世界初の全面LSI採用超大型コンピュータ用「LSIパッケージMB11K搭載のMCCボード」が、第四回情報処理技術遺産に認定

2012年4月4日

貴重な技術遺産の関係者が参列

2012年3月6日、「情報処理技術遺産および分散コンピュータ博物館認定式」が、名古屋工業大学 御器所キャンパスにおいて執り行われました。

今年度で4回目となる今回も、わが国の貴重な技術遺産の所有者、同遺産の保存、展示をしているコレクションの関係者が招かれました。同認定式において、弊社の「LSIパッケージMB11K搭載のMCCボード」が認定され、情報処理学会より認定証が授与されました。写真は、本ボード開発に若きエンジニアとして参画された 利根廣貞氏(中央:現・富士通フロンテック株式会社社長)と、遺産認定に関わった方々です。

認定証を授与される三津濱氏

これまでに認定された数々の富士通製品と技術

情報処理学会の「情報処理技術遺産」は、わが国のコンピュータ発達史上の重要な研究開発成果や製品の中で、現存する貴重な資料を保存し、これらが広く社会に知られることを目的として2008年度に始まりました。

弊社の技術としては第一回において、わが国初のリレー式計算機「FACOM128B」(1958年製造)が、また第二回において、1964年当時画期的な新型磁気装置として発表された「FACOM603F磁気テープ装置」と、1980年5月に発表された「OASYS100および親指シフトキーボード試作機」が認定。 そして第三回においては、トランジスタ式小型コンピュータ「USAC-3010」、コンピュータの本格導入期を代表する中型機「FACOM 230-25システム一式」、そして16ビットマイクロコンピュータの学習キット「PANAFACOM Lkit-16」が認定を受けています。

「LSIパッケージMB11K搭載のMCCボード」開発の意義

今回、情報処理技術遺産として認定された、当社の「LSIパッケージMB11K搭載のMCC(Multi-Chip Carrier)ボード」は、1975年に完成した世界初の全面LSIを採用した超大型コンピュータモデルである「FACOM M-190」と「Amdahl 470/V6」用に開発されました。
MB11Kは、富士通と米国アムダール社の共同開発によるもので、MCCと共に、「FACOM M-190」と「Amdahl 470/V6」の、当時の群を抜いた高い性能と高い信頼性の実現に決定的な役割を果たしました。「Amdahl 470/V6」はその高性能と高いコストパフォーマンスが評価されて、NASA(米国航空宇宙局)にも納入されました。「FACOM M-190」によってスタートしたMシリーズは、優れたコストパフォーマンスにより、富士通を国内売上ナンバーワンのコンピュータベンダーに押し上げる原動力になりました。

LSIパッケージMB11K搭載のMCCボード

このような成果をもたらしたMB11Kは、4mm角のシリコン基盤上に100個のゲートを搭載しており、その1個は当時の一般的ICを数十個搭載したプリント板1枚に相当する能力を有していました。またゲート速度においても、当時の一般的レベルである数10ナノ秒を大幅に上回る平均700ピコ秒という高性能を実現していました。このように、当時の平均を大きく超える高密度と高性能を可能にした工夫のひとつが、MB11Kの特徴的な形状である上部に取り付けられた多層の放熱フィンです。これは、LSIの高密度化と高速化に伴う発熱対策として考案されたものです。
もちろん、MB11Kを搭載するプリント板であるMCCにも大幅な高密度化のための技術が盛り込まれていました。すなわち、MCCには当時最新の技術であった表面実装技術(SMT:Surface Mount Technology)が採用され、併せて10層の多層化が図られました。2.3mmの厚さに10層の配線が重ねられることで、その実装密度は自社従来品の10倍以上に高められていました。
今回認定を受けた「LSIパッケージMB11K搭載のMCCボード」は、現在、富士通株式会社沼津工場の池田記念室において、富士通のコンピュータ事業と日本のコンピュータ業界の発展に大きく貢献した池田敏雄の業績のひとつとして、保存、公開されています。

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