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雑誌FUJITSU


雑誌FUJITSU 2017-1

年頭ご挨拶 (517 KB)

最新号 特集:デバイス&マテリアル

2017-1月号 (Vol.68, No.1)

富士通グループのビジネス主体はプロダクトからサービスに移行していますが,サービスビジネスの差別化技術として,またIP(Intellectual Property)や目利きの基盤技術として,材料・デバイス技術は依然として重要です。本特集では,バリューチェーンの核となる最先端の材料・デバイス技術への取り組みを紹介しています。


巻頭言

デバイス&マテリアル特集に寄せて (533 KB)
株式会社富士通研究所 取締役 矢野 映, p.1

総括

ハイパーコネクテッド・クラウドを牽引する先端デバイス,実装技術,材料技術 (1,013 KB)
青木 重憲, p.2-8
来るIoT(Internet of Things)社会を支えていくハイパーコネクテッド・クラウド(以下,HyCC)の進展には,実世界における高度なデータ収集と,それらを限られたスペースと電力で高速に処理するための新しいハードウェア要素技術が不可欠である。富士通研究所では,これまで入手できなかったデータを収集しHyCCのカバー領域を広げるため,化合物半導体の特殊な物性を活用した非シリコン系デバイスの開発を進め,高周波無線技術やミリ波レーダー,匂いセンサーの実用化を推進している。また,ハードウェアにとって不変の課題である小型・高速・省電力化に向け,半導体の微細化による性能向上が期待できなくなってきた昨今,チップ間の配線距離を極限まで短縮できる3次元集積や,広帯域で伝送損の小さい集積光トランシーバなどの新しい実装技術の開発を進めている。更に,将来に向けた基礎研究として,シリコン半導体を置換しその限界を突破する可能性のあるナノカーボン材料について,マテリアルズ・インフォマティクスと先端プロセス技術を融合した取り組みも進めている。
本稿では,富士通研究所で開発を進めている先端デバイス,実装技術,および材料技術を紹介する。

