国際標準化・ルールメイキング

ルールメイキングへの取り組み

従来ICT分野では、国際標準化機関で標準化された技術を各社が利用し、相互接続性や互換性を保ちながら様々な製品・サービスを提供することで、大きな市場が形成されてきました。富士通グループもまた、国際標準化を推進しその議論に寄与することで、国際標準がもたらす市場の成長というメリットを享受してきました。

このようなアプローチによる国際標準の事業への活用が続く一方で、今日、従来と異なるアプローチで国際標準を活用する動きも生まれています。それは、コンセンサスベースでのルールメイキングです。

人工知能(AI)などの先進技術に関しては、社会が安心・信頼して利活用できるようにするため、様々な立場のステークホルダーがコンセンサスベースで先進技術のガバナンスルールを形成しています。各国政府機関や民間コンソーシアム・国際標準化機関等は、こうしたガバナンスルールをガイドラインや国際標準という形で取りまとめ、各企業にそれらに準拠した先進技術の実装や動作を担保することを求めています。

一方で、ルールメイキングは新たな市場を創出する機能を担うほか、事業の成長戦略の手段としての側面も有しています。自社の技術の競争優位性を高めて社会実装の機会を獲得し、製品・サービスを普及させ、事業の成長を実現するためには、ルールメイキングにも戦略的に取り組むことが重要です。

当社グループでは、研究開発リソースを集中している5 Key Technologiesの各領域においても、コンセンサスベースでのルールメイキングに取り組んでいます。

量子技術

高速計算によるイノベーション創出などが期待される量子技術の標準策定に向けて、富士通は国際標準化機関であるIECやQ-STAR(*1)等に参画しています。IECでは、世界の研究開発活動の調査・分析を担当するWorking Groupの共同コンビーナ(議長)として、標準化ロードマップの検討に参画しています。

今後は、当社研究開発活動から得た知見を量子技術の標準化に活かすとともに、標準化の動向を当社の研究開発活動に適時フィードバックすることで、研究開発の成果が実社会で活用される確度を高めていきます。

  • (*1)
    IEC:国際電気標準会議
    Q-STAR:一般社団法人量子技術による新産業創出協議会

主な参加団体:IEC(SEG 14のWG共同コンビーナ)、Q-STAR(副代表理事、部会長他)

High Performance Computing(HPC)

理化学研究所と富士通が2014年から開発を進めてきたスーパーコンピュータ「富岳」は、世界のコンピュータの性能ランキングである「Top500」において、2021年11月まで4期連続で世界一を獲得するなどHPCの発展に大きく貢献してきました。当社は、富岳の性能評価にも用いることのできる機械学習のベンチマークMLPerf HPC1.0の検討に参加し、大規模スーパーコンピュータシステムにおいても最適な処理性能評価を可能とする指標の策定を実現しました。

当社グループの高度なコンピューティング技術をクラウド上で提供するサービス群「CaaS(*2)」の1つとして、富岳に採用されたテクノロジーを利用したクラウドサービス「Fujitsu クラウドサービス HPC」を提供し、お客様の研究や解析を支援しています。幅広い分野における課題解決に活用されるHPC技術の発展と普及に、処理性能評価指標の策定など、環境づくりを含め貢献しています。

主な参加団体:MLCommons

Network

移動通信システムは世代を重ねながら発展し、2023年4月時点で90か国以上において第5世代システム(5G)が商用サービスとして提供されています。富士通グループは、移動通信システムの標準規格の実施に不可欠な特許の取得活動と併せて、国際標準規格の策定に参画しています。

5Gなどのネットワーク環境の変化に対応するためには、ネットワークの拡張性や柔軟性が必要です。こうしたニーズに応えるべく、ネットワークの構成要素をマルチベンダーで自由に組み合わせることができるオープン化が世界的に進められています。当社グループは、無線アクセスネットワークの仕様策定に参画するほか、O-RANと呼ばれる無線アクセスネットワークのオープン化にも貢献することで、O-RAN標準仕様を採用する商談の獲得にもつなげています。

2030年頃の実用化が期待される6Gの標準化要件の議論への参画や、IOWN構想(*3)の下で低消費電力かつ超広帯域な革新的光ネットワークの開発に参画するなど、5G、そして6Gの実現に向けた技術開発と併せて、標準化にも引き続き貢献します。

  • (*3)
    日本電信電話株式会社が提唱する、ネットワーク・情報処理基盤の構想

主な参加団体:3GPP、O-RAN Alliance、Next G Alliance、IOWN Global Forum(Director)

AI

富士通グループAIコミットメント(*4)をよりどころにして、AIが社会実装される際のリスクや障壁を解消する「信頼されるAI」などの提供に向けた研究開発に取り組んでいます。研究開発で得た知見をもとに、AIシステムのライフサイクルプロセスで満たすべき品質・倫理要件等の国際標準の策定を、ISO/IEC JTC 1のサブコミッティでエディタとしてリードしています。同じくエディタを務めたAIのユースケース文書(ISO/IEC TR 24030)の情報も活かしながら、AIシステムの倫理上の影響を評価する方式を開発し、無償公開しました。

AIのもたらす利便性を最大限に享受するためには、AIは人々が安心、信頼して使えるものでなければなりません。当社グループは、お客様が安心してAIを実装できるよう、また社会が信頼に基づいてAIを利活用できるよう、国際標準化も含めた取り組みを続けます。

主な参加団体:ISO/IEC JTC 1/SC 42(エディタ)

Data & Security

カーボンニュートラルな世界の実現には、すべての製品のライフサイクルにわたるサプライチェーン全体で、CO2をはじめとする温室効果ガス(GHG)排出量の正確な把握と削減努力が不可欠です。そのためには、サプライチェーンに関わる企業間で、安全と信頼性が担保されたうえで、GHG排出量データや取引データの交換が可能となるよう、ルール整備や基盤構築がなされることが必須です。

富士通グループは、データを基軸に持続可能な世界を実現するため、公正かつ実践的なアクセスによって信頼性が担保された自在なデータ交換を可能にする、ルールの整備と基盤構築に貢献しています。具体的には、データ提供者が安心してデータを提供でき、データ利用者が必要なデータを容易に判断・収集・活用できる、協調利用環境の整備にルールづくりと技術開発の両面から取り組み、基盤の提供を通じて、お客様のビジネスのみならず、社会全体のデータを基軸とした変革を支えます。

主な参加団体:GAIA-X、Catena-X、一般社団法人データ社会推進協議会

Converging Technologies

富士通グループは、人と社会に対する深い理解に基づき、社会課題解決への働きかけを行うべく、デジタル技術と人文社会科学の異分野融合を進めています。

個人と社会を安全につなぎ安心を生む仕組みである生体認証技術の国際標準の開発は、その一例です。世界約60か国、約1億人が利用する当社グループの「手のひら静脈認証」を活用したキャッシュレスでのお買い物やどんな時でも安心して受けられる医療など、便利でセキュアなサービスをさらに広げていくために、当社グループは本人識別のインフラ構築に貢献しています。高い認証精度を確保しつつより少ないサンプル数で実施できる生体認証の精度評価方式における国際標準の開発などにも引き続き取り組み、さらに便利な世界の実現を目指します。

主な参加団体:ISO/IEC JTC 1/SC 37(共同エディタ)

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