富士通は、荷主や物流事業者が持つロジスティクス情報をロジスティクスデータ標準化サービスでつなぐ事で、効率性、柔軟性を高め、ビジネスを持続可能なものとします。業界全体の業務効率化による輸送キャパシティの最大化とGHG排出量の削減を両立させ、自然災害や紛争だけでなく日常的な変化にも対応できるレジリエントかつ収益を最大化させるロジスティクスを実現します。
解決へのアプローチ
労働力不足の解消:業務計画やプロセスの最適化と標準化、予測を基にリアルタイムに現場業務を最適化します。
輸送能力の向上:貨物の積載効率やリレー効率、将来の貨物量予測を基に輸送設備利用計画を最適化します。
環境負荷の低減:給油/充電計画・走行ルートと、エネルギー需要予測による業務計画の最適化でGHG排出量を削減します。
Unified Logistics
エネルギー利用の最適化によるサステナビリティへの貢献
IoT Operations Cockpitは様々なIoTセンサーから取得した情報をリアルタイムに可視化することでビジネスの迅速な意思決定を支援し、コスト削減と環境への配慮を実現します。
サービスの特徴
- エネルギー使用量をリアルタイムに可視化し分析
様々なIoTセンサーから収集したエネルギー使用量などの情報をリアルタイムに可視化します。複数店舗の情報もダッシュボードで一元管理することができます。 - AIによるアノマリー分析で故障予測・異常検知
収集・蓄積したセンサー情報を学習し、AIを使ったアノマリー分析を実施して故障を予測します。また、閾値の設定による異常検知も可能であり、メンテナンスが必要な機器を事前に把握し対策を講じることができます。 - エネルギー効率を向上させサステナビリティへ貢献
照明、冷蔵庫、空調などの稼働状況を可視化することで、電力削減対象が明確となり設備改善・運用改善につなげることができます。無駄なエネルギー消費を削減し、環境への配慮と企業活動の推進を支援します。
IoT Operations Cockpit
エネルギー消費最適化サービス
Fujitsu Energy Consumption Optimization powered by METRONはあらゆる業種・業界における工場やオフィスのエネルギーデータ収集・可視化から分析・最適化を支援するエンドツーエンドのエネルギー消費最適化サービスを提供します。
METRON社との協業により以下の4つの主要なサービスの提供を通じて、グローバルで製造業の脱炭素化を加速させます。
- デジタル化コンサルティング:エネルギーデータ収集
- エネルギー可視化SaaS:エネルギー管理/分析SaaS
- エネルギー最適化コンサルティング:エネルギー最適化
- 生産スケジュール最適化:電力を考慮した生産計画最適化
Fujitsu Energy Consumption Optimization powered by METRON
海洋デジタルツインを要素技術とした、ブルーカーボン測定認定事業の実現に向けて実証実験を開始
富士通では、新規事業化を前提にブルーカーボン(注2)の測定認定技術の実証実験を進めています。日本の場合、EEZを含む海域面積は世界6位であり、ブルーカーボンによるCO2削減のポテンシャルは5,000万トンに達します。これは、保全の担い手不足から枯渇し減少する森林のCO2吸収量を上回る数値であり、CO2削減の切り札ともいわれています。さらに、ブルーカーボンは申請・認定されればJブルークレジットとして市場取引が可能となるメリットがあります。しかし海中での作業が伴うために、その造成には高コストを要してきたという課題があります。富士通のブルーカーボンの測定認定技術は、この海中作業のコスト高を、ICTにより劇的に低減するものです。多くのダイバーが数haもの海に潜水して海藻の繁茂を目視確認し、計算式により推定値を算定する従来手法に代わって、まず海中ドローン等により海中CO2濃度をAIに学習させます。併せて、リモートセンシングによる広範囲測定を組み合わせて適用することにより、ダイバーレスによるコスト低減と合わせて精度の高い測定を実現します。〔図1〕
要素技術である富士通研究所の海洋デジタルツインでは、海洋の状態をデジタル空間に高精度に再現し、海洋を構成する環境の変化や海洋を活用した施策の効果などのシミュレーションによる予測を可能にします。これには、AIを活用し、自律型無人潜水機を用いて、海中の生物や構造物の解像度が高い3次元形状データを取得する技術が用いられています。〔図2〕富士通のブルーカーボン測定認定技術は、2026年度中に藻場に関する海洋デジタルツインの確立を目指します。そして、ブルーカーボン造成だけではなく、併せて企業・自治体などによる藻場の保全・造成をする施策、サンゴ礁における生物多様性を保全する施策などの立案を支援し、Sustainability Transformation(SX)を推進することを目指します。これらの技術に関して、社外の研究機関(注3)とともに、沖縄県石垣島近海において実証実験を行い、サンゴ礁の精密な3次元形状データを取得することに成功し、技術の有効性を確認しました。こうした成果が国土交通省より高く評価され、同省所轄の研究会(注4)に、他社に先駆けて参加することとなりました。さらに、2024年度中の実証実験開始を目指して、社外の企業と協業に向けた準備を進めています。そしてカーボンニュートラルに向けた施策に取り組む企業や自治体・団体とのパートナーシップを構築し、ブルーカーボン測定認定技術(および海洋デジタルツイン)を用いたお客様の施策立案支援を目指します。
