富士通のパーパスの実現を支える知財戦略

富士通のパーパスの実現を支える知財戦略

富士通のパーパスに沿って、以下の3つの視点で知財活動に取り組みます。

  1. イノベーションの視点で、DXにフォーカスした知財戦略を実行
    DXにフォーカスして知財ポートフォリオを構築します。その上で、知財部門の持つ、イノベーションや研究開発の成果を権利化する専門性や、OSS、知財教育等の現場への知財活動が浸透している強みを基に、イノベーションをもたらすためのIP分析を強化します。
  2. 社会に信頼をもたらす知財戦略という視点
    商標などのブランドを守るための活動や、技術を安心して社会に受け入れていただくといったスタンダード活動によるルール形成の強化に取り組みます。
  3. 持続可能な世界に向けた知財戦略の視点
    SDGs達成に向けたWIPOGREENの活用や、Covid19収束に向けた当社4万件の知財の開放、地方創生に向けた知財活用等、社会課題に向き合うような知財活用を行います。

知財戦略の体制とグローバル・グループ連携

知財部門は、DX企業への進化の加速に向けた知財フロントサービス機能を担う知財フロントサービス統括部と富士通のパーパス実現を支える知財の戦略機能とポートフォリオ構築機能を担う知財グローバルヘッドオフィスからなります。営業、SEを対象に事業強化に直結する知財活動を推進を行う知的財産イノベーションセンター、ビジネス部門向け知財調査・分析、研究開発を行う研究所を支援する知財インテリジェンスサービス室、知財ポートフォリオ構築を実行する知的財産センター、経営層とのコミュニケーションを踏まえ全社の知財戦略を策定・推進する知的財産戦略室と、知財関連サービスを提供するテクノリサーチとで知財戦略を実行して参ります。
グローバルでは、欧州、中国、オーストラリア、米国の4拠点と連携し知財体制を構築しています。

事業強化に直結する知財活動推進

知財部門は、事業強化に直結する知財活動を組織的に推進しています。
旧来のリスクヘッジや権利行使によるライセンス収入を目的とした知財活動ではなく、開発時の特許発掘・権利化や商談時の特許表示などにより、当社の技術力や商品価値の優位性訴求、他社製品との差異化、新規顧客・商談開拓、など、事業強化に直結する知財活動に重点を置いて推進しています。上流の企画段階では、商品力強化を目的として、特許・マーケット情報分析により得られた洞察情報の活用や、コトづくり支援なども、知財活動の一環として推進しています。

知財部門は、各事業部門を支援する「知財活動推進担当者」を設置し、「組織のPDCA」と「プロジェクトのPDCA」の両輪で、組織的に知財活動を推進しています。
「組織のPDCA」では、知財部門の「知財活動推進担当者」と、各事業部門の「知財戦略責任者」が連携し、事業計画・事業特性に合わせた知財活動計画を立案し、実行しています。
「プロジェクトのPDCA」では、知財部門の「知財活動推進担当者」とプロジェクトリーダーが連携し、事業の特性やマイルストーンを考慮して知財活動計画を立案し、実行しています。
このように、知財部門は、事業部門の情報を随時キャッチしてスピーディーに対応しています。

知的財産ポートフォリオ

知的財産ポートフォリオはDXを実現するための富士通のケイパビリティを示すテクノロジー・ショーケースです。富士通グループのテクノロジーを社内外に流通させ、各社の強みを活かしたコラボレーションを知的財産を起点に促進することを目指しています。
知財部門では、DX推進を支える7つの重点技術領域(コンピューティング、AI、5G、IoT、サイバーセキュリティ、クラウド、データ)にフォーカスした知財活動を強化しています。
特に、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にする富士通のパーパスの実現に向け、経営判断に資する知財情報分析や社会課題解決に向けた知財活動を一層強化しています。
例えば、COVID-19終息に向け、当社4万件の知財権の無償開放を宣言しました。
また、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する環境技術移転・マッチングのための枠組み「WIPO GREEN」にパートナーとして参画し、500件以上(世界一位 2020年6月現在)の環境技術関連特許をそのデータベースに登録し、これまで46件の特許をライセンス契約し、環境技術の社会への普及に貢献しています。

富士通はコンピュータテクノロジー分野での特許出願件数は国内1位。※特許庁「行政年次報告書2019年版」
AI関連発明の出願人別出願件数は、国内2位。(2014年以降の出願で2019年5月までに公開された分)※特許庁「AI関連発明の出願状況調査報告書」2019年7月

