トークセッション富士通のAI技術のキーパーソンと知財テクノロジーマイスターが語る、社会をよりよくしていくためのAI技術と知的財産活動

富士通のパーパスを起点とした、社会をよりよくしていくためのAI技術の開発・知的財産活動の在り方について、富士通のAI技術のキーパーソン、AI技術の知財担当者と知財戦略策定担当者とともに、オンラインによる対談形式で語りました。

MEMBERS

  • 穴井 宏和

    株式会社富士通研究所
    人工知能研究所

    カッティングエッジテクノロジー先端AI技術、AI・数理技術による社会課題解決の研究、開発を担当。
  • 鈴木 信一郎

    富士通株式会社
    知的財産センター

    入社以来、知財担当者として主にソフトウェア、ソリューションの特許の権利化を担当し、現在はAI分野の権利化を担当。2020年よりAI技術の知財テクノロジーマイスターとして活動中。
  • 金子 浩之

    富士通株式会社
    知的財産戦略統括部

    全社知財戦略の策定・推進、特に、社会課題解決につながる知財活用の取り組みを担当。

技術の凄さの先にある話を

金子

富士通のAI技術や特許の質、件数のすごさは知財のページでも掲載しています。AI技術の課題、AI技術を社会課題解決に結びつけるにはどのような知財活動を行っていくべきか、技術のすごさの先にある社会への想いを、富士通のAI技術のキーパーソンである穴井さんと、知財部門から知財テクノロジーマイスターの鈴木さんのお二人にお話を伺いしていきたいと思います。まず、今日の期待を含め、一言ずつお願いします。

穴井

AI研究、技術開発、社会実装までやっている中で、技術を世に出すことを目的としていますが、知財戦略、つまり知財としてそれをどう武器として使っていくのか、世の中の情勢が変わっている中で、どう考え取り組んでいくべきなのか、非常に重要なことだと考えています。その辺りを議論させていただきたいです。

金子

豊富なご経験踏まえての我々の活動へのご意見をいただけることを楽しみにしております。鈴木さん、知財テクノロジーマイスターとはどんな役割なのでしょうか。それを含め、ご紹介お願いします。

鈴木

入社してからソフトウェア、ソリューション部門の権利化を担当し、今は主にAI分野を担当しています。富士通の知財担当者は研究開発部門とビジネス部門の双方と繋がっているのが特徴の1つです。テクノロジーマイスターという言葉には、その特徴を活かして、それぞれの想いや展望、課題を把握し、富士通の現在や将来に対して、技術の価値、なぜその技術が必要か、をきちんと理解し、それらを踏まえて最適な知財戦略を提案・実行できる存在になるという意味が込められています。また、AI技術でいうと、社会へ受け入れられるかどうかの観点からも、特許の権利化を通じて、富士通のAI技術に対するお客様や社会の信頼の獲得、世の中の健全なイノベーションに貢献したいと考えています。穴井さんとお話しするのは実は初めてなので、楽しみにしています。

金子

最後に私から、司会進行させていただきます金子です。全社知財戦略の策定に携わっています。主に、社会課題の解決のところ、社会をより良くしていくための知財の活用、取り組みについて社内外に関わっていますので、お二人の話しを聞けることを楽しみにしています。

AI技術によって社会をより良くしていくための課題

金子

最初に、社会をより良くしていくためのAI技術に関する富士通の取組を穴井さんから紹介していただきます。

穴井

現在、富士通では「私たちは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていきます。」というパーパスドリブンで動いています。パーパスに向かっていく、技術開発は世の中につながって社会を変えていくというのはあるべき姿です。パーパス起点、パーパスドリブンの方向にむかっているのは自然に感じます。私自身は、研究者としては、コアな研究、数学に近い研究をしている、カッティングエッジテクノロジー先端AI技術をやってきています。カッティングエッジテクノロジーAIでこれまでできなかったことができるようになります。すごい精度、効率でできる、人を超え得る場合もある。新しい価値を創出していく技術になっています。

