サステナビリティ・トランスフォーメーション
Fujitsu Technology and Service Vision 2022
「Fujitsu Technology and Service Vision 2022」は、CEOをはじめとするビジネスリーダーがデジタルイノベーションによってサステナビリテイ・トランスフォーメーションを実現するための方法を提言しています。
富士通の未来ビジョンは、実際の世界に重要な変化をもたらすテクノロジーにもとづいており、パーパス・ドリブンなリーダーシップによって実現されます。ここでは、2022年の私たちの調査で明らかになった、ビジネスにインパクトをもたらす最新のトレンドを紹介します。
なぜ今、企業はサステナビリティ・トランスフォーメーションを進める必要があるのでしょうか。
経営におけるサステナビリティの優先度は高まっており、サステナビリティが最も重視すべき喫緊の課題の一つとなっています。
私たちのグローバル・サステナビリティ・トランスフォーメーション調査レポート2022では、CEOをはじめとするビジネスリーダーがサステナビリティ・トランスフォーメーションに取り組む上での課題や成功要因を明らかにしています。
サステナビリティは経営の優先課題へ
パンデミックを経て、環境・社会・経済のサステナビリティに対する世界のビジネスリーダーの意識は急激に変化しています。富士通がForrester Consultingに委託して実施した世界9カ国 1,800人のビジネスリーダーを対象とした調査*1において、60%の企業がこの2年間の間に経営におけるサステナビリティの優先度が高まり、41%は自社におけるトップ3の優先課題の一つであると回答しています。トップ1に掲げる企業も6社に1社に上っています。
過去2年間で経営における
サステナビリティの優先度が高まった
サステナビリティは経営の
トップ3の優先課題
その最大の理由が、若い世代の間でのサステナビリティに対する意識の高まりです。ミレニアル世代やそれに続くZ世代*2が世界の生産年齢人口の60%近くを占める中で、彼らの共感を得られなければ人材を維持することができません。さらに、政府の規制やガイドライン、消費者団体からの要請に受身的に対応することに加えて、サステナビリティへの主体的な貢献が企業や商品の価値向上に直結すると積極的にとらえていることや、消費者や顧客が企業にサステナビリティへの貢献を求めていることも明らかになりました。
サステナビリティの優先度が高まった理由
出典:2022年2月 富士通がForrester Consultingに委託して実施した調査
今後の中長期的な企業の成長のために、サステナビリティは最も重視すべき喫緊の課題の一つであることは間違いありません。
*1 2022年2月 富士通がForrester Consultingに委託し、日本、シンガポール、中国、オーストラリア、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スペインのCxOと意思決定者に対してサステナビリティ・トランスフォーメーションについての調査を実施(オンラインと一部インタビュー)。
*2 ここではミレニアル世代を1981年~1996年生まれ、Z世代を1997年~2012年生まれと定義。
サステナビリティ・トランスフォーメーション
多くの企業が、サステナビリティ・トランスフォーメーション(環境・社会・経済により良いインパクトを与えるためにビジネスを変革すること)に取り組んでいます。
まず注目すべきことは、企業が単にCSR活動としてではなく、ビジネスに統合した形で変革に取り組んでいることです。「環境や社会にポジティブなインパクトをもたらすために製品やサービスを作り出すプロセスを主体的に変革している」と回答した企業は60%に上り、さらに45%が製品やサービスの価値を主体的に変革していることが分かりました。
わたしたちの調査結果では、2社に1社が、サステナビリティに関するビジョン・全社戦略を策定し、事業の一環として変革の実行に着手しています。さらに、5社に1社は具体的なサステナビリティ・トランスフォーメーションの成果を実現しつつあります。
しかし、サステナビリティ・トランスフォーメーションの先駆者と言える、成熟したプラクティスを実践する真のリーダー企業は全体の5%でした。これらの企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか?
