低軌道(LEO)衛星ブロードバンド

人工衛星を活用したインターネット

私たちは今、世界のどこにいても高速・低遅延のインターネットへのアクセスが可能となる次世代のインターネット革命を迎えようとしています。それは、世界中のすべての人がつながり、誰も取り残さない社会を実現します。

今日、インターネットは、私たちの日常生活に欠かせないものとなっていますが、その一方で、人口の40%に相当する35億人が、インターネットにアクセスできていません。先進国においても、インターネットを一様に利用できるわけではなく、地域によってはアクセスが困難で、遅延したり、つながらないといった状況にあります。

今、新たな技術革新である次世代の低軌道(以下、LEO : Low Earth Orbit)衛星によって、世界中の陸、海、空において、高速で低価格のインターネットアクセスを実現しようとしています。

低軌道衛星(LEO)から見た地球

衛星によるインターネット接続

静止軌道(GEO)衛星は、インターネットアクセスの手段として、25年以上利用されています。高い軌道で周回する衛星を活用するため、500~600ミリ秒の遅延が発生し、活用できるアプリケーションが限定的となっています。また、GEO衛星と通信するためには、大型のパラボナアンテナが必要であったり、または信号強度を高めなければなりません。

図1:衛星の軌道

図1は、GEO(静止軌道)衛星、MEO(中軌道)衛星、LEO(低軌道)衛星とそれらの軌道を示しています。GEOは地球から最も高い高度(約35,786km)で運用され、遅延時間は500〜600ミリ秒です。MEOは通常、地球から2,000〜36,000kmの間の高度で、遅延時間は27〜500ミリ秒です。LEOは、地球から160〜2000kmの高度で、遅延時間は2〜27ミリ秒です。

出所:著者作成

次世代の衛星

LEO衛星は、インターネットアクセスを提供する次世代の衛星であり、GEO衛星と比べると、小さく、軽くて安価です。例えば、運用されているStarlink衛星の大きさは、約3.2m×1.6m×20cm、重さは227kgです。また、最も小さいLEO衛星は、11cm×11cm×2.8cmで、重さ1kg未満です。さらに、LEO衛星は大量生産が可能で、打ち上げ費用を除くと1機あたりのコストが7,000ドル程度と安価に生産できます。GEO衛星は、都市バス並みの大きさで、重さは6,500kg、打ち上げ費用を除いても1.5~2億ドルの製造コストがかかります。

重要な特徴として、LEO衛星は、低遅延(2ms~27ms)、かつ広帯域のインターネットアクセスを提供することが可能です。このため、多くのアプリケーションで利用されている固定・無線インターネットアクセスの代替として活用することが可能です。

しかしながら、LEO衛星は低い高度で周回するため、比較的狭い領域しかカバーすることができません。加えて、衛星が高速で移動するため、衛星インターネットプロバイダーが、地上の利用者にシームレスな接続環境を提供するためは、何百、何千もの衛星を配備する必要があります。一方で、高度が低いため、GEO衛星に比べて通信に必要な電力消費が少ないというメリットも有しています。

多くのLEO衛星で構築される通信ネットワークの信頼性向上のために、Starlinkや他の衛星ネットワークプロバイダーは、レーザーを活用した衛星間通信を活用しています。これにより、衛星が海上を通過するときや地上局がオフラインのときなど、地上局と直接接続できない衛星も、LEOネットワーク内の衛星間で通信することで、継続的にサービスを提供することができます。複雑な物流ネットワークの最適化に活用されている富士通のデジタルアニーラは、最適な通信サービスを維持するために、多数の衛星で構成される非常に複雑なネットワーク構成を最適化できる可能性を秘めています。

補足:衛星によるインターネット接続には、中軌道(MEO)衛星も利用できます。しかし、MEO衛星は、LEO衛星よりも導入コストが高く、高い軌道を周回するため遅延が大きくなり、衛星ベースのインターネットアクセスに適しているとは言えません。

なぜ今なのか?

