県内全域の歴史文化資源を
デジタルで残して伝え
認知度向上と
観光誘致の起爆剤に

栃木県様 導入事例

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東京近郊でありながら豊かな自然が残り、日光東照宮など多くの歴史文化資源を保有する栃木県様。同県では富士通の「FUJITSU 文教ソリューション Musetheque V4」を導入して「とちぎデジタルミュージアム"SHUGYOKU"(珠玉)」を開設。普段は公開されていない日光東照宮の宝物や県立博物館の収蔵品などをデジタルアーカイブ化して国内外に向けて一般公開することで、「県立博物館を文化観光の拠点」とした総合的な情報発信を観光誘致や地元経済の活性化につなげていこうとしています。
同県の取り組みについて紹介します。

【導入事例概要】

業種 博物館・美術館
ソリューション FUJITSU 文教ソリューション Musetheque V4

【課題と効果】

1 世界遺産「日光の社寺」と関連文化資源など県内に点在する歴史文化資源を総合的に解説する拠点がなかった とちぎデジタルミュージアムで日光の社寺や他の文化資源との関連性を総合的に紹介、観光客の県全体への巡回を促進
2 伝統芸能や伝承技術、国や県指定の歴史的価値が高い文化資源など無形・有形の文化財を広く知ってもらう機会が減少していた 貴重な文化財や普段は公開されていない博物館収蔵品などをデジタル化して一般公開、高精細な画像で訴求力のあるPRが可能に
3 県内に点在する貴重な文化資源の認知度が低く、また都心に近いことから多くの観光客が日帰りで、滞在時間が短かった デジタルアーカイブで無形・有形の文化財の認知度を高め、宿泊して県内を巡る観光客を誘致、地元経済の活性化にも貢献

【導入の背景】

歴史文化財を観光誘致の起爆剤とし
経済活性化・文化財保護を実現

 栃木県には、北関東最大都市とされる宇都宮を中心とした宇都宮エリアと、世界的に知られた日光東照宮がある日光エリアがあります。同県では、こうしたエリアごとの魅力や歴史文化資源の価値を国内外に発信し、観光客の誘致、それにともなう地元経済の活性化に積極的に取り組んできました。しかし、世界遺産である「日光の社寺」(日光東照宮、日光二荒山神社、日光山輪王寺)と関連施設を総合的に解説する拠点がないこと、県立博物館の収蔵品や県内に点在する歴史的価値の高い文化財について、観光客だけでなく地元の人たちにも正しく認知されていないこと、また、コロナ禍もあって貴重な伝統芸能や技術といった無形文化財を広く知ってもらう機会が減少しているといったことが課題でした。
 栃木県 生活文化スポーツ部文化振興課 文化企画担当係長の和久 征夫氏は、「文化観光事業に取り組む中で、例えば日光東照宮には国内外から観光客が訪れますが、日光二荒山神社や日光山輪王寺にまで足を運ぶ観光客は比較的少ないことがわかりました。この「二社一寺」は歴史的に深いつながりがあるにもかかわらず、トータルで知られていなかったのです」と振り返ります。栃木県にある文化資源は、それぞれが「点」ではなく、歴史という時間の流れの中で密接につながり「線」となり「面」となって存在しています。和久氏は「そのことをきちんと国内外に情報発信できれば、観光客が1点だけに集中するのではなく県内の歴史文化資源を巡回する流れを生み出せるのではないかと考えました」と話します。栃木県の歴史文化資源を総合的に紹介し、それを観光誘致の起爆剤とすることで「観光経済による収入をさらに増やし、地元経済の活性化や文化財の保護にも役立てる、そうした好循環を形にしていく必要性を感じていました」(和久氏)。

