2017年05月19日更新

これからの介護事業経営 第05回 介護保険事業 押さえておきたい実地指導の傾向と対策

小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 氏

1. 実地指導の傾向

平成26年度の介護事業者に対する指定取消、業務停止の行政処分件数は212件である。前年は218件であったので、2年連続で200件を超えたことになる。平成12年以降、年間の行政処分件数は100件前後で推移してきた。それが、この2年は倍増している。行政処分が急増した背景には、平成24年の制度改正で実地指導の権限が都道府県から中核市へ委譲されたことがある。都道府県の指導では見過ごされてきた項目が、市の指導では指摘されるというケースが増加した。例えば、デイサービスの外出レクレーションへの指導強化である。特例以外の外出サービスは認められたサービス提供では無いことから、介護報酬の返還とする指導が平成24年以降で急増している。すなわち、実地指導が厳しくなった訳ではなく、担当が市に移動したことで指導する側の視点が変わったのである。また、平成28年4月以降の実地指導においては、その事業所で虐待が疑われる場合は事前通知無しの指導が可能となっているので注意が必要である。実地指導がいつ来ても対応できるように、日常的なコンプライアンス体制の確保が求められる。

以下に、実地指導の事前対策として基本中の基本である事項を記しておく。この事項は、基本的に全サービス共通の項目である。

2. ケアマネジメントプロセス

ケアマネジメントプロセスは、全ての介護サービスに共通する基本的なルールであり、この流れに従って実施指導での確認チェックが行われる。その理解が重要である。

① アセスメント

実地指導におけるアセスメントの実施状況の確認は、アセスメントシートの有無で成される。アセスメントとは、利用者が抱える生活課題(ニーズ)を明確にすることである。その上で、アセスメント結果や利用者、家族の希望を反映した目標を設定し、その目標の達成のための介護プログラムをプランニングしなければならない。これが個別サービス計画である。実地指導でのチェックポイントは、アセスメントシートの枚数と個別サービス計画の枚数が同じ枚数があるかということになる。

② プランニング

アセスメントを行わずに作成された個別サービス計画は、ケアマネジメントプロセスに従った計画ではないために否認される。また、ケアプランの目標を丸写しとした長期目標、短期目標も否認される。理由は、アセスメントを反映した目標を設定しなければならないためである。個別サービス計画の作成者は、運営基準で定められている。例えば、訪問介護計画はサービス提供責任者。通所介護計画は管理者である。個別通知で特例も認められており、通所介護は、生活相談員等が管理者と共同作成という位置づけで計画の作成を担当できる。規定で定められた者以外は計画を作ることが出来ず、他の者が作った計画は認められない。

③ モニタリング

モニタリングの役割の一つに、個別サービス計画の目標の達成状況の評価がある。目標が「達成」と評価された場合は、その計画の役割は終了である。この場合は、アセスメントから新たな目標を立てた新しい計画の作成というプロセスに戻る。「未達成」評価では、計画の目標が達成されていないために、現在の計画は継続となる。ただし、長期間にわたって未達成の目標は不適切とされ、達成可能な目標に変更した新しい計画の作成が必要となる。

3. 整合性

ケアプランに沿って個別サービス計画を作り、個別サービス計画に従って介介護サービスを提供し、サービスが終了すると提供記録を書く。このときの流れは真っ直ぐでなければならない。これが整合性である。ケアプランに位置づけられたサービスが個別サービス計画に位置づけられていない(凹み)、または、ケアプランに無いサービスが計画に位置づけられている(膨れ)、と言った指導が増加している。整合性では、途中で凹んでも、膨らんでもならない。ケアプランに無いサービス提供は認められず、請求も出来ない。

4. 個別サービス計画

個別サービス計画を作成した段階では、それは原案に過ぎない。利用者に説明して同意を得た時点で、原案は本プランに変わる。介護サービスは本プランが無いと提供できない。これは、全サービス共通の基本ルールである。本プランであることの証は、同意のサイン、印鑑の有無である。実地指導のチェックポイントは、その計画が本プランである証としてのサイン・印鑑の漏れの確認となる。本プランとなった日からサービス提供が開始され、それ以前のサービス提供は認められない。もう一つ重要なのは、提供開始日と同意日の日付のズレの確認である。どのような場合であってもサービス提供の開始と計画の説明同意の日付の順番が逆になる事はありえない。

5. 記録が重要である

介護事業の行政の基本は、記録主義にある。記録で確認出来ない事は、実際に行っていても認められる事は無い。介護サービスの基本は「計画」によって実施されて、「記録」によって確認・報告されるシステムである。「記録」の不備は、サービス提供の事実が確認出来ないとして、介護報酬の返還指導とされるケースが多くある。

6. 実地指導で最も悪質とされるもの

「虚偽・偽装」が、行政処分の理由として非常に多い。虚偽とは実地指導時の応答で嘘をつくこと。偽装は、書類の改ざん・嘘の書類の作成することを言う。たった数万円の軽い不正請求額でも指定を取消された処分理由の殆どが、悪質な虚偽偽装である。違反行為の内容や不正請求の金額以上に、最も重たい行政処分が課せられているのが虚偽偽装であり、最も行ってはいけない、最重要ポイントである。職員への認識の徹底が求められる。

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著者プロフィール

小濱介護経営事務所 代表
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会 専務理事

小濱 道博(こはま みちひろ) 氏

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。著書、連載多数。

小濱 道博 氏

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