製品の資源再利用
富士通グループのアプローチ
富士通グループのリサイクル活動は、製品の設計・製造段階だけでなく廃棄やリサイクルの段階まで生産者が責任を負うという「拡大生産者責任(EPR)」の考え方、および自社の製品に対して責任を負う「個別生産者責任(IPR)」の考え方に基づいています。富士通グループにとって、IPRはビジネスを全世界に拡大するうえでの大きな挑戦ですが、EPRも含めてこれらへの対応を業界団体や各国政府と連携しながら進めることによって、すべての利害関係者の要件や要請を満たした資源循環型の社会づくりに貢献できると考えています。
この認識の下、富士通グループは、各国の廃棄物処理やリサイクルの法規制に添ったリサイクル活動を推進しています。日本では「資源有効利用促進法」に基づき、産業廃棄物広域認定制度の認定業者である富士通が、国内各地の富士通リサイクルセンターで産業廃棄物の適正処理を受託しています。さらに、回収が義務付けられていない国でもIPRの考えに添って、可能な限りの回収、再利用、リサイクルを進めています。
2020年度実績
第9期環境行動計画 目標項目 | 最終年度
(2020年度実績) |
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富士通リサイクルセンターにおける事業系ICT製品の資源再利用率90%以上を維持する。 | 91.6%達成 |
ICT製品のリサイクルを推進
富士通グループは日本国内において、全国をカバーするリサイクルシステムを構築。徹底したトレーサビリティとセキュリティを確保しながら、高い資源再利用率を達成するなど、安心・安全なサービスの提供を通じて、拡大生産者責任(EPR)を確実に実践しており、ICT製品のリサイクルを推進しています。
資源再利用率90%以上を達成
国内の法人のお客様から回収したICT製品(事業系使用済みICT製品)の処理量は2,991トン、資源再利用率91.6%でした。また、個人のお客様の使用済みパソコンの回収台数は67,185台でした。
事業系使用済みICT製品の資源再利用率の推移(国内)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
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資源再利用率(注1)(%) | 91.5 | 91.7 | 91.1 | 91.6 |
処理量(トン) | 3,844 | 3,436 | 3,210 | 2,991 |
- (注1)資源再利用率:使用済み製品の処理量に対する再生部品・再生資源の重量比率。
個人のお客様の使用済みICT製品の回収台数の推移(国内)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
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使用済みパソコン回収台数(台) | 59,144 | 53,481 | 58,560 | 67,185 |
2020年度の取り組み事例
持続可能な未来を築くためのヒースロー空港との共同リサイクルプロジェクト(イギリス)
取り外したファイバーケーブル
富士通UKは、ヒースロー空港と協力して、地域のより持続可能な未来の構築をめざすために、地域の社会課題をどのように解決するかを、プロジェクトの初期のデザインレビューの段階から連携して、課題抽出と持続可能な事業支援について解決策を議論してきました。その過程で、「空港の環境基準の更新のプロジェクト」が生まれ、合計で24,250 kgのファイバーケーブルをリサイクルしました。既存のファイバー規格を新しいガラス強化ポリマーファイバーケーブル(Glass Reinforced Polymer Fiber cabling)に更新することにより、鋼線外装ケーブル(Steel Wired Armoured Cable)の製造における環境への影響が減少し、ヒースロー空港での化学物質の影響も減少しました。
持続可能な水処理の開発と推進を支援するEastern Balancing Reservoir Projectでは、これまでで最も長く、化学物質の影響が少ない新しいファイバーケーブルを、飛行場に1本敷設しました。切れ目のないファイバーは、10 kmに及ぶ従来の銅ケーブルに取って代わり、11,354 kgのすべてがリサイクルされました。
こうしたファイバーや銅ケーブルの共同作業によるリサイクルの売上は、ヒースロー地域社会基金へ寄付され、地域循環の価値向上に繋がりました。本基金への寄付は、総額15,318ポンドに達し、本基金で取り組む6つのコミュニティプロジェクトに十分な資金を提供することができました。
資金の活用例の1つとして、 「デジタル・インクルージョン」 プロジェクトでは、学習障害のある成人を対象に、コミュニティショップにおいてパソコンの使い方を学びとともに、働く機会を提供しました。これはまた、不要なパソコンを再整備して、お客様にオンラインでそれらを販売し、利益を上げる仕組みを教えることにもつながり、この取り組みの継続性にも貢献しています。
その他のコミュニティプロジェクトには、高齢の庭師のために新たに9つの花壇を育成する資金を提供した 「高齢者の祭典」 や、 「良い会社カフェ」 、 「チェンジR&R」、そして、西ロンドンの町フェルサム地区をガーデニングする取り組み「フェルサム イン ブルーム」などがあります。いずれもファイバーや銅ケーブルのリサイクルから生じた資金を利用しています。

によるコンピュータトレーニング

(右端)によるヒースロー地域社会基金のプレゼンテーションの様子
HCTディレクターDr Rebecca Bowdenの言葉:
“私は、このコラボレーションの 「循環的な」 性質が気に入っています。古い不要なITインフラを置き換えることで、学習障害のある人に古い不要なコンピュータをリサイクルしたり、販売するためのトレーニングの資金を与え、そして、雇用も創出しているところです。 このプロジェクトは、開始時に「どうすればこのプロジェクトの利益を最大化できるか」 と一旦立ち止まって考えて実施しましたが、このように地域コミュニティの大きな改善につながっています。”
IT機器のリファービッシュ(注2)と再販売(ドイツ)
ドイツの富士通テクノロジーソリューションズ(FTS)では、これまでのリサイクル業務20年間で回収した製品の回収率が90%を超え、法定の75%を大きく上回っています。FTSは、富士通のグローバルな環境目標に合わせて、古いIT機器の改修および再販売に関する意欲的なKPIを設定しています。今後も、社会に貢献する多様な企業との連携に努めていきます。
FTSは、AfB(Arbeit für Behinderte:障害者のための仕事)とIT機器の再生・リサイクルに関してパートナー契約を締結しています。AfBは、大規模な非営利IT企業であり、高品質のリファービッシュ技術と再販売を通じて、使用済みIT機器およびモバイルデバイスの製品ライフサイクルの延長を専門としています。障害のある人とない人に関わらず、多様な仕事を提供していますが、業務のすべてのステップにおいてバリアフリーで設計されており、人の持つ可能性を促進し、最適なワーク・ライフ・バランスで仕事と個人の目標を実現する手段をサポートしています。富士通は、AfBとのパートナーシップを通じて、2019年に、障がい者に63件の雇用を提供し、4,856,647 kgの鉄換算の資源と3,413,304 kgのCO2換算の排出量削減に貢献しました。富士通から回収されたデバイスの82%が、データ破壊、ハードウェアテスト、およびリファービッシュ後に再販売されました。下の図は、リファービッシュされたIT機器の利活用による鉄、電力量、CO2排出量の削減効果の実績を経年で示しています。
- (注2)リファービッシュ:初期不良品や中古品に含まれる劣化部品などを交換し、再整備して新品に準じる状態に仕上げることを意味します。サーキュラーエコノミーの中で資源有効利用の1つのモデルとして推奨されています。