「この本が読みたい」「知りたい」
児童生徒の気持ちに応える
鳥取県米子市の取り組みとは

鳥取県米子市は、20年以上も前から市内小中学校の学校図書教育に積極的に取り組んできました。小中学校へのICTシステムの導入にも着手し、
2002年には富士通グループの学校図書館システム「FUJITSU 文教ソリューション K-12図書館 LB@SCHOOL」を導入。
現在では市内全小中学校34校の学校図書館をネットワーク化し、合計約43万冊の蔵書を相互に貸し借りできる体制を整えました。
児童生徒の「読みたい」「知りたい」に素早く応えられる仕組みを構築した同市の取り組みを紹介します。

課題と効果

1 学校図書館のスペースや図書購入予算に限りがあり児童生徒が読みたい図書をすべて揃えることはできなかった 全小中学校34校の図書館をネットワーク化し相互貸借を実現、児童生徒の「読みたい」「知りたい」に応えられる体制を構築
2 調べ学習などで使う図書や資料を探し、事前にクラス人数分を用意するのに時間がかかっていた 学校図書システムの活用で必要な図書や資料を素早く検索、相互貸借で全小中学校から必要な冊数を確保
3 学校規模により蔵書数に差があり、自校の図書館で希望の図書を入手するのに時間がかかることがあった 全小中学校の相互貸借の実現と「米子方式」の活用で、リクエストした図書を最短翌日には受け取れる仕組みを確立

米子市の先進的な取り組み

約20年以上前に「米子方式」を確立 学校図書館システムも導入

米子市は市民の学習活動を支援し、子どもたちの心を育み、地域の歴史と文化の伝承に務める取り組みの一環として、約30年前から先進的な図書館事業を展開してきました。
1996年には「第1回朝の読書全国交流会米子大会」を開催し、以降、「朝の読書」活動に積極的に取り組んできました。
2003年には市内全小中学校に専任の図書館職員を配置し、学校図書館教育を積極的に推進してきました。
また、2003年度にかけて市内全小中学校と児童文化センターの蔵書情報をデータベース化し、市役所の文書集配車両を活用して、市立図書館を中心とした物流ネットワークを構築。
市内小中学校からのリクエストに応じて市立図書館の蔵書を毎日、各学校に届ける「米子方式」と呼ばれる貸出・回収システムを全国に先駆けて確立しました。
さらに、小中学校の図書館へのICTシステムの導入にもいち早く取り組み、20年以上前の2002年には、すでに富士通グループの学校図書館システム
「FUJITSU 文教ソリューション K-12図書館 LB@SCHOOL」を導入。
福生西小学校 司書の勝中 弘子氏は当時を振り返り「紙の台帳での蔵書管理がシステム化され便利になったことを覚えています。
以降、図書館業務の効率化をはじめ、学校図書館同士で図書の相互貸借ができる仕組みも整えてきました」と話します。
米子市教育委員会の中川 智晴氏は、「当時はちょうど米子市内にインターネット環境が整ってきた時期でした。
学校図書館のシステムを構築するにあたって、各校が保有する蔵書を『資産』として相互に活用できる仕組みを整えれば、児童生徒が自校の図書館にないときでも
読みたい図書を手にすることができ、読書意欲の向上や学習での活用の幅が広がると考えました」と説明します。

取り組みの広がり

市内の全小中学校で年間3000冊もの図書を相互貸借

米子市では現在、23の小学校と11の中学校の合計34校で、LB@SCHOOLを活用しています。
全ての小中学校の学校図書館がつながっているため、各校の学校司書は、
児童生徒のリクエストに応じて全小学校の約27万5000冊、全中学校の約15万5000冊の合計約43万冊の蔵書を検索して、目的の図書の相互貸借を依頼できます。
全国の小中学校における蔵書数は平均で小学校約1万冊(※1)、中学校約1万1000冊(※1)で、学校単位では児童生徒が手にすることができる図書が限られているのが実情です。
それに対して米子市では、全小中学校の学校図書館をネットワーク化したことで、各校が全国平均よりもはるかに多くの図書を利用できます。
車尾小学校 学校司書の池田 純子氏は「各校の学校図書館を合わせた約43万冊の蔵書を資産として、大きな図書館のように使えるのが大きな魅力です」と強調します。
LB@SCHOOLによって米子市の小中学校全体で、他校への貸出冊数、他校からの借受冊数どちらも年間約3000冊の図書が相互貸借されています。
池田氏は、「児童生徒は読みたい図書が自校の図書館にない場合でも、司書に伝えれば米子方式で早ければ翌日には手にすることができます」と
このシステムが米子方式と組み合わせて活用されていることを示します。
勝中氏も「読みたい図書を手にしやすい環境が整っていることで、コロナ禍で登校や図書の貸出に制限があったにもかかわらず、小中学校ともに貸出冊数は減りませんでした」と説明します。
※1:公益社団法人全国学校図書館協議会「2022年度学校図書館調査」

