旭化成株式会社 様

「つながる×ICT」、デザイン思考で新しい働き方を創出
多角的な事業と多彩な人財を活かしイノベーションを起こす

日本を代表する総合化学メーカーである旭化成グループ。同社は、本社の日比谷移転を機に“Connect”をキーワードに働き方改革に取り組んだ。多角的に事業を展開している同社の多彩な人財を活かせるような新しい働き方の創出が狙いだ。そこで、「FUJITSU IT Consulting ワークスタイルUXデザインコンサルティング」を活用。富士通の経験豊富な専門家のもと各部署からの代表メンバーによるワークショップを開催し、デザイン思考で将来のありたい働き方を描き、その実現のための施策を導き出した。

課題
効果
課題本社移転を機会に、さらなる成長の原動力となる新しい働き方を創出したい
効果代表メンバー約40名の社員によりワークショップを開催。デザイン思考で将来ビジョンを描き、実現のための施策を導き出した
課題短期間でワークスタイル変革の方向性を定め、新オフィスの設計に活かしたい
効果豊富な実績とノウハウを駆使して短期間でアイデアを引き出し、新しい働き方を具現化。コネクトスペースなどに反映
課題目指すべきワークスタイル変革を企業文化として定着させたい
効果社内のデジタルサイネージで「ビジュアル化したワークスタイル変革のビジョン」、「イラスト化したワークシーン」を周知

背景

本社移転を契機に、
成長の原動力となる新しい働き方を創出

「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」というグループ理念の実現に向け、創造と挑戦を続ける総合化学メーカー、旭化成グループ。その90年を超える歴史の中で、時代のニーズや要請に応え、事業の多角化を図るとともに、社会や環境の問題に対し製品やサービスの提供により解決策を示してきた。グループスローガン「昨日まで世界になかったものを」のもと、2016年に旭化成はグループシナジーの創出を目的に事業持株会社制に移行し、マテリアル(繊維・ケミカル・エレクトロニクス)、住宅(住宅・建材)、ヘルスケア(医薬・医療・クリティカルケア)の3つの事業領域に再編し、「収益性の高い付加価値型事業の集合体」を目指している。

多角的な事業のもとで培った多様な製品・技術と多彩な人財は旭化成の大きな強みだ。その強みを活かすためにはグループ内の連携強化が重要なポイントとなる。旭化成株式会社 取締役 兼 常務執行役員 柿澤信行氏は事業部間連携の課題についてこう話す。「中期経営計画(2016年度〜2018年度)のキーワードに“Connect”を掲げているように、旭化成のさらなる成長には部署同士が垣根を超えてつながり、新たな社会的価値を創出していくことが必要です。またマテリアル領域における効率的な原料調達や、異なる領域の融合による新事業の創出など全体最適の視点が求められています。多角化は旭化成の強みですが、その一方で事業部ごとに部分最適が進んでおり、横の連携の生まれにくい側面があります」

部分最適から全体最適へ、社員の意識変革をどう促していくか。「オフィスから物理的に壁やパーティションをなくすなど、一からオフィスのデザインをやり直し、つながりの生まれやすい環境を作るハード面と、ワークスタイル変革のソフト面の両面から“Connect”の実現を目指しました」(柿澤氏)

2017年2月、旭化成は本社移転先として東京ミッドタウン日比谷のオフィスフロア(日比谷三井タワー)を選定した。「主力事業部が集まり、3,000人規模の社員による引越しとなりました。かつて50年以上に渡り東京本社のあった日比谷の地への移転を契機に、さらなる成長の原動力となる新しい働き方を創出するべく専門コンサルタントに入っていただくことにしました」と、日比谷移転プロジェクト長としてプロジェクトを主導した柿澤氏は振り返る。

旭化成株式会社
取締役
兼 常務執行役員
柿澤 信行 氏
旭化成株式会社
総務部
企画総務室
室長
志田原 周作 氏
旭化成株式会社
総務部
企画総務室 総務グループ
課長代理
須本 純代 氏