フェーズドアレイアンテナの小型化が進んだことで、LEO衛星を利用したインターネットアクセスが現実的になりました。電子操縦アンテナ(ESA)と呼ばれる、小型のピザボックスサイズのアンテナは、高速で移動するLEO衛星を追跡することができます。このアンテナを利用して、運行中の船舶、航空機、列車、車両にインターネット接続が提供できます。実際に、メキシコのバハで行われるラリーに参加した競技者は、Starlinkのネットワークを使用して、過酷な環境下を高速で移動する車からラリーの様子をライブストリーミングできることを実証しました。

また、再使用可能なロケットを利用できるようになったことで、衛星を低軌道に打ち上げるための費用対効果が向上し、一度の打ち上げで60機のLEO衛星を低軌道に投入できるようになりました。

LEO衛星の優位性

高速で低価格の衛星を利用した次世代のインターネットアクセスは、地上、海上、空中のどこでも利用でき、ビジネスを大きく変革する可能性を有しています。これまでも、新しいネットワークの出現によって、新たな活用事例やビジネスモデルが創出されてきました。例えば、4Gや5Gのネットワークにつながるスマートデバイスが、イノベーションをもたらすと同時に、多くの既存市場に大変革をもたらしました。世界のあらゆる場所での高速で低遅延のインターネットアクセスが実現されれば、新たなイノベーションや変革がもたらされる可能性があります。

あらゆる場所でインターネットに接続できるようになることで、新しいユースケースやビジネスモデル創出の可能性が広がります。企業や組織は、これらを最大限に活用し、競争優位の維持・獲得や、市場の動きに追従するために、デジタルを活用した変革に取り組まなければなりません。

サステナビリティ・トランスフォーメーション

サステナビリティの実現とそのためのサステナビリティ・トランスフォーメーションは、経営課題としてますます重要になってきています。サステナビリティ・トランスフォーメーション戦略の立案に求められる洞察を獲るためには、データとAIを組み合わせることが欠かせません。例えば、遠隔地のIoTセンサーからデータを収集する機能は、正確なデジタルツインモデルの構築に役立ちます。これによって、複雑なシナリオをテストし、インフラをより持続的に管理するための戦略を開発できます。

LEO衛星通信がもたらす8つの変革事例

LEO衛星通信による新しいインターネット接続を活用した興味深い事例が、数多く登場しています。これらの事例の増加が、ネットワークの需要増を呼び込み、サービスプロバイダーによる新たなネットワークの構築に向けて多額の投資がなされています。

1. 自動運転車

5Gの展開を通じて、自動車のコネクテッド化が進んでいます。今後の自動運転の実現には、無線による接続が不可欠です。

自動運転車は、地図、交通、天候、そして道路のハザード情報をリアルタイムに把握し、また定期的なソフトウェアアップデートを実施する必要があります。同様に、中央の交通管制システムにおいても、渋滞の改善や交通量の平準化、交通の安全性を向上させるためにリアルタイムの情報が必要になります。

衛星通信は、高速かつ低遅延で、常に信頼性の高いインターネット接続を提供できる唯一の技術といえます。また、LEO衛星は、衛星データと地上の補正情報を組み合わせ、リアルタイムで正確な測量を行うリアルタイムキネマティック(RTK)測位を可能にします。RTKは、次世代の自動運転の適用領域を、鉱山での採掘や農機具、ドローンにまで広げると期待されています。

2. モノのインターネット(IoT)

IoTの活用は急速に拡大しています。2021年のStatistaの調査によると、2025年までに750億個以上のIoTデバイスが使用されると予測されています。IoT活用における重要課題の1つは、IoTデバイスが機能するために求められる接続性の実現です。これらのIoTデバイスは、総じて有線インターネットで簡単かつ低コストで接続することができず、更に、Wi-Fi、4Gおよび5Gサービスの利用範囲外に設置されていることが多くあります。これが、電力、農業、輸送、物流、環境モニタリング、救急サービス、鉱業といった領域へのIoTの活用を制限する要因となっています。

富士通は、遠隔地に設置された多数のIoTデバイスの接続を通して、エネルギー企業を支援しました。IoTデータと富士通のAIを組み合わせ、環境にやさしく費用対効果に優れた方法でインフラを管理・制御しています。

衛星を活用した高速で低遅延のインターネットアクセスによって、はるかに多くのIoTデバイスを低コストで接続できるようになることが期待されています。富士通のAIや、デジタルツインプラットフォームDracenaと、IoTのデータを組み合わせた次世代のスマートシティソリューションを活用する等によって、企業や自治体が、より持続的にインフラを管理・制御するための高度なリアルタイムモデルを構築することができます。

3. 救急サービス

遠隔地や農村地域での救急医療において、患者が病院の救急救命科に到着するまでに、より多くの時間がかかるという課題があります。LEO衛星によるネットワーク接続で結ばれることによって、救急隊員が、病院の臨床医や専門家に支援を依頼することが可能になります。例えば、高解像度のビデオ、音声、および診療データを、救急現場から救急救命科への移動中にも共有することができ、より良い救急医療が実現されます。

