「For Growth」「For Stability」
による価値創造

副社長からのメッセージ

日本におけるITサービスデリバリー
モデルを刷新するとともに、
グローバルビジネスの
新たな成長シナリオを描き、
テクノロジー企業としての
中長期的な成長を追求します。

代表取締役副社長
COO/CDPO(兼)海外リージョン部門長
古田 英範

日本企業のDX実現に向けた事業再編

当社グループの日本国内の事業構造は、2021年4月の富士通Japanとジャパン・グローバルゲートウェイ(JGG)の本格始動、および、SI系子会社の再編によって、大きく転換しました。この転換は、IT人材不足や基幹システムの老朽化、その結果としてのデジタル技術活用の遅れといった、経済産業省が「2025年の崖」と表現した日本企業の多くが抱える問題に対する、当社グループの1つの解答です。

お客様と共にDXを実現するパートナーとして、私たちテクノロジー企業には2つの取り組みが求められています。その第1が、お客様企業や社会が抱える課題の解決に貢献する価値ある提案をすること、そして第2に、日本市場に特有のソフトウェア・サービス産業における多重請負構造*に代わる、新たなサービスデリバリーモデルの構築です。

このうち第1に対応するのが、富士通Japanです。デザイン思考をはじめとするDX実現に必須のメソドロジーを身に着けたビジネスプロデューサーが、デジタル技術を活用して課題を越える道筋を提案します。その成果を可視化するために、従来の営業部門がKPIとしていた受注額に代えて、DXにつながる提案を行っているか「質」を測るKPIを設定し、お客様との商談管理の仕組みとして導入しているCRMのデータでモニターしています。また、全国に6エリア本部を設置し、再編・統合した子会社が持つ知見を活用することで、地域特性に応じた提案活動を展開していきます。

第2に対応するJGGは、サービスの標準化とシェアードサービスの拡大を担う、新しいサービスデリバリーモデルの核となる組織です。新たなデリバリーモデルの下で、JGGはシステムやソフトウェア開発業務の標準化を推進し、当社グループの海外開発拠点であるグローバルデリバリーセンター(GDC)と連携してシェアードサービスの設計・開発・テストにも携わります。JGGとGDCの連携によって、従来よりもスピーディかつ安定的に高品質なデリバリーを実現するとともに、生産性向上を通じて当社グループのサービスビジネス全体の中長期的な収益性強化にも貢献します。GDCの活用率が上がれば、特定の業界やお客様へのサービス提供に不可欠なノウハウと経験、専門性を培ってきた国内の開発パートナーのリソースをより有効に活用し、サービスの付加価値を高めることも可能になると、期待しています。

  • *
    ユーザー企業からITシステム開発を受注したITサービスベンダーが、開発実務の一部を開発パートナーに外注し、その会社がさらに業務の一部を別会社に再委託するという構造。短期間に大規模な開発プロジェクトを遂行するためのマンパワー確保に有効な一方で、開発ノウハウの分散や効率性の低下といった問題も内包する。

システム障害の再発防止に向けた取り組み

高品質なサービスの安定的な提供と、その継続を通じたお客様からの信頼関係の構築は、当社グループのパーパスの追求、そして、お客様のIT基盤の安定稼働に貢献する「For Stability」遂行の礎です。2020年10月に発生した東京証券取引所の株式売買システムの障害は、この礎を揺るがす痛恨事であり、ご迷惑をおかけした関係者の皆様に、改めてお詫び申し上げます。

当該のシステム障害の原因となったOEM製品については、原因特定後に迅速に点検を実施、すでに完了しています。これに加え、これまでの点検項目ではカバーできていなかったリスクや課題がないかを検証し、お客様に納入したシステムの再点検も進めています。さらに、社長直轄の品質保証組織を設置し、製品・サービスの品質向上に向けた仕組みの強化にグループを挙げて取り組んでいます。

成長シナリオをリージョンごとに策定

経営計画で掲げた2023年3月期の財務目標達成に向け、グローバルビジネスの再構築も前進しています。グローバルビジネスで損失を出さないための、言わば「止血」の構造改革は、2021年3月期までに完了しました。現在は、2021年に設定した7つのKey Focus Areas(重点注力分野)を織り込んだリージョンごとの成長シナリオ策定を進めています。

グローバルビジネスの素材となるグローバルオファリング、グローバルアカウント、グローバルデリバリー、グローバルアライアンスの4つについては、各リージョンに展開する体制がほぼ整備できました。例えばグローバルオファリングは、すでに9つのソリューションをそろえたほか、開発を担当した各事業部がリーダーシップを執り、各リージョンと販売目標と投資計画を取り決め、毎月その進捗を確認しています。また、グローバルアカウントについても、グローバルな戦略顧客132社を特定したほか、お客様にご提案するサービスプランの標準化や、今後の受注に向けたパイプライン情報の集約化が進んでいます。

経営目標の達成と将来に向けた布石の両立

ここまで記した取り組みは、経営計画で掲げる「For Stability」=お客様のIT基盤の安定稼働への貢献と、「For Growth」=お客様の事業の変革と成長への貢献に寄与するものであると同時に、2030年、そしてそのさらに先の当社グループの成長に向けた布石でもあります。2021年に研究開発体制を再編したのも、世界No.1の性能を持つ「富岳」で発揮された先端技術の開発力を、「For Growth」を牽引する7つのKey Focus Areas(重点注力分野)やグローバルオファリングに適用し、中長期的な成長につなげることを期したものです。経営計画の目標達成に向け、富士通JapanとJGGをはじめとする施策の進捗と成果をモニターしつつ、パーパス実現を目指した中長期的な取り組みも着実に進めていきます。

富士通グループ
統合レポート 2021

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