非財務指標

 

はじめに

パーパスの実現に向けて長期かつ安定的な貢献を行うためには、すべてのステークホルダーと信頼関係を築き自らがサステナブルに成長していくことが必要です。そのため、非財務面での指標を事業活動の中核に組み込み、財務目標と合わせて達成に向けた取り組みを推進しています。富士通グループではこうした考え方に基づき、自らの改革の進捗を測る指標として、お客様からの信頼を表す「お客様ネット・プロモーター・スコア(NPS®)(注1)」、会社と社員との結びつきを表す「従業員エンゲージメント(EE)」、そして富士通グループのDXの進捗度を表す「DX推進指標」の3つを非財務指標として設定しました。
さらに2023年5月に非財務指標を見直し、従来のNPS、EEを継続し、新たにダイバーシティリーダーシップの指標として女性幹部社員比率を、環境の指標としてGHG削減量を設定しました。

  • (注1)
    ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標又はサービスマークです。

お客様ネット・プロモーター・スコアSM(NPS®)

お客様NPS®とは、お客様との信頼関係=顧客ロイヤリティの客観的な評価を可能とする指標です。購入した商品やサービスに対する満足あるいは不満の度合いを示す顧客満足度と異なり、顧客ロイヤリティは、お客様の愛着度合いやリピート購入の見込みを判断できるという特徴があります。富士通グループがお客様NPSを非財務指標の1つとしているのは、お客様中心の経営を実現するためです。お客様NPSを通じてお客様の声を聴き、ニーズに的確に応えるサービスを提供する、あるいは、お客様のニーズの先を見越した提案をすることで、お客様の体験価値が向上し、お客様NPSがより一層高まる。こうしたポジティブな循環をつくり出すことが、結果として富士通グループの企業価値向上につながると考えています。
これを実現する推進体制として、現場レベルでタイムリーに改善活動をリードするCX(カスタマーエクスペリエンス)リーダーを各地域で任命して取り組んでいます。経営サイドでは、社長を議長として各地域の事業責任者が集うCXステアリングボードを四半期ごとに開催しています。これによりお客様課題を現場レベルで確実に解決すると同時に経営課題として取り上げ、改善アクション提案、投資領域検討、施策効果検証まで実施する「フィードバックループ」を回していく体制を取っています。

お客様ネット・プロモーター・スコア(NPS)2021年度(参考値)/2022年度(実績)/2025年度(目標値)

こうした中で2022年度は、2021年度改善実績の+2.3ポイントを参考に前期比+3.7ポイントを目標値として設定し活動に取り組んだ結果、前期比+18.1ポイントと大きく改善しました。具体的には、お客様の事業課題に対する深い理解に基づいた提案や富士通グループのDX実践の経験値、社内変革の取り組みが評価されました。
一方で、お客様の事業課題に対してのコンサルティング力や変革の実行力は今後改善に注力すべき領域と認識しており、リスキリングやDX実践事例を推進することで、総合的な事業支援ができる力を富士通グループ全体で高めていきます。
今後は、2022年度にグローバルで実施したこのお客様アンケートの結果に基づき、評価された点は強みとして引き続き向上させつつ、注力すべき領域の改善を図ることで、中期経営計画の目標値として2025年度に2022年度比+20ポイントを目指します。

従業員エンゲージメント(EE)

