池田記念室 展示品

コンピュータ黎明期の歴史や池田敏雄の思い出の品、今でも稼動しているFACOM128Bやテクノロジーの変遷など、数々の資材や資料を展示しています。

1. エントランス

FACOM誕生の歴史

FACOM=Fuji Automatic COMputer
富士通最初のコンピュータであるFACOMシリーズの開発は、1946年(昭和21年)富士通信機製造株式会社(富士通の前身)に入社した池田敏雄によって始められました。
発端は、「電話機ダイヤルの製造上の問題」を解明するためダイヤル速度の理論的解析を行い、その理論を実験的に裏付けるために米国の真空管式コンピュータENIACの基本回路を参考として電子式ダイヤル速度測定装置を制作 したことです。
これを契機に池田はデジタルコンピュータの開発に取り組むようになり、1951年(昭和26年)にはコンピュータの前身ともいえる東京都庁の統計用分類集計機を完成、1953年(昭和28年)には証券用モデル計算機を完成しました。
1954年(昭和29年)、ついに自由にプログラミングができる本格的なリレー式コンピュータFACOM100を完成、日本最初の実用機として大学、研究所などから各種の科学計算の依頼を受けました。
その後、素子はリレーからパラメトロン、トランジスタ、IC、LSIと発展していきますが、池田は終始独創的な開発思想と卓越した指導力をもってFACOMを発展させました。

2. 池田敏雄ゾーン

叙勲、褒章

池田は、紫綬褒章など様々な賞を受けています。これらの賞のほとんどは、コンピュータ開発に関する功績に対して贈られたものです。

  • 紫綬褒章1971年(昭和46年)
    11月10日受章
  • 勲三等瑞宝章1974年(昭和49年)
    11月14日受章
  • 功績賞(電気通信学会)1975年(昭和50年)
    5月10日受賞
  • 全国発明表彰1970年(昭和45年)
    4月18日受賞
  • 正五位1974年(昭和49年)
    11月14日受章
  • 日本棋院賞1973年(昭和48年)
    11月15日受賞

思い出の品

  • FACOM128B設計計画書
    唯一、沼津工場にある「FACOM128B」の設計計画書です。
  • 研究ノート
    「計算機の方程式に関する研究」をまとめて、工学博士号を取得し、当時としては珍しいコンピュータ博士となりました。
  • 平面幾何学に関する著作
    池田は、幼い頃からずばぬけた数学の才能を持っていました。
    平面幾何学上の定理を発見して、論文にまとめたこともあります。
    研究で行き詰まりを感じたり、プライベートで悩みがあるときなどは、複雑な数式に取り組むことで気分転換を図りました。
  • 囲碁ノート
    生涯の趣味となった囲碁では、日本式ルールの予盾点を指摘し、日本や台湾を参考にした新しいルールを考案し、論文としてまとめてあります。
    これらは日本棋院にて認められ、その後のルール検討に役立てられました。

思い出の写真

  • 池田敏雄とノーベル物理学者 湯川秀樹博士との会談
    1950年(昭和25年)頃、複雑かつ高度な科学計算は、計算請負業者に委託していました。
    それまで人手計算で2年かかる複雑な積分計算を FACOM100がわずか3日で終わらせ、ノーベル物理学者湯川博士は「研究の効率化につながる発明」と大変お喜びになりました。
  • 母校、東工大での講義
    池田敏雄の母校である東京工業大学にて講義をしている時の写真。
  • 池田敏雄とDr. Gene M Amdahlとの会談
    IBM互換機の開発を共同で進めたアムダール博士に箸の使い方を教えている写真。

3. リレー式コンピュータゾーン

世界最古級の稼動するコンピュータFACOM128B

FACOM128Bは、国産初のリレー式商用計算機FACOM128Aの機能強化版として1959年(昭和34年)に製造され現在も稼動しています。

リレー式コンピュータの誕生

初期のコンピュータは真空管方式が常識でした。しかし、当時の真空管は動作が極めて不安定であったため、池田は富士通が真空管をコンピュータの素子として利用するのはハードルが高過ぎると判断しました。代わりに、当社の電話交換機で使用していたリレーを活用する道を選択し、リレー式コンピュータが誕生しました。
つまり、電子計算機ではなく”電気計算機”から富士通のコンピュータの歴史が始まりました。このFACOM128Bは、1959年(昭和34年)から15年間日本大学理工学部で稼動していたものを大学のご厚意で移管していただき、システムを復元しております。

リレー式コンピュータとは

リレー式コンピュータでは、リレー(電磁石を使ったスイッチ)の接点に電流が流れるか流れないかを電気回路のON/OFFに当てはめ、計算を行っています。
リレーは金属の接点が物理的に接合するため、計算に大きな音が発生します。その音があまりにも大きいため、当時は夜間11時以降の稼動は禁止されました。
 中央演算処理装置(CPU)には、5,000個のリレーが使用されています。メモリ(写真)は、13,000個のリレー(13Kbit)をクロスバースイッチで結合して構成されています。
いずれも、当時の富士通の主力製品である電話交換機の技術を活用しています。
リレーは機械的に動作するため、接触不良による故障が起きやすいという問題を抱えていました。池田は、接触不良を起こしにくい回路設計や自己検査機能導入など数々の工夫を積み重ね、高い信頼性を確保することに成功しました。

FACOM128Bは実際に稼動するコンピュータとしては世界最古級のものです。それは、池田によって確立された信頼性の確たる証であり、富士通のコンピュータ開発のDNAとして今日まで受け継がれています。

4. テクノロジー変遷ゾーン

1954年(昭和29年)に完成したわが国初の実用リレー式自動計算機FACOM100に始まる富士通コンピュータの歴史と共にコンピュータに使われていたメモリ、演算素子などをご紹介しています。

シェアする

ページの先頭へ