故きを温ねて新しきを知る
貴重な歴史資料を誰もが
自宅から検索できる仕組みで
市民の「知りたい」に応える

新潟市文書館様 導入事例

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古文書や公文書などの資料を保存・管理し、広く利用してもらうための施設として2022年1月に開館した新潟市文書館様(以下、同館)。クラウド型デジタルアーカイブシステムの導入で40万点以上もの膨大な資料を一元管理し、市民など多くの人がインターネット経由で貴重な歴史資料を簡単に探し出せる仕組みを構築しました。同館の取り組みを紹介します。

【導入事例概要】

業種 文書館
ソリューション FUJITSU 文教ソリューション Musetheque デジタルアーカイブクラウド

【課題と効果】

1 新潟市の古文書や公文書などについて、市民がどのような資料があるのかを簡単に知ることができる仕組みがなかった 新潟市文書館の資料を自宅からネット経由で検索できる仕組みを構築、市民が必要な資料に手軽にアクセス可能
2 所蔵資料が市内各地に分散管理されており、目的の資料を探すのに時間を要した 新潟市文書館で資料を一元管理、検索システムの導入で担当者以外の職員でも資料を迅速に探し出せる仕組みを構築
3 市民からの問い合わせに対し、職員の経験や知識に頼らざるを得なかった 検索システムを活用し、キーワードで該当する資料を一覧表示、問い合わせに的確に回答できるようになった

【導入の背景】

誰もが簡単に歴史的資料にアクセス文書館をより身近に感じて欲しい

 同館は2022年1月、特定歴史公文書の保存利用と適切な管理を行う施設として、旧太田小学校の校舎を活用するかたちで開館しました。新潟市文書館 主幹の野瀬 浩司氏は「公文書が3万3838点、古文書など収集文書が28万6010点、刊行物や複製資料などが9万3222点、合わせて41万3070点もの資料を所蔵しています。開館からわずか58日間で来館者数が359人に達するなど、文書館としては市民の関心を多く集めてのスタートでした」と説明します。
 同館の特色は、小学校を改築した施設であることです。新潟市文書館 会計年度任用職員の高原 雅樹氏は「文書館について知らなくても、自分が卒業した小学校ということで懐かしんで来館する市民も意外に多くいらっしゃいます。そういった人たちにも館内の展示物などを通じて文書館について知ってもらい、歴史資料を調べる面白さを感じてもらうことができるのがこの施設の魅力です」と話します。
 同館には公的な文書を通じ、市政について「市民への説明責任を果たす」という重要な役割があります。同時に市役所の職員が公務の証を残し、市民がそうした情報に触れて自らの地域の営みを知り、市政を検証できるという社会的な役割もあります。こうした文書館の役割を果たすには、誰でも簡単に公文書などの資料を確認できる環境の整備が必要です。
 ところが、この文書館が開館する以前は、歴史的な価値のある古文書などを含め、資料は1000~ 2000におよぶ表計算ソフトで作成した台帳などで管理されていました。新潟市文書館 副主査の山貝 洋輔氏は、「どのような資料があるのかインターネットなどで公開されていなかったので、確認したい市民は歴史文化課の窓口まで来て目録で探すか、電話で問い合わせて職員に探してもらうかしかなかったのです」と振り返ります。
 市民の誰もが歴史的に価値ある資料に触れられる環境を整え、「文書館をより多くの市民により身近に感じて欲しい、それには自宅からでも文書館が保有する資料を簡単に検索できるようなシステムが必要だと考えたのです」(山貝氏)。

