富士通は「問題を見つけ出すための議論」が当たり前だから面白い

富士通は「問題を見つけ出すための議論」が
当たり前だから面白い



掲載日 2022年7月15日

富士通株式会社(以下、富士通)のデザインセンターは、富士通が提供する多様なサービスやプロダクトのデザインを担い、また富士通全社に向けてデザイン思考を浸透させる活動を行う、富士通のデザイン部門です。そこではどのような人が働いているのでしょうか。

福元 涼介は2021年に中途で富士通に入社し、現在はデザインセンター ビジネスデザイン部に所属しています。入社後は企業向けのクラウドサービス「FJcloud」のWeb販売拡大を目的としたUI/UXデザイン設計を担当するほか、全社へのデザイン思考浸透の業務を実施。

上記のプロジェクトをはじめ、もともと自分のやりたかった「問題を自ら見つけ出し、解決する」という仕事に携わることができ、やりがいを感じていると言います。エンジニア・マーケターとしてのキャリアを持つ福元に、富士通での仕事への思いを聞きました。

記事のポイント

  • 「問題を自ら発見し、解決する」仕事がしたくて富士通への入社を決意
  • デザイン思考浸透の業務では、意見の異なる相手の考えに丁寧に寄り添うことを大事にした
  • デザインセンターには困ったときにお互いに助け合う文化があり、コミュニケーションの取りやすさを感じている

「問題を見つけ出す」ことに注力したかった

福元 涼介
デザインセンター ビジネスデザイン部所属(2022年7月時点)

——— 富士通に入社される前はどのような仕事をされていたのでしょうか?

福元: 大手総合電機メーカーで自動車部品の機械系のエンジニアとして約4年間働いていました。車には「P(パーキング)」や「D(ドライブ)」など、走行モードを切り替えるシフトレバーという部品があります。それを電子的に制御する部品を開発していました。その後異動し、モバイルデバイスの商品企画・マーケティングの仕事に2年半弱携わります。ここではマーケティング業務を通じて常に「数字」と向き合っていました。

これまでのキャリアを通して私がずっと感じていたのは、もっとユーザーと向き合う時間を増やしたいということ。さらに言えば、「指示されたものを創り出す」仕事ではなく、より本質的な課題を発見してアプローチするような仕事がしたかったんです。

自動車部品のエンジニアとして働いていたときの仕事は、基本的にはクライアントの求めるものを開発するという内容です。また、マーケティングに携わっていたときも、ある程度決められた課題に沿ってマーケティング施策を回していくような仕事をしていました。これらも確かに重要な仕事ですが、もっと業務を行う理由や意味を重視し、「問題を見つけ出す」ことに注力したいと考えていました。

——— 富士通で働くことを魅力に感じた理由を教えてください。

福元: 2020年8月頃の記事で、富士通が子会社の富士通デザインを吸収し、新たにデザインセンターを設立したことを知りました。デザインの力を駆使して全社のDXを進めていく富士通の取り組みや、魅力的なサービスを生み出すために、デザイナーだけでなくグループ全体でデザイン思考を取り入れるという内容でした。

そのニュースをきっかけに、「デザイン思考」への興味が高まり、調べるうちに自分がやりたいことに繋がっていることがわかり、富士通という企業に魅力を感じました。

——— 入社前に抱いていた印象と、実際に入社しての印象の違いはどうでしたか?

福元: ただ、全社へのデザイン思考浸透を進めているニュースが出ていたとはいえ、 実際にビジネス検討の段階からデザインセンターがプロジェクトに入ったり、他部門にデザイン思考浸透を促すような業務が積極的に行われているかは、正直半信半疑でした。

しかし、入社してみると富士通がデザインの力に期待し、従業員のマインド変革に本気で取り組んでいることを肌で感じ、より仕事へのモチベーションが高まりました。

また、入社前には「デザイナーはこだわりが強いのでは」というイメージがあり、ノンデザイナーである自分の考えに耳を傾けてもらえるか不安でした。しかし実際に一緒に働いてみると、彼らは変化を恐れず新しい学びにも前向きで、積極的に私の意見に耳を傾けてくれる人たちだとわかったんです。これは自分も勉強しないと置いていかれるなと感じ、「頑張らなければ!」と日々刺激を受けています。



デザイン思考浸透では相手の目線に寄り添うことを重視

——— デザインセンターではこれまでどのような仕事に携わってきましたか?

福元: 転職してきた当初は、社内のマインド変革として、富士通の各事業部にデザイン思考を浸透させる活動を中心に行っていました。その後は、富士通が提供する事業者向けクラウドサービス「FJcloud」のWeb販売を拡大するため、WebサイトのUI/UXのデザイン設計をしています。具体的には、お客様がWebページを閲覧する際の導線を最適化したり、コンバージョン獲得ボタンの位置調整など各ページの改善を行う、といった仕事です。

ターゲットの行動を意識して設計された「FJcloud」のWebサイト

——— 特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

福元: 社内のマインド変革(デザイン思考浸透)は、入社してすぐに関わったプロジェクトの1つだったので、印象に残っています。私はマインド変革のためのオンライン・ワークショップの設計、当日のファシリテーションなどを担当。参加者の職種は営業、エンジニア、企画、SE、管理職などで、人数は約20名ほどでした。

ワークショップの目的は、参加者に「事業部視点」で自分たちのビジネスを考えるのではなく、「お客様視点」で考えたらどうなるのかを体験してもらうこと。その上で、サービスの本来あるべき姿はどういったものか、解決すべき課題は何なのかといった問いを考えてもらいました。実はこのプロセス自体が、デザイン思考の考え方そのものになるように設計しました。

——— ワークショップではどのような点を工夫したのでしょうか?