株式会社富士通研究所 人工知能研究所
穴井 宏和 氏

これがどのように社会変革、個人の体験、幸福感にどう貢献するか、産業の生産性の向上に繋がるか、テクノロジードリブンでやるとなかなか繋がらない難しさがあります。
一方で、第三次AIブームとなり、いろいろなところでAIが実装されてきています。ユーザー企業も自分たちでやるような流れがでてきれおり、広がる中で顕在化する課題が図の第2層「信頼されるAIの提供」の部分にあります。AIが社会的なまずい問題を引き起こしつつあります。
一つはAI倫理、ブラックボックス化されたAIによりなぜそのような結果になるかわからない。そこに対する説明性、責任をどう考えるか。もう一つは、運用、品質の観点です。AI、特に機械学習は確率、統計に根差しており、うまく制御するためには、運用や品質で担保しなければならず、データやセキュリティ等、これまでのITシステムとは異なることを考えなければなりません。信頼性をどう担保して、世の中で安心して使われていく社会を作るのか、大きく2つの観点で研究を進めています。

事例をいくつか紹介しますと、社会の変革、エクスペリエンスの変革、インダストリーの変革、それぞれの領域にAIが入ってきています。
社会の変革の中では、防災のような社会課題、災害大国、日本の中でいかに被災者、被害者を出さない避難防災への貢献、サイバーセキュリティー、悪意のあるアタックがある中で安心安全に取り組む、医療では、3000万本という論文がでている中でゲノム医療の診断ができるようになり、皆さんの健康へ貢献しています。
インダストリーの変革でも、配送、歩留まり向上や、レジレスサービスへ画像認識AIが入ることで企業価値を高めている。

顕在化してくる課題として、例えば、AI倫理、AIが差別的な判断してしまうと、それがマイノリティー差別助長に繋がることがあります。
富士通研究所、富士通としては、ルールの策定、標準化に積極的に参画しています。団体に参画しリードしながらも、独自にAIコミットメントを策定したり、外部委員会を作ったりとしっかり取り組んでいます。
一方、運用、品質の観点では、AIの入ったものをどう品質を担保し使ってもらえるか、これまでと違うAIならではのむずかしさがあります。技術によって、精度が落ちたりする、それを担保しながら運用でカバーできる技術開発を行ったり、開発プロセスに入れる活動を行ったりしています。
社会に信頼されるAIをどう作り、AIがもたらす利益、便益を享受できるような世界をつくるか。社会課題がターゲットにあり、そこで皆さんが幸せになるにはどのように技術が作られどう出口に繋げるかが重要だと思っています。

例えば、先ほど挙げた防災では、富岳での津波シミュレーション、画像人認識のシミュレーション結果を見て、どう逃げたら良いかをAI入ることで課題解決ができるようになっていきます。技術をどのインテグレートして、価値を生み出していくのかが社会課題解決の特徴だと思います。また、リモートワーク等、分断された中で、どう把握し、共感を得るかを、ビデオ画像から表情を読み取り、その表情、動きから高度な心理状態、集中しているかなどを認識することで、いろんな会議のソリューション解決に使えるのではと研究開発を進めています。

技術が価値をもたらすところもありますが、前提としてやはり信頼されるAIであって、それが社会に貢献していくという想いで取り組んでいます。

AI技術の信頼と品質を高めていくために

鈴木

世間一般だとAIがすごい技術と注目されており、ともすると、AIを使えば何でもできるのではという認識されている部分もあると思います。お客様とAIを開発している側とでギャップがあるのが難しいところの1つなのかなと。だからこそ、使いやすくしてあげる運用、品質に注力されていると感じました。

穴井

AIを深く知っていない、深い理解がない場合、なぜそんなことが起こるのか、なぜそんなことをしなければならないのか、なぜ再学習が必要なのか、精度は上がっているはずなのにこれまではOKだったことが悪いと言われた、変わってしまうことが理解できないなど起こり得ます。そこに説明が必要です。両社の理解度を揃えるのには時間がかかりますので、何もストレスなく技術でカバーして運用、開発プロセスに持って作っていくというところが富士通のAI技術が強みにできる点になってきます。信頼できるAIを提供できる点がパーパス実現の1つの大きな柱になり得るのではないかと考えています。

金子

AIの信頼性は、最近よく聞く印象があります。他社からもAI倫理に関する発表がなされています。この点ですが、AI研究の歴史では、何度も冬の時代を迎えていますが、信頼性の問題は昔から言われていたのでしょうか。