【導入の経緯】

デジタルアーカイブシステムを「クラウド+リモート」で導入

 市民が自宅からでもインターネットを利用して資料を検索できる仕組みを構築するにあたって、同館では富士通Japanの「Musethequeデジタルアーカイブクラウド」(以下、Musetheque)を導入しました。選定のポイントについて山貝氏は、「まずはクラウドであること。そして、国立公文書館との横断検索が可能だったこと」をあげています。国立公文書館と横断検索連携できることで、市民ニーズにより幅広く対応できるようになります。
 さらに、クラウドであることで、サーバーを自分たちで管理・運用する手間がなくなり、業務負荷が大幅に軽減されます。「導入・運用にかかるコストも抑えられ、BCP(事業継続計画)でもメリットが大きいと感じました。職員はITシステムの専門家ではないので、トラブルや災害が発生したときに富士通Japanにお任せできるのが安心でした」(山貝氏)と語ります。
 実際の導入・構築は、コロナ禍だったこともあり打ち合わせや導入・構築を全てリモートで実施しました。「オンラインでの画面共有で検索画面や入力画面を見せてもらえたので、こちらの要望が確実に反映されているのがわかり安心でした。全てリモートでも数カ月で導入できたのもクラウドシステムだったからだと感じています」(高原氏)。
 富士通Japanのシステム・エンジニア(SE)からのアドバイスや提案も有益だったようです。「資料をシステムに登録する際に、どういった項目を入力すればきちんと検索されるのか、検索精度を高めるアドバイスをもらえたことは役立ちました」(高原氏)。

【導入の効果】

職員の経験や知識だけに頼らず適切なレファレンスが可能に

 同館ではMusetheque を導入したことで、さまざまな効果を感じています。そのひとつが、市民からの問い合わせ(レファレンス)対応での効果です。古文書や公文書などの歴史的な資料は種類も内容も多岐にわたるため、これまでは「レファレンスに対応する職員の知識や経験により、探し出せる資料の種類、内容、数に差がでてしまうことがありました」(山貝氏)。経験が豊富な職員ならどこにどういう資料があるのかを知っていても、経験の浅い職員では探し出せなかったり探すのに時間がかかってしまったりしていたのです。それが、Musethequeの導入により「キーワードを入力して検索すれば、どの担当者でも該当する資料を一覧で確認でき迅速に対応できるようになりました」(山貝氏)とレファレンスにおける効果を強調します。
 また、写真資料を探しやすくなったことも効果のひとつです。例えば、「50年前の新潟市内の橋の写真」というように漠然としたイメージしかない場合、これまでは該当する写真を職員が探し出すのがとても困難でした。「Musethequeにキーワードを入れて検索すれば、近い写真が一覧表示で確認でき、必要に応じて絞り込みの再検索も可能です。利用者は自分のイメージに合う写真を自分で探すことができるのです」(高原氏)。
 さらに、市民からの問い合わせに対して迅速に回答できるようになったことも大きな効果と言えるでしょう。例えば、電話で資料について問い合わせがあったとき、以前なら対応した職員が「探してから、またご連絡します」と一旦電話を切って、探してから改めて連絡をしていました。Musethequeを導入したことで、電話をしながら市民の方にもインターネットで検索をしていただき、一緒に探すことができます。「実際に同じMusethequeの画面を見ながら電話で話ができるので迅速に的確な回答ができるようになりました」(高原氏)。

【今後の展望】

発見する喜びを小学校や中学校の児童・生徒にも知ってもらいたい

 同館では今後、市内外を含めより多くの人たちにシステムを使ってもらいたいと考えています。「システムの利用者は、今は大学の先生や地域の歴史好きな人、歴史を専攻している大学生などが中心です。その利用者をもっと広げていきたいです。具体的には、小学生や中学生まで利用が拡大できればいいと思っています」と野瀬氏は展望を語ります。山貝氏も、「小学校や中学校に対して、新潟市の古文書や公文書など歴史的な資料を検索できるシステムがあることを知ってもらうことが大切です。広く紹介できる機会をつくっていきたいです」と語ります。
 高原氏も、歴史を調べる手段のひとつとして、「県外の利用者も含めてより多くの人に検索システムを知ってもらいたい」という思いをお持ちです。「今までは知りたいことがあっても文書館の職員に頼るしかありませんでしたが、検索システムを使うことで、まず自分で調べてみることができます。調べる楽しさ、こんな資料があるのかという発見の喜びを感じていただきたいと思います」(高原氏)。同館のシステムは、今後さらに多くの人に発見の喜びを提供するツールとなっていくでしょう。

【文書館情報】

名称 新潟市文書館
URL https://www.city.niigata.lg.jp/kanko/bunka/rekishi/niigatasibunshokan/
所在地 〒950-3313 新潟県新潟市北区太田862番地1
所蔵数 41万3070点(2022年3月31日時点)
来館者数 359人(2022年1 ~ 3月期)

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