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八木橋ゼミナール

第23回
「デジタル・ガバメント実行計画」

今回は、スマート公共サービスにつながる、改定された「デジタル・ガバメント実行計画」がテーマです。
ワンストップサービスを含めた行政サービスのデジタル化について、自治体からの視点で、解説していきます。

デジタル・ガバメント実行計画の改定、情報システム整備計画

「行政サービスの100%デジタル化」を掲げる「デジタル・ガバメント実行計画」が改定されました。(注1)
この改定版は、デジタル手続法に規定された、「情報システム整備計画」に位置づけられました。(注2)

改定版の冒頭、「本計画の趣旨」に、次のように書かれています。
「国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者が、デジタル技術の便益を享受し、安全で安心な暮らしや豊かさを実感できる社会を実現する」
「行政の在り方をはじめ社会全体をデジタル化を前提に作り変えデジタル・ガバメントを実現する」
「全ての人がデジタル技術の恩恵を受けることができる、新しく活力のある社会を作っていかなくてはならない」

この実行計画には、行政手続のデジタル化、ワンストップサービス、マイナンバーカードの普及と利活用の促進など、広い範囲が網羅され、具体的な計画(行政手続等)が5つの別紙で示されています。
以下、自治体等が関係する視点から、この計画の具体的なポイントを見ていきましょう。

行政手続のデジタル化

デジタル3原則(デジタルファースト、ワンスオンリー及びコネクテッド・ワンストップ)を基本原則としたデジタル手続法を踏まえ、「行政手続のデジタル化」の方針が示されています。(「5行政手続のデジタル化」より)
各項の別紙(1~3)で、具体的な対象の行政手続等(全77項目)が提示されています。

  • 情報システムの整備の基本的な方針
    • 利用者中心の行政サービスの実現等
    • 費用対効果の精査(費用の適正化と行政サービスの向上の両立)
  • 国の行政手続件数の9割のオンライン化(具体的には別紙1に掲げる手続等)
    • 本人確認のオンライン化
      • マイナンバーカードの公的個人認証の活用、法人共通認証基盤「GビズID」の利用(注3)など
    • 手数料納付のオンライン化
      • 財務省の歳入金電子納付システム「REPS」等の活用 など
  • 地方公共団体等の行政手続のオンライン化に必要な情報システムの国による統一的な整備
    地方公共団体の意見を十分に聞きながら、団体の負担にならない仕組みを構築、制度も見直しを行う。
  • 添付を求める場合の多い書類について、添付の省略(別紙2)
    • 登記事項証明書(商業法人、不動産)、戸籍謄本等、住民票、印鑑証明書(法人、個人)、所得証明書・課税証明書等(国税、地方税)、定款等(決算書、資格証明書)、その他の書面
    • 官民によるデータ交換の仕組み、法人データ交換基盤「Gビズコネクト」の利用(注4)
  • 既にオンライン化している行政手続も、更なる利用者の利便性の向上(別紙3の行政手続等)
    • スマートフォン等、受付時間、代理申請、初期設定の簡易化、多言語化 など
  • 注3
    「GビズID」は、一つのID・パスワードで、複数の行政サービスにアクセスを可能とする認証システム。
    経済産業省の補助金申請等の手続から導入、今後、厚生労働省の社会保険手続をはじめ、横展開。
    アカウントを作成できるのは、「法人番号のある企業等の代表者、府省/地方公共団体の決裁権者、事業を営む個人、その従業員・職員等」。
    経済産業省HP「gBizIDへようこそ。GビズIDで、行政サービスへのログインをラクにする。
  • 注4
    「Gビズコネクト」は、法人関連のデータを連携して、申請処理等に活用するデータ交換基盤。
    添付書類の省略、ワンスオンリーの実現を目指し、経済産業省で整備、2021年度以降に各府省で利用可能に。
    「Gビズコネクト」「GビズID」は、「法人デジタルプラットフォーム」(注8)を構成する。

