【2025-2026年版】医療DXを加速させる補助金活用術
掲載日:2025年12月25日
はじめに:医療DXの羅針盤としての補助金活用
病院経営者、そして日々現場を支える事務・システム担当者の皆様にとって、「医療DX」は避けては通れない重要課題となっています。現在、日本政府はこの「医療DX」を国家戦略の柱と位置づけており、2025年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)においても、医療DX推進について「規制的手法や財政的手法など必要なインセンティブ措置の在り方を含め、検討を進める」と記されています。
その「規制的手法や財政的手法」とは具体的にはどのようなものなのか、どのような考え方のもとに進められていくのか、ということについて考える上で、本稿では、皆様が現在活用できる医療情報システム関連の補助金制度について、包括的かつ戦略的に解説します。
利用可能な補助金は、単にITツールを導入するための支援にとどまりません。これらは、医療エコシステムの全体最適化を目指す、統合的な政策パッケージとして設計されています。主な動向として、まず、オンライン資格確認や電子カルテ情報共有サービスといった国が構築する医療情報プラットフォームへの参加が実質的に必須となり、これに対応するためのシステム改修を促す補助金が中心的な役割を担っています。
次に、補助金の交付要件が、賃上げや労働時間短縮といった、より広い社会経済政策と密接に連携していることも注目すべき点です。これは、単なるデジタル化支援ではなく、医療機関の経営体質そのものを改善し、持続可能性を高めることを目指しています。さらに、AI(人工知能)の活用やサイバーセキュリティ対策といった、先進的かつ喫緊の課題に対応するための専門的な資金補助の枠組みも整備されつつあります。
これらの動向を踏まえ、医療機関の皆様には、複数年にわたるデジタル変革のロードマップを描き、政府が示す導入ステップに沿ってプロジェクトを段階的に進めることで、資金調達の最大化とコンプライアンス遵守を両立させる戦略的なアプローチが求められます。このコラムが、皆様の病院における最適な補助金活用戦略の策定の一助となれば幸いです。
1.医療DXの基盤を築くための補助金
このセクションでは、政府が推進する医療DXの根幹をなすインフラ整備に関連する補助金と、多くの医療機関のDX戦略の基盤となる、最も汎用的な補助金制度について詳しく解説します。
1.1 IT導入補助金:デジタル化を力強く後押しする多目的エンジン
経済産業省所管の中小企業庁が実施する「IT導入補助金」は、医療機関が活用できる制度の中で最も柔軟性が高く、広範なITツール導入を支援するプログラムです。この補助金は、特定の医療情報システムに限定されず、バックオフィス業務の効率化からサイバーセキュリティ対策までをカバーするため、多くの医療機関にとってDX推進の出発点となる重要な制度と位置づけられます。
概要
- 目的と対象事業者: この制度は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的としており、医療分野では常時使用する従業員数が300人以下の医療法人、クリニック、病院、薬局などが対象となります。
- 主要な申請枠:
- 通常枠: 業務効率化や経営力向上を目的としたITツールの導入を幅広く支援します。補助申請額や対象となる業務プロセスの数に応じてA類型とB類型に分かれています。
- A類型: 補助額5万円以上150万円未満、補助率は1/2以内です。
- B類型: 補助額150万円以上450万円以下、補助率は1/2以内です。
- 対象経費には、ソフトウェア購入費、最大2年分のクラウド利用料、導入関連費などが含まれます。
- インボイス枠(インボイス対応類型): インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフトの導入を支援する枠組みです。医療機関にとって特に重要なのは、この枠がソフトウェアだけでなく、PC、タブレット、レジ、券売機といったハードウェアの購入費用も補助対象としている点です。
- 補助率: 小規模事業者の場合、最大で補助額の4/5という高い補助率が適用されます。
- ハードウェア補助: PC・タブレット等は1台あたり最大10万円(補助率)、レジ・券売機等は1台あたり最大20万円(補助率)が補助されます。
- セキュリティ対策推進枠: 近年増加するサイバー攻撃のリスクに対応するため、サイバーセキュリティ関連サービスの導入を支援します。
- 補助額: 5万円以上100万円以下、補助率は1/2以内です。
