Our strategy

CEOメッセージ

「スケールのある成長」を実現することで富士通グループの事業モデルの転換を完遂し、新たな価値創造に挑戦します。

代表取締役社長
CEO / CDXO
時田 隆仁

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進化のステージを一段上げる

富士通グループは、従来の事業モデルを超える新しい事業モデルを打ち立てる過程の真っただ中にあります。2021年に発表したFujitsu Uvanceは、その橋頭保であると私は考えています。それはすなわち、Fujitsu Uvanceを新たなブランドとしてだけではなく、今後の当社グループの事業モデルを体現するものにしたい、体現するものにせねばならないという決意と覚悟がある、ということを意味します。

2019年6月、当社グループは「DX(デジタルトランスフォーメーション)企業になる」と宣言しました。これは、ダイナミックに変化するITサービス事業の将来を見据え、当社グループが目指すべき事業の方向性をステークホルダーの皆様と共有することを意図したものでした。何より、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」という当社グループのパーパスの実現には、従来型のSI(システムインテグレーション)事業を超えて、挑戦・信頼・共感というFujitsu Wayで定めた価値観に基づく新たな価値の創造が必要だと私たちは考えてきました。以来、事業ポートフォリオと自らの変革に取り組んできた私たちの集大成であるFujitsu Uvanceの展開を通じて、当社グループの進化のステージを一段引き上げます。

富士通グループの事業モデルの将来像を示すFujitsu Uvance

改めてFujitsu Uvanceとは何か。端的に言えば、サステナブルな世界の実現に向け、当社グループが競争力を持って価値を提供しうるサービス群に冠した新ブランドです。具体的には、社会課題を解決するクロスインダストリーな4つのVertical areasと、それらを支える3つのテクノロジー基盤であるHorizontal areasを合わせた7つのKey Focus Areasから成ります。このKey Focus Areasごとのサービス拡充とデリバリー体制の強化を進めながら、2023年には本格展開する計画です。

社会課題を起点に、グローバルにOne Fujitsuとしてサービスを展開するという意味で、Fujitsu Uvanceは、従来型のSI事業にとって代わり、中期的には当社グループのビジネスの主軸になるという将来像を、私は描いています。Fujitsu Uvanceが単に新しいサービスブランドではなく、当社グループの新たな事業モデルを企図したものであると冒頭で述べた理由はここにあります。この将来像の実現に向け、私たちは現在、サービスの中身だけでなく、その開発プロセスや組織内の指揮命令系統まで含めたグローバルな組織マネジメントの仕組みづくりにエネルギーを注いでいます。

サステナビリティを本業にするということ

サステナビリティの課題への取り組みは、慈善活動的な社会貢献ではなく、価値創造の最前線に立ち、大きな事業機会を捉えるうえで欠かすことのできない挑戦です。サステナビリティの実現が当社グループの持続的な企業価値向上にとって必須となることは、パーパスにも明確に掲げています。これは、サステナビリティを「後からの付け足し」としてではなく、そもそもの事業の目的として設定しなければならないことを意味します。Fujitsu Uvanceがサステナブルな社会の実現を明確に打ち出しているのは、この考えに基づいています。

競うようにイノベーションが起こり、急速な進化を遂げるサステナビリティ関連ビジネスにおいて私たちが成功を収め、パーパスを実現するためには、ある種の「力を行使する能力」を高めていかなければならないと私は考えています。カーボンニュートラルな社会の実現、より具体的に、従来の化石燃料に代わる代替エネルギーの利用拡大に向けたサプライチェーンの構築を一例に考えてみましょう。効率的かつスピーディにサプライチェーンを構築するには、産業の垣根を越えた仲間づくり=エコシステムの形成が不可欠です。ここで求められるのが、様々な企業や公共機関とつながりを持ち、形成したエコシステムの影響力を使う意志です。シナジーを発揮できる有力なパートナーと連携し、いち早く成功事例を生み出してその意義について情報を発信し、さらに、国際社会におけるルールづくりに対しても発言する。「力を行使する能力」は、大局的な観点で社会の将来を見通し、自らその実現に向けて動く牽引力を指しています。

当社グループも、お客様をはじめとする様々なステークホルダーとDX実現のための実証実験や協業に取り組んでいます。こうした取り組みを単独プロジェクトで閉じずに、社会にインパクトをもたらす規模に拡大していかねばなりません。当社グループが持つ強みを最大限に発揮しながらそれ以上の力をいかに引き出していくのか、私たちの挑戦が続いています。

社会課題を起点に、
グローバルにOne Fujitsuとして
サービスを展開するという意味で、
Fujitsu Uvanceは、
従来型のSI事業にとって代わり、
中期的には当社グループのビジネスの
主軸になるという将来像を、
私は描いています。

