半導体試験装置分野で世界トップクラスを誇るアドバンテスト。同社は情報漏洩リスクからの脱却を目的に、ホスティングを活用した富士通のシンクライアントソリューションを導入しました。採用の理由は、コストを抑えた上で、シンクライアントをサービスとして利用し投資の平準化を図るという同社のニーズに応えていたからです。また端末からデータセンターまでトータルソリューションもポイントになりました。約6カ月間の短期間構築を実現し、導入後、リモートアクセスの申請が急増するなどワークスタイル変革の推進にも貢献しています。
[ 2012年11月20日掲載 ]
業種: | 半導体・部品テストシステム事業、メカトロニクス関連事業、サービス |
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導入システム: | 統合コミュニケーション |
導入期間: | 要件整理・設計・構築:4カ月、テスト運用・バグフィックス:2カ月 |
採用のポイント: | 端末から仮想化ソフトウェア、データセンターまでトータルソリューション力とサポート力 |
1 | 端末の情報漏洩リスクを取り除きたい | ![]() |
日本国内の拠点におけるパソコンをシンクライアント化。ハードディスクにデータを残さないことで端末からの情報漏洩リスクを解消 |
2 | 社外でのパソコンの利用を簡便にしたい | ![]() |
シンクライアント化により必要なときにパソコンの持ち出しが可能に。端末利用の柔軟性が高まり業務スタイルに変化が生まれた |
3 | サービスの利用によりICT 投資の平準化を図りたい | ![]() |
富士通データセンターのホスティングを活用しシンクライアントをサービスとして利用。端末運用におけるICT投資の平準化を実現 |
PC、スマートフォン、ICT機器、電気自動車、医療機器などさまざまな製品になくてはならない半導体デバイス。その品質を検査する半導体試験装置の分野で、世界トップクラスの技術とシェアを誇るのが、アドバンテストです。「先端技術を先端で支える」という経営理念のもと、メモリ・テスタ市場では安定的に過半数以上のシェアを維持し、2011年のVerigy社との経営統合によりロジック・テスタ市場でもシェア50%を獲得。この経営統合により開発、生産、販売などのグローバル化を推進するとともに、クラウドを活用した半導体試験のビジネスモデルの構築やヘルスケア、エネルギーといった新規事業分野の開拓にも積極的に取り組んでいます。
企業の明日を担う製品の品質を試験する同社のビジネスでは、お客様との信頼関係がベースとなります。東証一部とニューヨーク証券取引所の両市場に上場する同社は、これまで築いてきた信頼をさらに高めるべく、セキュリティ強化の一環としてシンクライアントの導入を決断。2010年、パソコンの老朽化に伴うリプレースを契機に、海外展開も視野に入れ、まずは日本国内へのシンクライアントの導入検討を開始しました。今回のプロジェクトのテーマは「情報漏洩リスクからの脱却」。シンクライアント化の対象は国内拠点のパソコン2,000台以上に及びました。
従来、同社では情報漏洩リスクが高まるパソコンの持ち出しに関して非常に厳しいルールを設けていました。「営業やSEが事前申請した後、ITソリューション部が持ち出すパソコンのハードディスクの中身をチェックしていました。社員も運用管理者も手間と時間がかかる上に、ワークスタイル変革やBCP(事業継続計画)といった新たなニーズへの柔軟な対応も難しい状況でした」と、管理本部ITソリューション部 セントラル業務システム支援課長 桑原理夫氏は語ります。
桑原 理夫氏
株式会社アドバンテスト
管理本部ITソリューション部
セントラル業務システム支援課長
また、運用管理の効率化はもとより投資の平準化も今回の目的としました。「従来のように数年のスパンでパソコンをリプレースするのではなく、月額使用料を払ってサービスとして利用する運用に変えることで投資の平準化を図る狙いもありました」(桑原氏)。
今回は、情報漏洩リスクからの脱却に加え、いつでもどこでもセキュアに情報を活用できる環境の実現や投資の平準化などさまざまな課題の解決が求められていました。導入ベンダーの選定で同社が最終的に富士通を選んだ決め手もトータルソリューション力でした。
関 洋一郎氏
株式会社アドバンテスト
ITソリューション部
コミュニケーション・システム課