図1「ダイバーレスによる精度の高い測定」のイメージ
図2「海中の生物や構造物の3次元形状データを取得する技術」のイメージ
- (注2)ブルーカーボンとは、海藻・海草などの海洋生物の光合成によって隔離、あるいは貯留された炭素のこと
- (注3)国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所
- (注4)「ブルーカーボン高精度データ把握・管理システム」の利活用に向けたブルーカーボンデータ計測マニュアル研究会
国際的なイニシアティブや国内の社会的な課題に取り組むプラットフォームでのビジネス連携
2024年初頭より、富士通は国内における企業の再生可能エネルギー調達を可能にする政策や規制に対する提言に協力することで、RE100事務局のThe Climate Groupと連携し、日本で政策や規制を検討している政策作業部会メンバー12社の内の1社として活動しました。RE100メンバーが求める優先度の高い施策は以下のとおりです。
- 再エネ電力の費用対効果を高めるため、電力価格の透明化と公正化を推進する。
- フィジカルおよびバーチャル・コーポレートPPA(注5)の締結を促すため、発電事業者と需要家の間の障壁を取り除き、契約のプロセスを簡略化する。
- 送配電網の増強と運用改善を最優先で行い、新規再エネ事業が系統接続に必要な時間を短縮するとともに、出力制御を回避し再エネ電力を最大限に活用する。
2024年6月25日、公開声明として、日本に本社を置く87社を含むRE100に参加する世界420社以上の大手有力企業が、日本政府に対し、再生可能エネルギーの導入目標をより野心的に設定するよう強く要請しました。日本政府が近く策定する第7次エネルギー基本計画において、ネットゼロへの移行がもたらすチャンスを活かし、2035年までに再エネの発電容量を3倍(363GW)に増やすことを強く求めました。
この活動を通して、富士通は自社の再エネ推進だけでなく、日本の再エネ推進に関する活動に積極的に参加していくことで、社会全体の再生可能エネルギーの普及拡大およびそれに伴うエネルギーソリューションによるビジネスで貢献していきます。
また、富士通は経済産業省が2022年2月1日公表した「GXリーグ基本構想」に対する賛同を表明した直後から協力を開始しており、2023年度のGXリーグ(注6)の本格稼働においても引き続き参加しています。2024年3月27日時点では幅広い業種が参画し、我が国の温室効果ガス排出量の5割超をカバーする枠組みとして参加企業は747社となっています。また、GX-ETS(注7)にも参画しており、グループXとして、自社の排出削減目標の達成に向けた進捗や、サプライチェーン全体での排出削減の取り組み、グリーン市場創造に向けた製品・サービスの供給など、各社の取り組みに関する様々な取り組み状況の情報をGXダッシュボードにて発信しています。ビジネス面においてもGXリーグに参画しているお客様に対してGHG排出量削減に関する積極的な提案を行うことで、日本全体のGHG排出量削減に貢献しています。
- (注5)環境価値だけを発電事業者と需要家の間で取引する電力購入契約のこと
- (注6)2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXヘの挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取組を行う企業群を官・学と共に協働する場
- (注7)GXリーグにおける排出量取引制度であり、温室効果ガスの排出削減を目的とした市場メカニズムの1つ。具体的には、企業や組織に対して排出量の上限(キャップ)を設定し、その上限を超えないようにするための取引制度。近年、GXリーグにおける活動の一環として、排出量取引の導入に向けた活動が活発化している
- RE100 Our work in Japan
- RE100 calls on the Japanese government to urgently grow renewables capacity
- GX League / 参画企業のGX実現に向けた取り組み / 富士通株式会社