渋谷区様では、2019年(平成31年)の新庁舎開設を契機にICTを積極的に導入・活用し、行政DXを推し進めています。その取り組みの中で、紙運用とシステム運用が混在していた勤怠管理や各種庶務の申請を、原則すべてシステム運用へと移行すべく、10年以上使用してきた人事給与システム及び庶務事務システムを、2023年(令和5年)8月にIPKNOWLEDGE人事給与・庶務事務システムに更新しました。更新後は、従来システム化できていなかった一部の正規職員、ならびに会計年度任用職員も含めて、勤怠管理及び各種申請が行えるようになり、これまで現場で発生していたデータの転記や二重管理、人事課でのデータ処理作業が、ほぼなくなり、業務負担の軽減につながっています。テレワークやフレックス勤務など先進的な働き方にも積極的に取り組み、人事制度を含めた行政DXを推進されている渋谷区様に、IPKNOWLEDGE人事給与・庶務事務システムの更新について伺いました。
- 人事評価のための情報を一元管理できず、人事異動の判断・分析が属人的であることや、人事課の業務負担が大きくなっていた。
- 庶務事務システムから人事給与システムへの一連の業務がシステムで完結できず、自作確認ツールを使った検証など業務が複雑化していた。
- 旧システムは、実質的に勤怠管理のみのシステムであったことに加え、会計年度任用職員に対応しておらず、勤怠管理が紙ベースとなっていた。
- 人事給与システムのデータを根幹に、人財マネージメントシステムへデータ連携を図ることで、情報を一元化して、業務効率向上につなげられ、人事課の本来業務である人財活用といったクリエイティブな業務に力を傾けられるようになった。
- 自作確認ツールが不要になり、手作業や二度手間となる作業がなくなった。
- 会計年度任用職員を含め、原則すべての職員の出勤簿や各種庶務申請がシステム入力となったことでペーパーレス運用を実現し、データ転記や二重管理が不要になり、現場・人事課双方で業務効率が改善した。
富士通Japan 高木、野村
渋谷区様のご紹介
渋谷区では、区の基本構想に掲げる未来像「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」の実現に向けて、2019年に「渋谷区人財育成基本方針」を策定しています。その中で、職員を「宝=人財」と表現し、すべての職員がいきいきと多様な個性や能力を発揮して、日々成長することで、組織を成長させ、より良い成果を生み出すというビジョンが示されています。2019年の新庁舎移転に伴ってICT化を推進し、行政としては先進的な働き方も取り入れられました。あるべき人財像として定める「渋谷に住む人・集う人の笑顔のために邁進する職員」を育成するため、人財育成部門・職場・人事部門が連携を図り、これまで以上に「人財育成」に力を入れています。
- 業種: 自治体
- 場所: 東京都渋谷区宇田川町1-1
- 職員数: 2,041人(2023年4月1日現在)
- URL: https://www.city.shibuya.tokyo.jp/
背景
渋谷区様における行政DXの取組についてお聞かせください
渋谷区では、2016年(平成28年)に策定した基本構想で、20年後を見据えてダイバーシティとインクルージョンの重視を打ち出し、トップダウンでさまざまな改革に取り組んでいます。2019年(平成31年)の新庁舎開設を契機に、時間や場所にとらわれず自分らしく働き、柔軟な発想で行政サービスを創出することをめざした行政DXがよりいっそう進みました。新庁舎は開放的なオープンオフィスで、部門間の壁をなくしてフリーアドレスも活用し、職員同士のコミュニケーションを促す空間作りを行っています。コミュニケーション活性化のためにICTツールも積極的に導入しており、オンライン会議やファイル共有ツールを活用した打ち合わせで、部署を越えたプロジェクトチームによる事業運営も行っています。民間では珍しくないですが、行政としては先進的にテレワークやフレックス勤務を導入してきました。テレワークは在宅勤務だけでなく、民間のサテライトオフィスの活用なども可能になっているほか、2023年(令和5年)度からはフレックス勤務制度を本格化し、コアタイムを設けない、週休3日も可能といった勤務形態を可能にすることで、育児や介護などの家庭生活と仕事を両立しやすくする取り組みも行っています。最終的には、「区民も職員も来る必要がない区役所」をめざし、DXを強力に推進しているところです。
IPKNOWLEDGE人事給与・庶務事務システムへの更新理由についてお伺いします
2010年(平成22年)に他社システムを導入し10年以上使用してきたのですが、人事課にかかわる大きな業務課題が3つありました。1つ目が、人事評価のための情報を一元管理できず、人事異動の判断・分析が属人的で、人事課の業務負担が大きく、組織全体の生産性向上の最適解を導けているか確証が得られていなかったことです。2つ目が、システムのみで業務を完結できず、業務が複雑化していたことです。例えば、前システムは導入当初、計算精度に懸念があり、自作のExcel確認ツールで計算結果が正しいかを検証していたのですが、そのデータ検証が業務フローに組み込まれたままとなっていて非常に手間がかかっていました。3つ目が、以前の庶務事務システムは、実質的に勤怠管理のみのシステムであったことに加え、会計年度任用職員に対応しておらず、勤怠管理が紙ベースとなっていました。人事課へはExcelに転記したデータを提出いただいていたため、現場では二重管理となっており、手間がかかるだけでなく整合性がとれず、データの精度にも課題がありました。新庁舎開設を機に各部門でICT関連のプロジェクトが動いていたのですが、区の情報管理部門から人事部門のシステム更新についても提案があり、業務プロセスの効率化、高度化をめざすべく人事DX推進プロジェクトが発足し、人事給与・庶務事務システムを更新することを決めました。2021年(令和3年)から検討をスタートし、2022年(令和4年)初めにプロポーザルを実施、IPKNOWLEDGEが採用されて2023年(令和5年)8月より稼働を開始しています。
