みずほフィナンシャルグループ、「MINORI」リニューアルに挑む

モダナゼーションの「最後のチャンス」を生かせるか。ITによるビジネス変革と人的資本経営を両輪で進める

ITの役割が、ビジネスを支えるツールからビジネスを変える推進力へと大きく変化している中、テクノロジーでビジネスプロセスを変革し、ベストプラクティスを採用することで競争力を強化しようとする企業が増えている。みずほフィナンシャルグループは、中期経営計画で経営基盤強化に向けたIT改革を大きく打ち出し、全社、全組織を挙げて取り組んでいる。取締役兼執行役グループCIOの金澤光洋氏と富士通代表取締役社長の時田隆仁が、IT改革のトレンドとモダナイゼーションの意義について語り合った。
(聞き手:日経BP 総合研究所 フェロー 桔梗原富夫)
※所属、役職名は取材当時のものです。

株式会社みずほフィナンシャルグループ

業種:金融
本店所在地:東京都千代田区大手町1丁目5番5号(大手町タワ-)
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「テクノロジーでビジネスを変える」
というマインドセットが必要

金澤:銀行業界にも、変革の大きな波が来ています。ビジネスを迅速に見直していかなければ時代の変化に追従できず、お客様のニーズにも応えられなくなるという危機感を持っています。

そこで、当社の新しい中期経営計画(2023年~2025年度)は、これまでと異なる方法で策定しました。従来は目標となる数字をまず設定し、それに必要な施策を検討していましたが、今回はまず、社会に貢献するためにみずほが実現したい、個人の幸福な生活とそれを支えるサステナブルな社会・経済といった将来の「ありたき世界」を描きました。そこからバックキャストする形で、やるべきことを決めています。また、みずほフィナンシャルグループのパーパス「ともに挑む。ともに実る。」も同時に発表しました。

時田:私は20年前に、SEとしてみずほさんを担当し、以来、長くお付き合いさせていただいています。勘定系のIT基盤を中心に担う中で、様々な挑戦もさせていただきました。みずほさんと確立した先進事例は、ベストプラクティスとして他の業界や企業に紹介するなど、当社ビジネスにも大変ポジティブな影響を与えています。単なるユーザーとベンダーを超えた、事業パートナーの関係にあると考えています。

富士通の大切にする価値観は、「挑戦」「信頼」「共感」です。御社のパーパスで「ともに挑む」と表現されている「挑戦」という価値観が、両社に共通している点は非常に重要です。

金澤:中期経営計画において、経営基盤を強化するための5つの重点施策を設定しています。その中に「IT改革の推進」を取り上げ、ビジネス戦略とITが不可分の関係にあることを示しました。

今日、「テクノロジーの力でビジネスを変える」というマインドセットが重要になっています。アジリティの高いビジネスにするために、テクノロジーをどう使っていくのか。あらゆる面で、過去の考えを改める必要があります。

時田:これまでは、業務あってのITであり、ITはビジネスを支えるツールであり、コスト要因だと長く考えられてきました。しかし2000年頃からその価値が見直されはじめ、今日ではテクノロジーでビジネスを変える時代になっています。

金澤:同感です。IT改革は、もはやIT部門だけのものではありません。全社、全組織を挙げて取り組むべき経営のテーマです。

時田:ITはIT部門のもの、ビジネスはビジネス部門のものなど、組織が縦割りになりやすいことは大企業の宿命かもしれません。しかし、その弊害を取り除くことは、今日の経営の最も重要な課題です。

金澤:その意味で、富士通さんの全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」は画期的です。新しい体制を作るだけでなく、人の行動や経営のコミットメント、リーダーシップの在り方など、社員のマインドや運用の面が重要であることを学ばせていただきました。当社でも、そのコンセプトを大いに活用させてもらいました。人や企業風土・カルチャーの問題に踏み込まなければ、本当のIT改革は実現できません。

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みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役 グループCIO 金澤 光洋 氏

ビジネス変革の中核「MINORI」
開発から10年、リニューアルへ

金澤:MINORIは従前のシステムが抱えていた多くの課題に向き合い、全面的に刷新してつくり上げたIT基盤です。大きな特長は、3つあります。第1は「SOA(サービス指向アーキテクチャー)」という基本思想。ITの機能を部品化し、相互に結合する形で全体を構成しました。部品ごとに更新できる設計にし、変化に対応しやすい基盤を実現しています。