富士通グループにとって最大の経営資源は、お客様に提供する価値の源泉である社員です。エンゲージメントの高い社員は質の高いサービスをお客様に提供することができ、お客様からの良い評価は社員の仕事に対する手応えを高めるという相関関係があると、これまでの経験則から推測されるからです。社員一人ひとりのエンゲージメントの向上は、個人と富士通グループ両方の成長につながると考えています。
こうした考えに基づき、富士通グループの持続的な成長を測る1つの指標として、社員のマインドセットや組織文化への共感を示す「従業員エンゲージメント」を掲げています。富士通では、従業員エンゲージメントを、『会社の向かっている方向性・パーパスに共感し、自発的、主体的に働き貢献したいと思う意欲や愛着を表す指標』と定義しています。また、従業員エンゲージメントは、富士通グループがDXのパートナーとしてお客様の信頼を得るうえで求められる人的資源、あるいは組織文化も含めた「ケイパビリティ」を持っていることを示す指標とも言えます。
目標値である「75」は、グローバル企業をベンチマークとして割り出した数値です。実際の数値は、企業の業容、国や地域による事業環境や社員の出身国の多様性などにも影響を受けるため、大きなばらつきがあります。富士通グループにとっては「75」が高い目標であるのも確かですが、そうした条件を踏まえながらも、私たちはグローバル企業に比肩するという意思を持って目標の達成を目指しています。
推進体制として、エンゲージメントの高い組織づくりの専門チームCoE(Center of Excellence)と各現場組織にとって人事戦略のパートナーとなるチームHRBP(Human Resource Business Partner)が、国内外リージョンで連携しながら、エンゲージメント向上に取り組んでいます。具体的な取り組みとして、パーパスを明確にしたうえで、社員の働き方の選択肢を広げる施策を導入しています。施策の一環で、組織文化、社員の働き方や意見、意識の変化をタイムリーに把握し、その結果を経営にスピーディに反映させるべく、従業員エンゲージメントを測定するサーベイをグローバル共通で年2回実施しています。
これまでの調査により、エンゲージメント向上のためには、各組織のトップおよびミドル層が中心となり、メンバーと一緒に行動を起こすこと(Action Taking)が重要であるため、各組織において徹底を図っています。また、上司と部下の強い信頼関係も重要になってきます。Fujitsu Wayやパーパスにも謳われている「信頼」は、日常的な業務の報告や相談だけでなく、お互いのパーパスを基点とし、ビジョンに共感しながら築いていくことで、強い信頼関係をもとに、様々な環境変化を乗り越えて、互いの成長が実現できます。調査の中で定期的にその関係性を測る設問を取り入れ、お互いの行動変容や成長の機会につなげ、エンゲージメント向上に向けた取り組みのきっかけにしていきます。今後は、エンゲージメントのデータを含み、非財務指標が非常に有効である、あるいは非財務指標それぞれを向上させるための取り組みをデータ分析によりリファレンスモデルとして公開できるとさらに良いと考えています。

2020年度(実績)682020年度(実績)
2021年度(実績)672021年度(実績)
2022年度(実績)692022年度(実績)
2025年度(目標)752025年度(目標)
従業員エンゲージメント

DX推進指標

パーパス実現に向けた過程において富士通グループがたどる変化を捉えるために、DX推進指標(注2)を非財務指標の1つに掲げており、グローバルのグループ全社に共通する形式でDX推進の成熟度診断を実施しています。部門ごとに細かく診断することで、デジタル変革の進捗状況や施策の成果を把握してアクションにつなげています。指標設定のもう1つの狙いは、お客様のDXをリードし得るパートナーとしての知見の蓄積です。DX推進指標に準拠した取り組みを富士通グループが自ら実践し、DXの成熟度を高めることで、その過程で得た知見を、事業を通じてお客様に提供できると考えています。

  • (注2)
    デジタル経営改革のための評価指標を0から5の6段階の成熟度で評価するもの。「DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標」7項目と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」
    2項目から構成される。

DX推進指標DX推進指標

2022年度のDX推進指標である3.5という数値目標を設定に対し、目標を上回る3.56という結果を達成することができました。経済産業省の「DX推進指標」では、すべての定性指標において調査地点の平均が3以上をマークした企業は「DX先行企業」に区分けされており、日本のDX先行企業の中でトップクラスかつ世界水準に達したと言えます。
2021年度の結果と比較して改善したポイントは、「マインドセット、企業文化」「事業への落とし込み」「ITガバナンス体制」の3項目です。「マインドセット、企業文化」については、ジョブ型人事制度や事業創出プログラムであるFujitsu Innovation Circuitなどの施策が全社的に定着したこと、そして「事業への落とし込み」は、Fujitsu Uvance、サービスデリバリー変革、業務プロセス変革をはじめとする施策が加速し、グローバル一体で推進してきた点が改善につながりました。また、ITガバナンス体制については、OneERP、OneCRMをはじめとしたOneFujitsuプロジェクトによりITシステムの統廃合が進みグローバルに標準化できたことも改善に大きく寄与しています。
DX推進指標は、企業が自ら自己診断を行うことを前提に設定されています。富士通グループでは、年度末ごとに行う自己診断における客観性を担保するため、半年に1回集計する変革実感に関するサーベイに寄せられるグループ全社員の声も採点の根拠とし、リッジラインズ(株)による第三者評価も織り込み、厳密に運用しています。また、ここで集めた社員の声はDX推進指標の根拠だけではなく、全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation=フジトラ」の中で、経営層、部門長、各部門のDX推進責任者に共有、全社および各部門の進捗状況を把握し、そこから次に打つべき施策の意思決定や軌道修正をするためにも活用しています。
これまでDX推進指標を活用して様々な施策を進めてきたことにより、グループ全社員の変革に対する取り組み姿勢の土台ができたこと、そして社外のステークホルダーからも富士通グループの変革を認知していただけたことは大きな成果であると考えています。