例えばイギリスでは、スコットランド救急サービス、NHSハイランズとアバディーン大学が、インヴァネスにあるハイランズ地域で唯一の救急救命科に患者を移送する際に、Viasat衛星を利用してどのように重症患者のエコーデータを共有できるかを試行しています。この技術は、アフガニスタンの野戦病院での経験が活かされており、このような軍の救命医療の経験を民間医療へ広げていくことが期待されています。

4. 海運・航空

Royal Caribbeanは、最新のクルーズ船におけるインターネット接続を改善するためにStarlinkを活用しています。また、既存の客船にもStarlinkを導入する予定です。デルタ航空も、2023年に新たに導入されるViasat 300低軌道衛星ネットワークを使用して、乗客に高速で低遅延の機内インターネットサービスの提供を発表しました。

5. 地域のコミュニティや団体をつなぐ

先進国においても、地域によっては、有線のブロードバンド接続や4G・5Gサービス提供が、費用対効果に見合わない地域が多く存在します。これらの地域で活動するコミュニティや住人は、オンラインサービスに容易にアクセスすることができません。この問題に対処するため、イギリス政府は、他の方法では経済的な事情でインターネット接続を提供できない地域に対し、LEO衛星を利用した高速インターネット接続の試験運用を開始しました。イギリスの湖水地方にあるワスデール・ヘッド山岳救助隊は、この検証を支援する組織の1つです。救助隊は、山岳無線やGPS通信が届かない「ブラックスポット」において、どのように衛星通信によるブロードバンドが山岳救助活動を改善できるのかに関する調査に協力しています。

6. レジリエンス(回復力)の向上

LEO衛星ネットワークは、自然災害やインフラが大きなダメージを受けた際に、主要な通信を維持する上で、重要な役割を果たします。最近の例としては、トンガでの海底ケーブルの破断や、2022年のロシアのウクライナ侵攻によるインフラ被害が挙げられます。

7. 物流アプリケーション

冷蔵・冷凍物流では、インターネットへの常時接続によって、輸送中の貨物をリアルタイムに追跡、監視し、正確なトレーサビリティを顧客に提供できるようになります。

8. デジタルデバイドの解消

世界経済フォーラムでも言及されているとおり、発展途上国は、衛星インターネットアクセスの活用によるデジタルデバイドの解消に取り組んでいます。これを受けて、世界経済フォーラムは、ICTコミュニティと世界経済の他の主要産業との間の新たな協調を促進させるために、EDISONアライアンスという世界初のプラットフォームを立ち上げました。EDISONアライアンスは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成する上での重要な手段として、デジタルインクルージョンを取り上げ、グローバルな取り組みを進めています。EDISONアライアンスは、LEO技術を活用し、2025年までにヘルスケア、金融サービス、教育などの領域で、低価格で使いやすいデジタルソリューションを提供することを通じて、10億人の生活改善を目指しています。

国連によると、アフリカでは1億人を超える人々が、いまだにブロードバンドや携帯電話ネットワークを利用できていません。衛星ブロードバンドは、費用対効果の面でこのような遠隔地の人々をつなぐ、唯一の手段となっています。

エンタープライズIT向けのLEO衛星プロバイダー

LEO衛星を利用したサービスプロバイダー間の競争が激化しています。現在、国家インフラ戦略の一環としての高速インターネットアクセス提供に向けて、民間企業と政府がLEO衛星ネットワークの開発に関心を寄せています。すでに16の組織や政府が、2030年までに独自のLEO衛星ネットワークを構築する意向を発表しています。

経済や貿易においてもインターネット接続に大きく依存するようになる中で、堅牢なインターネットアクセスが戦略上およびセキュリティ上の重要な優先事項になっています。COVID-19が引き金となったオンラインの働き方と、ウクライナにおける戦時下での通信を維持するためのStarlinkの使用は、LEOによる高速で低遅延のインターネットアクセスが今後不可欠となっていくことを浮き彫りにしました。

Viasat

Viasatは、300基の低軌道ネットワークを2023年に稼働させることを発表しました。これは主に法人を対象としたものです。

Starlink

Starlinkは、3,000基以上のLEO衛星で構成されたネットワークを有し、25か国で145,000人の利用者を抱えるこの分野のリーダーです。Starlinkは最近、サプライチェーンの問題、特にトランシーバーの製造に必要なマイクロチップの調達が原因で、利用者の増加に制限を受けていると報告しています。