グローバルビジネスの拡大を通じた「スケール」の実現

Fujitsu Uvanceに先立ち、私たちはパーパス実現に向け「For Growth」「For Stability」の2つの領域における価値創造と社内変革に取り組んできました。「For Growth」とは、お客様のパートナーとして新たな価値の創造と成長に挑戦する領域、具体的にはお客様の既存ITシステムのクラウド化を中心とするモダナイゼーションやデジタル技術とデータを活用した経営課題の解決を指します。「For Stability」は、お客様の経営の効率化を実現するITシステムの構築とその安定的な稼働を支えることで価値を生み出す領域、すなわち、システムの保守や運用、プロダクトの提供も含めた、いわゆる従来型SI事業です。

「For Growth」「For Stability」の2つの領域における価値創造のマイルストーンとして、当社グループは、2023年3月期末にテクノロジーソリューション事業で売上収益3.2兆円*1、営業利益率10%、EPS年平均成長率12%という財務目標を掲げています。また、ステークホルダーとの信頼関係や社内変革の進捗を示す非財務指標として、お客様ネット・プロモーター・スコア(NPS®*2、従業員エンゲージメント、DX推進指標の3つを掲げ、それぞれ数値目標を設定しました。

「For Growth」「For Stability」の2つの領域における価値創造という観点では、2022年3月期の業績はステークホルダーの皆様の期待に応えきれていない結果であったと捉えています。全社連結の本業ベースでこそ増益を達成しましたが、その内訳は、当社グループの成長の柱となるコアビジネスであるテクノロジーソリューション事業が減収減益となり、ノンコア事業と位置付けるデバイスソリューション事業で支えたというのが実態だからです。もちろん、グローバルなサプライチェーンの混乱、特に半導体の調達遅延など売上やコストに影響を及ぼす外部要因があったことは確かです。しかし、当社グループの事業モデルの転換を示すという点では、不十分な結果と言わざるを得ません。特に、私たちは営業利益率10%をグローバルに競争力のある事業を展開するための前提条件の1つと考えているからこそ、その達成は2023年3月期の優先課題となります。

次に述べるように、具体的な施策や取り組みのレベルでは、様々な進捗があり成功の芽が育ちつつあります。しかし私自身は、当社グループが事業モデルの転換を完遂するには、「スケールのある成長」が必須だと考えています。それはすなわち、グローバルなビジネスの拡大による成長です。私たちがFujitsu Uvanceに注力する理由、それはFujitsu Uvanceを中長期的なグローバルビジネスの成長実現に向けた突破口と期待しているからです。

  • *1
    2022年4月、従来の売上収益目標3.5兆円を見直し、3.2兆円に変更。
  • *2
    ネット・プロモーター®、NPS®、NPS Prism®そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

パーパス実現のために取り組む「For Growth」「For Stability」それぞれの課題の進捗

Fujitsu Uvanceの基礎となっているのは、私たちが2020年から取り組んできた「For Growth」「For Stability」の2つの領域の課題への対処です。4つの課題に分けて、その具体的内容をご報告します。

第1が、グローバルビジネス戦略の再構築です。ビジネスモデル変革に目途をつけたことで、2022年3月期はすべてのリージョンで黒字化を達成しました。また、グローバルオファリング、つまり全リージョンで重点的に提供していくサービスの整理と拡充が進んだことが、Fujitsu Uvanceへとつながっています。さらに、2022年4月には従来の6リージョン体制からJapan、Europe、Americas、Asia Pacificの4リージョン体制に再編し、より機動的に戦略を実行できる組織体制としました。

第2に、日本国内での課題解決力強化が挙げられます。富士通Japanが事業を本格化し、同社の主要ターゲットである中堅民間企業、自治体、教育・医療機関のお客様が、COVID-19の影響を特に大きく受けたという難しい状況に直面しながらも、個別のお客様ごとのニーズに合わせた従来型のサービスからソリューション型のビジネスへの移行を着実に進めています。また、コンサルティング機能強化に向けた布石として、国内営業職8,000人のビジネスプロデューサーへのリスキリング研修や保有スキルの可視化が完了しました。

第3が、お客様事業の一層の安定化への貢献です。従来型のSI事業における品質向上や、プロジェクトの不採算化を防ぐためにデータとAI活用を強化しています。また、情報セキュリティ本部を設置し、Chief Information Security Officer(CISO)のリードの下、情報セキュリティの高度化を進めました。さらに、国内ビジネスの生産性向上のカギを握るジャパン・グローバルゲートウェイ(JGG)が7,500人規模となり、サービスデリバリーモデルの標準化が進みました。世界のタイムゾーンをカバーする形で展開している開発・デリバリー拠点であるグローバルデリバリーセンター(GDC)も20,000人規模となり、さらなる活用に向けた体制が整いました。

第4に、お客様のDXベストパートナーに向けた取り組みがあります。「カスタマーサクセス(お客様の成功)」をキーワードに、「For Growth」において目指すべき、お客様の経営課題解決と新たな価値創造への挑戦に焦点を当てたサービスを強化しています。この取り組みを加速するために2022年4月に組織を再編しグローバルカスタマーサクセスビジネスグループを設立しました。これと並行して、コンサルティング専業子会社として設立したRidgelinezも、富士通グループの既存の枠組みにとらわれないビジネス活動や人事施策を展開し、着実に地歩を固めています。

