和歌山県橋本市様・大阪府熊取町様
MICJET MISALIO住民情報ソリューション-RPA/AI OCR実証

RPA、AI OCRの共同利用で
窓口業務の効率化に向け実践

 

橋本市様は、行政改革の一環として総務省の業務改革モデルプロジェクトへ応募し、RPA、AI OCRを活用した業務自動化の実証実験を行いました。各課アンケート調査のもと91の業務候補が挙がりましたが、実施期間や費用対効果を考慮して絞り込み、最終的に10業務に対してRPAのシナリオを作成、1業務に対してAI OCRを適用しました。また、熊取町様もRPA、AI OCR活用のよいきっかけと考えられ、今回の実証実験に参画し、RPAのシナリオを共同検証されました。橋本市様では対応業務で計416.7時間、約65%の年間作業時間削減を実現し、2019年度はさらにRPAの適用を拡大していく計画です。熊取町様では、継続して実証実験を行う予定です。

【実証内容】

  • 法人eLTAX申告書審査、軽自動車税の廃車・転出申告入力などの窓口業務や、調査業務計10業務に対してRPAのシナリオを作成し検証
  • 住民税申告書の読み取りに対してAI OCRを実証

【実証スケジュール】

実証スケジュールの図

課題
効果
課題職員数の適正化を進める中、行政サービスのレベルを維持するために、業務をより効率化したい
効果RPAの導入により、対象業務で65%の作業時間削減を実現
課題RPAを複数の自治体で共同利用することで、より費用対効果を高めたい
効果橋本市様のプロジェクトで作成したRPAのシナリオを熊取町様が共同実証され、その効果と課題を検証

 

 

プロジェクトへ応募した背景

業務改革モデルプロジェクトへ応募したきっかけをお聞かせください

橋本市様  橋本市では以前より富士通のMISALIO住民情報システムを運用して事務の効率化、コスト削減を実現してきましたが、最近新たに人材不足という課題が出てきました。市の職員は、病院を除いて2017年度には560人、2018年度では526人と2年で約6%も減っています。どこの自治体でも共有課題だと思いますが、橋本市では加速する人口減少や少子高齢化を考慮した職員数の適正化に取り組んでいます。しかし、自己都合で退職される方がいたり、採用の募集をかけても辞退される方がいたりして、なかなか計画通りにはいきません。定員管理計画も見直さざるを得ない状況です。少ない職員数でも、行政サービスのレベルを維持しなければなりません。そのための行政改革を進めていたところ2018年4月、総務省が業務改革モデルプロジェクトを募集していることを知り、成果目標を「住民の利便性向上」「窓口業務の省力化」「人件費の削減」と定め、共同利用も盛り込み、応募することにしました。

どのような経緯で、熊取町様と共同で実証を行うことになったのでしょうか

橋本市様  橋本市ではこの実証プロジェクトを、窓口業務を棚卸しして新たなICT活用の実証ができる好機と捉えており、さらに将来、これを足掛かりに全庁へRPAを展開することを踏まえて企画を練りました。そうしたことからプロジェクトの中心に据えたのが、RPA(Robotic Process Automation)とAI OCRです。RPAに関しては、業務効率化の鍵となるのではと前年から情報収集していました。プロジェクトの募集要領とも合致するため、RPAとAI OCRを活用した業務改革案を企画しました。 RPAはシステムの入力などの操作を自動化する仕組みですので、業務量が多いほど高い効果が表れます。同じシステムを利用している団体であれば、同様の業務を実施していると考えられることから、作成したロボットの流用などが期待できると考えました。そこで、橋本市単独ではなく、ぜひ共同で効果を実証したいと考え、熊取町さんに声を掛けさせていただきました。

熊取町様  熊取町でも行政改革を進めており、職員数を適正化する計画です。しかし橋本市さん同様、募集をかけても十分に採用できず計画以上に職員が減っており、生産性の向上は共通の課題でした。この取り組みが業務自動化の第一歩になればと、参加を決めました。

橋本市 総務部 財政課 課長補佐 三嶋 信史 氏の写真橋本市 総務部 財政課
課長補佐
三嶋 信史 氏
橋本市 総合政策部 職員課 人材育成係 主査 岡村 宣佳 氏の写真橋本市 総合政策部
職員課 人材育成係
主査 岡村 宣佳 氏
(取材当時 税務課
市民税係)
熊取町 総合政策部 財政課 財政グループ長 義本 正彦 氏の写真熊取町 総合政策部
財政課
財政グループ長
義本 正彦 氏
熊取町 総合政策部 情報政策課 課長 浦添 全弘 氏の写真熊取町 総合政策部
情報政策課
課長 浦添 全弘 氏

