香川大学×富士通Japan
共同研究「基幹システムの将来」取り組み事例

~教務データを連携・活用した
内製システム開発による
DX推進~

香川大学 様

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デジタルONE戦略に基づきDX推進研究センターの設置やデジタルONEアンバサダーの任命などを通して、内製システムを活用したDXを推進してきた香川大学様。富士通Japanは2022年から教務システム「Campus-Xs」を納入し、業務の安定化・効率化に貢献しています。本事例では、両者が更なるDXを目指して取り組んだ、教務データを連携・活用したシステム開発及び技術検証に関する共同研究についてご紹介します。

香川大学様のDX推進への取り組み
  • ・デジタルONE戦略の下、DX推進研究センターを設立し、デザイン思考・ローノーコードによる内製開発と業務改善を進めてきた
  • ・デジタルONEアンバサダー制度を開始し、学内の市民開発者の活動を支援してきた
共同研究に至る背景
  • ・更なるDXを目指して、基幹システムのデータ活用を検討していた
  • ・基幹システムのひとつである教務システムに富士通Japanを採用
  • ・教務システムのデータを連携・活用した内製システムの開発・検証に共同研究として取り組んだ
成果と今後の期待
  • ・短期間に参照系、更新系の2種類のシステムを開発することができた
  • ・本研究の手法を用いることで外部環境・ニーズの変化に対して迅速に、より安価に対応でき、且つデータの分散・二重入力を低減する効果が期待できる

香川大学のこれまでの取組と共同研究に至る背景

 香川大学は、4つのキャンパスと附属学校園を持ち拠点が分散していることから、経営上の課題を抱えていました。具体的には、業務データの集計や分析において、各拠点が独自のルールを持っており、それらを統合して大学経営に活かすためには、本部でデータのばらつきを調整し、不足しているデータを補う作業が必要でした。また、同じ業務でも拠点ごとに進め方が異なるため、職員の経験や知識が大学全体で共有されていませんでした。そのため、各拠点の独自性を維持しつつ、共通化できる業務を明確にする必要性が高まっていました。
 これらの課題を解決するために、香川大学は2021年7月に「デジタルONE戦略」を発表。デジタル技術を活用して大学全体を一つのキャンパスとして捉え、分散していたデータを一元管理し、業務の集約と共通化を進めています。これにより、教育、研究、運営の質を向上と業務の効率化を図っています。
 この取り組みを主導したのが、2021年5月に設立された教職員、学生、民間企業の出身者からなる「DX推進研究センター」です。従来の情報システム部門とは異なり、デザイン思考に基づいた学内業務の分析を行い、専門知識がなくても開発が可能なローコード/ノーコードツールを活用して、独自の業務システムを構築し、業務改善を推進しています。
 さらに、2022年4月からは、各部署にDXを推進する代表職員を「デジタルONEアンバサダー」として任命。各部署のデジタル技術に関する知識やスキルの向上を支援し、現場業務を支援するシステムの市民開発にも取り組みました。
 こうした取り組みの結果、これまでにDX推進研究センターでは90件以上の学内システムの開発に取り組み、各部署の職員が市民開発したシステムは計約200件にも達しています。
 香川大学 DX推進研究センター センター長 教授の八重樫 理人氏は、「いわゆる『ベンダーへの丸投げ』ではなく、業務系、情報系の部門に関係なく、職員一人ひとりがDXの当事者となって推進しようという機運が生まれてきました」と、一連の取り組みによる当事者意識の高まりを説明します。
香川大学 八重樫 理人氏

