自治体向けマイナンバー関連の情報をご紹介

八木橋ゼミナール

第24回
「マイナンバーカードの活用(社会保障分野編)」

今回は、マイナンバーカードの保険証利用など、医療・健康などの社会保障分野について解説していきます。

オンライン資格確認・マイナンバーカードの保険証利用

成長戦略の「スマート公共サービス」の「マイナンバーカードを活用した新たな国民生活・経済政策インフラの構築」のなかで、「マイナンバーカードの健康保険証利用を進め、本人確認と保険資格確認を可能とし、2021年3月から本格運用する」とされています。(注1)
これに続く、「全国の医療機関等ができる限り早期かつ円滑に対応できるよう、2022年度中におおむね全ての医療機関等での導入を目指し、医療機関等の読み取り端末、システム等の早期整備を十分に支援する」対応については、「医療情報化支援基金」が造設され、医療機関等(病院、診療所、薬局)向けの補助が2020年当初から開始されています。(注2)
さらに、2020年国会の法改正(注3)により、窓口に設置する「顔認証付きカードリーダー」が無償配布となります。
この「オンライン資格確認」は、マイナンバーカードの電子証明書の利用を含め、医療等分野の番号制度の活用が具現化したものです。

医療等分野の番号制度の活用の検討

マイナンバー制度のはじめ(2016年マイナンバー利用開始)、医療保険などの社会保障分野については、法定手続に必要な、行政機関等の資格や現金給付等の情報連携の仕組みとして開始されました。
医療等分野における番号制度の活用については、この法制の検討や制定と並行して検討され、「マイナンバー制度のインフラを活用し、医療等分野の情報連携の識別子(ID)を活用し、検討していくこと」となりました。(注4)
このときに示された段階的な計画(3ステップのイメージ)に準じて、整備がされてきています。(注5)

  • ステップ1:行政機関等における医療分野での利用拡充、情報連携
    団体間の情報連携に必要なものが番号利用事務として拡充されてきています。
    • 保険者間での特定健診情報、自治体間での予防接種歴(2015年法改正(注6)
    • 自治体間での乳幼児健康診査情報、新型インフルエンザ等の予防接種歴(2018年法改正(注7)
  • ステップ2:医療保険のオンライン資格確認(前項、2021年から利用開始)
    • 被保険者番号の個人単位化と資格履歴の一元管理、オンライン資格確認の法定化(2019年法改正(前出注3))
      「医療等分野の識別子」は、「個人単位化された被保険者番号及び個人単位で一元的に管理された被保険者番号履歴を活用する仕組み」 とまとめられました。(注8)
  • ステップ3:医療連携や研究分野での活用
    医療・介護・健康分野での情報連携として、検討が継続しています。
    • 医療機関・介護事業者等の連携(診療現場等における情報連携)
    • 健康・医療の研究分野(医療等情報データベースにおける情報連結・管理)
    • 本人への健康医療情報の提供・活用(パーソナル・ヘルス・レコードPHRの推進)

医療等分野の情報連携基盤の検討

前記の「ステップ3」、「識別子の仕組み」に関連して、検討が続けられています。(注9)

  • 医療機関・介護事業者等の連携(診療現場等における情報連携)について
    保健医療情報を全国の医療機関等で確認できる仕組みとして、「地域医療情報ネットワーク間連携」、「全国的な保険医療情報ネットワーク」などが検討されてきています。
    • 有用性の高い、薬剤情報や特定健診情報をレセプトに基づいて確認できる仕組みを2021年以降に稼働(注10)
    • 情報連携を進めるための医療情報システムの標準化を、技術面と制度面で検討(注11)
  • 健康・医療の研究分野(医療等情報データベースにおける情報連結・管理)
    医療分野のデータ利活用に向けて、検討がされています。
    • 被保険者番号の履歴を活用した医療情報の連結を、オンライン資格確認の運営主体(支払基金等)が「履歴紹介・回答システム」を管理・運営し、「同一人物であることを示す」仕組みとする(注12)
  • 本人への健康医療情報の提供・活用(パーソナル・ヘルス・レコードPHRの推進)
    「PHRの推進」は、政府の成長戦略に継続的に掲げられてきています。(注13)
    「先行的な取組」として、予防接種情報のマイナポータルでの提供(2017年度から)、乳幼児健診等(2020年6月から)、特定健診・薬剤情報(2021年から)と提供がされていきます。
    そのうちの健診情報等について、「国民・患者視点に立ったPHRの検討の留意事項」がまとめられました。(注14)
    さらに、健康・医療・介護情報の利活用を一体的に検討・推進する検討会が開催されています。(注15)

PHRの健診情報等の検討

前記の「PHR における健診情報等の取扱いについての留意事項」(注14)から一部を紹介しておきます。

[PHRの意義]保健医療情報をPHRとして活用、予防医学や診療等において重要な本人の行動変容等の自己管理、医療従事者等による介入、研究等に必要な環境の整備を目指す

[PHRの利用目的]①個人の日常生活習慣の改善等の行動の醸成、②効果的・効率的な医療等の提供、③公衆衛生施策や保健事業の実効性向上、災害等の緊急時利用、④保健医療分野の研究

[PHRとして提供する健診情報等]精度や解釈について安定性があり、エビデンスが確立され、診療ガイドライン等で整理されているものや、既に提供されている法定の健診等の情報から提供

[情報提供等の在り方]

  • 情報の提供や閲覧、保存方法等について、国・自治体・公的機関や医療機関・介護施設・薬局、民間事業者、個人の役割分担を含めた整理
  • 基盤となるインフラは、国・自治体・公的機関が整備
  • 情報の電子化やデータ形式を標準化、APIを公開
  • 過去の情報も含め、サマリー化・ヒストリー化など理解しやすい形で閲覧できる環境等を整備
  • マイナポータルの活用、API連携等の環境を整備
  • PHRの利用目的を踏まえたデータの保存期間、生涯の保健医療情報を閲覧できる環境を整備
  • 情報を適切に取り扱うための本人同意やセキュリティの確保等の環境を整備