穴井

今はAIの第3次ブームと言われています。第2次AIブームの時もすでに信頼性の問題は認識されていたと思いますが、第2次ブームの時のAIはルール、知識ベースだったのでブラックボックスの問題はあまりありませんでした。現在のように、大量のデータがあり、計算パワーが使えるようになったことで、機械学習、ディープラーニングを活用でき、初めて実感したのではないでしょうか。その流れがあって、やはりここが大事となってきています。

金子

世の中の理解、浸透というところで今のお話しがありました。他の会社も同様の理解で進めているので発表がなされているのでしょうか。

穴井

グローバルでAI倫理の取組をやってきたが、他社も踏み込んで全製品の監査とか具体的な動きになっています。

金子

そうなると、他社との差別化を図るところと、一緒に取り組んでいかなければいけないところがでてくると思います。そこを戦略的に考えないといけないと理解しました。今、他社と一緒に取り組んでいるところはあるのでしょうか。

穴井

倫理系の団体に他社も参画しています。標準化の中も活動しています。一緒に動く部分もあります。ただ、富士通としてのAI倫理として、先に動き出していて、今後どうやっていくのかも富士通としては大事な点だと考えています。

AI技術を進めるための知財の役割

鈴木

他社と一緒に進めていくところ、実際に研究開発や、外部との社会実装などで、研究者として、難しいと感じる点はどんなところでしょうか。

穴井

まずデータの問題があります。他社からデータをもらい学習すると、学習済みモデルができます。その学習済モデルの権利はどうなるのか、どこがどこまでの権利を持つのか。学習済みモデルのパラメータをもらい、データ実現できるとするとデータをもらったのと同じなってしまう。それをどう説明、証明できるのかが問題となります。

鈴木

研究開発を他社と一緒に進める中で、特許が話題に上ることはありますか。

穴井

特許の出願、公開について話題に上がることはあります。ただ、技術を作って、特許を取得するというだけでよいのかは考えなければならないところかもしれません。企業内では、特許を出すのは基本のスタンスですが、研究者の観点ですと、やはり特許数より論文数が評価されます。アカデミックだけでなく高度なAI人材、ベンチャーや企業にいる人でも同様です。それが、AIの高度人材の採用に直結しています。すごい年収で職に就けるのです。特許ではなく論文がその人の技術力のAIの力の指標になっています。高度なAI人材の採用と絡んでおりホットな話題です。

鈴木

そもそも特許権には独占排他的な要素がありますが、オープン化、共創という中で方向性が変わってきています。技術に対する信頼と言うかはわかりませんが、知財部門では特許が共創のエントリーチケット、他者に富士通を知ってもらうきっかけとして使えると考えています。研究者個人の力、引き出しの多さなどケイパビリティを特許で裏付けることにより評価に繋げることができないか模索しています。

富士通株式会社 知的財産センター
鈴木 信一郎 氏

穴井

共同研究から特許の共同出願をします。特許が先生の成果を裏付ける枠組みにもなっているのです。そういう意味ではケイパビリティの裏付けとしての役割があります。論文にはできないけれど、技術として大切なものもある、そこのエビデンスとして特許が活用されるとよいのではないでしょうか。トップカンファレンスでは、論文とともにプログラムの提出も求められます。そこを知財とするのか、オープンにするのかを考える必要がありますし、技術提供するには、ここを工夫しなければいけない技術が必要となり、そこは特許を取れるところです。研究のコアなところではなくプラクティカルな研究には必要なものとなります。そこが知財の在り方と考えます。

AI技術の信頼性を高める特許出願

金子

AIに関する特許出願が、富士通の研究者のプレゼンス向上、ケイパビリティのある研究者がいるということを知らしめ、富士通の信頼に繋がるということでしょうか。

鈴木

価値を伝えることで、研究者、社会課題解決への貢献に繋げられるよう考えていきたいです。

金子

AI技術の信頼性に対し、特許の側面から、信頼性を高めていくという話はどう考えますか。

穴井

品質保証、ガバナンス、倫理のバイアスがかかっていないのをアルゴリズムで示す、信頼されるAIのところが特許が出ているというのは、プレゼンスという意味では有益かもしれません。そこは論文では難しいです。