ICTの効果

調べ学習のテーマから本を検索 相互貸出で必要な冊数をすぐに集められる

それでは、米子市の小中学校では、具体的にLB@SCHOOLをどのようなシーンで活用しているのでしょうか。
米子市の小中学校では、教員から調べ学習に必要な図書を手配して欲しいという依頼が多くあります。
調べ学習では、授業の日までに児童生徒たちが参考に使える図書をクラスの人数分ほど集めなくてはならないことがありますが、
小中学校では同じ図書を数十冊も購入して持っていることは少なく、市立図書館を含めて他の学校図書館から手配をしなくてはならない場合がほとんどです。
淀江中学校 司書の宅野 奈緒美氏は「そんなときに『調べ学習で使う図書がいつまでに何冊必要です』と他の小中学校に一斉メールを流すと、
『うちの図書館からは何冊なら貸し出せます』といったメッセージが返ってきます。
各校の司書同士で情報を共有しながら相互貸借できるのはとても便利で有効な機能だと感じています」と話します。
市内の小中学校34校が繋がっているので、「小学校の図書館にはなくても類似した内容の図書が中学校にあれば、それを探し出して貸出を依頼できます。
さらに図書が届いたら自校で保管・管理している図書と同じ扱いで貸出処理ができるのも便利です」(宅野氏)と効果を感じているようです。
「教員と司書がみな連携して、児童生徒の『読みたい・知りたい』という気持ちに寄り添っていける、そんな効果を感じています」(宅野氏)。
また、年鑑や百科事典、図鑑などの利用指導の際は、一度に同じものが必要になることがあります。
ところが、年鑑や百科事典などは通常一つの図書館に1冊(1セット)しかありません。
「1人に1冊ずつ同じ資料を使わせたいというリクエストがきた場合には、市内の各校から1冊ずつと貸してもらうように依頼して、なんとか1クラス分の資料を集められるようにしています」(池田氏)。さらに、司書の選書のときにもLB@SCHOOLが役立っています。
「購入する図書を選ぶときに、どこの学校が持っているか、他にも買っている学校があるかを調べています」(池田氏)、「自分の学校だけが持っていないようなら購入したほうが良いと判断できますし、逆にまだどこの小中学校にもない図書なら、購入するかどうかの判断を慎重にしようと考えます。
図書購入の判断材料としても活用しています」(宅野氏)。

将来の展望

児童生徒の「読みたい」「知りたい」により素早く応えられる仕組みづくりを

 米子市では今後、LB@SCHOOLをさらに活用していくことで図書館事業の充実を図っていきたい考えです。学校間の相互貸借をさらに積極的に進めていくことで、
図書購入費を抑制できるほか、小規模な学校図書館スペースの有効活用にもつながります。小中学校の規模によって学校図書館の蔵書数に差が出てしまうといった課題の解決にも
LB@SCHOOLを活用していくことができます。
また、現在、児童生徒は、LB@SCHOOLの貸出・返却の機能だけを利用し、検索や貸出リクエストは司書が受け付けて実行しています。
勝中氏は、「将来的には児童生徒がタブレット端末でLB@SCHOOLを使って読みたい図書を探してみるなど、子どもたちの読書意欲をさらに高めるような活用の可能性は、
ますます広がっていくと感じています」と語ります。
池田氏も「今はインターネットでさまざまなことが調べられる時代です。だからこそ、本を手にとって正しい情報に触れることの重要性が高まっていると感じています。
子どもたちが読みたいと思ったときに、その本をすぐに手元に届けてあげる、システムを活用して児童生徒の『読みたい』『知りたい』に応えていきたいです」と将来を見据えます。
取り組みは、ますます充実していくようです。

米子市の学校図書館

小中学校数 34校(小学校23校/中学校11校 組合立含む)
蔵書数 約43万冊(小学校:約27万5000冊/中学校:約15万5000冊)
在籍児童生徒数 小学校:7843人/中学校:4028人(2022年5月1日時点)
1人あたりの年間貸出数 小学校:107冊/中学校:32冊(2022年)
他校からの借受冊数 小学校:1917冊/中学校:903冊(2022)
他校への貸出冊数 小学校:1458冊/中学校:1300冊(2022年)

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