OMOとは?メリット・デメリットや実現戦略の施策例を紹介
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マーケティング戦略における用語はさまざまで、日々変化していく顧客の価値基準、購買行動の変化に合わせてマーケティング戦略自体も、使われる用語も変わっていきます。今回は、そんなマーケティング用語の一つ「OMO」について、定義やメリット・デメリット、実際に行われているマーケティング戦略の例をご紹介します。
OMOとは
まずは「OMO」という言葉の意味、O2Oやオムニチャネルなど関連用語との違いについて解説します。
OMOの定義
OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、直訳するとオンラインとオフラインの融合を意味するマーケティング戦略の考え方の一つです。これまで、オンラインでの購買体験(ECモール、店舗の自社サイトなど)とオフラインでの購買体験(実店舗)とは明確に分けられていました。
しかし、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末が普及したことや、デジタルサイネージ・AIによる画像解析・モバイルオーダーなど各種デジタル技術の発展と実店舗への導入により、オンラインとオフラインの垣根は曖昧になりつつあります。
そこで、オンラインとオフラインを明確に区別することなく、むしろ融合させることで、購買行動における一連の顧客体験(CX)の向上を目指す「OMO」という考え方が生まれました。
OMOが注目される背景
OMOが注目される背景として、1つ目に顧客の購買行動やカスタマージャーニーの変化が挙げられます。スマートフォンなどモバイル端末の普及に加え、キャッシュレス決済が浸透し、ネットショッピングは珍しいことではなくなりました。何かを買おうとしたとき、最初にインターネットで情報収集するのは今やスタンダードと言えるでしょう。
2つ目は、スマートフォンアプリの利用情報や訪問したECサイト、閲覧・購入履歴などのオンラインの情報と、実店舗を訪れた際の位置情報や店内行動などのオフラインの情報といった、これまでバラバラでみていた顧客データを統合できるようになった、といったテクノロジー面の発展です。
個人情報と紐づけることなく、「Aの商品を好む人」は「Bという店内行動をとる」というように、顧客属性と紐づけるデータ管理手法も生まれています。
O2Oやオムニチャネルとの違い
OMOと関連する言葉にO2O、オムニチャネルやマルチチャネルがありますが、それぞれ以下のような意味を持っています。
O2O
O2Oは「Online to Offline」の略で、オンラインで収集した顧客データをオフラインでの施策に活かしたり、オンラインで集客を行い、オフラインの実店舗へ誘導したりするマーケティング戦略のことです。
オムニチャネル、マルチチャネル
オムニチャネルはあらゆるチャネル、マルチチャネルは複数のチャネルという意味です。(チャネル=販売経路、集客経路)顧客への接点を複数持ちつつ、どこからアクセスしても同じような購買体験ができるようにすることで、顧客は自分にとって最も使いやすいチャネルを利用できます。
いずれもオンラインはオンライン、オフラインはオフラインとチャネルを分けて考えているところがOMOと異なります。
OMOのメリット・デメリット
OMOの浸透により、オンラインとオフラインの融合により、購買行動における一連の顧客体験(CX)の向上を目指すことができるようになりました。この考え方を推進するにあたり、どのようなメリット・デメリットがあるのかについてご紹介します。
OMOのメリット
OMOのメリットとして、売り手側には以下のポイントが挙げられます。
- 販売機会の損失を抑える
- 顧客データ統合により、真のニーズを把握できる
- ECと実店舗の連携で、LTV(顧客生涯価値)を最大化できる
OMOの最もわかりやすいメリットとして、オムニチャネルなどと同様に販売機会の損失を抑えられる、というものがあります。オンラインとオフラインが融合することで、オムニチャネルよりもさらにシームレスな購買体験が可能になり、顧客の購買意欲が高まったときにすぐ購入できるため、販売機会を逃しません。
さらに、オンラインとオフラインの顧客データを統合することで、そもそも顧客が何を求めているのか、すなわち「真のニーズ」を把握できます。例えば、スマホアプリの利用履歴と実店舗での行動履歴を合わせれば、よりパーソナライズされたおすすめを表示することが可能です。
