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“システム安定稼働”の要「ストレージの可用性」を向上させるソリューション
システムの停止は企業経営に大きな影響を与える。停止しないシステムを構築するための重要なポイントは、ストレージシステムの可用性確保だ。止まらないストレージシステムを構築するには、どうすればよいのか。
転載元:TechTargetジャパン
TechTargetジャパン 2023年12月11日掲載記事より転載
本記事はTechTargetジャパンより許諾を得て掲載しています。
記事URL:https://members.techtarget.itmedia.co.jp/tt/members/2312/07/news03.html
そもそも可用性とは何なのか。簡単に言うと、アップタイム(稼働時間)とダウンタイム(停止時間)の比率と考えればよい。
ETERNUSの商品化を担当する秋山仁美氏(インフラストラクチャシステム事業本部・データシステム事業部・第一データインフラ部)は次のように話す。「機密性の高いデータを扱う金融システムや官公庁システムでは、一度システムが停止すると大変なことになってしまいます。そのため重要なシステムでは、可用性を高めるための対策が継続的に見直されています」
可用性を高めるために取るべき方法は、対象のシステムの性質によって正解が異なる。対象のシステムがミッションクリティカルなシステムでなければ、世界中にデータセンターがあるクラウドサービスを利用するのも方法の一つだ。例えば何千キロも離れたリージョン(データセンターの所在地域)間でデータ処理を引き継ぐようにすれば、特定の地域で災害が発生したとしてもシステムの停止を防げる。
ミッションクリティカルシステムの場合は、オンプレミスインフラにストレージを構築することが望ましい。可用性向上の有効な方法となるのが「SAN(ストレージエリアネットワーク)の導入」と「遠隔クラスタの採用」の2つだ。
ストレージシステムの可用性を向上させるSANの導入方法
富士通はSANストレージのラインアップの一つとして「 ETERNUS AX series All SAN Array」(以下、ASA)を提供している。この製品は、同社のオールフラッシュストレージ「ETERNUS AX series」のSAN専用モデルという位置付けだ。内蔵ドライブにはSAS接続のSSDまたはNVMe接続のSSDが選べる。
FC-SANの場合、サーバとストレージ間のネットワークをFC Fabricという方式のフルメッシュトポロジー型ネットワーク(各ストレージ装置が複数のFCスイッチに接続される冗長形態)で構築すると、サーバルーム単位で必要最小限の可用性が得られる。フルメッシュトポロジーは経路を動的に変更することができるため、操作ミスによるFCケーブル抜けといった問題が発生しても、他の経路を使ってデータのやりとりを続けることができるためだ。
ASAには筐体(きょうたい)内にも可用性を高めるための機構が組み込まれている。「ASAは1つのストレージシステムに2基のコントローラーがあるデュアルコントローラー構成になっていて、両方ともアクティブで動作しています」と、山口氏は説明する。「仮に1台のコントーラーに障害が発生しても、もう1台のコントローラーが自動的に処理を引き継いでくれます」と説明する。フェイルオーバー(予備系への自動切り替え)に要する時間は約2秒だ(図1)。
遠隔クラスタを組んでおけば広域災害発生時も事業継続が可能
もう一つの可用性向上の方法である「遠隔クラスタ」は、離れた場所にある複数のストレージシステムをネットワークで結んでクラスタ(群)として扱い、障害発生時に予備系でシステムの稼働を続ける方法だ。特徴は、広域災害が発生しても事業を継続できる点にある。予備系の役割はどれか1台(または数台)に固定することも、全てのストレージ装置を互いに予備系にすることも可能だ。
ASAの場合、利用できる遠隔クラスタ技術には、「SnapMirror Business Continuity」(SM-BC)と「MetroCluster」の2種類がある。
SM-BCは、ASAに搭載されているストレージ専用OS「ONTAP」で利用できるソフトウェアだ。このソフトウェアは、離れた2拠点にある2台のASAをL3ネットワークで結び、ボリュームレプリケーションでストレージシステムの可用性を保つ(図2)。両側のASAは同一仕様でなくてもよいため、ストレージの構成の自由度が高くなる。