ワンストップサービス

ワンストップサービスでは、次の5項目が計画されています。(「6ワンストップサービスの推進」より)

  • ワンストップサービスの推進(子育て、介護、引越し、死亡・相続)
  • ワンストップサービ化・ワンスオンリー化(企業が行う従業員の社会保険・税手続)

前段の4つのワンストップサービスについては、前回解説しました。(ゼミナール第22回「スマート公共サービス」
後段の「企業が行う従業員の社会保険・税手続」について、説明しておきましょう。(注5)
従業員のライフイベント(採用・退職等)に伴う複数の行政手続(年金、医療保険、雇用保険、国税、地方税等)をワンストップ化、企業と行政機関との間でのデータ連携により、ワンスオンリー化、するものです。
企業の負担軽減、企業の生産性向上の観点からも、デジタル化・簡便化することが重要です。

  • フェーズ(1)従業員のライフイベントに伴う手続について、マイナポータルのAPIを活用。
    複数の手続を一括送信、オンライン・ワンストップ化。(2020年から開始)
  • フェーズ(2)金融機関に係る法定調書について、クラウドサービス等を活用した企業保有情報の提出を開始。
    事業者の事務作業の負担を軽減。(2021年度以降)

行政サービス連携

ワンストップにつながる、サービスやデータの連携について(「7行政サービス連携の推進」より)

  • マイナポータルのAPI提供によるサービス連携の拡大(注6)
    • 自己情報取得API等を活用した官民データ連携、ぴったりサービスにおけるサービス連携
    • 「法人設立ワンストップ」(注7)、社会保険・税手続ワンストップにおけるサービス連携(前述)
  • 法人デジタルプラットフォームの整備(注8)
    • 3つの共通機能の整備(「Gビズインフォ」、「GビズID」、「Gビズコネクト」)
    • 「個人事業主に関する番号の検討」の項で、「2023年度からのインボイス番号(適格請求書発行事業者への登録番号)の状況も踏まえ、検討を行う」とされています。
  • マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進
    • 既存の各種カード、手帳等との一体化等を、別紙4の工程表に沿って推進。(後述します)
    • 公務員(共済組合)について、2019年内でのマイナンバーカードの一斉取得を推進。
    • 国保、後期高齢者医療制度の被保険者は、保険証の更新時期等において一斉取得を推進。

地方公共団体における推進

次の6項目が提示されています。(「11地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進」より)

  • 行政手続のオンライン化の推進
    • マイナンバーカードの普及
    • 汎用的電子申請システムの基盤整備
    • 優先的に取り組むべき手続のオンライン化の推進(別紙5) など
  • 情報システム等の共同利用の促進
    • 自治体クラウド、業務プロセス・情報システムの標準化、情報セキュリティ対策 など
  • AI・RPA等による業務効率化の推進
  • オープンデータの推進
  • ガバナンス強化と人材確保・育成
  • 官民データ活用推進計画策定の推進

今回の改定で、従前の計画に対して、追加された項目は、次の2項目です。

  • 第2項内の「業務・情報システムの標準化」(ゼミナール第21回「スマート自治体」 参照)
  • 第5項「ガバナンス強化と人材確保・育成」(技術的助言、セキュリティ・IT人材の確保・育成等)

実行計画の個別項目(別紙)

これまでの「個別サービス改革事項」と提示されていた別紙の項目が、大幅に拡張されました。(別紙1、2、3、5)
従来は15項目でしたが、今回の計画では、合計で77項目になります。
掲げられた項目(行政手続等)の数、地方等が関係する項目の一部を紹介します。