2019年日本特許登録ランキング

AI関連発明の出願人別出願件数

WIPO GREEN DB 技術登録状況 全体トップ10

重点7技術の戦略

DXを加速するための重点7技術を紹介します。

【AI】 Explainable AI、Wide Learning

昨今大きな盛り上がりを見せている人工知能(AI)関連技術ですが、富士通は、1980年代からAIに関する研究開発を地道に行って来たと言われています。しかし特許を検索してみると、なんと1974年にAIの思想が盛り込まれた出願が見つかりました。研究開始は1980年代でもAIの息吹きはもっと前から芽生えていたようです。以降も研究開発の成果を基に、いわゆる第2次AIブーム、第3次AIブームと呼ばれる時期のみならず、継続的に出願活動をしています(AI関連の国内特許出願として1592件、2020年11月現在)。AI関連の特許出願件数は、2020年7月調べの特許庁の状況調査において日本出願件数で第2位、2019年1月調べの世界知的所有権機関(WIPO)による調査では出願件数で世界第5位となるなど、国内外において上位のポジションに位置しており、近年においても変わらず富士通はAI関連技術の研究開発に力を注いでいます。
また、富士通ではAI関連技術以外にも様々な研究開発を行っており、そこでの知見や成果がAI技術の開発に活かされる場面もあります。今回は、AI技術の開発に他の研究開発の成果を応用することで生まれた技術を取り上げます。

AI関連の特許出願件数

事例1:TDA(Topological Data Analysis / 位相的データ解析)のAI応用
TDAは、Topological Data Analysisの略称で、位相的データ解析などと呼称されることもあります。富士通では、データ解析において主流の統計的なデータ解析手法とは異なるアプローチの解析手段としての幾何学的なデータ解析方法を検討するにあたり、元々はAIとは別個に研究開発が始まりました。AIとTDAそれぞれの研究を行う中で富士通は、画像処理分野において高い性能を示すことが知られていたAI技術Deep Learningを時系列データ(例えば心拍データや加速度センサのデータ等)の解析に利用するにあたり、TDAとDeep Learningを組み合わせることで、解析性能を大きく向上させることができることを見出しました。これらのTDAを応用したAI技術の研究開発を進めるとともに、得られた成果は富士通独自のTDAの使い方として特許出願を随時行っています。
上記のようにTDAには大きな利用価値があると富士通は考えていますが、業界全体を見ると、実際のソリューションにおけるTDAの活用は今現在でもそこまで大きく普及はしていません。そこで、富士通の技術者は、TDAを利用する上で有用なソースコードをOSSコミュニティに提供し、より多くの人がTDAを手軽に使えるような土台作りに貢献をしています。また、AI関連の学会におけるワークショップ等では、TDAのテーマにおいてファシリテータを務める機会もあります。こうした機会を利用して、単にTDAの活用を活発化させていくだけではなく、前述の特許出願も含めてTDAの分野における富士通のプレゼンス向上にも同時に取り組んでいます。

事例2:本質的な特徴量を正確に獲得するAI技術 DeepTwin
DeepTwinは、富士通が世界で初めて開発した高次元データの分布・確率などの本質的な特徴量を正確に獲得するAI技術です。
DeepTwinは、映像データ等を最小の情報量に圧縮する技術の基礎となるRate-Distortion理論をAIに応用した技術です。今回、高次元データを最も情報量を圧縮できるようAIで学習することで、そのデータの分布・確率などの本質的な特徴量を正確に獲得できるという理論を新たに構築しました。その概要は次の通りです。
DeepTwinでは、AIアルゴリズムの1つであるオートエンコーダを利用しています。オートエンコーダは、入力データと同じデータを出力するように訓練されたニューラルネットワークであり、入力されたデータには、出力されるまでに次元削減が施され、次元削減後のデータを復元したものが出力データとなります。オートエンコーダは、入力データが一旦次元削減された上で、入力データと出力データとの差分(誤差)が少ないほど性能が良いとされますが、これは前述したデータ圧縮の考え方にも通じる部分があります。
ニューラルネットワークにおける次元削減では、特に高次元データを次元削減したことによって、次元削減前のデータにおけるデータの分布の特徴が失われてしまい、それによって性能低下が起こることが課題とされていました。データ圧縮において利用されてきたRate-Distortion理論から着想を得て、富士通では、次元削減前のデータにおけるデータの分布の特徴を次元削減後にも正確に捉えることが可能なAI技術を生み出すことができました。この考え方を反映した研究成果は2019年に特許出願を行っており、それをさらにブラッシュアップして2020年に公開したものがこのDeepTwinという技術です。また2020年は、機械学習の国際会議ICML 2020 (International Conference on Machine Learning 2020)においてもDeepTwinについての発表を行いました。
現実にはより複雑な高次元データ、難易度が高い問題も数多く存在しますが、DeepTwinがより複雑な問題にも対処可能となる技術開発を継続して行っている最中です。DeepTwinに関しては、上記の公開および学会発表後もその後もさらなる特許出願および学会発表を行い、より一層実用的なAIの実現を目指しています。

上記の2つの事例に示されるように、AIだけでなく多岐に渡る技術の研究開発に地道に取り組んできたこと、それによって、AIと他分野の技術を融合させることで、より便利なAI技術を生み出す土壌を持っていることが、富士通の研究開発の強みの1つと考えています。

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