障害の検知と切り替えはONTAP Mediatorと呼ばれるソフトウェアが自動的に実行するが、「切り替え時に幾つかの手作業が発生することには注意が必要です」と秋山氏は説明する(図2)。またSM-BCを利用するには、クラスタ間を結ぶL3ネットワークの応答時間(RTT)を10ミリ秒以下にする必要がある。
「これに対して、MetroClusterは、ONTAP用ソフトウェアの『SyncMirror』を使ってRAID間で同期ミラーリングをしています」と、山口氏は話す。同期を完全にするために、MetroClusterはストレージ内のNVRAM(不揮発性RAM)を“目印”として使っている。片方のストレージに書き込まれたデータはFCまたはiSCSI経由でもう一方のストレージにミラーリングされるが、その段階ではまだ“見えない”状態だ。両側のNVRAMの内容がNVRAM Mirrorによって同期されたタイミングで、初めて“見える”状態になる(図3)。
障害が発生すると、MetroCluster は自動的に非同期モードに切り替わり、障害が発生していない方のストレージをプライマリー(本番系)へと昇格させる。その結果、片方のストレージだけで業務処理が続けられるようになる。
MetroClusterで同期ミラーリングができるデータセンター間の距離は約700キロまでとされているが、これは直線で結ばれている場合の公称値だ。実際にはその半分程度で構成を組んだ方がよい、と富士通は勧める。
SM-BCとMetroClusterではそれぞれにメリットとデメリットがある。大きな違いとして挙げられるのは、SM-BCがSANのみを対象としているのに対し、MetroClusterはNASとSANの両方を同期できることだ。SM-BCは両側の構成が違っていてもよいが、MetroClusterは両側の仕様が同一でないと使えない。ただ、目標復旧時間(RTO)をほぼゼロにでき、さらにほぼ最新のデータを復旧可能なことはMetroClusterの強みだ。
富士通独自の導入前検証・安定稼働支援サービス
SANであれ、遠隔クラスタであれ、可用性を高めるための技術は導入前の技術検証(PoC)が難しい。現在稼働中のシステムに障害が自然発生する確率はゼロに近く、人為的に障害を起こすわけにもいかないからだ。
そこで富士通は、検証サービスの「Platform Solution Lab」を提供している。東京の蒲田にある富士通ソリューションスクエアで、導入予定の構成でどのような効果が得られるかをユーザー企業が実機で試せるようにしている。実機として、ETERNUSやサーバ、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)などを用意している。
検証作業のために蒲田まで行くのが難しい場合は、回線経由のリモート検証も可能だ。自社内での検証を望む顧客には、装置貸し出しサービスも実施している。「シミュレーターではなく実機をお貸ししますので、まさに“触った感覚”で性能を試していただけます」と秋山氏は言う。
この他に稼働後のサポートとして、富士通は「安定稼働支援」サービスを保守契約締結済みの顧客に追加費用無しで提供している。このサービスは、NetAppの「Active IQ Digital Advisor」を利用し、ユーザー企業に設置されている装置の稼働状況を分析する。重大なトラブルにつながる可能性のあるリスクが検出された場合には、そのリスクの説明と対処方法をユーザー企業に知らせる仕組みになっている。SSDの書き込み寿命が近づいている場合、トラブルが発生する前に該当部品を交換することにも応じている。加えてETERNUSに「インテル Xeon スケーラブル・プロセッサー・ファミリー」搭載のPCサーバ「Fujitsu Server PRIMERGY」を組み合わせるなど、富士通の総合力でユーザー企業のニーズや課題に合わせたさまざまな提案も可能だ(図4)。
どのような業務システムであれ、その動作を支えているのはデータだ。データを保管し、読み書きのアクセス要求に応えるストレージシステムの可用性を高めることは、企業の成長に欠かせない重要な取り組みだと言える。
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