福元: 参加者のなかには、最初はデザイン思考の必要性を理解できず困惑していた社員もいました。たとえば、事業部の人は目の前の利益を生み出すことに注力するため、「デザイン思考を学ぶことよりも、もっとやるべきことがある」と考える人もいて。私も転職する前は事業部門にいたので、その気持ちはよく理解できました。

そこでワークショップでは、デザイン思考に否定的な意見も理解し、丁寧に寄り添っていくことを意識しました。具体的には、チームビルディングでお互いのことを知る時間を設け、お互いの考えを共有し、丁寧に認識合わせをしていきました。ただ、一方的にデザイナーがデザイン思考の大切さを伝えるだけではなく、事業部の方々の考えを理解しようという気持ちで接することで、周囲の賛同や協力が得られると考えています。

また、ワークショップをただの机上の空論で終わらせないようにする点も意識しました。そこで、テーマは業務と直結する内容に設定。参加者が出したアウトプットを実務に生かせるようにしました。

その結果、ワークショップが終わってからは、参加者からは「顧客目線で見たときに」とか「相手が知りたい情報はこれだろう」といった発言が出てくるようになりました。働きかけによって、顧客視点から考えるデザイン思考の習慣づけにつながったと感じられたときは達成感を得られましたね。



デザインとマーケティング、双方の視点を深めたい

——— デザインセンターで働く仲間は、どんな人が多いですか?これまでの職場と比べて特徴があれば教えてください。

福元: 最初に感じたのは、「お互いを助け合う職場」ということです。私が所属しているビジネスデザイン部では、週に1回部内全員参加の連絡会があります。その会議の場で、入社当初に私が業務で困っていることを発信する機会がありました。

これまでの会社では、自分にそこまで関係のない話題には反応がない場合も多かったのですが、たくさんの人から「こういう経験があるから教えられるよ」といったレスポンスをいただけて……。正直、とても嬉しい驚きでした。

また、グループチャットで簡単な質問をしたときもたくさんの反応があります。デザインセンタ-にはお互いに助け合う文化があり、働く上でとても心強いですね。

——— では、デザインセンターにおける仕事のどんな部分にやりがいを感じていますか?

福元: 誰かから指示されたことだけを行うのではなく、ビジネスの上流から関われることにやりがいを感じます。デザインセンターの仕事では必ず顧客の課題を考えます。ターゲットやペルソナをしっかりと設定し、誰に対してどんな価値を提供できるかということを、時間をかけて丁寧に議論するんです。

以前の私の仕事では、顧客の課題を考えることよりも、売上目標達成に向けて、どの顧客をターゲットにするかを決めることに注力していました。顧客の声に耳を傾け、悩みごとや要望をヒアリングしてはいたものの、その悩みを生じさせている本質的な課題を見つけることは、十分にできていなかったと思います。デザインセンターで行う「顧客の課題を考える」光景は私にとって当たり前ではなかったんです。

だからこそ、今の仕事は意味あるものだという実感が強くあります。顧客が真に求めるものを見つけるのはとても難しいことですが、大きなやりがいを感じていますね。

——— 最後に、今後のキャリアの展望を教えてください。

福元: デザイン思考による顧客視点と、売上などの数値的視点の両方を持った、ビジネス全体を設計できるデザイナーになりたいと思っています。デザイン思考から生み出されるアイデアは、顧客視点から生まれているため、必ずしもビジネスとして成立するかどうかはわかりません。それを判断するためには、数値的視点が必要です。

数字を重視するマーケティングとデザインは異なります。言ってみれば、マーケティングは高いところから全体を見る仕事。デザインは逆で、より現場に近い下のほうから、ひとつひとつの事実を着実に見ていく仕事ではないかと思うんです。

デザイナーとの共通言語を持ちながら、マーケティングやビジネスの知見をもとに、ビジネスを推進する。このように俯瞰の視点と現場の視点の両方を持つ人は、世の中にはまだまだ少ないと思います。そういった橋渡しの役割を果たせるようになりたいと考えています。

■データ

  • 所 属
    デザインセンター ビジネスデザイン部(2022年7月時点)
  • 入 社
    2021年中途入社
  • 前 職
    大手総合電機メーカーで大手自動車様向けの自動車部品の設計や、法人向けモバイルデバイスの商品企画業務に従事
  • 出身大学
    東京理科大学 理工学部 機械工学科卒業
    破壊力学を学ぶ
  • 趣 味
    野球観戦


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