株式会社オリエントコーポレーション 様

富士通との「共創」により、少ない教師データでも高い正答率のチャットボットを実現し、顧客満足度を向上

信販系クレジットカード会社の最大手である株式会社オリエントコーポレーションでは、カード会員数および取扱高の拡大によるコールセンターへの問い合わせの増加にともない、顧客満足度の向上を目指して、顧客接点高度化ソリューションを導入した。富士通との「共創」により、少ない教師データでも高い正答率を実現するチャットボットを構築し、顧客との新たなチャネルのコミュニケーション基盤を実現した。

課題
効果
課題増加している問い合わせ電話の呼量を減らし、顧客満足度を向上したい
効果チャットボットによる24時間対応で呼量の低減に寄与。顧客満足度の向上にも繋がる

※呼量:時間あたりの回線占有量。呼量を減らすことで待ち時間を短縮し、さらに多くの問い合わせを受けることが可能となる。

課題従来の電話、メール、FAQに加え、新たなチャネルでのコミュニケーションを導入したい
効果電話を好まない人にも気軽に利用できるチャネルとしてチャットボットによる問い合わせシステムを構築
課題先行する他社サービスよりも正答率の高いチャットボットを導入したい
効果富士通との「共創」により少ない教師データでも正答率を向上、PDCAを回すことでさらに正答率を高める

背景

カード会員数および取扱高の拡大により
問い合わせ電話の呼量が課題に

株式会社オリエントコーポレーションは、『かなえる、のそばに。』のブランドスローガンを掲げ、「オリコカード」でおなじみのクレジットカードをはじめ、業界トップシェアを誇るオートローン、歴史あるショッピングクレジットなど、さまざまな金融サービスを提供している。

同社は近年、Fintech分野に力を入れており、「スマートフォン世代、デジタルネイティブ世代の顧客に、優れたUI、UX、高い利便性のサービスを提供していくことが重要となってきています。そのためには技術的に裏付けられたものが必要で、Fintech関連の情報収集のために米国のサンノゼに毎年社員を派遣しています」とカード・ペイメントグループ カード・ペイメント企画部長の高畠 健一氏は語る。

オリエントコーポレーションのカード事業は右肩上がりの成長を続けている。「クレジットカードの会員数、取扱高共に大きく伸長しています。提携カードやプロパーカードに加え、ビジネスカードも伸びています」と高畠氏は話す。

会員数、取扱高も伸びる中で、一つの課題が浮き上がってきた。それが電話による問い合わせの増加である。カード・ペイメントグループ カード業務推進部 課長の菅原 佑介氏は、「当社ではこれまで電話とメール、それにWebサイトのFAQで、お客様からのお問い合わせに対応してきました。カードご利用のお客様が増えれば当然お問い合わせも増えます。しかし、お問い合わせが増えたからといって、すぐにコールセンターの人員を増やすことは困難です」と語る。

問い合わせの応対時間を短縮すればそれまで以上の電話を受けることはできる。しかし、「電話でのお問い合わせ対応は、当社にとってお客様との大切な接点になっており、安易に電話応対時間を短くすることでお客様の満足度を損ねてしまっては意味がありません。そのため、呼量そのものを減らすような施策が求められていました」と菅原氏は話す。従来の電話、メール、FAQに加えた新たなチャネルの検討がスタートした。

株式会社オリエントコーポレーション
カード・ペイメントグループ
カード・ペイメント企画部長
高畠 健一 氏
株式会社オリエントコーポレーション
カード・ペイメントグループ
カード業務推進部
課長
菅原 佑介 氏
株式会社オリエントコーポレーション
カード・ペイメントグループ
カード・ペイメント企画部
谷口 弘樹 氏

経緯

PoC(実証実験)により
チャットボットの正答率を高める

そんな折、転機となったのは富士通からの提案だ。毎年秋に米国ラスベガスで開催されている、世界最大のFintech、決済分野に関するカンファレンス「Money 20/20」で、出展していた富士通からチャットボット「CHORDSHIP」の紹介を受けたのだ。「ちょうど新たなコミュニケーションチャネルをどう作っていくか模索していたタイミングで富士通から提案を受け、PoC(実証実験)を行うこととなりました」と話すのは、カード・ペイメントグループ カード・ペイメント企画部の谷口 弘樹氏だ。

富士通の提案した顧客接点高度化ソリューション「Customer Engagement solution CHORDSHIP(コードシップ)」(以下、「CHORDSHIP」)は、AI技術「Zinrai」を活用した高精度な応対が可能なチャットボットだ。高畠氏は、「CHORDSHIPは、ルールベースによる絞り込みと機械学習をあわせた対話・機械学習ハイブリッドAIで、少ない教師データでも運用ができます。お客様が入力する質問内容の細かな言い回しなどを学習させることで、言葉のゆらぎを解消して正答率を高めていけます。PoCを実施して他社のものと比較した結果、有用性が高いという結論に達し、採用を決めました」と振り返る。