ICTインフラを支える材料・デバイス・実装技術

数十Gbpsの高速無線通信に向けたテラヘルツ波帯小型受信機 (788 KB)
中舍 安宏, 芝 祥一, 川野 陽一, 高橋 剛, p.9-14
あらゆる機器がネットに接続され,大量のデータが行き来するハイパーコネクテッド・ワールドの形成を迎えようとしている。それを支えるキーテクノロジーの一つである無線通信には,大量のデータを高速に伝送することが要求される。無線通信システムの伝送速度は年々上昇しているが,近い将来,現在の携帯端末の100倍以上となる数十Gbpsから数百Gbpsに達すると予想される。周波数が100 GHzを超える電波はテラヘルツ波と呼ばれ,現在の携帯端末が利用する電波に比べて100倍以上広い周波数帯域が利用できる。テラヘルツ波の利用が実現すれば,100 Gbpsに迫る高速無線通信が可能となり,例えば4Kや8Kといった高精細映像の瞬時伝送,携帯端末間のデータ交換,携帯端末-サーバ間のバックアップなどへの応用が期待されている。
本稿では,テラヘルツ波通信の実現を目指して富士通と富士通研究所が取り組んでいる,インジウムリン系高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)技術と,それを用いた超高周波回路,および実装技術を紹介する。また,これらの技術を適用して,世界最小サイズとなる300 GHz帯20 Gbps受信機を試作した結果についても報告する。
チップ間広帯域信号伝送を実現する2.1次元有機パッケージ技術 (1.01 MB )
小山 利徳, 六川 昭雄, 清水 規良, 大井 淳, p.15-21
半導体チップと有機基板を中継するシリコンインターポーザを用いて,ロジックチップの隣に広帯域メモリを配置した2.5次元(以下,2.5D)実装構造が注目されてきている。これは,メモリ帯域を広げて大容量信号伝送を行うために,パッケージ上でチップを接続する必要性が増してきたからである。更に,2.5D構造に対して,インターポーザ機能を有機基板に一体化した2.1次元(以下,2.1D)構造も提案されている。
本稿では,新光電気工業が開発した2.1D有機パッケージについて述べる。2.1D有機パッケージは2.5D構造の機能を有機基板を用いて実現するもので,有機パッケージ上に超高密度な多層配線層を形成するものである。筆者らは,従来型のビルドアップ型パッケージの表層に薄膜プロセスを適用することで,Line/Space=2/2 µmの配線密度を有する2.1D有機パッケージ(i-THOP:integrated-Thin film High density Organic Package)を実現した。同時に,狭ピッチフリップチップ実装のためのTCB(Thermo-Compression Bonding)技術を用いて,最小バンプピッチ40 µmのマルチチップ実装を実現した。また,作成した2.1D有機パッケージに評価チップを実装し,信頼性評価を実施するとともに,薄膜配線による信号伝送特性をシミュレーションし,実用上問題のないことを確認した。
高性能サーバの小型・高密度化を実現する3次元実装技術 (1.16 MB )
北田 秀樹, 赤松 俊也, 石塚 剛, 作山 誠樹, p.22-29
LSIの微細加工技術が限界に達しつつあり,ムーアの法則に基づき微細化したLSIでは,高速かつ低消費電力な高性能サーバ用CPU/メモリモジュールの性能を満たすことができない。そこで富士通研究所では,複数のデバイス間を最短で接続する3次元実装技術を開発した。この技術は,将来の富士通のICTビジネスを支える高性能サーバの実現に向けた革新的な次世代実装技術である。積層された上下のLSI間を最短距離で信号接続するシリコン貫通ビア(TSV)技術,帯域幅をより拡大できる超多端子接合技術,および積層チップ間のPI/SI(Power Integrity/Signal Integrity)を考慮した伝送設計技術を統合することで,3次元ロジックデバイスの動作を初めて実証した。また,TSVおよび再配線(RDL)を最適に設計し,チップ間接続距離の大幅な短縮とデータ伝送量の増大を図ることに成功し,25 Gbpsの高速伝送を確認した。更に,大電流が流れる微細なTSVとチップ上の接続端子部に用いるはんだ材料とプロセスを開発し,200 Wクラスの安定な電源供給を実現した。
本稿では,ハイパフォーマンスプロセッサの実現に向けた3次元実装技術として重要な要素技術開発について述べる。
高速インターコネクト用低コストアクティブオプティカルケーブル (969 KB)
八木澤 孝俊, 大工原 治, 小宮山 武司, 井出 聡, p.30-36
コンピュータの演算能力向上に伴い,スーパーコンピュータやハイエンドサーバでは,コンピュータ間の相互接続(インターコネクト)がますます重要になっている。従来,それらは電気ケーブルにより電気的に接続されていたが,信号の高速化に伴う伝送可能距離の低下により,近年では光で信号を伝送するアクティブオプティカルケーブル(AOC)が適用され始めている。AOCでは,光ファイバーの広帯域特性により信号の伝送距離は飛躍的に伸びる一方で,高コストであることが課題である。
本稿では,富士通研究所の光モジュール低コスト化技術を活用して富士通コンポーネントが開発した高速インターコネクト用AOCについて述べる。本開発では,100 Gbps(25 Gbps×4チャネル)動作に向けて,安価な14 Gbps向けの面発光レーザーを25 Gbpsで動作させるオーバードライブ技術と,汎用的なフレキシブル基板を用いた安価な構造で光部品のパッシブアライメント実装を実現する技術を適用した。これらの技術を用いたAOCは,2015年8月に世界で初めてInfiniBand EDRに認定された。
小型・薄型の電子機器向け熱輸送技術 -樹脂製ヒートパイプ- (1.06 MB )
尾形 晋, 助川 英次, p.37-42
情報空間と人とのインターフェースとして,スマートフォンをはじめとするモバイル端末やウェアラブル端末は,人々の生活に欠かせないものとなっている。これらの機器では,薄く,軽く,柔らかく,かつ熱を効率良く運ぶ放熱技術が有効である。薄さ,軽さは機器の携帯性を維持し,柔らかさは着け心地の良さを実現する。また,効率の良い熱輸送は,機器表面をなるべく低い温度に保ちつつ,放熱性を高められる。これらの機器には通信用のアンテナが搭載されることが多いが,放熱部品が通信用の電磁波と干渉しなければ,機器の実装の自由度が高まる。筆者らは薄く,軽く,柔らかく,かつ電磁波を透過させる熱輸送技術を開発している。これは,厚さが0.5 mm以下の薄い樹脂製のヒートパイプであり,内部に注入した冷媒の気液相変化により熱を運ぶことで,樹脂でありながら同じ厚さの銅板と同等の伝熱性を発揮する。
本稿では,樹脂製ヒートパイプの開発に関して,まずプロトタイプの作製と動作確認を紹介した後,流路構造の変更による性能向上への取り組みについて紹介する。
革新的デバイス創製に向けたナノカーボン材料技術 (1.03 MB )
佐藤 信太郎, 近藤 大雄, 廣瀬 真一, 山口 淳一, p.43-50
炭素原子が蜂の巣状に結びついた原子一層分の材料であるグラフェンおよびそれを丸めて円筒状の構造にしたカーボンナノチューブは,高い電子移動度,高い電流密度耐性などの優れた電気特性のほか,高い熱伝導性・機械的強度を持ち,将来の電子デバイス用の材料として期待されている。シリコントランジスタに代表される半導体デバイスの微細化限界が目前に迫った今,筆者らのグループでは将来のブレークスルーを目指し,ナノカーボン材料のエレクトロニクス応用を目指した研究を行っている。
本稿では,まずナノカーボン材料の電子状態や特性,またその特性から期待されている応用について概説する。次いで,筆者らが取り組んできたナノカーボン材料の合成技術のほか,トランジスタ,配線,および放熱への応用を目指したこれまでの取り組みについて説明する。更には,現在取り組みつつある究極のデバイスを目指したグラフェンナノリボンの合成技術についても簡単に述べる。

