≪前編

後編≫

アジャイル開発の士気管理(前編)ニコニコカレンダー

2020年9月14日公開

情報システムは、「ハードウェア」と「ソフトウェア」そして「ピープルウェア」ともいえる開発チーム(開発者たち)によって、かたちづくられています。チームの士気がピープルウェアのパフォーマンスを左右する大きな要因であることは自明でしょう。
ここでは、生産性や品質に大きな影響を与える「チームのムード」や「メンバーの気持ち」といったチームの士気を見える化するツール「ニコニコカレンダー」を事例とともに紹介します。

ニコニコカレンダーとは

下のサンプルを見てください。

ニコニコカレンダー

名前(行)と日付(列)の表形式のカレンダーにフェースマークを記しています。3種類のフェースマークには、それぞれ意味があります。

フェースマークの意味

メンバーの気持ちをフェースマークにしてカレンダーに貼り付ける。それがニコニコカレンダーです。

壁に貼る

ニコニコカレンダーは、チームのムードやメンバーの気持ちを見える化するツールです。効果的な見える化のために、メンバーからいつも見える壁に貼りましょう。

大きさは、A4ないしA3程度の大きさが適当でしょう。

  • 行にはメンバー
  • 列には日付を書きましょう。
    簡単に表(カレンダー)をつくったら、壁に貼りましょう。

気持ちを貼る

カレンダーには気持ちをフェースマークで貼りつけます。これにはシールがおすすめです。

  • 100円ショップで売っている
  • 丸いシール
  • 8mm~16mm
素材のシール

こういう風にシールに顔を書く方法もあれば

気持ちの表し方1

気持ちの表し方はいくつかあります。

気持ちの表し方2

こういう感じで交通信号のように表す方法もあります。
特にルールがある訳ではありません。チームの雰囲気に合うやり方でよいでしょう。

フェースマーク

交通信号のように、色だけでも一目で遠くからも分かる見える化が実現されるのですが、顔を書くことをお勧めします。

あらかじめ用意したフェースマーク

シールに顔を書くにあたっても、

  • 各メンバーがカレンダーに貼るたびに顔を書く
  • あらかじめまとめて、顔を書いておく

など、方法は一つではないのですが、その都度、各メンバーが自分で書くことをお勧めします。
ニコニコマークを書いていると自身の表情もニコニコして来ます。不思議なことですが、多くの方がそう言います。また、顔がニコニコしてくると、気持ちまでニコニコしてくるから不思議です。

日々繰り返す

顔入りシールは自身の分身です。顔入りシールは、その日の帰り際に各メンバーが自分で貼るのが良いでしょう。
「その日、一日なにがあったか?」、「なにがうれしかったか?」、「残念なことはなかったか?」など、自分の中での小さなふりかえりをしてみましょう。そしてシールに自分の気持ちを託しましょう。

毎日シールを貼り続けます。しかしそれだけではありません。夕方、帰宅するときにシールは貼られます。貼られたシールは、メンバーの気持ちです。チームメンバーみんなで見ましょう。翌朝の朝会でみんなで見ることも良いでしょう。しかし多くのひとのまえで、ことさらに指摘することを嫌うひともいます。あくまで慎重に、しかし注意深くみんなの気持ちに注意しましょう。

“みる”といってもいろいろあります。

  • 見る
  • 視る
  • 観る
  • 診る
  • 看る

単に見るだけでなく、注意深く、中身までみて、判断し、診断し、看るところまで心を配りましょう。

事例

いくつかの事例を紹介します。

チームの変化

同期した変化

メンバーの気持ちが同期しているようです。たとえブルーな日があったとしてもチームのムードとしては自然な変化といえるでしょう。

1人だけがブルー

1人だけが毎日ブルー。しかし他のメンバーは毎日ハッピーだと感じています。あきらかに何か問題があるといえるのではないでしょうか?

みんな毎日ふつう

毎日みんなふつうのまま変化がない。本当のことでしょうか?健全なのでしょうか?

独りでふりかえり

ニコニコカレンダーは独りでもできます。下の写真はその例です。

独りでニコニコカレンダー

この例ではシールではなくマーカーとペンで卓上カレンダーに記入しています。他にみてくれるひとがいなくても、日々のふりかえり習慣として有効でしょう。

労働時間

ニコニコカレンダーに毎日の労働時間情報を併せて記載する事例もあります。

残業時間を併記

残業時間が少ないのにブルーな気分が続いている…。そんな様子を見かけたときには「メンタル的になにかある?」、「なにかのサイン?」と認識して声かけをするようにしていた。
と、このチームのメンバーは語っています。

続いて後編では、プラクティスとしてのニコニコカレンダーについて考察します。


≪前編

後編≫

参考文献

執筆

坂田 晶紀(さかた あきのり)富士通株式会社 ジャパン・グローバルゲートウェイ
ソフトウェア開発者、中小企業診断士(Registered Management Consultant)
メインフレームOS、主にシステム資源最適化プログラムの開発に従事。
その後、WEBアプリケーション開発業務に携わり、2002年からアジャイル開発を実践。
アジャイルソフトウェア開発の品質管理、開発管理、組織マネジメントを中心に、約1,000の職場をコンサルティング。

お問い合わせ

ページの先頭へ