Amazon

AmazonのProject Kuiperでは、3,236基のLEO衛星ネットワークを使用して、世界中の何千万人ものインターネットサービスが提供されていない、または十分ではないコミュニティに対して、高速で手頃なアクセス手段を提供しようとしています。Amazonは、LEO衛星ネットワークと、手頃な価格、かつ小型の顧客端末、安全で耐障害性に優れた地上通信ネットワークを組み合わせた全システムを社内で設計・開発しています。Amazonは、Arianespace、Blue Origin、United Launch Allianceと契約を締結し、衛星ネットワーク構築に向けて、今後5年間で最大83回の打ち上げを行う予定です。

Telesat

Telesatは、188基のLEO衛星ネットワークを有し、今後512基に拡張する予定です。Telesatは、航空市場をターゲットに、極軌道と傾斜軌道を使用して全世界をカバーし、アプリケーションに応じて7.5Gbpsから15Gbpsの速度を提供します。

欧州連合(EU)

EUは、世界経済フォーラムで、EUにおけるブロードバンドアクセスを強化するために、欧州LEO衛星ネットワークを構築する意向を発表しました。EUは、EU外の企業、およびそれらの企業が保有するインフラへの依存を減らすことで、EUのサイバーセキュリティとデータ保護を強化したいと考えています。この新たな衛星ネットワークは、大規模な停電や災害が発生した場合に地上ネットワークを補完できます。この衛星ネットワークは、2025年から2027年の間に打ち上げ予定の170基のLEO衛星で構築される予定です。

Kepler Communications

Kepler Communicationsは、140基のLEO衛星からなるネットワーク「ÆTHERコンステレーション」を開発しており、産業、海洋、航空、物流業務を支えるIoT接続の実現に注力しています。

OneWeb

OneWebは30年以上にわたって海上通信に重点を置いた衛星通信サービスを提供してきました。軌道上に350を超える衛星を保有する同社は、イギリス政府、インドのBharti Enterprises、フランスのEutelsatの支援を受けて、LEO衛星ネットワークの数を2倍にする予定です。

Airtel

インド政府がDigital Indiaプログラムの下で全地域にブロードバンドを提供するという政策決定を受けて、インドのAirtelとイギリス政府のOneWebは、インドへのLEO衛星インターネットサービスの提供における協業を進めています。

LEO衛星通信の7つの技術課題

1. 利用可能な衛星軌道

LEO衛星ネットワークで利用できる最適な衛星軌道には限りがあります。衛星軌道は先着順でネットワークに割り当てられるため、市場への早期参入者が技術的、かつ戦略的優位性を獲得できます。その結果、衛星軌道に配置できるネットワーク数も制限を受け、サービスプロバイダーの数が制限されることになります。既存のサービスプロバイダーが、利用もしないのに新規参入を阻む目的で衛星軌道を占有することがないように、世界無線会議のITUメンバーは、2019年にLEO衛星ネットワークプロバイダーが以下の運用を行うことに合意しました。

  • ネットワーク構築開始から2年以内に軌道上に10%の衛星を配備
  • 5年以内に50%
  • 7年以内に100%

例えば、Starlinkは、2026年までに米国連邦通信委員会(FCC)と国際電気通信連合(ITU)から12,000基のStarlink衛星を配備する許可を得ています。さらに、7年間の打ち上げスケジュールに則り、42,000基まで拡張する権利も有しています。

2. 無線周波数

地上から衛星に通信するのに適した無線周波数も有限です。低周波数ではLバンド(1~2GHz)や Sバンド(2~4GHz)、高周波ではKuバンド(12~18GHz)、Kaバンド(26~40GHz)、Vバンド(40~75GHz)があります。この周波数の獲得についても、プロバイダー間の激しい競争が起きています。地上との通信は、各地域の規制に従うこととなります。このため特定の場所では一部の周波数は利用できないといったことが起こりえます。自国内で運用されている主要なインターネットインフラに重い税金を課しているように、地上局と地域の周波数の割り当てを収益の機会と捉えている政府も存在します。衛星間レーザー通信を活用することで、地域における制約や課題の影響を最小限に抑えることができます。

3. インターオペラビリティ(相互運用性)

衛星ベースのインターネット市場は、すでに競争が激化しています。携帯電話市場の黎明期と同様に、さまざまなプロバイダーが独自の運用を行い、各社のエコシステムに顧客を囲い込もうとしています。企業は、自社が設計・構築したいソリューションに適した、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを提供可能なプロバイダーエコシステムを選択する必要があります。衛星を活用したソリューションが現状は独自仕様であるため、コストやトラブルを抑えつつプロバイダーを変更することは困難といえます。