PoCにおいてはオリエントコーポレーションと富士通がアイデアを出し合いながら、正答率を高めていった。「先行してチャットボットをサービスに組み込んでいる同業他社より正答率を高くすることを目標に進めました」と谷口氏。

当時、一般的なチャットボットの正答率は60%前後と言われていたが、PoCを進めていくにつれ、CHORDSHIPの正答率は高まり、当初の目標値を超えた。「質問のカテゴリーを最初に提示し、お客様が聞きたいことを絞り込むことで正答率を上げていきました」と谷口氏は説明する。さらに、言葉の揺らぎや類義語などを高い精度で認識させるための工夫なども富士通とのPoCによる成果だったと谷口氏は付け加える。質問のカテゴリー分けと、結果をもとにした辞書機能の充実により、品質の高いコミュニケーションが実現できることが実証できた。

ポイント

富士通との共創(Co-creation)によって生み出された
新たなコミュニケーションツール

今回のCHORDSHIP導入は、オリエントコーポレーションと富士通による共創によって実現した。谷口氏は「お客さまとの新たなコミュニケーションのチャネルとして、チャットボットを導入するという方向性は決めていましたが、それ以外は未知の状況でした。既存のデータで何ができるか、どこをゴールにするか、目標を達成させるためにはどう進めるべきかなどについて、専門的な知識や知見をもとに富士通にアドバイスをいただきながら、一緒に創っていきました。富士通は本当に頼りになりました」と富士通との共創を評価する。高畠氏も、「仮に同じツールを他社が持ってきても、今回のように成功裏にプロジェクトを終えることはできなかったと思います。課題を自分事として一緒に乗り越えてくれた富士通だからこそ実現できました」と付け加える。

CHORDSHIP導入から1年、問い合わせにチャットボットを利用する人も増えている。菅原氏は、「実運用でも想定以上の高い正答率で、呼量の低減にも繋がっています。ただ、実運用では、想定していたよりも質問の種類が多いので、幅広く、そして深く、回答を追加していかなければなりません」と語る。分析ツールである「CHORDSHIPアナライザー」を活用して、富士通とも話し合いながら改善や回答の追加を実施していく。こうしてPDCAを回すことでさらなる正答率の向上を図っている。

CHORDSHIPによる24時間応答も導入の大きな効果の一つだ。「電話によるお問い合わせは9時半から17時半までです。それ以外の時間帯はメールかFAQによる対応でしたが、そこにチャットボットが加わりました。9時半までと17時半以降もチャットボットには多くのアクセスがありますので、お客様へのサービス向上にも繋がっていると思います」と菅原氏は話す。

加えて谷口氏は、「チャットボットではお客様が具体的に質問内容を入力するので、お客様が本当に困っていることを明確に把握できるようになりました。これも導入効果の一つです」と付け加えた。

効果と今後の展望

富士通と共にさらなる正答率の向上を目指す。
社内利用やSNS連携も視野に

今回のチャットボット導入による一連の活動は、オリエントコーポレーション社内表彰制度で社長賞を受賞したという。「最終目標はもっと上ですが、当初目標としていたサービスは実現できました」と高畠氏。

CHORDSHIP稼働から1年近く経過し、現在は運用を行いながら第2フェーズに入っている。菅原氏は「チャットボットで解決できない質問の際に、自然に有人チャットに移行するSNS連携なども視野に入れています。他にも、社内でのチャットボット利用なども検討していく予定です」と話す。

稼働後も富士通の支援は継続しており、「分析手法や改善点などを話しています。チャットボットは正答率がすべてです。正答率の向上がお客様満足度の向上に繋がります」と菅原氏は話す。

高畠氏は今後の展望について、「お客様満足度の向上にゴールはありません。常にその時代にあった最新のテクノロジーを導入していくことが大切です。その際には、デジタルイノベーターである富士通に強力なバックアップをしていただきながら、競争力を失わないように常に取り組んでいく必要があると思っています」と力強く語った。

株式会社オリエントコーポレーション 様

所在地 東京都千代田区麹町5丁目2番地1
代表者 代表取締役 河野 雅明
創業 1954年
資本金 1,500億円(2018年3月31日現在)
社員数 3,634人(2018年3月31日現在)
ホームページ https://www.orico.co.jp/新しいウィンドウで表示
概要 個品割賦事業、カード・融資事業、銀行保証事業、決済・保証事業

[2019年4月掲載]

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