非来館とAI活用で目指す
「新しい図書館」の姿
~沖縄県立図書館の取り組み~

沖縄県立図書館 様

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1910年(明治43年)創設と古い歴史を持ち、約95万冊もの蔵書を誇る沖縄県立図書館様。2023年に富士通Japanの「FUJITSU文教ソリューション iLisfiera(アイリスフィエラ)」の機能連携を含む図書館システムの刷新を実施。オンライン(非来館)で利用者登録ができる機能を実装したほか、自主学習やビジネスで利用可能な座席をWebから予約できる機能、Web書棚、蔵書探索AIなど新たなサービス・機能で、利用者の利便性向上を図っています。新たな図書館の姿を模索する同館の取り組みを紹介します。

導入事例概要

オファリングテーマ 中・大規模図書館システム iLisfiera

課題と効果

課題
効果
課題県立図書館に来館しないと利用者カードを作れない、移動図書館から県立図書館の全データを検索できないなど遠隔地居住者の利便性が良くなかった
効果オンライン利用者登録機能を実装したほか、移動図書館と県立図書館の全データを同期し検索可能とするなど、非来館でも各種サービスを利用でき、遠隔地居住者の利便性が向上した
課題自主学習可能席が「早い者勝ち」で、座席確保のために開館前から行列ができるなど、スムーズな図書館利用ができなかった
効果iLisfieraと連携した座席予約システム「とりたろう」でWeb座席予約が可能になり、図書館を利用しやすくなった
課題書誌や資料のデータベース登録、企画展などで紹介する本のリスト作りなど職員のバックヤード業務の負荷が大きかった
効果新しい図書館システムでは、データベース登録やリスト作りで入力項目を選べるようになり、リストや帳票作成の負担が軽減

導入の背景

移転・リニューアルオープンで見えてきた新たな課題とは

 沖縄県立図書館(以下、同館)は、1910年(明治43年)に開館し、その後、一度の移転を経て、2018年に那覇市中心街の複合施設内で新たに開館しました。沖縄県庁に近い那覇バスターミナルと同じ建物で、モノレール駅と直結するなど県内外からアクセスしやすいこと、開館時間が平日・土日とも午後8時までに延長されたことなどもあって通学・通勤後でも利用しやすくなり、2022年度の入館者数は39万人を超えています。※ 令和5年度沖縄県立図書館要覧より
 同館館長の大宜見 勝美氏は、「県民に開かれた知の拠点、琉球・沖縄関係資料の中核的図書館、地域や県民の課題解決を支援する図書館、県域の中心となる広域型図書館の4つを掲げて図書館運営に取り組んでいます」と説明します。ただ、こうした目指す姿の実現には、いくつかの課題がありました。
 沖縄県教育庁 生涯学習振興課 管理班 主査で、システム更新時の担当だった小池 隆介氏は「移転により建物が大きくなり、イベントスペース、ビジネスルームなど県民に貸し出せるスペース、自主学習可能席や社会人が利用できるビジネス席などが拡充されました。県民に開かれた図書館としての役割をさらに果たせるようになりましたが、一方で座席が取り合いになっていました」と振り返ります。「中学・高校の定期テスト前や受験シーズンには開館前から長蛇の列ができてしまうなど、利用者の利便性向上という視点で課題が浮き彫りになっていました」(小池氏)。
 また、広域型図書館としての視点では、来館しにくい地域や島嶼地域の人たちにも利用しやすい機能が求められます。同館の企画・支援班 主任の仲尾 涼子氏は、「以前は県立図書館にまで足を運ばないと利用者カードを作れないことが課題でした。来館しにくい地域や島嶼地域の人たちは、(利用者カードを)『作れないから利用しない』となってしまっていたのです」と指摘します。さらに、資料・情報班 主任の大嶺 花氏は「琉球・沖縄関係資料の中核的図書館としての視点では、書誌や郷土資料のデータベースへの登録、企画展などで紹介する本のリスト作りなどバックヤード業務の効率化が課題でした」と説明します。


沖縄県立図書館様 館内の様子

導入の経緯

選定ポイントは蔵書探索AIなど新しい提案があったこと

 こうした課題を解決し、4つの目指す姿を実現していくには、さらなるICT活用が不可欠です。そこで同館では、2023年度に図書館システムを富士通Japanの「FUJITSU 文教ソリューション iLisfiera(アイリスフィエラ)」に更新することを決めました。小池氏は、「以前も富士通のシステムを導入・活用していたので、結果的にはそれを更新したかたちですが、以前のシステムと比べて利用者の利便性を高めるさまざまな新しい提案があったことが選定のポイントでした」と話します。
 具体的には、利用者カードをオンラインで申請できる機能をはじめ、同館の資料を検索した結果をWeb上で実際の本棚のように見ることができる「Web本棚」、さらにはAIを活用した新たな本の探索方式「蔵書探索AI」などです。とくに同館を利用するために必須の利用者カードをオンラインで申請・登録できるようになると、離れた地域にお住まいの人たちも簡単に利用者カードを作れるようになり、読みたい本の予約・受取りの申請など県立図書館のさまざまなサービスを利用できるようになります。システム更新の際にこうした機能の提案があったことで、「当館が県民の方々により身近な存在となり、利用が促進されるという期待が持てました」と小池氏は評価しています。