導入時の工夫
システム更新に当たって、どのようなことに留意して対応しましたか
最も注意を払ったのが、紙運用からシステム運用に変わる部分でした。会計年度任用職員だけでなく、一般職員についても業務でPCを使用しない部門は庶務事務を紙運用していたことから、現場の混乱をできるだけ少なくするため、マニュアルをしっかりと整備して提供することに努めました。IPKNOWLEDGE人事給与・庶務事務システムはほぼカスタマイズなしでの導入だったため、パッケージの標準マニュアルをそのまま利用することに加えて、担当SEとともに渋谷区の運用に沿ったケーススタディを作成し、手順書として提供することにしました。例えば、電車遅延による遅刻や、出張で現場に行き、一度庁舎に戻って再度出張するといった場合のシステムへの入力手順など、マニュアルでは解決できない細かな手順についても準備をしています。また、導入時には全庁的にシステムの操作研修も行い、その様子を動画コンテンツにしていつでも見返せるようにしています。
導入効果
稼働から半年近くとなりますが、どのような効果が出ていますか
会計年度任用職員の勤怠管理を紙で行っていた時には、給与計算のために各現場で紙の出勤簿の内容をExcelシートに転記して人事課に提出してもらっていました。その後、人事課では、提出された会計年度任用職員約500人分のExcelシートを1つのExcelに取り込んで、CSV形式でエクスポートし、人事給与システムに取り込みを行っていました。この一連の流れと取込結果の確認に、毎月3時間ほどかけていました。また、一般職員も含めて紙運用だった各種の届け出を人事給与システムに入力する作業も行っていました。以前のシステムではいわば、人がシステムに使われていたのです。新しいシステムでは、これらのデータが、原則すべてシステム入力となったことでペーパーレス運用を実現し、現場の負担軽減につながり、人事課としても確認作業は残りますが、自作のExcel確認ツールも使用しなくてよくなり、作業を大きく削減できています。
データの精度や活用についてはいかがでしょうか
人事給与と庶務事務が同一パッケージとなったことで、データ連携の精度が高く安心して使用できます。例えば、計算過程で気を付けるようなイレギュラーな申請があった場合にもデータ確認がしやすく、総じて計算の精度が向上していると思います。そのような点を踏まえて、今後制度改正がある場合にも、富士通JapanのIPKNOWLEDGEであればうまく対応してもらえるだろうと信頼しています。次にデータの活用では、ユーザーのニーズに合わせてデータを抽出できるEUC機能が有用です。例えば、調査で「〇月〇日時点」などの時点データ抽出に対応する「基準日時点職員一覧」のほか、「人件費予算積算」などの機能が有用で、活用しています。また、人事課では人財マネージメントシステムを導入しており、その根幹をなすのが人事給与システムのデータです。IPKNOWLEDGE人事給与システムと連携することでシステム横断的に人事評価のための情報を一元管理できるようになり、業務効率化向上につながりました。
導入時から現在の富士通Japanのサポート体制を教えてください
渋谷区では人事給与システムに関連するさまざまなプロジェクトが並行して進んでいたため、それら別プロジェクトに併せて臨機応変に対応する必要がありました。別プロジェクトに対しても柔軟に、素早く対応していただけたことはとても助かりました。常に伴走し、しっかり対話しながら、われわれユーザー側の意図をくみ取って進めてくださり、課題のマネージメントもしっかり行っていただいているため、大変信頼してお任せすることができています。サポートや保守はリモートでも対応してもらっています。業務においてICTツールを積極的に導入・活用していることもあり、担当SEとは電話だけでなく、オンライン会議ツールを使って画面共有などをしながら会話ができるため、非常に効率的かつ迅速にサポートいただけています。いつも誠実にご対応いただき、大変感謝しております。
今後の展開/富士通Japanへの期待
現時点での課題や今後の取組についてお聞かせください
稼働開始からまだ時間が経っていないため、現在は定着に向けて活動している段階ですが、しっかりと浸透すれば人事課・所管課ともにより事務負担が減っていくものと思います。また、これから順次公開していくケーススタディを含め、マニュアルは現場の状況やニーズに合わせてブラッシュアップしていく必要がありますので、富士通Japanと一緒に伴走しながら、さらなる業務改善につなげ、質問が来なくなることをめざして継続して見直しを行っていきます。
富士通Japanへの期待や要望についてお伺いします
システム導入においてユーザーは、「機能」が欲しいのではなく「業務」を提供してほしいと考えています。何かができるだけのツールではなく、業務を完結させるための仕組みです。富士通Japanは「機能」単体ではなく、一連の「業務」全体を把握し、提供していただけるので、われわれも「業務」全体の見直しを行うことができ、効率化を実現できています。それにより、本来すべき業務である人財活用といったクリエイティブな業務に力を傾けることができるようになります。23区ではIPKNOWLEDGEを導入している区も多いと聞くので、そのスケールメリットを生かしたシステム開発や制度改正への即応などに期待しています。富士通Japanには、これからも伴走者として、対話をしながらともに取り組んでいただけたらと思います。
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