金子

特許、攻めるだけでなく、社会を守るためという点もある。富士通が信頼性に関する特許を確保、悪いから排除、社会の安定をもたらすためにもっておくことが大切ですね。必ずしもクローズだけでなく、コミュニティーの中で融通しあうというアプローチもあるのかなと思いました。

鈴木

おっしゃる通りです。OSS、オープン化ということになると、特許はいらないと言われることもある。ただ、OSSコミュニティーに参加していない人もいて、その人たちにはコミュニティー内の協定が通じるとは限りません。ですので、コミュニティーでは権利行使しないから特許はいらないという単純な話にはならないと思います。コミュニティーの安全性を高めるためにも自身で特許を確保し、コントロールするという意味で、出願は無駄でないと考えています。今回の話の中でも、論文とは異なり、実装のアイデア、コンセプトが特許になるとお話をいただき、その力は価値のあるものではないかと感じました。

金子

特許を出す意味として、開発者のプレゼンスを示し、ひいては富士通の信頼につながる、技術力があるということにつながるプレゼンスを示す方法でもあり、オープンコミュニティー、技術オープンするにしても、使命として権利をとりコミュニティーの安定を図るという知財の役割があると理解しました。

富士通株式会社 知的財産戦略統括部
金子 浩之 氏

技術戦略、知財戦略を一緒になって考えていく

穴井

Sランクの論文では、共著者がたくさんいます。そういう共創型のカーブアウトする仕組みを整えたり、ベンチャーと組んだりしていかないと技術が広がっていかない。社会課題を解決するには、テクノロジーだけでは限界があります。互い尊重し合って取り組む、知財、特許が、その際のエントリーチケットみたいな感じになるといいですね。前向きに考えコラボをやり、お互いの価値を生み出すための土台となるという。

鈴木

特許を親しみやすいものにすることによって世の中に知らしめるなど知財でも検討したいと思います。手を取り合うきっかけとして、知財の側面から役に立てるように考えていきたいです。

穴井

一緒に考えていくことが大切なのではないでしょうか。我々、技術側からみたときに、どのようにパーパスに繋げ、社会課題の解決に繋げるかにおいて知財は切っても切れません。やはり知財があることで覚悟を示し、サステナビリティにつながる、戦略やサステナブルにできるかが大事です。
今の話に関連するところでいうと、オープンクローズ。クローズでやってきたものがオープン化する。簡単に一言でいうが、技術があるなかでどう作っていくのか、この技術を切り出しオープン、あとクローズ、全てクローズでベンチャーと組むなどいろいろあります。戦略に絡むところです。それがあってこそ技術が拡がり、社会に繋がるそういう意味での知財の活用、やり方を、エントリーチケットとして一番知財に期待しているところ。一緒に歩んでいくことが大切なのではないかと思います。

鈴木

是非そうさせてほしいです。知財だけでの考えでは間違うことが多い。一緒に考えると難しいこともあると思うが、一緒に考えないと良い答えにはならない。担当として、知財はとっつきにくい分野と思われているではと不安もあり、声をかけてもらえるのはありがたいです。

対談を終えて

金子

ありがとうございます。前向きにやっていこうという結論で安心しました。それでは最後に一言ずついただけますか。

鈴木

恥ずかしながら知らなかったことも多く大変勉強になりました。やはり技術と特許はリンクする部分が多いです。また、どちらにも最終的に役に立ってほしいという思いがあります。共通項を踏まえ良いものが作れればという想いがある。具現化をより一層頑張っていきたいです。ありがとうございました。

穴井

知財をどう考えるか非常にためになりました。これからの知財というより、我々技術からみたときにどう社会課題解決、パーパスに繋げるかにおいて、知財は切っても切れないものです。単にオープンではダメ。やはり知財があることで覚悟もあるしサステナビリティにつながると考えています。知財にして、想いをもって広げる、戦略をサステナブルにできるかが大事。知財という考えが本質なのではないかと本日は改めて思いました。大変楽しい時間をありがとうございました。

金子

これにて対談を終了します。ありがとうございました。

2021年3月3日実施
本稿中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものです

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