これは、顧客をロックインすることにもつながり、既存顧客が求める費用削減の圧力を弱め、また解約率を抑えることにもつながります。エコシステム間の相互運用性の欠如は、合併や買収の魅力を低下させ、市場の統合の可能性を低下させることにもつながります。

4. プロバイダーの事業継続費用

商用のLEO衛星ネットワークの構築には、衛星とネットワークの構築に必要な地上局の両方が必要となり、高い初期費用と保守費用が発生します。ネットワーク上の衛星は、故障時や寿命に達したタイミングで、定期的にメンテナンスする必要があります。また、小型の衛星は、大型の衛星並みの遮蔽が無いため、太陽嵐の影響を受けやすく、また損傷に対する耐性も弱くなっています。実際に、Starlinkは2022年に1回の太陽嵐で40以上の衛星を失いました。大規模な太陽嵐がLEO衛星ネットワークに重大な影響を与えるのです。

5. スペースデブリ

スペースデブリ(宇宙ゴミ)は、LEO衛星のみならず全ての衛星にとっての大きなリスクとなっています。衛星軌道上には最大1億6,000万個の破片があると推定されており、最大時速16,700マイル(25,266キロメートル)で移動しています。この速度では、1センチの破片が、衛星を損傷あるいは破壊する可能性があります。大規模なLEO衛星ネットワークを構築することで、衝突による衛星の損傷や損失に備えて、ネットワークを冗長化することができます。

スペースデブリの問題が深刻化する中で、衛星軌道上の衝突リスクが増加しています。このため、スペースデブリを除去する費用対効果の高い方法を見つけ出すことが、急務となっています。富士通は、イギリス宇宙局およびグラスゴー大学と協力し、富士通の量子現象に着想を得たコンピューティング技術であるデジタルアニーラを活用し、スペースデブリを効率よく除去するため航路計算の最適解に取り組んでいます。

6. 発展途上国

国連は、発展途上国で生活する35億人の人々がインターネットを利用することで得られる社会的、経済的、財政的、教育的メリットを享受できるように、衛星ベースのインターネットサービスを途上国向けに優先的に提供することを期待しています。

7. 低コストでの打ち上げ

イノベーションによって、LEO打ち上げ用のロケットが再利用可能になり、低軌道への打ち上げコストが削減されました。ロケットは、打ち上げにかかる費用の中での最大のコスト要因です。打ち上げコストの削減には、公共部門からより競争力のある民間部門へ運用が移行したことが、大きく影響しています。

インターネット接続を超えたLEO衛星の活用

地球の観測(EO : Earth Observation)

LEO衛星の新しい活用領域が、地球観測です。LEO衛星は、30センチの解像度で高解像度のリアルタイム画像を提供できます。更に、AIを使用した映像処理によって、環境モニタリング、作物収穫量予測、特定地域の気象モニタリングの精度を改善することができます。地球の観測によって、肥料や農薬の使用を必要な箇所だけに絞ることで、使用量を最小限に抑えつつ、作物の収穫量を最大化することができます。

まとめ

高速で低遅延の衛星ベースのインターネットアクセスがどこでも利用できるようになったことで、多くの新しいアプリケーションや、これまでインターネット接続が不十分で利用できなかったアプリケーションを利用できるようになってきています。次世代のLEO衛星インターネット通信により、現在の地上ネットワークの制約から解放され、革新的なワークフロー、ソリューション、サービスを構築できる、全く新しい可能性が広がっているのです。

次のステップ

  • 衛星ベースのインターネット接続のポテンシャルを理解し、組織のための新しい働き方モデル、ソリューション、サービスを創出。
  • 有線や5Gが利用できないケース、あるいは常時接続が求められるケースでは、衛星ベースのインターネットの活用を検討。
  • LEOプロバイダーを選択する際は、プロバイダーが提供するネットワーク容量によってパフォーマンスが低下しないよう、適切なSLA作成に注力。
  • 次世代の革新的なソリューションを創出するために、富士通と共創。

参考文献

著者略歴

Nick Cowell

Nick Cowell

富士通 技術戦略本部 主席コンサルタント
これまで米国、欧州、オセアニアでの大手テクノロジー企業で勤務した経験を持ち、ハードウェア、ソフトウェア、およびサービス開発(衛星通信と画像処理を含む)に関する豊富な経験を有する。

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