- 対象サービスには、サイバー攻撃の監視やインシデント発生時の初期対応支援などが含まれます。
- 申請プロセス: 申請には、「gBizIDプライム」アカウントの取得、情報セキュリティ対策への取り組みを自己宣言する「SECURITY ACTION」の実施、そして中小企業庁から認定を受けた「IT導入支援事業者」との共同申請が必須となります。これらの手続きには時間を要するため、計画的な準備が不可欠です。
戦略的な活用法
この制度は比較的小規模な医療機関における医療DXのきっかけを作る補助金としての役割を果たします。電子カルテやレセコンといった基幹システムの導入はもちろん、AIを活用した診断支援ツールやセルフレジ、さらにはセキュリティ対策まで、極めて広範なITツールが対象となります。この汎用性により、対象医療機関はまずこの補助金を活用してデジタル化の基盤を整え、その上で、後述する働き方改革や生産性向上といった、より専門的な目的を持つ他の補助金制度へと展開していくことが可能になります。
1.2 基幹インフラ補助金:国の医療情報プラットフォーム構築に参加するために
厚生労働省が主導するこれらの一連の補助金は、個々の医療機関が任意で選ぶというよりは、政府が推進する全国規模の医療情報連携基盤への参加を促すための、政策誘導性の高いインセンティブです。これらは、日本の医療システム全体を繋ぐための必須インフラ整備と位置づけられています。
概要
- 電子カルテ情報共有サービス導入に係る補助金:
- 目的: 全国の医療機関・薬局等で、診療情報提供書・退院時サマリー等の「3文書」と、傷病名・アレルギー情報・薬剤禁忌情報等の「6情報」を電子的に共有する「電子カルテ情報共有サービス」の導入を支援するものです。
- 前提条件: この補助金の申請には、オンライン資格確認システムおよび電子処方箋管理サービスを導入済みであることが必須条件となります。これは本制度の重要な特徴です。
- 対象経費: 既存の電子カルテシステム等を、国際的な標準規格であるHL7 FHIRに準拠した形式でデータ送受信が可能になるよう改修するための費用が主な対象となります。
- 補助率・上限額: 補助率は原則1/2です。上限額は医療機関の規模によって異なり、例えば200床以上の病院では最大で657.9万円が補助されます。
- 申請期間: 令和6年 (2024年) 3月から令和13年 (2031年) 9月30日までという、異例の長期間に設定されています。
- 関連インフラ補助金
- オンライン資格確認導入に係る補助金(現在は終了): マイナンバーカードを健康保険証として利用するためのシステム(顔認証付きカードリーダー等)や、レセコンの改修費用が補助されました。
- 電子処方箋管理サービス等関係補助金: 電子処方箋の発行・受付に対応するためのシステム導入・改修費用が補助されました。
戦略的な活用法
これらのインフラ関連補助金を個別の制度として捉えるのではなく、一つの連続したプロセスとして理解することが極めて重要です。電子カルテ情報共有サービス補助金の申請要件を分析すると、そこには政府が描く医療DXの明確なロードマップ、すなわち着実に進むべき、「強制力を伴う段階的な導入プロセス」が存在することがわかります。まず、全ての医療機関の基盤としてオンライン資格確認システムを導入させ、次に処方情報の電子化と共有(電子処方箋)を進め、最終的にそれらの基盤の上に診療情報そのもの(電子カルテ情報共有)を流通させるという、明確な三段階の導入ステップが設定されています。これは、医療機関が補助金を自由に選択する「メニュー」ではなく、規制的手法による従わなければいけない「工程表」であることを示唆しています。したがって、皆様の医療機関のDX戦略は、この政府主導の工程表に準拠した、複数年にわたる統合的な計画でなければなりません。
また、申請期間が2031年までという長期に設定されていることも注目すべき点です。これは、政府がこの国家規模のインフラ構築が、一過性のプロジェクトではなく、10年近くを要する長期的かつ複雑な移行プロセスであることを認識している証拠です。
医療機関の経営者の皆様にとって、これはシステム改修と規制遵守が、今後恒常的な経営課題となることを意味します。この長期的な補助金制度を、継続的なシステム投資を支える財源として、中期経営計画に組み込む視点が不可欠となるでしょう。
2.病院の進化を支えるテーマ別補助金
このセクションでは、基本的なインフラ整備を超え、業務効率の向上、先進技術の導入、施設の近代化といった、より戦略的な目標達成に焦点を当てた補助金制度を分析します。
2.1 生産性向上と働き方改革
2024年4月から施行された医師の時間外労働上限規制への対応と、医療業界全体の深刻な人材不足を背景に、政府はICT導入と労働環境改善を直接結びつける補助金制度を複数展開しています。