 

プロジェクトの経緯

応募が採択されてから、どのようにプロジェクトを進められましたか

橋本市様  2018年5月下旬に採択された後、事業者をプロポーザル方式で選び、富士通に決定しました。事業者の選定で重視したのは、自治体におけるRPAの実績です。富士通とグループ会社である富士通総研のRPAの導入実績と業務改革モデルプロジェクトを支援した実績、そして将来の運用コストも考慮して評価しました。
その後、富士通総研のコンサルティングのもと、業務の調査を行いました。まずアンケート調査を実施し、RPA、AI OCRによって効率化が期待できる業務を、長時間勤務の多い部署の業務に重点を置いて洗い出したところ、91事務が抽出できました。そしてそれらをRPAでどこまで対応できるかについて、理解を深めながら一つずつ検討しました。富士通総研には、第三者の立場から検証業務候補を提示していただき、参考になりました。
その後、候補として抽出した37業務に対してさらに職員ヒアリングを行いました。「期間内に検証できること」「処理量が大きく費用対効果が見込めること」という観点で、最終的に税務課から5業務など計10業務をRPA適用の対象に、住民税申告書の読み取りをAI OCR適用の対象に決定しました。

熊取町様  熊取町でも同様に各課にアンケートをとり、共同検証する業務を絞り込みました。RPAを知らない職員に対し、まず何のためのアンケートかを根気よく説明し、皆さんの仕事を楽にする考え方だということを強調し、協力してもらいました。

調査の段階で富士通が開催した研修会はいかがでしたか

熊取町様  他自治体の事例や動画などを見せていただき、RPAについての理解が深まりました。実際にRPAが動く様子を見たときに、「あぁ、こういうことか」という腑に落ちる思いとともに、職員からも、この研修会はとても分かりやすかったという声が上がっています。

熊取町様における業務調査についてお聞かせください

熊取町様  熊取町は、橋本市さんと同じMISALIOを使って同様の業務をしていますが、事前の打ち合わせは重要なプロセスでした。実際に担当職員同士が話し合ってみると、件数の多い橋本市さんと熊取町とでは、運用方法が違うこともありました。今回は、橋本市さんの選定された10業務の中から、熊取町と業務フローが似ていて効果の見込める税務の3業務を、実証対象として選びました。

RPAのツールについてどのように感じましたか

橋本市様  富士通製RPAツール(Interdevelop Axelute)を利用しました。シナリオは、富士通SEが同席する中、RPA上で担当職員が業務フローに基づいて作業、出来上がったシナリオの加筆修正などを富士通SEが行いました。
このRPAツールは、特性さえ理解すれば誰でもシナリオが作れる、使いやすいツールだと思います。税務課の業務の中に、対象データすべてにいったんフラグを立てるという比較的シンプルな業務がありました。これは今回の実証の対象外でしたが、富士通SEが作成するのを横で見て学び、職員でシナリオを作りました。このような単純な業務であれば、職員ですぐにシナリオを作成し動かすことが可能です。ただ、先ほどお話しした通り特性の理解が必要なところがあり、想定通りシナリオが実行されず作業後に調整することもありました。この点についてはRPAツール自体の今後の機能強化が必要だと感じています。

 

効果と課題

実証プロジェクトの成果についてお聞かせください

橋本市様  税務課が作成したシナリオも合わせた全11業務で計416.7時間の作業時間削減効果が得られました。RPA導入前と比べて約65%の削減です。RPAですべての業務が自動化できるわけではありませんが、業務量が減り、空いた時間に人にしかできない業務ができたり、残業が減ったりすれば、十分有効だと思います。65%削減という数字には、満足しています。
一番効果の高かった業務は納税課の公金消込作業で、100時間の削減効果がありました。ただ今まで手順書のプロセスを一つ一つ目視確認しながら実施していた作業が自動化で見えなくなり、担当者は正しく動作しているのか不安を感じたようです。職員に、まだRPAが十分浸透していないことも理由の一つかもしれません。今後は他課で得たスキルやノウハウを共有し、担当者が納得してRPAを活用できるようにしていきたいと考えています。庁内のスキルアップはこれからの課題です。