IoTを支えるセンシング技術

ぶつからない車の実現を目指す車載レーダー向けミリ波デバイス・回路技術 (1.14 MB )
川野 陽一, 松村 宏志, 曽我 育生, 八木下 洋平, p.51-58
ぶつからない車の実現を目指して,車載カメラやレーダーを用いた安全装備の開発が盛んになっている。将来の安全自動運転車の実現に向け,自動車メーカー各社だけでなくGoogleなどの非自動車メーカーも参入し,開発は激化している。富士通研究所では,高周波用半導体を古くから開発しており,超高周波動作が可能な車載レーダーに向けたCMOS(相補性金属酸化膜半導体)回路技術を開発した。
本稿では,CMOSの高精度なデバイス評価や特性抽出に必要となる,ウェハ内に校正パターンを作り込むオンウェハ校正や,作製したデバイスモデルを用いて開発したパワーアンプ,およびそれを用いた4chフェーズドアレイ向け送信器チップについて述べる。また,周波数変調の高速性と線形性の両立が可能となる0.96 GHz/µsの変調速度を達成した結果についても紹介する。
呼気中のアンモニア成分だけを選択的に素早く測定できる携帯型呼気センサー (854 KB)
壷井 修, 百瀬 悟, 高須 良三, p.59-64
近年,急速に少子高齢化が進んでいる。現役世代の健康寿命を増進させるために,病気の早期発見と生活習慣の改善をサポートする,予防医療を主眼にした個別ヘルスケアへの期待が高まっている。このような状況の中,先端のデバイス技術やICTを活用して自宅や診療所などで手軽に継続的に体の状態の指標をモニタリングする手段が有効と考えられる。そこで筆者らは,呼気中の生体由来のガス成分を調べて様々な疾病の早期発見を目指した呼気分析技術に注目し,呼気センサーシステムを開発した。
本稿では,呼気に必ず含まれている物質であるアンモニアを区別して検知できる呼気センサーシステムについて説明する。半導体材料である臭化第一銅にアンモニアガス分子を選択的に吸着させる独自の検知メカニズムにより,ほかの生体由来のガスに対して3桁以上高い選択比でアンモニアガスを検出することに成功した。開発したガスセンサーデバイスを呼気センサーシステムに搭載することで,苦痛を伴う採血なども必要なく,体温計のような手軽さで生活習慣による息の成分の変動を継続的に調べることが可能となった。
Fan Out Wafer Level Package技術によるテラヘルツ対応アンテナ一体型モジュール (886 KB)
石橋 大二郎, 中田 義弘, p.65-71
300 GHzから3 THzまでの超高周波領域に属するテラヘルツ波と呼ばれる電波は,超高速無線通信や高解像度なイメージセンサーへの応用が期待されている。このような周波数帯域では,半導体チップの接合に利用されるはんだ接合やワイヤボンディングなどの必要不可欠な構造が,モジュールの高周波特性に悪影響を与えることが知られている。筆者らは,それらの影響を抑制するモジュール構造として,次世代のパッケージング技術の一つであるFOWLP(Fan Out Wafer Level Package)を応用したテラヘルツ対応アンテナ一体型モジュール技術を開発した。異なる素子をモールド樹脂で一体化して封止し,再配線技術により素子間を短距離に接続するFOWLP技術を適用することによって,テラヘルツ波帯の周波数で動作する半導体チップとアンテナの接続構造の短距離化および低損失化を実現した。
本稿では,FOWLP技術を応用したテラヘルツ対応アンテナ一体型モジュールについて述べる。