座席予約システム「とりたろう」

導入の効果

バックヤード業務の効率化や利便性向上などで効果を実感

 新しい図書館システムは2024年3月から稼働開始し、同館ではさまざまな効果を実感しています。仲尾氏は、「オンラインで利用者登録ができるようになったことの意義は大きいと感じています」と話します。「島嶼地域など離れた地域の人たちが非来館で、利用者カードを申請・登録し、読みたい本の予約など各種サービスを利用できるようになりました。今後、利用者が最寄りの市立図書館で予約した本を受け取れる仕組みにすれば、利便性はさらに高まります」(仲尾氏)。小池氏は、「座席予約システムの評判が上々です。どのくらい席が埋まっているかをWebで確認して座席を予約できるので、並ばずにスムーズに図書館を利用できます。『とりたろう』の愛称で親しまれ、利用者が増えるきっかけにもなっています」と効果を示します。
 バックヤード業務の効率化の視点でも効果がでています。大嶺氏は、「企画展やイベントの際には、紹介する本や資料についてのリストや帳票を作成します。これまでのシステムでは決まった項目しか入力できず、入力できない項目は職員が毎回、補足していたので手間がかかっていました。新しいシステムでは任意に項目を選べるようになり、リストや帳票の作成にかかる負担が軽減されました」と説明します。
 さらに、沖縄県では遠隔地や島嶼地域の人たちの読書機会創出を目的に、移動図書館のサービスを提供しています。移動図書館というと専用車両によるサービスのイメージですが、同館では、陸路だけでなく空路・海路も用い、県北部地域や島嶼地域に「空とぶ図書館」の名称でサービスを提供しています。小池氏は、iLisfieraを導入したことで「移動図書館の運用もしやすくなりました」と話します。仲尾氏も「訪問先の自治体からのリクエストに応じて本を選び、持って行くのですが、以前はその場で関連書や類書などを聞かれても移動図書館のシステムから当館のデータベースを検索することはできませんでした。新しいシステムとなってからは、県立図書館のデータと常に同期しているので、全ての蔵書データを検索でき、利用者のリクエストに応えることができます。利便性が向上しました」と効果を示します。

将来の展望

AIなどICTのさらなる活用で新たな県立図書館としての第一歩を

 今後、同館では、利用者の知的好奇心を広げたり、市町村の図書館との連携をさらに強化する施策の展開を考えています。小池氏は、「借りたい本がある、専門書で調べたいことがあるといった『目的を持って図書館に来る』という従来型の利用方法だけではなく、今後は『図書館に来たら知的好奇心が広がる』仕組みが求められると感じています」と話します。そうした仕組みの第一弾として同館が導入したのが「蔵書探索AI」です。これは、思いついた文章や興味があるキーワードを入力すると、それに合わせてAIが本を紹介してくれるサービスです。思いがけない本との出会いが期待できます。
 また、市町村立図書館との連携について、「新しい図書館システムではWebで予約した当館の本を、利用者が最寄りの市町村の図書館で受け取る運用が可能です。図書館間の相互貸借手続きを経ずに利用できるので市町村立図書館の負担軽減にもつながります。この仕組みをもっと広く県民、市町村立図書館の人たちに知っていただき、スムーズに機能するように働きかけることが大切です」(仲尾氏)。そのためには、県立図書館のサービスをもっと深く知ってもらうことが重要です。大宜見氏は「県民の方々には当館が那覇市の中心街にあり、交通アクセスの良い場所にあることをもっとアピールしていきたい。県立図書館をもっと広く周知し、来館者が増えれば当館の図書館システムや各種サービスについての県民の方からのご意見ももっと寄せられてくるでしょう。より良い県立図書館へと進化できるように富士通Japanにはご支援をお願いしたいです」と語ります。すでに新たな一歩は踏み出しているようです。

お客様情報

名称 沖縄県立図書館
URL https://www.library.pref.okinawa.jp/
所在地 沖縄県那覇市泉崎1-20-1
蔵書数 94万7577冊(令和5年4月1日時点)
来館者数 39万2537人(令和4年度)

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