2022年6月29日更新

2024年に迫る医師の働き方改革 何が変わり何を実践すべきか 第01回 施行まで待ったなし「医師の働き方改革」
地域医療を守りながら医師の労働時間を減らすために取り組むこと  

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2024年4月、「医師の働き方改革」が施行される。医師の健康を確保することを第一に考えられた制度だが、その中身で最も重要なのは、医師の時間外労働に一定の水準をもうけ、その水準以上に働くことが認められないことだ。これを守れなかった場合、病院は罰則を覚悟しなくてはならない。このため、まだ対応ができていない病院は、医師の労働時間の削減に向けて今すぐにでも動き出す必要がある。一方で、まだまだ医師の働き方改革に対しての取り組みが不十分な病院が多いといった声も多く聞かれる。残された時間は2年を切った。この間、どのような取り組みによって医師の働き方改革に臨めばよいのか。識者2人の取材を中心に明らかにする。

 

熊本大学病院の馬場秀夫病院長(撮影:浦川祐史)

「『医師の働き方改革』は、一般の企業より5年の猶予があり、十分に準備する時間があると思っていた。それが残された期間が2年弱になった現在でも、まだ働き方改革の全貌を理解していない病院や、準備が滞っている病院が多くある。全体的に危機感が足りない状況になっているのではないかと感じる」

そう警醒するのは、熊本大学病院の馬場秀夫病院長だ。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、いわゆる働き方改革関連法は2019年より順次施行されており、一般企業に対しては2020年4月から時間外労働の上限規制が適用されている。一方で、医師に関しては働き方改革を施行するまでに5年間の猶予が与えられていた。その期限まで、いよいよ2年を切っているのだが、順調に進んでいるとは言えないようだ。

そこには不幸な一面もある。2020年の初旬に深刻化した新型コロナウイルス感染症が、医療界全体を大きく揺さぶった。働き方改革に関する取り組みがおろそかになってしまっても、仕方がないという見方もある。ただ、どんな事情があっても、時間が止まってくれるわけではない。2024年4月までに働き方改革を実践しなければ、その医療機関には罰則を科せられる覚悟も必要となってくる。

医師の働き方改革における論点は「時間外労働の上限規制」

医師の働き方改革の第一の目的は、医師の健康を確保することと勤務環境を改善することだ。近年、医師不足という言葉が頻繁に叫ばれ、また少ない医師の過重労働によって、地域医療が成り立っている場合も多い。このため、ストレスや過労などによって不調を訴える医師の数も少なくない。このような状況において働き方改革を推進することで、医師自身の健康を守り、結果として質の高い医療を国民全体に提供できる体制を構築することを目指している。

現在、医師の働き方改革で議論されている多くは、時間外労働の上限規制に関することである。現在、働き方改革関連法では労働時間は1日8時間、週40時間までと原則決められている。さらに「時間外・休日労働に関する協定届」、いわゆる36協定を結んだ場合は、原則月45時間、年360時間を上限として時間外労働が可能となる。この原則は、医師の場合も変わらない。ただし、医師の働き方においては、「医師の健康」と「地域医療の提供」を両立させなくてはならない。このような特別な事情があるために、医師の働き方改革においては、さらなる時間外労働時間の延長が可能であると認められている。

では、実態はどうなのか? 2019年に厚生労働省が実施した調査によれば、医師の37.8%が年960時間以上の時間外労働を行い、上位10%は年1824時間を超える時間外労働を行っていた(図1)。医師の働き方改革で規定している時間外労働時間は一般には960時間、特別な職種では1860時間と非常に高いレベルにあるが、一部の医師からすれば、その範囲に時間外労働を収めるには、相当の働き方の見直しが必要ということになる。


(図1)病院常勤勤務医の週労働時間の区分別割合(厚労省が実施した「令和元年 医師の勤務実態調査」より)

4割の病院しか時間外労働時間を把握していない

「規制が定められている以上、病院としてはそこに向かって進んでいくしかない」

馬場記念病院などを運営する社会医療法人ペガサスの馬場武彦理事長はこう語る。馬場理事長は、厚生労働省が開催する「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の構成員として、医師の労働時間の上限規制に関して議論を重ねてきた。上記のような枠組みを作ったうえで、とにかく残された時間で効率よく労働時間を短縮する仕組みを考えていかなくてはならないという。

ところが馬場理事長は、「対策をたてるうえで『イロハのイ』ともいえる時間管理ができていない病院が多くある」と問題を語る。誰がどれぐらい働いているのかといった、時間管理ができていないというのだ。「働き方改革を進めるには、まず労働時間の実態を把握することが大前提。そのうえで、病院の中でどのように働いているかを調べて、対策を講じる必要がある」(馬場理事長)。

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2024年に迫る医師の働き方改革 何が変わり何を実践すべきか

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自治体、医療・教育機関、および民需分野の準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

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