執行役員副社長 COO(サービスデリバリー担当) 島津 めぐみ

富士通が支える “日本のモダナイゼーション” 。今こそ、DXへ決断の時

デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)は今、進むか止まるか、その分岐点にあり、経営トップの意思が問われている。進むなら、取るべき選択肢は一つ。ITを経営哲学を実現する手段と捉えたIT資産のモダナイゼーションだ。日本企業の背中を押すため、富士通が名乗りを上げた。日本のモダナイゼーションを支える。富士通がその役割を担う背景にある、関係者の思いとは何か。モダナイゼーションに対する考え方や推進体制、DXそして「Fujitsu Uvance」との関連など、富士通の戦略について執行役員副社長 COOでサービスデリバリー担当の島津めぐみに話を聞いた。
(聞き手:日経BP 総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫 氏)

モダナイゼーションでデータ活用を加速する

モダナイゼーションは解釈の幅が広い言葉です。富士通はモダナイゼーションをどのように定義していますか。

「レガシーなIT資産を最新のテクノロジーで近代化すること」とシンプルに考えています。保守切れになった技術や、富士通独自の開発フレームで構築された古いシステムからの脱却です。ITからDXへ進化させるために、モダナイゼーションは避けて通れません。

富士通が掲げる「Fujitsu Uvance」は、富士通が長年培ってきたテクノロジーと幅広い知見を融合させ、業種間で分断されたプロセスやデータをつなぐことで、お客様の成長と社会課題の解決に挑む事業戦略です。とはいえ、その前にまずお客様には、モダナイズを進めていただき、最新のテクノロジーとアジリティのメリットを享受していただきたいと願っています。

多くの企業がモダナイゼーションやDXに取り組んでいますが、なかなか成果につながっていないようです。

メインフレームを中心とするレガシーな資産は、メンテナンスするために人材とコストの大半が消費され、DXに向け、本来解決すべき課題に手を付けられない状態が続いています。まずは、この状況を打破する必要があります。

モダナイゼーションには時間がかかります。その間もビジネスは変化していきますから、計画を常にアップデートしながら進めていくことが重要です。

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従来型のITとDXの大きな違いは、データ活用にあると考えます。どのような活用が求められているとお考えですか。

これまでのシステムの特徴は、個別最適で作られたものが多いことです。その基本的な発想は「人がやっている仕事を、コンピューターに置き換える」ことにITの価値を見出していました。

しかし現在は、言わば「システムをどのように活用するかで利益が変わってくる」時代です。そのために、データの活用が不可欠なのです。モダナイゼーションにおいても、データ活用を可能にするためにシステムや組織に分かれて管理されているデータをつなぎ合わせる必要があります。一部の人しか活用できていないデータを、誰もが活用できる形に変革するわけです。

活用すべきデータには社外のデータも含まれます。例えば、船舶が最適な航路で運航するには、気象状況や地政学的リスク情報、エネルギーの効率的な利用、温暖化ガスの排出が少ないルートなど、様々な外部データを活用する必要があります。モダナイゼーションによってそうしたデータの活用も可能になり、ビジネスが効率的かつスピーディになります。モダナイゼーションの先にある「Fujitsu Uvance」は、まさにそこを見据えています。

調査と分析からプランの立案、運用までトータルに支援

モダナイゼーションの成功には、クラウド活用がカギになります。富士通は、クラウドについてどのような戦略をとっているのですか。

現状の最適解は、クラウドとオンプレミスを適材適所で使いこなすハイブリッド型の運用だと考えています。

当社はMicrosoftやAmazon Web Services (以下、「AWS」)など、ハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)との強固なパートナーシップにより、クラウド活用のメリットを最大限に提供しています。その一方で信頼性の高い国産クラウドサービスとして、「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud(以下、「FJcloud」)」も充実させてきました。お客様がデータセンターのハウジングなどで資産として運用されていたシステムを、徐々に「FJcloud」へ移行させ、クラウドネイティブ化していくお手伝いをしています。

クラウドの大きな特徴は、資産管理が不要になることと、機能が自動的に向上していくことです。その利点を最大限に享受していただきます。「FJcloud」とMicrosoft Azure(以下、「Azure」)や「AWS」とのデータ連携も、一例になりますがデータ統合および業務基盤である「Palantir Foundry」で効果的に実現できます。こうした仕組みを富士通の社内で実践、検証しながら、その知見とノウハウをお客様に提供していきます。

ハイブリッドクラウドによるモダナイゼーションにおいて、富士通の強みはどこにあるとお考えでしょうか。

現状のシステムの調査と分析から、プランの立案、モダナイズ、その後の運用に至るまで、トータルに支援できることが最大の強みです。そのための人材とツールをそろえています。お客様に対して、ツールの導入やデータ変換の支援だけではなく、テストや運用まで一貫してフォローできる体制を整えました。