グリーンなICTを支える環境・エネルギーデバイス

窒化ガリウムHEMT技術のパワーエレクトロニクスへの応用 (820 KB)
廣瀬 達哉, 今井 三貴, 渡部 慶二, p.72-78
窒化ガリウム(GaN)はワイドバンドギャップ半導体と呼ばれる化合物半導体材料であり,既に光源用LEDとして実用化されている。GaNを用いたGaN HEMT(高電子移動度トランジスタ:High Electron Mobility Transistor)は低い動作抵抗と高い破壊耐圧を有し,あらゆる電力・エネルギーを扱う機器の高効率・小型化を実現できる次世代のパワー半導体である。GaN HEMTも,既に高周波ワイヤレス通信システムやレーダーシステムの送信用電力増幅器として実用化されている。近年では,破壊耐圧600 V以上のGaN HEMT構造を大口径かつ安価なシリコン(Si)基板上に製造する技術の確立とあいまって,データサーバやPC用途のスイッチング電源用パワーエレクトロニクス機器の高効率化に向けた開発が急ピッチで進められている。富士通研究所では,将来のICT製品への適用に向けてGaN HEMTを用いたスイッチング電源の研究開発を進めている。
本稿では,これまで開発してきたGaN HEMT技術をスイッチング電源へ応用する際の設計技術,および省エネルギーへの貢献について報告する。
環境・エネルギー課題を解決する人工光合成技術 (1.50 MB )
今中 佳彦, 眞鍋 敏夫, 穴澤 俊久, 天田 英之, p.79-85
持続可能な地球環境社会を構築していくためには,二酸化炭素などの温室効果ガスの低減が急務であり,化石燃料に頼らない貯蔵可能でクリーンなエネルギーの創製が望まれている。人工光合成は太陽光と水と二酸化炭素を用い,光が反応に関与する明反応と関与しない暗反応を組み合わせて,酸素,水素および有機物などのエネルギーを人工的に生成する技術である。本技術は近年,環境とエネルギーの両課題を同時に解決する技術として注目を浴びている。富士通では,持続可能な社会を実現するための環境・エネルギーに関する基盤技術の一つとして,本技術の研究開発を進めている。
本稿では,太陽光と光励起半導体材料から生成される電子を二酸化炭素と水分子に化学反応させて,貯蔵可能なエネルギーを創製する高効率な人工光合成システムの開発に向け,現在取り組んでいる明反応と暗反応に適用する材料やデバイスの基礎的研究について紹介する。

人にやさしいインターフェース技術

豊かな触感を提示する超音波触感ディスプレイ技術 (817 KB)
谷中 聖志, 鎌田 裕一, 宮本 晶規, 遠藤 康浩, p.86-91
富士通研究所は,ガラス表面に超音波振動を発生させると生じるスクイーズ効果を利用して,ディスプレイに触れた際に感じる摩擦力を変化させる超音波触感ディスプレイ技術と,スマートフォンやタブレット画面に表示される画像に連動して摩擦触感の変化を提示する超音波触覚インタラクションシステムを開発した。従来の振動触感がクリック感やぶるぶる感などの単純なパターンでしか表現できなかったのに対し,今回開発した超音波触感ディスプレイは,画面に表示されたボタンなどの境界,微小な凹凸,簡単な素材感など,より豊かな触感を表現できる技術である。これによって,情報端末の操作感を向上させるだけでなく,視覚障がい者のサポートや触感の遠隔伝送などの新たな適用分野への拡大が期待できる。
本稿では,富士通研究所が開発した超音波触感ディスプレイ技術の概要について述べる。
IoT機器への効率的な給電を実現する3次元ワイヤレス給電システム (893 KB)
内田 昭嘉, 下川 聡, 松井 清人, 大島 弘敬, p.92-98
モバイル端末やウェアラブルデバイスなどのIoT(Internet of Things)機器へのワイヤレス給電は,多くのユーザーから望まれている。このような要求に対して磁界共鳴型ワイヤレス電力伝送技術を用いることで,離れた受電器への給電が可能となる。しかし,送電器と受電器が離れることで受電器の3次元姿勢(送電器に対する相対的な角度や向き)は多様となり,その姿勢によっては給電効率が著しく低下してしまうという問題があった。筆者らは,受電器の姿勢に応じた磁界方向制御によって,3次元的に多様な姿勢をとる受電器に対して効率的なワイヤレス給電を維持する制御方式を開発した。磁界方向制御は,複数送電コイルの電流経路を選択することで行う。その適用例として,テーブル型送電器とスマートフォンサイズの受電器を試作した。それらを用いて,卓上空間でスマートフォンを使用中にワイヤレス給電が可能であることを実証し,3次元(以下,3D)ワイヤレス給電システムの実現可能性を示した。
本稿では,筆者らが開発した3Dワイヤレス給電システムについて説明する。またその普及のために,国内外で標準化や制度化に向けて行っている全方位的な取り組みの概要も紹介する。