「コストを抑えながらシンクライアントをサービスとして利用できる仕組みとして、富士通からホスティングサービスを活用した提案がありました。この提案は当社のニーズを満たすものであり、海外に展開する場合もグローバルにデータセンターを設置している富士通なら安心です。また端末から仮想化ソフトウェア、データセンターまで一元的にサポートできることも採用のポイントになりました」と、ITソリューション部 コミュニケーション・システム課 関洋一郎氏は話します。
シンクライアントの導入において同社は既存の使い勝手の継承を重視。Microsoft Windows Thin PCを活用しリッチクライアントをシンクライアント化することで、シンクライアント環境でUSBの対応を可能にしています。しかし、「Windows Thin PCは、グローバルでも数千台規模の事例はほとんどなく、手探り状態で構築していきました」と、ITソリューション部 コミュニケーション・システム課 對馬大祐氏は振り返ります。
對馬 大祐氏
株式会社アドバンテスト
ITソリューション部
コミュニケーション・システム課
また、Citrix社のデスクトップ仮想化ソリューションCitrix XenDesktop™とアプリケーションを仮想化するCitrix XenApp™を組み合わせ、利用者ごとのデスクトップ環境をサーバ上に用意。既存のアプリケーションの利用はもとより、Microsoft社のMicrosoft OfficeやInternet Explorerの新旧バージョンの同時利用も実現しています。「Citrix社製品のバグへの対応も、富士通が窓口となりCitrix社と密に連携し課題の解決に尽力していただきました」(関氏)。
2011年5月に採用を決定。2011年7月に先行して一部のユーザーに導入し同年10月に営業部門から展開を開始しました。「富士通も含めて約5名のスタッフが一丸となることで約6カ月間という短期間構築を実現できました。またシンクライアント環境を数十台分まとめて作成できる自動化ツールを富士通に提供していただき、2012年3月には約2,400台の端末を各拠点に展開できました」(對馬氏)。
シンクライアントの導入により端末の情報漏洩リスクは取り除くことができました。また、業務にも大きな変化が生まれています。「パソコンの持ち出し制限がなくなり、社員は必要なときに自分のパソコンを持ち出して利用しています。また、外出先や自宅から社内にアクセスできるリモートアクセスの申請も、従来の100人から500人と約5倍に急増しました。米国の拠点との打ち合わせやメールのやりとりは時差があるため、深夜や早朝の場合もあり、自宅で社内と同じデスクトップ環境を利用できるメリットは大きいです」(関氏)。
起動時間の大幅な短縮やレスポンスの向上もユーザーから高い評価を得ています。またパソコンが故障してもデータが消えることはなく、端末を交換するだけで迅速に業務の継続が可能です。ウイルスソフトの更新やパッチの適用もサーバで一元管理することによりセキュリティも向上。さらに同社の試算では、端末をデスクトップからノートパソコンに切り替えたことで消費電力量の6割削減、シンクライアント化により個人のセキュリティパッチ適用と社外持出申請管理が多くを占める運用管理工数で年間11,000H(6割)削減が見込まれています。
今後の展開について「今回、ワークスタイル変革やBCPのニーズに応えるシンクライアント基盤を確立できました。今後、スマートデバイス対応などによりワークスタイル変革の加速も図れます。また、シンクライアントの海外展開では日本と同じサポートが受けられるように富士通と一緒に準備していきたいと考えています」と桑原氏は語ります。
計測技術で社会の発展に貢献するアドバンテスト。世界を舞台に活躍する同社のさらなる飛躍を、富士通はこれからも先進技術と総合力で支援してまいります。
所在地 | 本社事務所 東京都千代田区丸の内1丁目6番2号 新丸の内センタービルディング |
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設立 | 1954年 |
資本金 | 324億円(2012年3月31日現在) |
従業員 | 4,464名(連結:2012年3月31日現在) |
事業概要 | 半導体・部品テストシステム事業、メカトロニクス関連事業、サービスほか
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ホームページ | 株式会社アドバンテスト ホームページ![]() |
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