生命保険販売システムに
おけるアジャイル開発

アジャイルプロジェクト事例

[本事例のポイント]

  • 自動テストによって品質を確保しつつ、変更や追加等の変化への柔軟な対応を実現
  • 大規模アジャイルプロジェクトにおいても、自律的に考え・解決に結びつけるカルチャーを醸成

プロジェクトの背景

生命保険の対面販売では、契約内容や保障内容の説明や、申込書類への記入など多数の業務が紙ベースで行われていました。また、契約者の病歴等の申告とその査定結果も紙ベースで手続きされていたため処理に数日を要する状況であり、お客様は提案の試算から契約までを手数をかけずに完結できるシステムを希望していました。
新しいシステム構築にあたり、お客様には保険市場の急激な変化や顧客ニーズの変化による不確実性の高まりなどにより、お客様自身も現在どのようなものが求められているかを事前に把握しきれないという懸念がありました。この懸念を払拭するために、富士通はアジャイルを提案・採用し、変化への柔軟な対応の実現を目指しました。

プロジェクトの概要

本プロジェクトでは、お客様と富士通で会社の壁を越えた総勢約50人に及ぶチームを構成しました。業務単位で複数のチームを編成し、全員が同一の拠点で開発を行いました。変化に柔軟に対応するための工夫として、本プロジェクトでは開発期間を「イテレーション」と呼んで1.5ヶ月で区切り、「内部スプリント」としてさらに1週間区切りに分割し、開発をインクリメンタルに進めました。この「イテレーション」では開発対象の大枠を決め、「内部スプリント」では開発した成果物に対するプロダクトオーナーの確認とフィードバックをふまえた優先順位の見直しを行いました。

CIを中心とする自動テストの実践

反復型で開発を進めていくと、「いかに品質を維持しながら日々増加するリグレッションテストを効果的に検証するか」というテーマにぶつかります。本プロジェクトでは、継続的インテグレーション(CI)を中心とした完全な自動テスト環境を導入することで対応していくこととしました。
CIの導入にあたり、数十人単位のチームメンバーの意識変革をどのように行うかが課題となりました。意識変革が成功したポイントは、富士通のスクラムマスターや技術リーダーがCIの有効性について粘り強く啓蒙し続けたことです。また、CIによりリグレッションが容易になったことで、変化に柔軟に対応するという目的も達成することができました。

自律的に考え・解決に結びつけるカルチャーを醸成

お客様からはプロダクトオーナー数人、富士通からは開発者、スクラムマスター等から構成される総勢約50人に及ぶ大規模チームを結成しました。そこで、グランドデザインの段階からシステムの大まかなイメージや、製造工程の過ごし方、全体スケジュール等を全員で明確に共有し、皆が自律的に考え・解決に結びつけるカルチャーの醸成に向けた仕込みの期間を設けました。この施策により、チーム全員で目的・課題等を共有し、意識統一を図ることができました。
また、開発段階でも、お客様・富士通の壁を設けることなく「ごちゃまぜ」にして一体感を保持し、プロジェクトチーム全員でのスタンドアップミーティング等でも本音で議論をできる雰囲気をつくりました。前述のCIを中心とする自動テストの実践によって「皆で考える・検証する時間」を作り出せたことも大きく影響しています。
このようにグランドデザインの段階から開発段階を通してチームメンバー一丸となって自律的に取り組むカルチャーを醸成したことにより、より良いアウトプットの実現につなげることが出来たといえます。
例えば難しい要件でも、「無理です」ではなく「どうしたらできるか?」を諦めずに皆で考え、利用者視点に基づいた解決方法を見出し開発に反映するなど、ポジティブな傾向を生み出しました。

プロジェクトの成果と結果

本プロジェクトでは、当初計画していたよりも高い価値を盛り込みシステムをリリースすることができ、お客様からも非常によい評価を得られました。イテレーションを繰り返しながら改善を進めた結果、品質を確保しつつ開発スピードを上げることができ、お客様の新規要望の多くに対応することができました。
更に、工数に目を向けると、過去の同規模の案件と比べ約80%の工数で実現できました。また、品質については、最終確認時の不具合検出数を3分の1程度に抑えることができました。

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