第2が「オープン化」です。多くの業務アプリケーションを先進的なLinux/UNIXサーバーで運用し、メインフレームの台数を19台から5台に減らしました。

そして第3が「外部との接続」です。ハブを介したAPI接続を可能にし、外部システムとの接続を容易にしました。これにより、オープンで柔軟な銀行取引サービスの提供に貢献しています。

時田:MINORIは、画期的な勘定系システムです。巨大なシステムですから、当然ベンダーも1社ではありません。ベンダー同士が協力して1つのシステムを作り上げるため、プラットフォームの選定やオープン化の検討に多くの時間をかけました。複数のベンダーを的確にマネジメントした、みずほさんの手腕はお見事です。

技術はどんどん進化しますが、成熟度や安定性で不安のあるものは採用できません。多くのディスカッションを経て、最適な選択をさせていただきました。MINORIの挑戦は、富士通にとっても大きな転換点となっています。

金澤:MINORIは先進的なシステムでしたが、開発から10年近くが経ち、リニューアルが必要になりました。MINORIの強みはSOAであり、オープン基盤です。その強みを存分に発揮するのが、まさに今回のリニューアルです。ハードウエアやソフトウエアの更新だけでなく、将来を見越した数々の変革を行います。

具体的には、例えばオンプレミスで運用してきたシステムをクラウドへ移行させるプロジェクトが複数あります。メインフレームのリソース削減やシステムのスリム化も進めます。ビジネスプロセスも見直し、不要な機能を外したり、システムの運用方法を変えていきます。また、生成AIの活用にも挑戦します。例えば設計書を含む膨大な資料のレビューや、テストケースの生成を自動化するといったことです。

安定稼働は重要課題ですので、無理な挑戦はいけません。しかし保守的になり過ぎてしまっても、将来の可能性を狭めてしまいます。採用すべきテクノロジーの見極めと選択については、富士通さんの知見に大いに期待したいところです。

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富士通 代表取締役社長 時田 隆仁

モダナイゼーションの最後のチャンスになる?

時田:モダナイゼーションは、あらゆる企業にとって大きなテーマになっています。単なるプラットフォームの更新とは異なり、ビジネス変革を含む事業全体の近代化です。また業務を継続しながら変えていく必要があるため、システムが止まることは許されません。

富士通はあらゆる技術を見極め、テック企業としてモダナイゼーションをしっかりとサポートしていきます。

金澤:これまでの改善施策も踏まえ、システム安定稼働や運用の高度化にしっかりと取り組み、そこからモダナイゼーションにもつなげていきたいと思います。

時田:システムが高度化していく一方で、労働人口は減っていきます。過去の経験をしっかりと継承し、限りある人的リソースを最大限に活用していく必要があります。みずほさんの中期経営計画にもあるように、IT改革と人的資本経営を両輪で進めていくことが重要になっています。

今動いているシステムのことを知る人たちが、みんな引退してしまったら、一貫性のあるモダナイゼーションはできなくなります。現行のシステムを丸ごと廃棄して、新しく作り直すしかありません。多くの日本企業にとって、今がモダナイゼーションの最後のチャンスになるかもしれないのです。その意味で、MINORIのリニューアルは象徴的なプロジェクトであり、有益な学びが数多く得られると期待しています。

金澤:労働人口が減少する状況は、当面、変わらないでしょう。これには2つの戦略が必要です。1つは、IT部門だけでなく、全社員のITスキルを高めていくことです。ビジネスパーソンにとって、ITスキルは「読み書きそろばん」のレベルで欠かせないものになっています。もう1つは、人がやらなくてよいことをどんどん自動化していくことです。また、海外も含めたアウトソーシングも選択肢になるでしょう。これらを組み合わせて進めていく必要があると考えています。

テクノロジーを変えなければ、ビジネスは変わりません。企業としてやりたいことはたくさんあるが、労働人口は減っていくわけです。当社のことをよく理解している富士通さんと共に、これらの課題に対して、生成AIの活用や様々な自動化なども含め、挑戦していきたいと思います。

富士通さんには、当社の課題をどんどん見つけ、遠慮なく指摘していただきたいと願っています。忌憚なき議論の中から、価値の高い未来をつくっていきましょう。

時田:お互いに言いにくいことを素直に言い合い、健全なコンフリクトを受容できる関係こそが重要です。コンフリクトが無い所にイノベーションは生まれないからです。MINORIは富士通にとっても大切なものです。新たなMINORIが見られることを楽しみにしています。

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本記事は、日経クロステック Specialに、2024年11月に掲載された記事を再掲したものです。所属・役職は取材当時のものです。記事・写真・動画など、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

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