概要
- 生産性向上・職場環境整備等支援事業:
- 目的: 業務の生産性を向上させ、それを職員の処遇改善(賃上げ)に繋げる取り組みを支援します。
- 前提条件: 診療報酬における「ベースアップ評価料」を算定していることが必須であり、補助金が賃上げと直接連動する設計となっています。
- 支給額: 病院は許可病床数に4万円を乗じた額、無床診療所は1施設あたり18万円など、施設種別と規模に応じた定額給付です。
- 対象となる取り組み: タブレット端末、離床センサー、インカム、清掃ロボットといったICT機器や設備の導入、医師事務作業補助者の新規配置によるタスクシフト、あるいは直接的な賃上げなど、非常に広範な用途に活用できます。
- 働き方改革推進支援助成金:
- 目的: 労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進といった、具体的な働き方改革の取り組みを支援します。
- コース構成: 複数のコースが設けられており、特に医師の時間外労働上限規制が適用される病院等を対象とした「業種別課題対応コース」が重要です。汎用的な「労働時間短縮・年休促進支援コース」も存在します。
- 対象となる取り組み: 労務管理担当者への研修、外部専門家によるコンサルティング、労務管理用ソフトウェアや業務効率化に資する設備・機器の導入などが含まれます。
- 支給モデル: 事前に設定した「成果目標」(例:時間外労働を月60時間以下に削減する)の達成度に応じて助成額が決定される成果連動型のモデルです。
- ICT機器を活用した勤務環境改善モデル医療機関調査支援事業:
- 目的: 働き方改革の先駆的な取り組みを行う「モデル医療機関」に対し、先進的なICTソリューションの導入を強力に支援します。
- 補助額: 上限5,000万円という非常に高額な基準額が設定されており、ICT機器の購入費に対しては補助率が全額補助となる、極めて手厚い制度です。
- 対象: 都道府県から「特定労務管理対象機関」として指定され、顕著な改善への強い意志を持つ医療機関に限定されます。
戦略的な活用法
これらの補助金は単なる設備投資の支援ではなく、組織文化と業務プロセスの変革を促す触媒として機能します。特に「生産性向上・職場環境整備等支援事業」が賃上げ(ベースアップ評価料の算定)を要件とし、「働き方改革推進支援助成金」が具体的な成果目標の設定と達成を求める点は、経営層の皆様に対して、テクノロジーの導入と並行して、給与体系の見直しや業務フローの再設計といった本質的な組織改革に取り組むことを強く促します。補助金の申請プロセスそのものが、単なる調達手続きではなく、包括的な組織変革プロジェクトへと昇華されるのです。
2.2 人工知能(AI)と先進技術の統合
診断の支援、事務作業の自動化、そして労働力不足の解消といった課題に対し、政府はAI技術の導入を積極的に奨励しています。
概要
- AI特化型補助金(地域事例):
- 東京都 医療機関におけるAI技術活用促進事業: 先進的な地域主導型補助金の代表例です。
- 目的: 都内の医療機関におけるAI技術の臨床・事務両面での活用を促進します。
- 補助額: サービス導入のみで最大500万円、コンサルティングを含む場合は最大1,000万円という、非常に手厚い補助額が設定されています。
- 対象経費: AI問診、電子カルテへの音声自動入力、AI通訳機、その他AIを活用したシステムの導入費用、さらには関連するハードウェア購入費やコンサルティング費用まで、極めて広範な経費が対象となります。
- 東京都 医療機関におけるAI技術活用促進事業: 先進的な地域主導型補助金の代表例です。
戦略的な活用法
先進技術の導入支援においては、地域による「デジタルデバイド(情報格差)」の可能性が浮き彫りになります。IT導入補助金のような全国一律の制度がAI導入の基本的な支援を提供する一方で、東京都のAI活用促進事業のような意欲的な地域独自の補助金は、対象となる地域の医療機関に対して、他地域を大きく上回る資金的アドバンテージを与えます。最大1,000万円という補助額は、全国レベルの制度と比較して桁違いに大きく、AI導入に伴うコンサルティング費用までカバーする手厚さは、導入のハードルを劇的に下げます。これにより、先進的な自治体内の医療機関は、AI技術の導入と活用において他地域をリードし、結果として医療の質や効率性において地域間格差が拡大する可能性があります。このような先進地域以外の医療機関は、複数の全国規模の補助金を組み合わせるなど、より創造的な資金調達戦略を立てる必要に迫られるでしょう。
