パラメトロン式電子計算機「FACOM 201」およびオフコンブームの源・超小型電子計算機「USAC-1010」が、第五回情報処理技術遺産に認定
2013年5月8日
2013年3月6日、「情報処理技術遺産および分散コンピュータ博物館認定式」が、第75回全国大会の開会式として、東北大学 川内キャンパスにおいて執り行われました。わが国の貴重な技術遺産の所有者、同遺産の保存、展示をしているコレクションの関係者が招かれました。
開会の挨拶をされる情報処理学会)古川一夫会長
情報処理技術遺産と、これまでに認定された数々の富士通製品と技術
今回5回目を迎える情報処理学会の「情報処理技術遺産」は、わが国のコンピュータ発達史上の重要な研究開発成果や製品の中で、現存する貴重な資料を保存し、これらが広く社会に知られることを目的として2008年度に始まりました。
弊社は初回より以下のとおり認定を受けています。
- 第一回
商用リレー式計算機「FACOM128B」(1958年製造) - 第二回
1964年当時画期的な新型磁気装置として発表された「FACOM603F磁気テープ装置」、および1980年5月に発表された「OASYS100および親指シフトキーボード試作機」 - 第三回
トランジスタ式小型コンピュータ「USAC-3010」、コンピュータの本格導入期を代表する中型機「FACOM 230-25システム一式」、および16ビットマイクロコンピュータの学習キット「PANAFACOM Lkit-16」 - 第四回
世界初の全面LSI採用超大型コンピュータ用「LSIパッケージMB11K搭載のMCCボード」
認定された2製品における開発の意義
FACOM 201
「FACOM 201」は、日本独自のパラメトロン素子による科学用中型電子計算機として、科学計算、解析等の研究や、技術者の養成に活用され、また、現在でも使用当時の構成で保存された貴重な技術遺産として認定されました。
今回、認定された「FACOM 201」は、日本電信電話公社(現・日本電信電話・NTT)の電気通信研究所が開発したパラメトロンを初めて用いた計算機MUSASINO-1を基に、同研究所と富士通信機製造(現・富士通)が共同開発した改良機として、1960年に製造・発売されました。富士通信機製造では1957年からパラメトロンを素子とする電子計算機の研究開発に着手しており、同研究所と共同で実用性を高めた「FACOM 201」を開発しました。
パラメトロン論理素子を用いた電子計算機「FACOM 201」 (東京理科大学近代科学資料館 所蔵)
1960年に東京理科大学の数学科へ納入された「FACOM 201」は、小型ロケットの研究をはじめとするさまざまな科学計算能力を活かした学術研究や、産業面における自動車の開発に活用されるなどの活躍をしました。
さらに、実用技術教育に使用され、当時必要とされ始めた多くのコンピュータ技術者の養成に貢献しました。
現在は、貴重な史料として、入出力装置を備えた使用当時そのままの構成で、東京理科大学近代科学資料館に保存・展示されています。
USAC-1010
「USAC-1010」は、オフコン初期の普及時期を支えたさまざまなコンピュータの源流のひとつとなったモデルです。多くの地方自治体で採用され、行政事務の近代化に大きく貢献したとして、技術遺産に認定されました。
開発の中心となり製造元であったウノケ電子工業(現・株式会社PFU)(注1)は、オフコンを指向した超小型コンピュータがまだ概念として確立していなかった1960年代初期、その開発に力を注いでいました。
「USAC-1010」は、ウノケ電子工業によって1963年に初号機が開発され、1966年に富士吉田市役所へ納入され、以降多くの自治体に導入されました。
日常の事務処理に向けた使いやすさのために、本機ではカナ文字や英文字、特殊記号などを計算機から投入できる配慮がなされていました。また、超小型機であるにもかかわらず、従来は中型機以上で使用されていた光電式紙テープ読取機や高速度紙テープ穿孔機を装着することで、実業務適用に適した処理能力の向上が図られていました。これらの特長を活かして、「USAC-1010」は地方自治体業務や計算センタ業務等、小規模バッチ処理向けに広く利用され、当時の事務の近代化に貢献しました。
オフコン初期の普及に貢献した「USAC-1010」
(注1)ウノケ電子工業:
1960年に石川県河北郡宇ノ気町にて創業、1962年株式会社内田洋行と販売提携し、1969年ユーザック電子工業株式会社に社名を変更した。1972年に富士通を含めた三社提携の後、1987年にパナファコムと合併し、株式会社PFUとして現在に至る。
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