サステナビリティマネジメント

ステークホルダーダイアログ
ー 外部有識者との対話を経営に活かす

三井不動産
代表取締役社長
菰田 正信 様

一橋大学
CFO教育研究センター長
伊藤 邦雄 様

パーパス実現に向けて必要な変革(トランスフォーメーション)とは

当社グループでは、2020年に定めたパーパスの実現にすべての事業活動を結びつけていくための変革(トランスフォーメーション)を進めています。
「稼ぐ力とESG」の両方を高める必要性を説き、ROESG®経営を提唱する一橋大学 伊藤先生と、進取の精神で持続可能な街づくりを長年リードしておられる三井不動産 菰田社長にお越しいただきダイアログを開催しました。
常務の梶原がモデレーターを務め、闊達な議論が行われるとともに、お二方から貴重なご示唆をいただきました。

価値観を共有できるパートナーシップを増やし、
社会的価値を創出していく

三井不動産
代表取締役社長
菰田 正信 様

三井不動産はグループステートメントを「都市に豊かさと潤いを」と定めている。この背景には「街づくりを通して持続可能な社会を作る」という想いがある。もともと不動産業はESGと親和性があり、社員にとっても街づくりを通して人々の暮らしを豊かにするという考え方はなじみ深いものだ。サステナビリティに「地球の持続可能性=環境共生」「人間の持続可能性=健康長寿」「経済の持続可能性=新産業創造」という3つの意味を込めており、これに基づいて柏の葉や日本橋のスマートシティプロジェクトを進めている。

不動産業には、今や社外とのパートナーシップが欠かせない。例えば、スマートシティを作ろうとしたら、都市のOSやインフラ構築、その中のサイエンスや教育など様々な異業種との協業が必要不可欠だ。だからこそ、“本業で、ESGとイノベーション、稼ぐ力を両立させる”という価値観を共有できるパートナーを増やし、エコシステムを形成して社会的価値を創出していきたい。社会的価値をお客様にご理解いただき、社員がこれを競争力と認識することも必要だ。富士通は、パーパスで世界の持続可能性について言及しており、事業を通じた社会課題解決に向け、一緒にエコシステムを形成していくパートナーとして期待している。

対話を通じたパーパスの自分事化を変革の原動力に、
DX・SXをリードせよ

一橋大学
CFO教育研究センター長
伊藤 邦雄 様

気候変動問題は、地球の資源を人間の経済的利益を優先させて使ったために、共通財産が傷ついた状態だ。そこで、DXとSXの掛け算で“良き資本主義”を実現する必要があり、この掛け算は企業経営のレジリエンスも高めるものだ。企業を取り巻く環境は近年大幅に変化し、経営は今や総合格闘技といえる。財務情報の開示だけでなく、財務と非財務をうまく融合させ、データによる裏付けももって、投資家をはじめとするステークホルダーと積極的に対話し、自社の価値を理解してもらうことが求められている。

同時に社内での対話も非常に重要だ。多様性を有する組織への変化が進むと、“Why=企業の存在意義”をきちんと語り、組織の方向性を合わせる必要がある。これはすなわちパーパスであり、パーパスの自分事化の過程で多くの対話が生まれ、結果として参加型の経営につながり、変革の原動力となる。テクノロジーにおいても“Why”は重要である。なぜその技術が重要か、社会課題の解決にどのように貢献できるか問い続けることで、良きテクノロジーを実現し、DX・SXをリードしていってもらいたい。

パーパス経営成功の鍵は人的資本であり、社員のポテンシャルを最大限開花させることが肝要だ。最近の富士通からは、自律的に学ぶ人を称賛する企業文化の醸成を感じている。今後も人材と向き合ったパーパス経営を推進してほしい。

事業とESGを一体化させ、
地球規模の課題解決に向けリーダーシップを執っていく

代表取締役社長
CEO/CDXO
時田 隆仁

ダボス会議などの国際会議で感じるのは、多くの先進企業が、旧来型のCSR活動としてではなく、ビジネスとESGを一体化させたサステナビリティ経営を進めているということだ。三井不動産様も同様の取り組みをされている。2021年に、“Why富士通”を繰り返し問いながら、成長領域の7つのKey Focus Areas(重点注力分野)を定めた。本対話で、一層「事業とESG、社会への貢献の一体化」を突き詰めていく必要があると感じた。

変革のためにはイノベーションが必須であり、そのためにはダイバーシティとコンフリクトが重要な要素だ。多様な人・価値観のもと、対話による健全なコンフリクトが生じることで、アイデアが生まれ、イノベーションが起き、革新的なサービスを創出できる。

お二方からは、パーパスの実現に向けて当社に必要な変革について、多くのヒントをいただいた。近年の気候変動や災害など、待ったなしの地球規模の課題解決を目指し、テクノロジー企業として先頭に立ちリーダーシップを執っていく。

グローバルな視座、ダイバーシティを持って変革を実現する

代表取締役副社長
COO/CDPO
(兼)海外リージョン部門長
古田 英範

グローバルデリバリー担当時、英国に駐在し、障がいやLGBTなど、多様な個性を持つメンバーと働いた。グローバル企業にとってダイバーシティは当然のことと実感し、この感覚が変革への課題認識の根底にある。これまでは日本市場起点で戦略を考え、日本と日本以外でマネジメントしてきたが、今は市場、顧客、価値観について、最初からグローバルを標準に事業戦略の策定を進めている。

多様な価値観を持つメンバーと対峙するうえで必須なのが、対話である。時に激しく議論しても、対話を経て皆が同じ方向を目指すようになる。対話能力の向上は急務の課題だ。

2020年に、非財務の経営指標を定めたが、世界を見渡せば、財務・非財務の両面でのマネジメントは当たり前に行うべきことである。お客様フロントの社員の意識やお客様への発信も変えて、お客様と共に変わっていかないと当社は強くなれない。この変革に挑み、お客様と共に世界の持続可能性向上に貢献していく。

社会課題の解決につながるテクノロジーで差別化を図る

執行役員専務
CTO
ヴィヴェック マハジャン

キャリアをシリコンバレーでスタートさせた。今、一人ひとりのパーパスと会社のパーパスを近づけ、大きな原動力とすることに取り組んでいるが、文化や考え方が異なるグローバル全社員での実現は難しい。私自身も来日時、慣習に基づく文化の違いに戸惑った経験がある。対話を重ね、対話能力を向上させていくことが、やはり重要である。

パーパスドリブン×データドリブンで、7つのKey Focus Areas(重点注力分野)を推進するうえで、テクノロジーが非常に大きな役割を果たす。AIやセキュリティ、スーパーコンピューティングや量子コンピューティングなど、当社が強みを持つテクノロジーで、グリーンエネルギー、レジリエンシーなどの分野から、グローバルで社会課題の解決につながるサービスを生み出していきたい。世界中どこでも同水準で提供できる体制を整え、お客様が、良いビジネスをお客様のその先のお客様に提供していけるようにする。

今回のダイアログを通じて、パーパス実現に向けて取り組むべき変革について、多くのご示唆をいただきました。
地球規模の課題が顕在化し、社会や個人の価値観が大きく変化する中、パーパスに対する対話を通して企業として同じ方向を向き、価値観を共有するパートナーと共に、さらなる変革に取り組んでいく所存です。
今回頂戴したご意見をもとに、グローバルに「One Fujitsu」としてパーパスの実現に挑んでいきます。

富士通グループ
統合レポート 2021

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