新しい指標

5月に発表した中期経営計画にて、人材では従来の指標である従業員エンゲージメントに加えてダイバーシティリーダーシップの指標として女性幹部社員比率を、また環境ではGHG削減量を新しい指標として設定しました。

女性幹部社員比率

富士通グループのDE&Iは「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化」の実現をビジョンとして掲げており、Global DE&I Vision & Inclusion Wheelにおいて、ジェンダーを5つの重点領域の1つに位置付けています。
価値観が多様化した社会のニーズをとらえたお客様への価値提供や、イノベーションの創出をサステナブルに行える会社になるためには、多様な人材一人ひとりが異なる価値観や能力を活かし合える環境・カルチャーを実現することが必要不可欠です。その実現に向けた第一歩として、女性幹部社員比率を非財務指標として新たに設定しました。目標値は「組織に占めるマイノリティの比率が30%に達すると、組織内に連鎖的な変化が生じて組織文化が変わる」という研究結果に基づき、「2030年度末時点で富士通グループ全体の女性幹部社員比率30%」とし、その通過点として「2025年度末時点の女性幹部社員比率20%」を定めました。
上記目標の達成に加え、多様な人材一人ひとりが異なる価値観や能力を活かし合える環境・カルチャーを実現するため、「マインド改革」、「ポジティブアクション」、「Work Life Shiftの推進を通じた働く環境の整備」等、多様な取り組みを推進していきます。

女性幹部社員比率女性幹部社員比率

温室効果ガス(GHG)排出量削減率

2015年12月に採択されたパリ協定(COP21)において、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする目標が採択され21世紀後半にカーボンニュートラル(ネットゼロ=実質排出量ゼロ)にすることが世界共通の長期目標として掲げられました。その後、最新の科学的知見による気候変動の影響(損失・損害等)が見直され、COP26のグラスゴー合意で、これまで努力目標であった1.5℃目標が事実上の目標となり、21世紀半ば(2050年頃)には実質ゼロにする必要があるとの宣言に世界が合意しました。この様な急速な動きの中、富士通グループも2040年度にサプライチェーンの温室効果ガス排出量ネットゼロの目標を掲げ、その通過点である2030年度には、自社の事業活動による温室効果ガス排出量を実質ゼロとすることを宣言しました。これらの目標を達成するために中間期である2025年度までの第11期環境行動計を設定しており、この活動の中で、カーボンニュートラルの実現に向け、足元を固めた取り組みを展開していきます。

富士通グループ Scope1,2富士通グループ Scope1,2*
*事業買収と売却を調整した値
サプライチェーン Scope3サプライチェーン Scope3*
*製品の使用時消費電力によるCO2排出量 (Category11) のみ
GHG排出量 2025年度目標(2020年度比)

SXリーディング企業である富士通は、お客様・社会の課題解決にテクノロジーで貢献し、提供価値の拡大・向上を図り、サステナブルな未来をお客様やパートナーとともに実現していく役割があります。そのため、気候変動問題の取り組みや、世界動向を確認することは必要であり、対応の遅れはビジネスチャンスの損失を招く恐れもあります。この様な背景から、温室効果ガス排出量の削減を重要課題と捉え、非財務指標の1つとして取り組んでいます。

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