ポイント

デザイン思考※1による
共創アプローチを体感し高く評価

旭化成はワークスタイル変革の支援を受けるべく、什器メーカー、コンサルティング会社、ICTベンダーなど複数社に提案依頼の声をかけた。採用のポイントについて、総務部 企画総務室 室長 志田原周作氏はこう話す。「通常、ワークスタイル変革のコンサルティングには3年程度の期間が必要と聞いていました。本社移転は2018年9月に決まっていたことから、ワークスタイル変革の方向性をオフィスの設計に活かすためには、非常に短期間で課題抽出からビジョン策定、アクションプランの作成までを行う必要がありました。どのように進め、アウトプットとして何がでてくるのか。各社のプレゼンテーションでは具体性を重視しました」

複数のプレゼンテーションの中で最も共感できたのが、富士通だったと志田原氏は振り返る。「富士通の共創ワークショップ空間『FUJITSU Digital Transformation Center(DTC)』において、ワークショップの進め方を体感できたことはとても有意義でした。経験豊富な専門家のもと、デザイン思考でワークスタイル変革のビジョンや施策を具現化していく、共創のアプローチを高く評価しました。変革ビジョンのビジュアル化例をいくつか見せていただいたのですが、『当社の場合はどうなるのだろう?』と非常に期待感を持ちました」

コンサルティングの豊富な実績と、それに基づくノウハウを有していることもDTCでの体験を通じて実感できたと志田原氏は話し、こう付け加えた。「ワークスタイル変革の実現で欠かせないICTに関しても富士通はアドバンテージがありました。短期間であっても富士通となら一緒に旭化成の新しい働き方を創り出していけると確信できました」

旭化成は、コンサルティングからICTまでトータルでサポートする総合力を高く評価し、「FUJITSU IT Consulting ワークスタイルUXデザインコンサルティング」の採用を決めた。

※1 デザイン思考: 人間中心デザインに基づいた、イノベーションを生み出すために、デザイナーの仕事術をビジネスに適用するもの

コンサルティングの内容

ワークショップを開催し、
ビジョンからワークシーン、施策までを導き出す

2017年7月、富士通が共創の場として開設した「HAB-YU」において、旭化成グループの各事業会社や事業本部などの代表メンバー約40人が参加し、「新オフィスでのワークスタイルを考える」ワークショップが開催された。「様々な意見やアイデアが活発に出るように、部課長と中堅・若手の中から年代、性別、考え方も多様な人財を各々の部場長に推薦してもらいました」(志田原氏)

ワークショップに参加した総務部 企画総務室 総務グループ 課長代理 須本純代氏は感想をこう述べる。「これまで経験したワークショップや研修とは全く違っていました。目指す未来の働き方に合った写真入りのインスピレーションカードを選んだり、新オフィスで実現したい施策について自分でイラストを描いてカード化したりと、自然に会話も弾みました。また将来のありたい姿を描き、共有した上で、そこから今何をするべきかを考えていくデザイン・アプローチの手法はとても新鮮でした。専門のファシリテーターは経験豊富で能力が高く、柔らかな雰囲気の中で活発にアイデア出しや議論が行えました。丸一日のワークショップは時間を短く感じるほど充実感があり、とても楽しかったです」

■ 将来の「ありたい姿」から実現したい「施策」を導き出す

ワークスタイルUXデザインコンサルティングでは、今回のワークショップで参加者が描いた「将来のありたい姿」を抽象化し、ワークスタイル変革のビジョンをビジュアル化して提示した。「様々な意見を集約し、変革ビジョンとして1つのビジュアルに結実するまとめ方に富士通のノウハウが活きています。日比谷の新オフィスからはじまる新しいワークスタイルの目指す方向性が一目でわかります」と志田原氏。

■ ワークスタイル変革のビジョンをビジュアル化

また変革ビジョンの実現に向け、ワークショップで出てきた100以上のアイデアをもとに5つの変革テーマを抽出し、3つのカテゴリーに20のワークシーンを整理した。さらにワークシーンは狙い、現状、変革、ICT施策、想定効果の各項目とともに、わかりやすいイラスト入りで1つのシートにまとめられている。