  • 別紙1:オンライン化等を実施する行政手続等(52項目)
    このうち、「国民等、民間事業者等と地方公共団体等との間の手続」(15項目)
    4. 旅券の発給申請等(注9)
    6. 高等学校等就学支援金の受給資格認定申請等(公立・私立高等学校等)
    31. 金融機関への預貯金等の照会・回答(注10)
    39. 自動車保有関係手続等(ゼミナール第22回「スマート公共サービス」 自動車ワンストップサービス参照)
    など
    また、その他で「地方」が関係するもの(3項目)
    47. 特定健康診査等に関する記録の提供等(オンライン資格確認等システム、マイナポータルによる)
    50. 死亡等に関する事項の税務署長への通知(戸籍異動に伴う相続税法58条の通知)
    など
  • 別紙2:添付書類の省略を実施する行政事務手続(3書類)
    • 登記事項証明書(登記情報システム改修で情報連携(注11)、5手続で添付省略)
    • 戸籍謄本等(戸籍情報連携システムを新規に整備し情報連携)
      ゼミナール第20回「令和最初の法改正」 戸籍法等の改正 参照)
    • 納税証明書(国税)(物品・役務に係る競争入札参加資格申請で添付省略)
  • 別紙3:更なる利便性の向上を図る行政手続等(22項目)
    このうち、「国民等、民間事業者等と地方公共団体等との間の手続」(2項目)、その他(2項目)
    18. 住民税の特徴税額通知の電子化等(eLTAXにより送付)
    20. 独自利用事務の情報連携に係る届出に関する事務処理の効率化(個人情報保護委員会)
    など
  • 別紙5:地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続(55手続)
    (a)処理件数が多く、住民等の利便性の向上や業務の効率化効果が高い手続(22手続)
    (図書館貸出予約等、施設等利用予約、eLTAX、入札 など)
    (b)住民のライフイベントに際し、多数存在する手続をワンストップで行うために必要な手続(33手続)
    • 子育て関係(児童手当認定請求など15手続)
    • 介護関係(要介護認定申請など11手続)
    • 被災者支援関係(罹災証明書発行申請など7手続)

マイナンバーカードを活用した各種カード等のデジタル化等に向けた工程表

マイナンバーカードを活用した各種カード等についての「工程表」が示されました。(別紙4
表側に23項目、2023年度頃までの概略工程が提示されています。
以下に、おもだった項目を抜粋しておきます。

  • 医療関係(健康保険証など8項目)
    • 健康保険証
    • 薬剤・特定健診情報(マイナポータル閲覧)
    • 処方箋の電子化、お薬手帳
    • 医療券・調剤券(生活保護受給者の医療扶助)
    • 介護保険被保険者証
    • PHR(Personal Health Record)健康診断の記録(マイナポータルでの閲覧、情報連携)
    • 母子健康手帳(乳幼児健診情報等のマイナポータル閲覧) など
  • 就労関係(ハローワークカードなど6項目)
    • ハローワークカード(マイナポータル連携、マイナンバーカード活用)
    • ジョブ・カード、技能士台帳、技能講習修了証明書(マイナポータル閲覧) など
  • 各種証明書等関係(在留カードなど8項目)
    • 在留カード(措置内容に応じた対応(法改正等))
    • 教員免許状、大学の職員証、学生証、障害者手帳
    • e-TAX等(マイナポータルを通じて、各種申告書への自動入力)
    • タスポカード、運転経歴証明書 など
  • 公共サービス 「利用拡大の推進」(周知・横展開・普及)
    • 公共交通サービス、図書館カード、その他地方公共団体発行カード

今後の展開

スマートサービスが拡がり、進化していきます。
デジタル化が進展、より範囲が広がり、内容も高度化していきます。

デジタル技術とデータを駆使、革新的なサービスやビジネスプロセスの変革をもたらすもの
Human Centric Innovation Driving a Trusted Future
デジタル社会の変革、デジタルトランスフォーメーションDXが進んでいきます。

富士通がめざすもの、それは単なるデジタル化ではなく、
住民向けのサービスの向上と、職員の業務改革を同時に実現する
自治体デジタルトランスフォーメーションです。

2020年2月28日掲載

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