当社は国内で数多くのモダナイゼーションを成功させてきました。2022年9月に「モダナイゼーションナレッジセンター」を設立し、産業、流通、自治体、公共、金融など、多岐にわたる業界での経験を通してモダナイゼーションのノウハウを蓄積しています。これを活用することで、お客様の実現したいモダナイゼーションの効率化とスピードアップを図ります。

それと並行し、モダナイゼーションを支える人材の強化を急ぎます。現在、富士通グループでは約3万人を擁していますが、25年には4万人まで増員する計画です。

モダナイゼーションは経営トップ主導で
業務の変革と一体で進める

富士通は、モダナイゼーションを具体的にどう進めているのでしょうか。

現状のIT資産の可視化から始めます。各プロセスのマイニングツールを使って業務プロセスを可視化し、マスターデータの棚卸しやデータの分析を行います。それを基にモダナイゼーションのグランドデザインを策定し、情報システム全体のスリム化とモダナイゼーションを同時に進めていくというのが、基本的な流れです。

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モダナイゼーションのプロセス

富士通のメインフレームのオープン化に対応するツールを、年内にリリースする予定です。それと並行して、モダナイゼーションの市場ニーズを見極めながら人材の確保を進めています。富士通はグローバルにビジネスを展開しているため、世界各地からモダナイゼーションのノウハウが集まります。その点も大きな強みです。モダナイゼーションナレッジセンターには海外のメンバーもいます。

「富士通IRDay」では、モダナイゼーションの目的はDXやグリーントランスフォーメーション(GX)につなげることだとおっしゃっていました。モダナイゼーションの先に「Fujitsu Uvance」があると理解すればよいのでしょうか。

その通りです。「Fujitsu Uvance」は「Vertical(垂直)」と「Horizontal(水平)」で分類された7つの重点分野(KFA=Key Focus Areas)で構成されています。

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「Fujitsu Uvance」の全体概要
図中の「Vertical Area」は業界特化型の(業界特有の課題を解決する)KFA4分野を、「Horizontal Area」は業界横断型の(業種問わず利用される)KFA3分野を、それぞれ総称する

「Fujitsu Uvance」を活用することのメリットは、ビジネスの変革から他社とのデータ連携へと無理なく進化できることです。例えばカーボンニュートラルは経営の大きな課題になっていますが、温暖化ガス(GHG)の削減は自社だけで解決できる問題ではありません。「Fujitsu Uvance」を活用すれば、スコープ3までを含めたGHG排出状況の可視化が実現します。

こうしたダイナミックなデータ活用こそがDXの本質であり、そこへ至る前段階として、モダナイゼーションをしっかりと進めることが重要になるわけです。

国内でモダナイゼーションを成功させた代表的な事例を教えてください。

多くの実績がありますが、古河電気工業株式会社様(以下、古河電工様)のモダナイゼーションは代表的な事例です。同社は、グループ内の企業や組織ごとに異なる業務プロセスとシステムが混在する状況にありました。「モダナイゼーションと業務改革を同時に進める」という強い経営トップの意志の下で、まずあらゆる業務プロセスを可視化し、課題を分析しました。そのうえで基幹業務システムを「SAP S/4 HANA」に統一し、業務を標準化しました。富士通は、DXパートナーとして、製造業の分野でこれまで培ってきたものづくりやSAP導入に関するノウハウを活かし、古河電工様のさらなる業務改革を支援していきます。

この事例では、プロジェクトの初期段階から富士通総研がサポートの上、SAPが提供するベストプラクティスを生かす形で業務の変革を進めました。単なるシステムの刷新ではなく、業務の変革と一緒に進めた点がポイントです。

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古河電工様のモダナイゼーション概要

今後の展開について教えてください。

モダナイゼーションのニーズは、ますます拡大していきます。当社はそのボリュームに対応できるリソースを準備していきます。その中心にナレッジセンターがあります。

富士通は、お客様のモダナイゼーションを推進するとともに、十分な検討ならびに移行期間を確保しつつ、メインフレームを2030年に販売停止し、保守も2035年に終了します。明るい未来を後世にもたらすために、日本企業はいまこそ変革に向けて決断し、行動することが求められています。そのために、富士通は日本のモダナイゼーションをしっかりと支援していきたいと考えています。

商標について

  • Microsoft、Microsoft Azureは、米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
  • Amazon Web Services およびAWSは、米国Amazon.com,Incおよびその他の国における登録商標または商標です。
  • Palantir Foundryは、Palantir Technologies Inc.の商標です。

本記事は、日経クロステック Specialに、2023年10月に掲載された記事を再掲したものです。所属・役職は再掲時(2024年7月)のものです。記事・写真・動画など、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

既存情報システムを最適化し、DX基盤としてのあるべき姿に

富士通は、独自の強みをお客様の価値に変え、お客様資産の最適化とDXをご支援します。

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