学生時代と違う分野の領域に挑戦。新卒1年目のデザイン武者修行

学生時代と違う分野の領域に挑戦。
新卒1年目のデザイン武者修行 富士通での1年目



掲載日 2022年6月13日

富士通株式会社(以下、富士通)のデザインセンターは、富士通が提供する多様なサービスやプロダクトのデザインを担い、また富士通全社に向けてデザイン思考を浸透させる活動を行う、富士通のデザイン部門です。そこではどのようなデザイナーが働いているのでしょうか。

坂井 俊介は2021年度に新卒採用で富士通に入社。現在では、デザインセンターのフロントデザイン部に所属し、デザインプロセスの手法や思考方法を用いて、クライアント企業のビジネスの課題解決を図るため、富士通の営業職であるビジネスプロデューサーに「デザイン思考浸透」をしたり、富士通のシステム基盤・Brainforceを活用したリテールのシナリオ作成等に携わっています。学生時代やインターンシップでの経験、新卒1年目を振り返っての仕事のやりがいなどを聞きました。

記事のポイント

  • 製品デザインは、ただ「作る」だけではなく、より広い視野が必要
  • 建築と製品デザインを学んでいた学生時代とは全く違う分野のシナリオ作りや資料作りで研鑽
  • 個人のバックグラウンドや好きなことを汲んでもらいながら、多様な領域で仕事ができる

体験価値から考える製品デザインをするために富士通に入社

坂井 俊介
デザインセンター フロントデザイン部所属(2022年6月時点)

——— デザイナーを目指したきっかけはなんですか?

坂井: もともと大学では建築学科にいたのですが、勉強を進めていくうちに「建築じゃないかもしれない……」と感じ、2年生からデザイン専攻に進みました。デザイナーを目指す決定的なきっかけになったのは、2年生の秋に、愛用しているオーディオ機器を作ったデザイナーの講演を聞いたことです。製品を生むまでのデザイナーの葛藤や、どんなプロセスを踏んだのかという裏側の話を聞いて、自分が普段使っているものに対しての理解が深まると同時に、それがすごくかっこよく見えて、製品デザイナーを目指すようになりました。

ただ僕の大学はデザイン学科の歴史が浅かったため、ほぼ独学で勉強を進め、他大学にも作品集を持ち込んでフィードバックをもらっていました。とにかく足を運んで評価をもらうということをひたすらやっていましたね。

——— 当時はどんなデザインをされていましたか?

坂井: 製品デザイン中心です。体験価値や課題解決を根底に考えつつも、最後は製品を作りたい、ということを今でもずっと軸にしています。就活が始まる大学3年の夏までは製品デザイン一本で考えていたのですが、次第に「製品を作る」だけじゃダメだなと感じたんです。時代の文脈を読み、上流から考える製品の提案をするためには、ただ「作る」ということだけではなく、様々なデザインや技術、市場や法律など、より幅広い視点も必要となってきます。

だから、「作る」ということ以外のスキルを高めて成長するためにはインターンシップに参加したほうがいいなと思いました。いろいろな企業を調べるなかで、デザインのみならず、デザインに関わる多様な領域に携わり、知ることができる予感をデザインセンターに感じ、採用試験に直接繋がっている冬のインターンシップに応募しました。

坂井が学生時代に制作した作品集


——— 冬のインターンシップでは具体的にどのようなことをしましたか?

坂井: 僕の時は、与えられたテーマ「好きな会社をひとつ決めて、その会社と富士通が組んだらどんなサービスが提案できるか」を1週間かけて考えました。僕は主婦に向けたショッピングカートとそのシステムサービスを提案しました。メンターがついてくれるのですが、アイデアを否定せずに聞いてくれたので、ポジティブに実習できたと思いますし、何よりプロのデザイナーの思考や仕事の仕方に触れられたのがとても勉強になりました。

  • (注)
    インターンシップのテーマや実施形態は開催年次ごとに異なります。


武者修行のように、なんでもやると決めた新卒1年目

——— 実際に入社して、フロントデザイン部ではどのような業務をしていますか?

坂井: デザインプロセスや思考方法をデザイナー以外の社員やクライアント企業に伝え、ビジネスの課題解決に活用する「デザイン思考浸透」を重点にした業務です。大学時代に取り組んでいた製品デザインのような仕事ではないので、最初は不安がありました。また、僕の同期のデザイナーたちは、ソリューションやサービスを一から考えたり、アプリケーション画面などのデジタル的なデザインなど、業務と直結するようなことを学生時代に学んできていたこともあり、差も感じて焦りもありました。そんな思いがあったなか、入社直後の研修で、トレーナーに「案件に参加してほしい」と言われました。

——— 具体的にどのような案件に参加したのですか?