国立大学法人 香川大学 DX推進研究センター長
情報システム・セキュリティコース教授
八重樫 理人氏

 「その一方で、大学における情報系職員に求められることも、より高度になってきています。更なるDX推進に向けて、市民開発した内製システムを基幹システムと連携させたいというニーズが高まり、そのためのスキルも求められるようになりました。教務データなどの基幹システムにあるデータの有効活用は、大学のDX推進の伴を握ります。市民開発した内製システムから、教務システムのデータにアクセスして活用できるようになれば、現場の業務効率化とDX推進が更に加速されます。内製システムを教務システムと連携させ、API経由で教務データなどを安心・安全に取得・活用できるようにするのは、さすがに市民開発では難しいでしょう。我々のような情報系職員と教務システムのベンダーとの協業が不可欠です。そこで、共同研究というかたちで一緒にチャレンジしたいと考えていました」と振り返ります。
 こうした背景の中、香川大学では2023年9月に基幹システムのひとつである教務システムに富士通Japanの大学基幹ソリューション「Campus-Xs」を導入、利用を開始しました。「Campus-Xs」は「”つながり”による新たな価値創出“」をコンセプトに、学籍、カリキュラム、講義、履修、成績など大学業務で利用するデータの保有・管理・活用を可能にするシステムです。富士通Japanは以前から基盤システムや財務会計システムを納入してきた実績もありました。こうした経緯と信頼関係から、香川大学DX推進研究センターでは教務システムと連携した内製システムの開発と技術検証を目的に、富士通Japanと本共同研究を開始しました。
 この取り組みは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が提唱するスサノオ・フレームワークに沿ったものです。同フレームワークでは、組織(大学)の情報システムリソースを(1)基幹システム群(教務システム、人事給与システムなど)と(2)業務特化型独自システム群(内製システムなど)に分類し、DX推進には両者の連携が重要であることが示されています。

共同研究で「目指したこと」

 従来、基幹システムのデータはシステム内部で最適化されており、利用者が容易に取得・活用することが困難でした。そのため、データ活用には専用のデータベースや基盤を構築するなど、大規模な投資が必要でした。
 そこで、本共同研究では、まず富士通JapanがCampus-Xsの教務データを容易に取得できる参照系APIと、データの登録・更新が可能な更新系APIの2種類のプロトタイプAPIを提供することにしました。 そして第二に、プロトタイプAPIを通じた教務データを活用したシステムの開発を、香川大学が知見を有するローコード/ノーコードツールで実施することしました。開発するシステムの内容・機能は、香川大学と富士通Japanが共同で協議し、大学の具体的なニーズと課題に基づいて決定しました。
 これはスサノオ・フレームワークで重視されている、基幹システム(「守りのIT」)と独自アプリ(「攻めのIT」)の連携実践でもあります。八重樫氏は、「我々はノーコード/ローコードツールで富士通Japanが開発するようなパッケージシステムを開発しようとしたのではありません。そのパッケージシステムも含めて全体システムを設計することが大学としては大事であると考えました」と説明します。そのうえで、大学として「システムのあるべき姿」を、「ベンダー丸投げ」ではなく、「大学も一緒になって考えて作り上げていく。それを共同研究では目指しました」(八重樫氏)。
 次項からは、本共同研究で実際に開発したシステムの具体例をご紹介します 。

ケース1 参照システム:大学ダッシュボードの開発

 はじめに参照システムとして開発した大学ダッシュボードについてご紹介します。
 香川大学では、学部・学科名や学生数などの教育情報を公開していますが、元データは複数の部署で管理されており、公開担当部署で統合・加工していました。そのため、各元データには差異があり、手作業でのチェック、加工、集計が必要で、公開データの作成に多くの時間と手間がかかっていました。
 そこで、Campus-Xsのデータを用いて教育情報を可視化するダッシュボードを開発しました。Campus-Xsは必要なデータの大部分を保有しているため、APIとローコード/ノーコードツールを用いて、データの抽出、加工、集計、ダッシュボードへの反映をすべて自動化したのです。
 このダッシュボードでは、学生数の概要や学部別の在籍者数、定員、充足率などを分かりやすく表示しています。Campus-Xsのデータが最新の状態であれば、職員がデータの集計や加工を行う必要がなくなり、教育情報をリアルタイムで確認できるようになりました。
 さらに、このシステムは複製・流用が容易なため、経営層や各部署など、必要とする関係者ごとに必要な情報を表示するように簡単に変更して展開できます。
 大学ダッシュボードの開発によって、Campus-Xsのデータを容易に取得、リアルタイムに活用できることを検証できました。これは、単なる業務効率化だけでなく、状況に応じた迅速な施策立案・実行にもつながるなど、活用の可能性を大きく広げました。