AI OCRについてはいかがでしたか

橋本市様  AI OCRについては、残念ながら認識率が期待より低く、今回の短期間のプロジェクトでは活用できませんでした。AI OCRの性能向上にも期待していますが、様式にも課題があると思っています。例えば現在、各自治体ばらばらに定めている様式を全国的に共通化できれば、AI OCRの認識率も向上するのではないかと考えています。

 

今後の展望

今回の取り組みを次はどのように発展させていきたいとお考えですか

橋本市様  2018年度は市民サービス業務を中心に棚卸ししましたが、2019年度以降、財務などの内部業務に関してもRPAの適用を計画していきます。ほかにも、業務フローや様式の見直しも含めた、RPAとAI OCRの本格導入を進める予定です。

熊取町様  熊取町でも、RPAの庁内展開を図りたいと考えています。今回のプロジェクトは橋本市さんが主体でしたが、熊取町として効果が期待できるであろうと考える健康保険や福祉系窓口業務など、処理件数の多い業務への適用を検討していきます。

富士通への今後のご要望をお聞かせください

橋本市様  RPAのシナリオを作成するには、業務フローを正確に把握することが不可欠ですが、そのための打ち合わせに時間がかかりすぎると、それがRPA導入の障壁になる可能性があります。富士通からMISALIOの業務フローを踏まえた効果的なシナリオの提案をしていただければ、導入時の打ち合わせなどによる現場の負担は大きく減り、導入に前向きになると思います。

熊取町様  熊取町は紙を使った業務がまだ多いのですが、データ入力業者も少なくなってきています。今後、AI OCRの性能向上にも期待しています。

橋本市様  今回は短納期の中、アンケートからシナリオ作成、報告書作成まで、各フェーズで迅速に対応してくれました。今後も、ほかの自治体や企業で得たノウハウの助言や、我々の気づかないような新しい発想でサポートいただければと思います。

橋本市、熊取町の皆様と、富士通担当者の集合写真前方右から 橋本市 三嶋 氏、熊取町 義本 氏、浦添 氏
後方右から 富士通 越智、小川、新井、富士通総研 今林

 

橋本市様 概要

所在地和歌山県橋本市東家1丁目1番1号
代表者橋本市長 平木 哲朗
人口62,920人(2019年2月28日現在)
職員数526人(2019年4月1日現在)(病院職員を除く)
ホームページhttps://www.city.hashimoto.lg.jp/
橋本市のご紹介1,200年の歴史がある高野山のふもとに位置する橋本市は、北を大阪府、東を奈良県に面した大都市のベッドタウンとなっており、「住んでよかった」「住みたくなる」まちづくりを展開しています。同市では養鶏、柿栽培、パイル織物といった産業が盛んで、2014年には「はたごんぼ」というゴボウを復活させ、プレミア和歌山推奨品審査委員特別賞を受賞しました。また、国の伝統的工芸品に指定された「紀州へら竿」は日本一の生産量を誇っており、この度、「COOL JAPAN AWORD 2019」を受賞し、より一層のインバウンド需要・海外展開を進めています。 近年では特産品の鶏卵を使った「はしもとオムレツ」ブランドを立ち上げ、24店舗(2019年3月現在)が各店こだわりのオムレツを提供して、地元の方や観光客の人気を集めています。

さつき台

紀州へら竿

柱本棚田

熊取町様 概要

所在地大阪府泉南郡熊取町野田1丁目1番1号
代表者熊取町長 藤原 敏司
人口43,698人(2019年2月28日現在)
職員数334人(2019年4月1日現在)
ホームページhttps://www.town.kumatori.lg.jp/
熊取町のご紹介熊取町は、大阪市中心部から南西へ約30km、関西国際空港から東へ約10kmの大阪府南部に位置し、町内には奥山雨山自然公園、重要文化財「降井家書院」、綿布工場を保存再生した「煉瓦館」といった公園や文化施設があります。4つの大学が立地するなど学園文化都市としての一面も持っており、豊かな自然や歴史・文化に恵まれた町です。町のマスコットキャラクターに、「熊(クマ)」のジャンプくんと、町の「鳥(トリ)」であるメジロのメジーナちゃんがいて、SNSで積極的に発信するなど地域のイベントを盛り上げています。

奥山雨山自然公園

降井家書院

 

[2019年7月16日掲載]

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