パーパス実現のために取り組む課題の進捗:社内変革

「データドリブン経営強化」「DX人材への進化」「全員参加型・エコシステム型のDX推進」の3つを柱とする当社グループ自らの変革も前進しています。

One Fujitsu プログラムという名称の下で進めているデータドリブン経営は、当社グループのグローバル事業を支えるマネジメントの仕組みを劇的に変えようとしています。まずは、お客様リレーションに関する情報を統合するOneCRMが、2022年4月に全リージョンで始動しました。世界各地で進行中のあらゆる商談活動の進捗状況がリアルタイムで可視化され、四半期どころかさらに先の受注・売上が予測できるようになり、私たちが目指す未来予測型の経営に向けて大きく前進したという手応えを得ています。また、人材、資金を含む企業経営にとって不可欠なあらゆる「資産」に関する情報を統合するOneERP+についても、英国およびアイルランドで2022年4月に先行稼働しており、今後順次全リージョンに展開する計画です。

従業員のDX人材への進化も急ピッチで進めています。2022年4月には、従来日本では幹部社員のみに適用していたジョブ型人材マネジメントを国内グループの一般社員45,000人向けに拡大し、グローバルに統一された人事制度の確立に向けて大きなハードルを越えました。また、社員が自らの意思で別の仕事にチャレンジできるポスティング(社内公募)制度を拡大した結果、2022年3月末までに約2,700人の異動・再配置が実施され、グループ内の人材流動性が高まっています。チャレンジを支え、自律的なキャリア形成を支援するために、一人ひとりの社員による新たなスキルや知識の習得を促すFujitsu Learning EXperienceをはじめとするプログラムも導入しています。加えて、社外も含めたキャリア形成を支援していくため、グループ外で新たなキャリアへの挑戦を希望する人材に向けたセルフ・プロデュース支援制度も拡充しました。

富士通トランスフォーメーション=フジトラと呼ばれる全社プロジェクトでは、全員参加型・エコシステム型のDXを推進しており、グループ組織のあらゆる階層における業務の標準化が進捗しています。2022年1月には非財務指標タスクフォースを立ち上げ、前述の非財務指標がどのように財務指標に関係しているのか、さらには、GRB(グローバルレスポンシブルビジネス)をはじめとする様々な取り組みの何が非財務指標の変動に影響するのかをデータで実証化する試みも始まっています。データを活用した経営変革の実現は当社グループが目指すビジネスのまさに王道を行くものであることに鑑みれば、このプロジェクトは私たちのDXの試金石ともなるはずです。

真にパーパスドリブンな組織とは、
換言すれば、
社員が自発的に既存事業の枠組みを
脱却する思考を持ち
価値創出に挑戦する組織です。
そうした思考を促す動機は、
変革が成長に結びつくという
実感から生まれるのではないかと、
私は考えています。

社内変革を一時の盛り上がりで終わらせない

「Work Life Shift」は、人材マネジメントの変革と、社員が働く環境・制度の整備を体系化したものであり、社外のステークホルダーからも多くの関心が寄せられています。また、その主要な対象となってきた日本国内の社員の「富士通が変わる」という期待感の醸成にも大いに役立ってきたと言えます。しかし私は、こうした社内変革を一時の盛り上がりで終わらせてはならないと自らを戒めています。

真にパーパスドリブンな組織とは、換言すれば、社員が自発的に既存事業の枠組みを脱却する思考を持ち、価値創出に挑戦する組織です。そうした思考を促す動機は、変革が成長に結びつくという実感から生まれるのではないかと、私は考えています。

こうした観点から、前述の非財務指標と財務指標の相関性の解明には大きな期待を寄せています。社員一人ひとりの取り組みが非財務指標の変化につながっていること、さらに、非財務指標の変化が当社グループの事業成長につながっていることを、社員に対して目に見えるデータとして証明したいからです。データに裏付けられた実感が、継続的な変革の推進力となると、私は信じています。

COVID-19によるサプライチェーンの分断や、ロシアによるウクライナへの侵攻など、予測しがたい変化が現実に起こるということを、過去1年間繰り返し認識させられました。変化に柔軟かつ迅速に対応する仕組みづくりが重要であることは言うまでもありませんが、私が痛感したのは、起こった変化の表層の下にある、その変化がもたらす意味を敏感に察知するという一種の感性の必要性です。経済安全保障を取り巻く議論においては、ITインフラやサービスが占める役割の重要性も指摘されており、政治・経済がビジネスに及ぼす影響が拡大していることを肌で感じます。このような局面においてグローバルな経営を行うにあたり、変化の意味を察知する感性は今後ますます大事になるはずです。

世界のサステナビリティに寄与する新たな価値創造を可能にするFujitsu Uvanceは、当社グループがこうした能力を高めながらグローバルな事業展開を加速する突破口となるものです。社会の変化を見据えながら、デジタルイノベーションでより持続可能な世界の実現に挑戦し続ける私たちにご期待ください。

代表取締役社長
時田 隆仁
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