坂井: 富士通の営業職であるビジネスプロデューサーへのデザイン思考浸透を兼ねた金融向けのプロジェクトに参加しました。クライアントのビジネス課題を発見し解決できるようにするために、ビジネスプロデューサーにデザイン思考浸透を行ったのですが、自分にとっては当たり前だと思っていた考え方が、ビジネスプロデューサーからすると当たり前じゃない、という驚きがありました。一から思考方法を伝えていく難しさはありますが、そこにやりがいを感じますし、先輩たちがリードしてくれたので安心して仕事に臨めました。

チームに若い人がいなかったので、「若者の目線でどうなのか?」という発言を求められることも多く、1年目の僕の意見も積極的に拾ってくれました。学生時代とは全く別の領域の業務で、最初から自分が通用するとは思っていなかったので、新卒1年目はとにかくなんでもやって吸収しようという気持ちで、武者修行のように日々取り組んでいましたね。



——— フロントデザイン部はどんな部署だと感じますか?

坂井: フロントデザイン部はクライアント企業や社内の事業におけるビジョンやサービスをデザインする部署ですが、僕の周りには、数十年前からスマホやパソコンなどのハードウェアやUIデザインを手がけてきた社員が多いです。デザイン思考浸透という領域は、これまで携わってきたものと全く違うと思うのですが、日々新しいことに挑戦している方々ばかりです。業務だけでなく、たとえば、お客様にワークショップで提供するような動画撮影のスキルを磨いたり、社会実装を目指した自分たちだけで取り組むモノづくりをしたり、自主的な活動も積極的です。新しいことに柔軟に挑戦していく姿勢に、僕も触発されています。



フィードバックを乗り越えて感じるデザイナーとして成長

——— これまでの業務を通して自分が成長したと感じたことはなんですか?

坂井: 富士通で開発した、リテールビジネス(小売業)のデジタルシフトを支援する「Brainforce」というシステム基盤を活用したシナリオを考えるプロジェクトの業務で、成長を感じることが多いです。このプロジェクトは自ら手を挙げたことがきっかけで担当することになり、社内のSEと一緒に取り組んでいます。

子どものおつかいを楽しくするためにどんなデザインの工夫ができるかなど、日常の買い物をアップデートするためのシナリオを提案しています。どういう人をターゲットにどういう価値創造ができるのかというところからアイデアを練って、アプリケーションなどのデザインも考え、将来的にこのシステム基盤を外販するための資料なども作っています。

シナリオにはイラストも描いているのですが、大学時代の自分が、イラストを描く仕事をするとは考えてもいなかったですね。シナリオ作りも初めての経験で、最初にイラストを提出した際は、「ただ絵を描いて表すのではなく、そのサービスの強みや利用者がワクワクするようなイメージなど、そのコマで重点的に何を伝えたいのか」と上司から指摘されました。それによって、案件に頭から参加してワクワクするポイントを理解しているからこそ描けるイラストというものを考える機会になりました。そのうえでしっかりと修正できた時に、これまでやってこなかった領域に対してひとつ成長できた、また視野が広げられたと実感できます。

坂井の担当したイラスト

——— デザインセンターで今後チャレンジしていきたいことを教えてください。

坂井: 1年目はなんでも吸収する姿勢で、社会人としてもデザイナーとしてもいろいろな面で視野を広げることができていると実感しているので、まずはそれを継続していくことです。

その中でも、やはり自分のこだわりである製品デザインに軸足を置くことは意識しています。この1年で新しく得た視点がまだ点として独立しているような感覚なので、その点と点、そして製品デザインを繋げて線にしていけたら、デザイナーとしてひとつ上のステージにいけるのかなと。未知のことに挑戦してきた1年間でしたが、引き続きひとつのことに固執せずに様々なデザインに携わっていきたいです。

——— 就活生へのメッセージをお願いします。

坂井: 僕は複数のインターンシップに参加し、デザインを学ぶ学生と繋がったり、プロの視点に触れたりすることで、刺激を得られました。ひとりでただ闇雲に勉強するのではなく、自分の足を使って、色んな人達に意見を聞きに行くことは、必要だと思います。

また、何が自分にとって大事なのか、軸を持ち続ける必要もあると思います。僕の場合、最初にお話しした大学2年生の時の講演会から、製品デザインという軸だけはずっとブレていません。自分の軸を見つけるための学びや情報収集は学生のうちにやっておくことをおすすめします。

デザインセンターの業務内容は多岐にわたるので、僕のように建築設計や製品デザイン出身で、ITを活用してサービスや業務の体験価値を高めるデザインを専門的に勉強していなかった人だからこその知識や知見も絶対に役立ちます。個人のバックグラウンドや好きなことを汲んでもらいながら、多様な領域に取り組む機会がたくさんあるので、一デザイナーとして成長できる会社です。

■データ

  • 所 属 :デザインセンター フロントデザイン部(2022年6月時点)
  • 入 社 :2021年新卒入社
  • 出身大学:名古屋工業大学 工学部社会工学科 建築・デザイン分野
    建築と製品デザインを学ぶ
  • 趣 味 :音楽イベント鑑賞・自然、建築やデザインを見る


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