セミナーレポート

第6回 大学DX推進セミナー 2022年7月22日開催

女子栄養大学における
「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」
の採択まで
これから目指す教育DXのスタイル

女子栄養大学

 

ポストコロナ時代に向け、大学では学生一人ひとりに最適な授業とデータを生かした効果的な学修支援が求められています。富士通Japanが2022年7月22日に開催した「第6回 大学DX推進セミナー」では、女子栄養大学 栄養学部 赤井 昭二氏をお招きし、これから目指す教育DXのスタイルへの取り組みについてご講演いただきました。文科省補助金の申請から採択までの経緯と成果、今後目指していく教育DX、女子栄養大学のICTモデル「NuTech(Nutrition×Technology)」についてご紹介します。

デジタルを活用した
学修者本位の教育の実現が必要

学校法人香川栄養学園 女子栄養大学は2021年、文科省による補助金「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」(以下 補助金)の公募に応募しました。このプランは、大学や高等専門学校においてデジタル技術を積極的に取り入れ、「学修者本位の教育の実現」や「学びの質の向上」に役立つ取り組みを支援することで、ポストコロナ時代の高等教育における教育手法の具体化とその成果の普及を図ることを目的としています。実施機関として採択されると申請した取り組みに補助金が支給されます。

赤井氏は応募に関して、「学内研修会の富士通による講演で、Society 5.0に関する情報を聞く中、教育DXの将来的な構想や展望が、私たちが思い描いている以上であることを知り、強い危機感を持っていました。そのようなタイミングでの公募でしたので、すぐに応募することとしました。ただ、申請書類が公開されたのは令和3年1月20日の午後で、締切が2月1日必着。実質的には10日間という短い期間で申請書類を用意しなければなりませんでしたので大変な作業でした」と振り返ります。

女子栄養大学ではそれまでもタブレットの導入を始めとした大学内でのDXを推進してきました。しかしながら、GIGAスクール構想や新型コロナウィルス感染症の影響で、急速なデジタル化が推進されている中で学んできた学生、デジタルネイティブな学生が確実に数年後大学に入学することを考えたときに、「一人ひとりの個性や学修状況に応じて、最適化された教育指導が求められるようになる」と考え、大学としてデジタルを活用した学修者本位の教育の実現を推進していくことが必要だと考えたのです。

補助金公募への
申請から採択までの経緯

申請にあたっては、まず学内のコンセンサスを得て、前提となる大学全体のDX推進計画を早急にとりまとめたうえで、本補助金で目指す目標・目的や大学の特色をうまく組み合わせる必要がありました。審査の観点を整理して、草案を回覧して添削・修正を繰り返し、実に8日間で20回超の加筆修正を行いました。

「申請の中で一番重要視したのは、教務や学生課、入試、教員など、それぞれに分散してしまっているデータを紐付けて、新たなデータや見方を生み出すことです。これまでは紐づいていても結果的にうまく使われていない、見方が単一だったデータを、『統合データベースとして全体を紐付けする』ことで、これまでとは違った角度で分析をして、学生の進捗や次の目標、必要な学習時間などを引き出しています」(赤井氏)。

これにより、視覚化して教育の進捗を学生に提示でき、教員たちにも新たな利用の仕方が生まれます。つまり統合データベースを活用することで学びの可視化を実現し、「テーラーメイド教育」を推進していくことを、申請の核としたのです。

■DXを活用したテーラーメイド教育DXを活用したテーラーメイド教育

具体策としては、富士通ソリューション「Unified-One統合データベース」を導入し、統合データベースを用いた縦断的・多角的なデータの解析を行い、学生一人ひとりの学修状況並びに進路の可視化・数値化とフィードバック、ハイブリッド型授業推進のための実験実習のデジタル化教材、自学自修を促進するデジタルコンテンツなどを作成することなどです。さらにこれら取り組みの結果を統合データベースへ集約して、PDCAを回すことで新しい学びをスパイラルアップしていきます。

こうして申請を行った結果、「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」の実施機関として採択されました。

補助金採択により
実施した取り組みの実績と成果

採択された補助金を活用し、大学全体のDX推進計画の一部を実施しました。その実績・成果としてはまず、さまざまな学生情報とLMS上の学修データ連結し、統合型基幹システムのコアをUnified-One統合データベースで構築したことです。これにより教員と事務方が共通の認識を持って、学生に対応できるようになりました。

他にもデータの解析・可視化には「Tableau」を導入。どのようなデータを可視化するのが最適なのか検討中ですが、Tableauを利用することでさまざまな角度からの解析が可能となります。現在は解析結果の一部、例えば、学習の振り返りとGPA(成績評価)を相関させたグラフや、授業に対する学修自己評価とGPAを比較したグラフをLMS上で学生に提供しています。

もう一つの実績は、ハイブリッド型授業を推進するためのデジタル教材を作成したことです。調理実習系デジタル教材には複数の角度から撮影した映像が入っており、学生は見たい部分を繰り返したり、画面サイズや方向を変えたりして、自学自習を行うことが可能です。

女子栄養大学が目指す教育DX

今後も女子栄養大学は学生本位の教育実現を目指して、教育DXを推進していきます。

学生一人ひとりの学習ログや成績などから、卒業時の目標に対してどのくらいの位置にいるのか、あとどのくらいの学習時間が必要なのかなど、さまざまな情報を視覚化・数値化し、そのうえでAIによる解析で次の学習計画や目標をリアルタイムで提案できるようなデジタル化を進めていきます。まさにこれが『Society5.0時代の教育』の体現になるのだと思います」(赤井氏)。

女子栄養大学では来年度から1年生にタブレットを必携化してキャンパスライフの大変革を計画。タブレットを授業で利用するだけでなく、学習データなどを教員のスキルアップにも利用し、デジタル教育とアナログ教育をミックスして、学生個々の進み具合に対応した学習者本位の教育を実現していきます。これを「NuTech(Nutrition×Technology)」と銘打って女子栄養大学モデルとして推進していきます。

■女子栄養大学のICTモデル「NuTech」女子栄養大学のICTモデル「NuTech」

赤井氏は今後に向けて、「統合データベースを本格運用して学習状況を視覚化し、教育へフィードバックしていきます。デジタル教材の充実や、教員のスキルアップ、メディア授業の常設化や、最終的にはデータベースをAIによる自動目標設定型にしていくことも考えています。今後は、現在の教育の常識を超えたICTの機器の使い方やAIの活用により、私たちが今思い描いている以上のことがやってくると思います」と語りました。

Profile

学校法人香川栄養学園
女子栄養大学
栄養学部
赤井 昭二 氏

赤井 昭二 氏

[ 2022年10月 掲載 ]

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