■ 5つの変革テーマを抽出し3つのカテゴリーに20のワークシーンを整理

効果と今後の展望

ワークショップで出たアイデアを反映させた
「コネクトエリア」

今回のワークショップでは「つながり」や「ICT」をキーワードにしたアイデアが多くあった。その中でアイデアをオフィスの設計に反映させた代表例の1つが「コネクトエリア」だ。通常の執務室や会議室とは異なる空間で創造的に意見をかわすことにより、イノベーションを生み出していく狙いが込められている。変革テーマの「アイデアがひらめき、広がるオフィス」、ワークシーンの「ソリューションスペースでアイデアが繋がる」、「ひらめきやアイデア発想を促す仕掛け」を実現する。

コネクトエリアについて須本氏はこう説明する。「各フロアにホール(プレゼン)型、ライブラリ型、カフェ型、サロン型の4つのスペースをつくりました。スペース内ではICT環境も整い、複数拠点と同時につながったり、モニターを使ってスムーズに資料を共有したり、場所にとらわれない効率的な働き方を実現します。予め時間を決めて会議室でミーティングを行うのではなく、『ちょっといい?』と関係者が声を掛け合い集まるといったシーンでコネクトエリアはよく利用されています。抽象的な概念の“Connect”を具体化した点も大きな意味があります。また普段は関わりのないエリアに足を運ぶ機会が増えることで新しいつながりが生まれやすくなります」

■ 垣根を超えてアイデアがつながる「コネクトエリア」

新オフィスではコネクトエリア以外でも、以下のワークシーンの実現を目指している。

  • 自席同様の仕事環境で、場所に捉われず成果を出す
  • Skype専用BOXで集中ワーク、リモート会議
  • 完全電子化されたワークフローでスピード承認
  • 会議調整と会議室予約に時間をかけず、会議に集中
  • ペーパーレスを徹底し、仕事も心も軽く
  • 電子会議ツールを使いこなし、クリエイティブに議論を
  • 社内外人財DBにアクセス、繋がりから新たなビジネスを

今回のワークショップの意義について柿澤氏は「ワークスタイル変革の主役である社員の声を引き出し具現化することで、経営層、日比谷移転プロジェクトのメンバーはもとより各社員が漫然と思っていた『旭化成のこれからの働き方』を明示できたことは大きな意義があります。方向性が定まったことで、本社移転を契機にワークスタイル変革を一気に加速することができました。また旭化成の社員は、隣の事業部が何をやっているのかについて関心が高く、“つながり”を求めており、“Connect”を醸成する土壌があることもわかりました。富士通にはハードスケジュールの中でよくまとめあげていただき、とても感謝しています」と評価する。

今後は、目指すべきワークスタイル変革を企業文化として定着させることが重要になると志田原氏は指摘する。「富士通からの提案で、社内情報を発信するデジタルサイネージにビジュアル化したワークスタイル変革のビジョンや、イラスト化したワークシーンなどを定期的に流しています」

今後の展望について柿澤氏はこう話す。「ペーパーレス化もさらに進めていくことが必要です。2019年4月から部単位でのテレワーク導入がスタートし、ワークシーンの「自席同様の仕事環境で、場所に捉われず成果を出す」の実現に向けて大きな一歩を踏み出します。“日比谷からはじまる新しいワークスタイル”はまだまだ道半ばです。富士通にはこれからも当社の業務や働き方を深く理解した視点から、ICTによる先進的な提案を期待しています」

移転プロジェクトメンバー
(左より)旭化成株式会社 菅原 裕二氏、寺田 秋夫氏、柿澤 信行氏、志田原 周作氏、須本 純代氏

旭化成株式会社 様

所在地 東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 日比谷三井タワー
代表者 代表取締役社長 小堀 秀毅
設立 1931年5月21日
資本金 103,389百万円
社員数 34,670人
ホームページ https://www.asahi-kasei.co.jp/新しいウィンドウで表示
概要 マテリアル領域(繊維事業・ケミカル事業・エレクトロニクス事業)、住宅領域(住宅事業・建材事業)、ヘルスケア領域(医薬事業・医療事業・クリティカルケア事業)

[2019年4月掲載]

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