非アクティブ
非アクティブ
フォロワー
ネクストリーダー
リーダー
出典:2022年2月 富士通がForrester Consultingに委託して実施した調査
成功への鍵
サステナビリティ・トランスフォーメーションを成功に導くために、世界のビジネスリーダーが最も重要なこととして挙げたのは、サステナビリティを志向した企業パーパス(社会における存在意義)を定め、CEOが自ら情熱を持ってパーパスを実現するために行動することを従業員に促すリーダーシップでした。
サステナビリティ・トランスフォーメーションのリーダー企業は、パーパスにもとづいて従業員をエンパワーし、データやデジタルテクノロジーを活用、さらにオープンなエコシステムを構築して変革を具体的に実行し、成果に結びつけています。
パーパス・ドリブン
- サステナビリティを志向した企業パーパスを策定し、CEOが強いリーダーシップを発揮して全社戦略を実行
- 財務・非財務の明確な目標とKPIを策定
ヒューマンセントリック
- 従業員が必要なスキルを身につけるように支援
- イノベーションをアジャイルに実現できるように従業員をエンパワー
- 従業員のサステナビリティに関するアイデアを活かし、実現する制度を実行
- 信頼と共感の文化を醸成
- 従業員のダイバーシティとインクルージョンを促進
データ・ドリブン
- アジャイル開発などの手法をサステナビリティ向上に活用
- サステナビリティを向上する新ソリューションの開発のためにデータを活用
- 社内のサステナビリティに関するデータを統合・管理し、データに基づいた判断や業務遂行を実践
- 顧客、従業員、パートナーの個人情報を安全に保護
- サステナビリティ向上のために、データやデジタルテクノロジーを活用してビジネスプロセスを変革
コネクテッド
- オープンなエコシステムを構築し、目標や明確なKPIを共有
- サステナビリティ価値創出のために信頼できるデータをエコシステムパートナー間で共有
- 公的機関と積極的に協力し、パートナーシップを組成
- サステナビリティに関する制度の形成に積極的に関与
出典:2022年2月 富士通がForrester Consultingに委託して実施した調査
デジタルファーストのアプローチ
データやデジタルテクノロジーは、サステナビリティ・トランスフォーメーションの遂行のために不可欠な要素です。わたしたちの調査においても、3社に2社はデジタル・トランスフォーメーションがサステナビリティ・トランスフォーメーションの成功に寄与し、今後データやデジタルテクノロジーへの投資を増加する計画と回答しています。実際に、多くの企業がデジタルテクノロジーを活用し、社内やバリューチェーン全体におけるCO₂排出のモニタリング、材料や食品のトレーサビリティ、インクルーシブ・ファイナンス、よりパーソナライズされたサービス提供などを既に実践しています。
デジタル・トランスフォーメーションは
サステナビリティ・トランスフォーメーションの
成功に寄与する
サステナビリティ向上のために
データ、デジタルテクノロジーへの
投資を増加させる計画
デジタル・トランスフォーメーションとサステナビリティ・トランスフォーメーションには非常に強い相関性があります。今回の調査では、サステナビリティ・トランスフォーメーションのリーダー企業は、デジタル・トランスフォーメーションの実践においてもより成熟していて、具体的な成果を上げていることが明らかになりました。
サステナビリティがグローバル喫緊の課題となった世界において、デジタルファーストでサステナビリティ・トランスフォーメーションを推進していくことが非常に重要なのです。
サステナビリティ・トランスフォーメーションのリーダー企業は、デジタル・トランスフォーメーションの成熟度が最も高い
* リーダーとネクストリーダーの平均
出典:2022年2月 富士通がForrester Consultingに委託して実施した調査
阻害要因と解決の方向性
サステナビリティ・トランスフォーメーションの実行は必ずしも容易ではありません。求められる変革の規模は非常に大きく、中長期的なコミットメントを必要とする取り組みです。売上や利益という財務的な価値を向上させることと、環境や社会に非財務的な価値を創出することは、短期的には相反する可能性があります。財務と非財務のKPIを明確に定め、その両者がお互いにポジティブな影響を与え合うように導き、成長のサイクルを駆動していくことが重要な課題です。
サステナビリティ・トランスフォーメーションの阻害要因
出典:2022年2月 富士通がForrester Consultingに委託して実施した調査
経営層が社内の抵抗や懐疑に向き合い、パーパスにもとづいてビジョンと戦略・施策の整合性を取ると共に、社員全員の意識やカルチャーの変革にも取り組んでいかなければなりません。
出典:2022年2月 富士通がForrester Consultingに委託して実施した調査
企業から社会へ
今回の調査の中で、サステナビリティ・リーダー企業のほとんどが、「自社のサステナビリティ・トランスフォーメーションの活動は投資家、従業員、顧客、環境、社会の全てのステークホルダーの価値を向上すると共に、売上・損益・株式時価総額などの財務的な価値にもポジティブな影響を与えている」と回答しています。わたしたちが Fujitsu Technology and Service Vision 2021 で提示した、マルチ・ステークホルダーに対する価値を最大化する新しい企業の形である、「Business to Everyone(B2E)」が現実の姿として現れてきていることが確認できました。
環境・社会・経済の困難な課題解決を前進させるためには、サステナビリティのビジョンや目標を共有し、非財務の無形の価値を流通させるエコシステムを構築、再生型の社会に発展させていくことが必要です。これが、これからの10年のロードマップです。
調査レポート 2022