スマートカート導入のメリットは?費用対効果や検討時の注意点も紹介

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スーパーマーケットをはじめとした実店舗で買い物をするとき、レジ待ちの時間はユーザーにとってストレスになりえます。現在でもセルフレジの導入など、レジ待ちの解消にはさまざまな対策がなされていますが、レジで商品をスキャンする時間はどうしても生じます。そこでレジでまとめてスキャンするという考え方を覆したのが「スマートカート」です。本記事では、スマートカート導入のメリットや費用対効果、検討時の注意点について解説します。

スマートカート導入が進む理由

スマートカートとは、スマートフォンやタブレットを取り付けるなどして、ショッピングカートに商品スキャンの機能を持たせることで、レジでは決済だけを行い、レジ待ちの列を解消しようとするものです。国内外では既にさまざまなスマートカートが登場しており、商品検索やルート案内、広告表示などの機能がついたものもあります。中には、利用者を自動で追尾してくれるため、自力で押さなくてもよいものまで登場しました。

こうした流れを汲み、有人レジやセルフレジでの人流滞留防止のため、スマートカートの導入が進められています。特にスーパーマーケットでは、混雑する時間帯にはセルフレジを導入してもレジ待ちの列ができてしまうことが少なくないため、スマートカートを導入することでレジ待ちの時間を少しでも短縮しようとしているのです。

スマートカート導入時に最も問題視されるのは、故意か過失かに関わらず「商品スキャンをせずに商品をカートに入れてしまう」ということですが、これについても「スキャン漏れ防止機能」などの不正対策が進んでいます。

スマートカート導入の3つのメリット

海外はもちろん、日本でも導入が進むスマートカートですが、実際にどのようなメリットがあるのか、そのポイントについてみていきましょう。

レジの待ち時間がほとんどなくなる

1つめは、レジの待ち時間がほとんどなくなることです。これはそもそもスマートカート導入の目的として期待されていることでもあり、カートに商品を入れると同時にスキャンを行うため、レジで商品を一つひとつスキャンする手間や時間がかかりません。

これまでのレジでは、有人レジでもセルフレジでも、レジで商品を一つひとつスキャンする手間と時間がかかっていました。これがレジ待ち時間が発生する大きな原因の一つです。しかし、スマートカートなら商品を手に取り、かごにいれた段階でスキャンを完了させてしまうため、最後に決済だけを行えば良いため、レジ待ちの時間を大幅に減らすことができます。

実際に、スマートカートを導入した店舗では、1時間あたりのゲートの通過人数がセルフレジと比べて約4倍に増えたという調査結果もあります。レジの待ち時間が減れば、ユーザーにとってはストレスフリーに、店舗にとっては回転率を挙げられるというメリットになります。

合計金額が買い物中にわかる

スマートカートでは、カート自体にタブレットなどの画面があり、そこにスキャンした商品の合計金額を表示できます。商品をスキャンするごとに現在の合計金額がわかるため、予算オーバーの防止となるほか、まとめ買いなどをする際にも予算と相談しながら買い物ができるため、ユーザーの利便性が高いです。

また、金額を把握できることで、「まだ買える」という心理から顧客単価が上がることも期待できます。合計金額がはっきりとわからないと、その場で計算するのが大変なため、「このくらいでやめておこう」と買い控える人は少なくありません。しかし、スマートカートで都度合計金額がわかっていれば、一度に買えるだけ買っておこうと思う人もいるでしょう。

販促プロモーションに利用できる

スマートカートでは、カートについたタブレットなどの端末画面に商品情報やクーポンを掲載できるものがあります。例えば、スキャンした商品をオトクに購入できるクーポンを表示できれば、「オトクならまとめて買っておこう」という心理につながるでしょう。これは実際に海外では既に取り入れられている手法で、おすすめ商品や割引クーポンを表示することで、ユーザーの購買意欲を高められます。

さらには、スマートカートによってはスキャンした商品の関連商品を表示する機能もあります。関連商品を表示することで、「ついで買い」を促したり、買い忘れ防止につなげたりすることが可能です。このように、スマートカートの画面を販促プロモーションの場としてうまく利用できれば、購買点数を増やして顧客単価をあげることにつながるでしょう。

スマートカートの費用対効果

では、実際にスマートカートの費用対効果はどのくらいあるのでしょうか。ここでは、実際にスマートカートを導入した事例を3つ挙げて、スマートカートの費用対効果について検討します。

