応援消費とは。イミ消費世代のビジネスは「ストーリー性」がカギ

リテールDX

購入で生産者や提供者を支援する応援消費が、大きな注目を集めています。自然災害やコロナ禍などの社会環境の変化がきっかけとなり、拡大してきた応援消費。「モノ消費」から「コト消費」へ移行しつつある中で、ビジネスチャンスにつながる新たな消費のスタイルを探ります。

応援消費とは?

必要な商品を近くの店舗で買うだけではなく、生産者やサービス提供者への応援を込めた買い方をする。そんな「応援消費」が注目を集めています。提供者にエールを送る「エール消費」ともいわれるこの新たな消費行動は、東日本大震災で被害を受けた地域の農産・海産物の積極的購入で話題になりましたが、コロナ禍の今、売上が低迷する飲食店に対する応援消費が盛り上がりをみせています。拡大する応援消費の特徴や、現状について紹介します。

応援消費の特長

ここで応援消費にはどんな特徴があるのか、みてみましょう。

①満足度やモチベーションが高い
モノがあふれる現代では「欲しいものがない」「モノより体験・思い出を重視したい」と考える消費者が増えています。「モノ」から「コト」を重視する消費行動のひとつである応援消費は、「なぜそれを買うのか」「なぜそこで買うのか」という意味付けが強く行われるため、モチベーションが高い傾向があります。

②SNSで発信・受信しやすい
応援消費は、SNSで盛り上がりを見せることがあります。生産者が困っていることをSNSで発信した投稿が注目され、消費者が応援消費を行う。そして消費者がSNSで応援消費を行ったことを投稿すると、それを見た人が続くといった情報の拡散が起こることも珍しくありません。

応援消費の種類

応援消費には、どんなものがあるのでしょうか。広がりをみせる応援消費の実情を、ひとつひとつ見ていきましょう。

①生産された商品を購入して応援
全何らかの理由で売れない商品を、積極的に購入することで応援する消費です。
例: 被災地の農産物や海産物、風評被害を受けた地域や企業の商品、消費が振るわず大量廃棄になってしまう牛乳、コンビニの誤発注で大量に届いてしまった食品、予約のキャンセルで行く宛がなくなった大量のケーキ など

場所で消費をする応援
その場所に行って消費行動をすることで、応援につなげます。
例: コロナ禍で売上不振の飲食店、自然災害で訪れる客が減少した観光地、経営が厳しい鉄道路線に乗りに行く など

好きな対象に関する商品を購入する応援
アイドルなど、自分が好きな対象に関する商品購入で、活躍を応援する消費です。
例: アイドルのグッズ、人気コンテストでCDを買って投票 など

金銭的な支援で応援
商品を購入する消費行動ではなく、金銭的な支援をする行為です。
例: クラウドファンディング、ふるさと納税 など


応援消費が注目される背景


モノがあふれる社会では、多くの人が「モノを所有する意味」を深く考えるようになってきました。消費に意味付けをする応援消費は、なぜ注目を集めるのか。これまでの背景を振り返ってみましょう。

東日本大震災、コロナ禍などの大規模災害

応援消費には「誰かの力になりたい」という動機があります。応援消費が広まるきっかけは、2011年に発生した東日本大震災でした。津波で壊滅的被害を受けた東北沿岸の海産物や、原発事故で風評被害を受けた福島県の農産物を積極的に購入し、生産者を応援しようとする動きが生まれました。そしてそれから10年が経った今、コロナ禍のステイホームによって痛手を受けた飲食店や観光地を支える応援消費が注目を集めています。

自分を応援するための応援消費

応援消費のもうひとつの側面に「自分を応援する」があります。応援消費で購入する商品がいつもより高額でも、それを頑張っている自分へのご褒美ととらえ、自分を応援する意味づけをします。例えば以前なら自分へのご褒美が旅行や外食だった人が、コロナ禍で外出が制限される中、売上が低迷した高級レストランのお取り寄せを購入。そこには飲食店だけでなく、自分への応援も見出しています。