また、ECと実店舗の連携により、前述の顧客データ統合、販売機会の創出が容易になり、顧客体験が向上することでカスタマーサクセス(CS)にも結びつきます。CSからファンとなる顧客が増えれば、LTV(顧客生涯価値)を高め、最大化することも可能です。
OMOはオンラインとオフラインを分けて利用したり、活用シーンを分けたりすることなく、日常的に利用しているオンラインツールの延長線上でシームレスな購買体験が可能なため、消費者側にとっても利便性が高いというメリットがあります。
OMOのデメリット
OMOのデメリットとしては、以下のポイントが挙げられます。
- 収益アップに直結するわけではないため、長期的な視点が必要
- データベースの構築、活用が難しい
- 顧客向けUIを開発するコストがかかる
OMOは購買体験の向上、真のニーズ把握などによって長期的に利益を上げることが目的なため、短期的にわかりやすい収益アップにはつながらない可能性があります。また、顧客データの統合にはデータベースの構築が必要であり、収集したデータの活用にも知識が必要です。また、スマホアプリやデジタルサイネージなどで、顧客向けのUIを開発するコストがかかることが挙げられます。
OMOの実現戦略:施策例をご紹介
では、具体的にOMOの実現戦略において、打ち出されている施策の例を3つほどご紹介していきましょう。
OMO実現施策例①:チャットボット
チャットボットはECサイトやメディアサイトなどに導入されているイメージが強いですが、実店舗にチャットボットを導入している例もたくさんあります。顧客のニーズに応える商品やサービスを提案したり、その場で在庫やレビューをチェックしたりできるため、簡単な接客対応にもなっています。次に紹介するデジタルサイネージとのセットも、実店舗でよく見られるOMOの例です。
OMO実現施策例②:デジタルサイネージ
デジタルサイネージでは、単に広告を表示するだけでなく、顧客がサイネージの前に立つことでさまざまなデータを取得したり、分析したりします。タッチパネル式にして、前述のチャットボットと組み合わせることで、デジタル接客としている実店舗や自動販売機の例もあります。
また、アパレル系の一例として、実店舗のデジタルサイネージを利用して商品を検討し、購入を決めたらECサイトのページをQRコードでデジタルサイネージ上に表示、商品は後日自宅へ郵送するため手ぶらで帰宅できる、という販売手法をとっている店舗もあります。これも、オンラインとオフラインのシームレスな融合がよく現れています。
OMO実現施策例③:モバイルオーダー
モバイルオーダーとは、事前にスマホアプリやECサイトで注文と決済を済ませておき、実店舗では受け取るだけの状態にしておくことを指します。飲食店のテイクアウトやアパレル関連など、選ぶことに時間をかけたいが、会計には並びたくないといった顧客のニーズに対応したOMO戦略です。
OMO戦略を成功させるために必要な要素とは?
データベースやシステムの構築、データ分析
OMOでは、顧客の「真のニーズ」を把握することが重要です。そのためには、できる限り幅広い顧客データを収集・蓄積するとともに、効果的に分析しなくてはなりません。統合データベースをシステムとして構築するためには、ある程度のコストや技術が必要になります。
収集・蓄積したデータを、分析しやすく加工することも重要です。また、分析した後は「真のニーズ」をフィードバックし、カスタマージャーニーにおける各タッチポイントでの施策を見直したり、商品やサービス開発に活かしたりする必要もあります。
販売チャネルのマルチ化
販売機会の損失を防ぐためには、オンラインとオフラインのシームレスな融合が必要です。そのためには、最初から包括的にOMOとして顧客体験を考え、マーケティング戦略を練ることが重要となります。
もし、実店舗とECサイトが全く別々に稼働したり、データを蓄積したりしているという場合は、一度、全く異なる視点を持ってOMOでの顧客体験を設計し直す必要があるかもしれません。
OMOのマーケティングで顧客満足度を高め、LTVを最大化しよう
OMOとは、オンラインとオフラインを明確に分離せず、包括的な視点から考えるマーケティング戦略の考え方の一つです。これまでのO2Oやオムニチャネルなどとは違い、オンラインとオフラインに垣根がありません。
OMOの導入でよりシームレスな購買体験を提供でき、統合された顧客データから真のニーズを把握しやすくなります。顧客体験の向上で顧客満足度が高まれば、顧客をファン化し、LTVを最大化することもできるでしょう。