栃木県 生活文化スポーツ部 文化振興課 文化企画担当係長
和久 征夫氏

【導入の経緯】

博物館や美術館など複数館を一元管理
観光につながる情報発信が決め手

 同県では歴史文化資源を観光誘致に活用することを目指し、2022年度から「栃木県立博物館文化観光拠点計画」をスタートさせました。国の文化観光推進事業補助金を使って県立博物館の機能を強化し、歴史文化資源の魅力の増進と理解の促進、認知度向上、観光客のさらなる誘致、文化財の保護などを総合的に実施する取り組みです。
 具体的には、県立博物館を「文化観光拠点施設」として、日光東照宮を中心とした日光エリアと県立博物館や県立美術館がある宇都宮エリアをつなぎ、観光客が県内全体を巡る流れを生み出します。この計画の核となるのが、2023年3月に公開した「とちぎデジタルミュージアム”SHUGYOKU"(珠玉)」です。これは、県内の国宝や国・県指定の文化財をはじめ、二社一寺の宝物、県立博物館や県立美術館の収蔵品を中心に、県や市町といった自治体、民間の所有を問わず栃木県全域の主要な文化資源を網羅し、仮想空間上のミュージアムで一般公開するデジタルアーカイブシステムです。同県では、珠玉の構築にあたって富士通の「FUJITSU文教ソリューションMusetheque V4」を採用しました。
 採用のポイントについて、和久氏は「この計画では県立博物館や県立美術館など各館が独自にシステムを導入・運用するのではなく、県庁が一括して導入し、複数館のコンテンツをトータルで管理・運用することが必須でした。それには県が主体となって複数館を一元管理・運用できる機能があることが重要でした」と説明します。
 さらに、単純に文化財や収蔵品のデータベースを作るのではなく、「デジタルアーカイブを見た人が実際に現地に足を運びたくなる、観光にまでつながる魅力的なコンテンツの発信が求められていました。Musethequeなら伝統芸能など無形文化財の動画配信や、文化財や収蔵品を見やすいレイアウトでわかりやすい説明で紹介できます。コンテンツの追加も容易で、将来にわたってデジタルアーカイブのプラットフォームとして活用できる拡張性も魅力でした」(和久氏)。
 また、和久氏は「実際に県立博物館を訪れた人たちにも展示品や収蔵品をより深く理解してもらえる機能が備わっていることもポイントでした」と話します。「来館者が自分のスマートフォンで展示品の説明を聞ける音声ガイドシステムや、館内の専用端末で展示品にまつわるクイズを楽しめるクイズシステムなどを導入できることも決め手になりました」(和久氏)。あわせて、Musethequeなら文化財や収蔵品を高精細に表示して細部まで確認することができます 。「普段は見ることができない文化財や収蔵品をデジタルで細部にわたって確認できるようにすれば来館者の理解も深まると感じました」(和久氏)。

【導入の効果】

博物館の来館者が増加
埋もれていた文化資源の認知度も向上

 同県では珠玉の一般公開にあたって3つの目標を立てました。「栃木県立博物館文化観光拠点計画」が終了する2026年度までの5年間で、「観光目的での県立博物館への入館者の割合を2017年度~ 2019年度の平均19.3%から25%にする」、「県立博物館への外国人入館者数を2019年度比5倍の500人に引き上げる」、珠玉へのアクセス数では「46万アクセスを目指す」というものです。和久氏は、「観光目的での入館者数の割合、外国人入館者数では、2023年度の目標値を公開から半年でクリアできました」と効果を示します。
 さらに、珠玉へのアクセス数でも「公開から半年で初年度の目標は達成しています。しかも、トップページなど最もアクセス数の多いページをカウントしているのではなく、「日光東照宮など個別ページへのダイレクトアクセスをきちんとカウントして評価しており、目標を短期間で達成できたことに手応えを感じています」(和久氏)。
 その他にもさまざまな効果を感じています。その一つが、これまであまり人の目につくことがなく埋もれていた宝物や収蔵品の認知度の向上です。「珠玉では、日光東照宮に所蔵している国宝の刀剣や日光山輪王寺所有の仏像など、一般公開される機会が極めて希少な宝物を高精細画像で見ることができます。高精細画像を拡大して見ると、その文化財や収蔵品が持つ息をのむような魅力に触れることができ、一般の人たちの認知度向上にも寄与していると感じています。こうしたことが栃木県、県立博物館を訪れるきっかけとなり、そこから周囲の観光施設などへの周遊ルートが形成されるようになればと期待しています」と和久氏は強調します。

【今後の展望】

栃木県の主要な文化資源を全て見られるようにコンテンツを充実させる

 同県では今後、珠玉のコンテンツをさらに充実させていきたいと考えています。今は二社一寺の宝物や県立博物館、県立美術館の収蔵品が中心ですが、2023年度からは市や町などの自治体が所有する文化資源なども加えています。「2023年度だけでも公開する作品は数百点増え、合計で千点を超える予定です。珠玉にアクセスすれば、栃木県の主要な文化資源は全て見ることができる、そこまで充実させていきたいです」(和久氏)。
 そして、公開するデータを増やしていくだけでなく多言語化も進め、AR(拡張現実)などの技術を取り入れたコンテンツの制作も検討しています。「まだ写真と文章を中心に構成されたデジタルコンテンツが中心ですが、今後は動画のコンテンツも増やしていく計画です。しかも、珠玉で配信するだけではなく、県立博物館の大型ディスプレイでも視聴できるように考えています。来館者にじっくり楽しんでもらえるような仕掛けがいろいろと動いています」(和久氏)。デジタルアーカイブシステムを通じて栃木県の魅力が、ますます発信されていくようです。

左から 富士通Japan株式会社 関東・信越公共ビジネス統括部 栃木公共ビジネス部 竹内 智宏
    栃木県 生活文化スポーツ部 文化振興課 文化企画担当係長 和久 征夫氏

【お客様情報】

名称 とちぎデジタルミュージアム「SHUGYOKU」(珠玉)
設置者 栃木県
URL https://www.digitalmuseum.pref.tochigi.lg.jp/
概要 栃木県立博物館・美術館の収蔵品や日光東照宮、日光二荒山神社、日光山輪王寺の宝物などを中心に、栃木県内の歴史文化資源をアーカイブ化したデジタルミュージアム。
2023年3月に開設され、2026年度までの5年間で継続的にデジタルコンテンツが拡充される。

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