応援消費は新時代の消費スタイル


応援消費の拡大は、世代によって特徴をみせています。新たな消費行動を牽引するZ世代(1990年後半~2000年代生まれ)とミレニアル世代(1980年~1995年生まれ)を中心に、特徴をみていきましょう。

Z世代、ミレニアル世代の消費傾向

いま多くの企業がマーケティングで最も注目しているのがZ世代です。スマホネイティブ、ソーシャルネイティブといわれる彼らは、物心がついたときからスマホやSNSが当たり前のようにあり、ネットの膨大な情報にアクセスできる環境で育ちました。

シェアやリユースの利用にも抵抗がなく、必要なモノは必要なときだけ所有します。彼らは自分らしくあることを第一に、モノ消費よりも自身の体験を重視する「コト消費」を大切にします。

Z世代よりも年上にあたるミレニアル世代はデジタルネイティブと呼ばれ、生まれたときからネットの情報活用に慣れ親しんで育ちました。Z世代との違いは、スマホやSNSになるでしょう。デジタルが身近な点は共通していますが、Z世代の方がスマホやSNSを使った情報発信に一歩先んじているといえそうです。

Z世代のSNSとの親和性やモノよりもコトを重視する傾向は、応援消費と相性がよいといえるでしょう。SNSで人とつながり、興味を持ったことを共有することに抵抗がないZ世代は、SNSをベースに広がる応援消費を牽引していく世代と捉えることができます。

またデジタルでの情報収集に長けたミレニアル世代は、集めた情報をもとによりよいものを選ぶ傾向があります。そこには安い・早い・手頃だけではない、新たな価値を訴求する余地があります。

応援消費の市場は、これからの消費を支えるZ世代やミレニアル世代へのアプローチとして今後も注目され続けるでしょう。

応援消費の現状

2020年に株式会社ジャパンネット銀行が実施した「応援消費」に対する意識・実態調査 では、約60%の人が、お金は誰かのためや、共感できるモノに使いたいと回答。さらに「モノ」より「コト」消費を重視したい人は、半数以上の54%に上りました。さらに約3人に1人が「応援消費」経験ありと答え、応援消費の経験がない人の半分は応援消費を魅力的だととらえていることがわかりました。
 
さらに応援消費の満足度は94%にもなり、応援消費が「お金は誰かのためや、共感できるモノに使いたい」というニーズを満たすものであることが明確になりました。
 
 

生産者と消費者が手をつなぎ、夢を実現する応援消費

応援消費には様々なものがありますが、共通しているのは「ストーリー性が消費者の心を動かす」ということです。単純にモノを購入して消費するだけでなく、そこに存在するドラマに自分も参加している喜びを感じられるストーリーは、強く長く消費者を引き付けます。

例えば被災地の生産者の再起を支える、長い伝統をもつ商品を次世代に伝えていく、まだ世の中に知られていない優れた品質を広めるなど、消費者が興味を持つストーリーには様々なものがあるでしょう。

こうしたストーリーの力は、金銭的な支援を募るクラウドファンディングでも数多く発揮されています。そこには新たな企業や店舗、商品の開発が支援者を求めて次々と登場しています。まだ実現していないプロジェクトに込められた夢を語り、ネットでそれをみた多くの人々から資金を集めて現実のものとするクラウドファンディングは、消費者も一緒になってゼロから未来を創っていく、応援消費のひとつといえます。

応援消費は小売業のビジネスにも新たなステージをもたらす

モノがあふれる豊かな社会、デジタル情報の氾濫、そして災害などによる環境変化がきっかけとなり、応援消費は拡大してきました。商品を作る、提供する、購入するというサイクルに、応援消費は新たな価値基準をもたらしました。
持続可能な開発目標(SDGs)の12番目には、つくる責任とつかう責任が掲げられています。社会の流通を担う小売業も、「商品をどう売るか」「どう消費者に届けるのか」という自社のストーリーに注目することは、新たなビジネスチャンスにつながるヒントになるかもしれません。


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