同時に、補助金の動向は、医療AIが研究開発フェーズから実用化・普及フェーズへと移行していることを示しています。IT導入補助金の対象に実用的なAIツールが含まれたり、東京都が具体的な導入・実装を支援する補助金を創設したりしている事実は、政策の重心が、すでに有効性が示された技術をいかにして日常の臨床・事務業務に組み込むか、という点に移りつつあることを物語っています。これは、医療AI市場の成熟を示唆しており、医療機関にとっては、財政的支援を受けながら、実績のあるAI技術を導入する絶好の機会が到来していると言えるでしょう。
2.3 デジタル時代に対応する施設・設備の近代化
このカテゴリーでは、近代的なデジタル医療環境を支えるための、物理的なインフラや高額な医療機器への大規模な設備投資を対象とする補助金を扱います。これらの多くは厚生労働省の管轄のもと、都道府県を通じて執行されます。
概要
- 医療施設等設備整備費補助金:
- 目的: へき地医療の確保や特定の診療機能(周産期、救急等)を担う医療機関に対し、必要な設備の導入を支援する広範なプログラムです。
- 構成: 個別の目的を持つ多数の事業から構成される「メニュー形式」の補助金であり、それぞれの事業に独自の要件と補助上限額が設定されています。
- 事業例:
- 遠隔医療設備整備事業: オンライン診療等に必要な情報通信機器の整備を支援します。
- へき地医療拠点病院設備整備事業: へき地医療の中核を担う病院に対し、最大5,500万円という高額な医療機器整備費を補助します。
- 産科医療機関設備整備事業: 分娩を取り扱う施設に必要な医療機器の導入を支援します。
- 医療施設近代化施設整備事業:
- 目的: 建築後年数が経過した医療施設の建て替えや大規模改修といった、施設の近代化を支援します。
- 主要な交付条件: 補助金の交付と引き換えに、許可病床数の削減(例:10%)が条件とされる場合があります。これは、国全体の医療提供体制の効率化・再編という政策目的と連動しています。
- 地域医療介護総合確保基金:
- 目的: 各都道府県が、地域の実情に応じて医療・介護提供体制を確保するために、柔軟に活用できる基金です。施設の改修やICTシステムの導入など、幅広い事業が対象となります。
戦略的な活用法
これらの大規模な施設・設備補助金は、国の医療政策を現場レベルで実現するための強力な誘導手段として機能しています。特に、医療施設近代化施設整備事業において病床数の削減が交付要件とされる点は、その象徴です。これは、政府が補助金をテコにして、過剰とされる病床を削減し、入院中心から在宅・地域包括ケアへと医療の重心をシフトさせるという、国家レベルの医療提供体制改革を推進していることを明確に示しています。したがって、これらの補助金を申請するということは、単に資金援助を求めるだけでなく、国の大きな政策方針に参画し、自院の役割を再定義することに同意することを意味するのです。
また、これらの補助金の多くが、IT導入補助金のように国へ直接申請する形式ではなく、都道府県が執行の窓口となる点も重要です。これは、申請プロジェクトが国の定める基準を満たすだけでなく、各都道府県が策定する「地域医療構想」と整合性が取れている必要があることを意味します。成功のためには、国の要綱を理解するだけでなく、地域の保健医療計画を深く理解し、都道府県の担当部局と緊密な連携を図ることが不可欠となります。
2.4 デジタル業務環境の強化:サイバーセキュリティ
医療DXの進展は、サイバー攻撃のリスク増大と、地域内での円滑な情報連携の必要性という二つの大きな課題を同時に生み出しました。政府はこれらの重要な運用課題に対応するため、的を絞った資金提供を行っています。
概要
- サイバーセキュリティ関連補助金:
- IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠): 前述の通り、セキュリティ関連サービスの導入費用として最大100万円を補助します。
- 医療機関におけるサイバーセキュリティ確保事業: 厚生労働省が36億円の予算を計上し、病院が外部ネットワーク接続の安全性を検証したり、ランサムウェア対策として重要なオフラインバックアップ体制を整備したりするのを支援する大規模プロジェクトです。
- 地域・団体による支援: 東京都が実施する病院向けサイバーセキュリティ対策支援事業や、日本医師会が会員向けに設けているサイバー攻撃被害時の一時支援金制度など、多様な支援が存在します。
戦略的な活用法