健康診査等の留意事項

この検討に先立ち、各健診(乳幼児健診、学校健診、特定健康診査、事業者健診、がん検診等、健康増進法第6条によるもの)について、「健康診査の実施等の指針」の改訂を目指した委員会が開催されました。
委員会の報告書で、健康診査の実施、結果の通知、健康手帳等による情報の継続の在り方等について整理され、「標準的な電磁的記録」、「保存期間」等の課題が報告されています。(注16)

妊婦健診・乳幼児健診等については、厚生労働省が進める「データヘルス改革推進本部」に、「乳幼児期・学童期の健康情報PT」が設置され、乳幼児期、学童期を通じた健康情報の利活用等が検討されています。(注17)
検討会の中間報告で、健診の電子的記録様式の標準化・電子化等について、次のような課題が整理されています。(注17-1)

  • 乳幼児・妊婦健診は、マイナンバー制度の利用事務で、マイナポータル等活用できるが、学校健診情報との連携が課題
    (学校そのものは、マイナンバー制度において番号利用を行うことができる行政機関等として位置づけられていない)
  • 医療等分野における情報との連携、医療情報も含めた個人の健康情報を同一のプラットフォームで閲覧する方法等
  • 電子的記録の保存年限、電子的記録の保存形式の標準化、任意の予防接種情報の把握 など

学校健診については、電子化の推進をはじめとする健診情報の利活用の検討会が開始されています。(注18)
検討会の設置の趣旨を紹介しておきます。(注18-1)
「学校健診の観点(学校保健安全法第1条「学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的とする」)、健診情報が未だ電子化されていない学校も少なくない実態などを踏まえ、政府全体のPHR推進に係る議論と連携して、必要な取組及び工程を整理する」

マイナンバーカードの活用との関連について

健康保険証などマイナンバーカードを活用した医療関係のカード等について再掲しておきます。(ゼミナール第23回参照)

  • 健康保険証:マイナンバーカードの利用者電子証明書
  • 薬剤・特定健診情報:マイナポータルでの閲覧、レセプト情報
  • 処方箋の電子化:電磁的記録は可(e文書法)、デジタルガバメント実行計画で電子化
  • お薬手帳:PHRおよび医療機関等への薬剤情報の提供
  • 医療券・調剤券(生活保護受給者の医療扶助):残された「国民皆保険」の運用
  • 介護保険被保険者証:医療保険と同様、国民健康保険中央会が保険者から情報を受託している
  • PHR(Personal Health Record)健康診断の記録:マイナポータルでの閲覧、情報連携
  • 母子健康手帳:乳幼児健診情報等のマイナポータル閲覧

これ以外に、地方公共団体固有の医療費助成等の受給証などの確認の仕組みも検討が必要です。(注19)

  • 注19
    厚生労働省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室「オンライン資格確認等システムに関する運用等の整理案 」p21「課題項番1 資格確認の対象とする証類(案)」より
    • 自治体が管理している公費負担・地方単独事業に伴う証類(注19-1)は対象外
    • 運用開始後、保険者・自治体等と協議した上で、必要に応じて資格確認の対象とする調整を行う想定
  • 注19-1
    「被保険者証等と併用する、自治体が管理している公費負担・地域単独事業(例えば、子どもの医療費に対する公費負担事業、特定疾患医療費助成制度)の受給証」 上記p23表の項番20

富士通の取組

スマートサービスが拡がり、進化していきます。
デジタル化が進展、より範囲が広がり、内容も高度化していきます。

〔自治体〕健康管理ソリューション TIARA
住民の健診結果(妊産婦、乳幼児、予防接種、がん検診、特定健診など)を登録/管理し、健診対象者や未受診者、要フォロー者等を把握するシステムです。

〔文教〕小中高ソリューション
学習の記録と蓄積を容易にし、多様な人との協働を実現するICTは基礎力・思考力・実践力をはぐくみ、子どもたちの無限の可能性を引き出します。
富士通小中高向けソリューション活用事例

〔ヘルスケア〕健康情報ソリューション
健康管理、健診業務、健保基幹業務、メンタルチェック、保健指導など健康情報を扱う様々な場面に最適なソリューションをご提案します。
FUJITSU ヘルスケアソリューション Healthcare Personal service Platform
安心して預けたい、個人の健康 「Healthcare Personal service Platform」は、PHRの情報を安全に蓄積し、活用できる健康医療情報管理基盤です。
様々なデータを活用して新しいサービスを生み出そうとしている企業・自治体に対して、個人の健康・医療情報を活用した業際サービスを開発・運用するための基盤となります。
健康医療情報管理基盤「Healthcare Personal service Platform」を提供開始~より豊かで健康的な生活を支える新サービスの提供を目指す企業や地方公共団体を強力に支援(PRESS RELEASE 2019年2月13日
なお、自治体向けに、「自治体ピッチ(第3回)」で提案をしています(ゼミナール第22回「スマート公共サービス」の注3参照)

デジタル技術とデータを駆使、革新的なサービスやビジネスプロセスの変革をもたらすもの
Human Centric Innovation Driving a Trusted Future
デジタル社会の変革、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいきます。
https://www.fujitsu.com/jp/dx/

富士通がめざすもの、それは単なるデジタル化ではなく、
住民向けのサービスの向上と、職員の業務改革を同時に実現する
自治体デジタルトランスフォーメーション です。

2020年4月27日掲載

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