ケース2 更新システム:お知らせ自動要約の開発

 次に、更新システムとして開発したお知らせ自動要約についてご紹介いたします
 香川大学では、教務システムを通じて授業の休講・補講情報だけでなく、学生生活に関する注意喚起、地域イベント、就職活動セミナーなどの様々な情報を「お知らせ」として配信しています。しかし、学生は大量のお知らせを一つずつ確認する必要があり、重要な情報を見落としてしまうケースが少なくありませんでした。
 そこで、Campus-Xsからお知らせ情報を取得し、生成AIを用いて学生にとって分かりやすい要約と一覧を作成し、コミュニケーションツールを通じて定期的に通知するシステムを開発しました。さらに、重要な情報や興味のある情報にはリアクションすることで、お気に入りとして登録することも可能です。
 要約されたお知らせでは、複数のお知らせも一覧で表示されるため、学生はまとめて確認できることで漏れを防ぐ効果が期待できます。
 このお知らせ自動要約システムの開発により、教務システムからデータを取得して利用するだけでなく、内製システムで生成したデータに基づいて教務システムのデータを更新する技術検証を行いました。生成AIによる要約精度の向上や、個人ごとの興味関心に基づいたお知らせのレコメンド・優先順位付けなど、今後の機能拡張にも大きな期待が持てます。

共同研究を通じた成果と期待

 本共同研究により、Campus-Xsとローコード/ノーコードルールによる内製システムをAPI連携することで、データの参照と更新が共に可能であることを技術的に検証することができました。開発期間は実質約2 ヶ月と非常に短期間で完了しました。
 従来、大学の個別業務やニーズに対応するには、コストをかけてカスタマイズを行うか、業務プロセスをパッケージ標準に合わせる長期的な調整が必要でした。しかし、本研究で開発した2つのシステムは、APIと内製開発の組み合わせにより、迅速な開発と拡張が可能であることを示しました。外部環境やニーズの変化に対して、機能・サービスを迅速に提供することが可能です。
 また、本研究で示された手法であれば、予算や人員をかけて別の統合データベースを用意する必要なく、比較的低コストでデータを活用できるため、より多くの大学で導入が期待できます。さらに、内製システムでのデータ保有・管理が不要となり、データの分散や二重入力といった問題も解消できます。
 さらに、従来システムの制約で学生や教員が直接データ登録できなかった項目も利用可能になります。また、これまで別システムで管理されていたデータを教務システムに取り込むことで、データの一元化を実現することも可能です。

共同研究の振返りと今後の展望

 今回の富士通Japanとの共同研究では、「大学として教務システムの価値を最大化すること」、そのためのシステムのあるべき姿を考え、それをベンダーに丸投げするのではなく「大学自身も一緒に考え、開発に取り組むこと」、この2つを重視しました。教務システムの価値を最大化するという視点では、内製システムであるお知らせ自動要約にて生成したデータで、教務システムのデータを更新する機能もあえて実装しました。これは、大学におけるレガシーシステムに、その外で生成したデータで更新をかけるということです。
 こうした新たなチャレンジにおいては、システムアーキテクチャ的にデータの整合性が担保できなくなるかもしれないといった懸念があることは理解していました。しかし、それ以上に教務システムの情報が常に更新され、常に正しい教育情報が保有・管理、発信されているということ、「その価値は何事にも代えがたい」と感じました。教務システムの全体価値を最大化することにつながると考えたのです。
 そうした想いがあったらからこそ、大学として教務システムのあるべき姿を目指すには、多少のリスクは承知のうえでも大学の今の状況がリアルタイムで更新されていく仕組みの開発を共同研究のスコープに入れることに、なんら躊躇はありませんでした。今回、富士通Japanには我々のそういった想いにきちんと応えていただき、あるべき姿をともに見つけていく姿勢で共同研究に取り組んでいただけたことに感謝しています。
 香川大学と富士通Japanの共同研究は、大学とシステム開発ベンダーとの新しい関係性の可能性を示したと感じています。それは、大学がシステムのオーナーでありユーザーであり、ベンダーがシステムの請負開発を担当するという従来型の関係性とはまったく異なるものです。大学が現場主導の市民開発により内製システムを開発し、それをCampus-XsにAPI連携させることで、大学として「教務システムの理想形」を一緒に作り上げていくことができるという可能性が示されたのです。今回の共同研究をきっかけに、Campus-Xsが単に業務負荷やコストを削減するだけの「教務事務システム」になるのではなく、真の意味で「教育力を高めるための基盤としての教務システム」のトップ製品へと更なる進化をすることに期待します。

お客様情報

大学名 香川大学
所在地 香川県高松市幸町1番1号
代表者 学長 上田 夏生
教員数 591名
学部学生数 5,669名
ホームページ https://www.kagawa-u.ac.jp/

[ 2025年5月 掲載 ]


本事例中に記載されているお役職などの情報につきましては、2024年12月31日現在のものです。

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