サイバーセキュリティへの大規模な投資は、政府が自ら推進する医療DXがもたらすリスクへの必然的な対応と言えます。政府が全国医療情報プラットフォームを構築し、医療情報の相互接続と循環を進めることは、裏を返せば、サイバー攻撃の対象領域(アタックサーフェス)を劇的に拡大させ、一度の侵害がもたらす被害を甚大化させることに他なりません。この文脈で捉えると、サイバーセキュリティ確保事業のような補助金は、単なる任意の支援策ではなく、規制的手法とも言える2024年の医療法改正でのサイバーセキュリティ対策義務化に象徴される、政府が構築を進めるインフラの脆弱性を補強するための、必要不可欠な並行投資です。これは、医療機関にとって、セキュリティ対策がDX戦略における選択肢ではなく、根幹をなす必須要素であることを強く示唆しています。
3.戦略的に補助金を活用するために
この最終セクションでは、これまでの分析を統合し、医療機関の皆様が補助金を効果的に活用するための具体的な行動指針を提示します。
3.1 補助金活用のための統合戦略プラン
- ステップ1:院内ニーズの評価
まず、自院の経営戦略(例:医師の労働時間短縮、診療業務の効率化、事務コストの削減)を明確にし、それを達成するために必要なITツールや取り組みを洗い出します。その上で、第1部および第2部で解説した補助金カテゴリーの中から、自院の目標に合致するものをマッピングしてみましょう。 - ステップ2:申請の順序付け
「強制力を伴う段階的な導入プロセス」の概念に基づき、複数年にわたる申請ロードマップを策定します。多くの医療機関にとって、その出発点はオンライン資格確認と電子処方箋への対応であり、これをクリアした上で電子カルテ情報共有サービスへと進むことになります。並行して、その他の補助金も活用して他のツールの導入も進め、それによって得られた成果を根拠に、働き方改革関連の助成金を申請するという段階的なアプローチが有効です。 - ステップ3:申請プロセスの実務:
申請する補助金によって、申請基盤へのアカウント登録など必要な実務も異なります。医療機関等向け総合ポータルサイトなどを活用し、情報収集を定期的に行い、申請を進めていくことが重要です。
必要な申請プロセスの具体例:
- gBizIDプライムの取得等: IT導入補助金を利用する場合など、国の補助金申請の基盤となる仕組みについて確認し必要に応じて取得を進めてください。発行には数週間を要する場合があるため、早期の対応が求められます。
- SECURITY ACTIONの宣言: IT導入補助金の申請には必須の要件です。オンラインで即日実施可能です。
- 認定IT導入支援事業者との連携: IT導入補助金のように、認定事業者との共同申請が必須の制度では、信頼できるパートナーの選定が申請の成否を左右します。
3.2 今後の展望:医療DX資金提供の未来像
現在の補助金制度の動向は、今後の政府支援の方向性を示唆しています。
- データ利活用へのシフト: 全国医療情報プラットフォームの構築が進むにつれ、補助金の焦点は単なる「データ収集・共有」から、集積されたデータを臨床研究、公衆衛生、AI開発などに「利活用」するプロジェクトへと移行していくと予測されます。
- 標準化の徹底: HL7 FHIRのような国際標準規格への準拠は、今後さらに強く求められるようになるでしょう。また現在デジタル庁と厚生労働省による「病院情報システム等の刷新に向けた協議会」で取り組みが進められている病院情報システムの標準仕様策定の動きにも注目が必要です。長期的には、これらに非準拠のシステムに対する診療報酬上のペナルティ導入なども視野に入ってくる可能性があります。
- デジタルデバイドの是正: 先進的な都市部と、デジタル化が遅れがちな地方・中小規模の医療機関との格差が問題となるにつれ、後者を対象とした、より手厚い、あるいは導入支援コンサルティングを含むような新たな支援策が講じられることが期待されます。
医療機関の皆様には、これらの将来的な動向を見据え、目先のシステム導入だけでなく、データ活用や標準化への対応といった長期的な視点を持ってDX戦略を推進していただくことが求められます。
筆者プロフィール
アクレインシステム株式会社 代表取締役 堀江 宙
<略歴>
2002年〜 情報システムベンダーの医療IT部門にて電子カルテ、レセコン等システム提案を担当。
2018年 アクレインシステム株式会社を独立起業。
医療・ヘルスケア分野のICT活用に特化したコンサルティング、セミナー講師等の事業を展開。
日本医療情報学会認定 上級医療情報技師
医療情報安全管理監査人協会 認定医療情報システム監査人補
日本プライマリ・ケア連合学会 ICT診療委員
参考:https://acranesystem.com/profile/
免責事項
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