2022年3月11日
物流業界における2024年問題とSDGsへの対応。
物流事業者が取り組むべきこととは!
第03回 物流業界におけるSDGsの重要性と取り組み事例
志宇知 咲 氏
最近ニュースなどで耳にする機会が増えた「SDGs」。そもそもSDGsとは、社会全体が取り組むべき「持続可能な開発目標」のことを指し、2016年から2030年までの国際目標となっています。近年、テレビ番組でも特集が組まれるなど、社会の関心は高まっています。
しかし、皆さまの中にはこんな考えをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- SDGsは、余裕のある会社がやるべきこと
- どうせ企業ブランディングの一環だろう
- 実利益に直結しないのであれば、今取り組む必要はない
そんなことありません。「ビジネス&持続可能開発委員会(Business & Sustainable Development Commission)」の調査によると、世界中の9,000社を超える企業がSDGsのグローバル目標とコアな経営戦略と連動させており、SDGsには年間約1,320兆円規模の巨大なビジネスチャンスを生む力があるといわれています。つまりそれらに取り組まないということは、これからの時流下においては会社にとって大きなリスクになるのです。
実際に、先進的な物流会社では、「SDGsの17の目標」ごとに様々な取り組みを行っています。
〈物流業界におけるSDGsの取り組み一例〉
1 | 貧困をなくそう |
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2 | 餓死をゼロに |
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3 | すべての人に健康と福祉を |
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4 | 質の高い教育をみんなに |
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5 | ジェンダー平等を実現しよう |
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6 | 安全な水とトイレを世界中に |
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7 | エネルギーをみんなにそしてクリーンに |
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8 | 働きがいも経済成長も |
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9 | 産業と技術革新の基盤をつくろう |
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10 | 人や国の不平等をなくそう |
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11 | 住み続けられるまちづくりを |
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12 | つくる責任つかう責任 |
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13 | 気候変動に具体的な対策を |
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14 | 海の豊かさを守ろう |
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15 | 陸の豊かさも守ろう |
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16 | 平和と公正をすべての人に |
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17 | パートナーシップで目標を達成しよう |
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SDGsの取り組みを掲げると、社会課題への対応をしている企業というイメージ向上につながりますが、それに加えて新たな事業機会の創出の機会にもなります。
今後は、SDGsや脱炭素への対応がビジネスや融資における取引条件になる可能性が高いと言われています。また、SDGsに取り組むことをきっかけに、地域との連携、新しい取引先や事業パートナーの獲得、新たな事業の創出など、今までになかったイノベーションやパートナーシップを生む可能性もあります。逆にいえば、SDGsに取り組まないことは、機会損失を発生させるリスクがあるのです。
さらに、17の目標の中には、働きがい、健康・福祉、環境保全の項目があります。これらは、まさに物流業界が抱える、人手不足や労働環境の改善に向けたホワイト物流の促進、環境への配慮は官民一体で取り組むべき課題との共通項でもあります。
SDGsの取り組み具体例
兵庫県に拠点を置くある運送会社では、完成した製品と金属スクラップを特殊な車両で積み合わせ輸送を行い、トラックの稼働率を上げるだけでなく、CO2の削減に取り組んでいます。自動車部品の納品と引き換えに金属スクラップを回収し、積み合わせて輸送することで効率的な輸送の提供およびCO2の排出量削減に貢献しています。
鉄くず・非鉄金属を輸送するための車両・設備を完備し、行政から許可を得て、鉄くず・非鉄金属の回収・販売をしており、年間取扱量は37,000t(スカイツリー約6本分)にも及びます。
また、荷主企業から金属スクラップを購入する代わりに、輸送費で還元することもできるようにされています。同社と取引する荷主企業は、輸送費とCO2を削減することができ、またSDGsに取り組んでいることを対外的にPRできるのです。
その他のSDGs取り組みの事例として、愛知県に拠点を置く物流会社では「住み続けられるまちづくり」のために、生前整理・遺品整理サービスを展開しています。
同社が拠点を構える地域は、65歳以上の老年人口率が30%近くあります。今後も少子高齢化が進む中、誰もが安全・安心・健康的に住み続けられる街で居続けるため、生前整理・遺品整理サービスに踏みこみました。
また、回収した不用品をそのまま処分するのではなく、東南アジアを中心とした発展途上国へ独自ネットワークで輸出し、可能な限りリユースすることで、利用者は安価にサービスを利用することができます。
SDGsに対する理解度と社内浸透策
現状、中小企業のSDGsの認知度・対応状況は乏しいものです。関東経済産業局が中小企業を対象に行った「SDGs認知度・実態等調査」において、SDGsについて全く知らないという回答が84.2%にも及ぶことがわかりました。
しかしながら、裏を返せば、中小企業のSDGsに対する意識はまだ高くないため、今のうちに取り組むことが他社との差別化になるでしょう。
とはいっても、初めはどこから手をつけてよいかわからないこともあるかもしれません。まずは、社内のSDGsに対する理解を浸透させましょう。SDGsと自社の経営戦略と整合させるためにも、社員に取り組む意識の醸成を図る必要があるからです。
群馬県のある運送会社では、カードゲームを活用して、SDGsの社内勉強会を行っています。
与えられたお金と時間のカードを使って、プロジェクト活動を遂行し最終的な定められたゴールを達成するといったもので、「SDGsがなぜ必要なのか」、「SDGsが自身の日常や生活に変化をおよぼすのか」を体験的に理解しやすくなるとのことでした。
各社取り組める内容は異なるかと思いますが、ぜひ企業・事業所ごとの課題解消、また業界ひいては社会全体をよりよいものとするために、「SDGs」に取り組んでみてください。
- 物流業界における2024年問題とSDGsへの対応。物流事業者が取り組むべきこととは!【連載記事】
著者プロフィール
船井総研ロジ株式会社
HR・組織開発チーム
志宇知 咲(しうち えみ) 氏
全国の運送会社・物流会社に向けた業績アップコンサルティングを展開し、主に 人材採用・育成・定着支援を行っている。また、男性の職業というイメー ジの強い物流業界における女性活躍の推進にも取り組む。
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