事例1:有人レジと比べて生産性が14.9%アップ

大手スーパーのA社では、2020年にスマートカートの運用実証実験を行いました。ここで使ったのはスマートカートの中でも決済機能まで備えた「スマートショッピングカート」で、通常のレジを通さずキャッシュレスに決済が行えるというメリットもあります。さらに、スキャンした商品に応じたおすすめ、その場で使えるクーポンなどの表示も可能です。

このスマートカートを導入したところ、利用率が20%を達成して有人レジ1台分のユーザーを代替できるようになりました。その結果、スマートカート利用者の月額買い上げ額は導入後に7.0%増加、有人レジと比べて1時間当たりの生産性(捌ける人数)は14.9%増加したことがわかっています。

事例2:客単価が2割程度アップ

大手スーパーのB社では、2019年5月からスマートカートの実証実験を開始、2020年3月から本格展開を始めました。同店舗ではカート自体を新しくするのではなく、専用の貸し出しスマホ端末を利用して商品のバーコードをスキャン、専用のレジで会計するというタイプのスマートカートを導入しました。

その結果、レジでの行列が激減したほか、レジに割く人的リソースを売り場案内に振り分けることができ、顧客とのコミュニケーションが深まるというメリットが得られました。また、スマホ画面で購入商品を確認できるため、買い忘れの防止につながり購入点数も増えて、顧客単価が2割程度アップしたとわかっています。

事例3:セルフレジと比べて2倍の購入金額

シアトルのスタートアップ企業が開発したスマートカートの店舗データによると、同社のカートを利用するユーザーは、セルフレジを利用するユーザーの2倍の金額を購入するとされています。

このスマートカートも他の2つの事例と同様、手元の端末で商品バーコードをスキャンしてカートに入れていくものです。すると、各商品はカートについたパネル上で「認識済み」のリストに追加されます。野菜や果物は、重さを量って価格を計算することも可能。さらに、商品がスキャンせずカートに入れられるとそれを検出して「認識されません」と表示される不正対策も行っています。 

スマートカート導入検討時の注意点

スマートカート導入時には、いくつか注意点もあります。最も注意が必要なのは、スマートカートやスマートショッピングカートを導入しても、完全にレジスタッフを無人にすることはできないということです。例えば、年齢確認が必要な商品などは人を配置して確認してもらう必要があるでしょう。

ただし、有人レジと比べてレジスタッフの負荷を軽減したり、他所にリソースを割いたりすることはできるようになります。そのため、導入や運用のためのコストがかかったとしても、人件費の削減や売上アップにより、最終的にはプラスに転じる見込みがあると考えられます。

また、スマートカートにはおすすめ商品やクーポンを表示する機能がありますが、これらを販促プロモーションとして活用する場合はまだまだブラッシュアップが必要です。そのため、現状では販促プロモーションをスマートカートだけに頼ることはせず、店舗アプリやメルマガなど、他の媒体と組み合わせて活用しなくてはなりません。

Flexible Commerce (Brainforce)でスマートカートを実現

富士通の提供するRaaS「Flexible Commerce (Brainforce)」でも、スマートカートを開発中です。Flexible Commerceのスマートカートなら、商品を選びカートに入れるだけで決済が可能になります。これにより、合計金額がわかる、レジの待ち時間がほとんどなくなるというメリットを実現できます。

さらに、Flexible Commerceでは消費者情報や商品情報などのデータをクラウド上に蓄積して一元管理できるほか、情報分析機能や購入カート、決済などのコマース機能などもクラウド上に展開できます。そのため、Flexible Commerceのスマートカートは、クラウド上のデータにアクセスすることで、パーソナライズされたプロモーションも可能になるのです。

スマートカートにも活用できる富士通のRaaS「Flexible Commerce (Brainforce)」。

スマートカートは費用対効果をあげられる!

スマートカートにはレジ待ち時間が短くなる、買い物中に合計金額がわかるといったユーザビリティ向上のほか、パーソナライズされたプロモーションによりone to oneマーケティングに活用できるという店舗側のメリットがあります。実際に、今回ご紹介したように人流の滞留を防いだり、顧客単価が上がったりと十分な費用対効果が得られている事例も多く見られます。注意点も検討しつつ、ぜひスマートカートを導入してみてはいかがでしょうか。

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