RaaSとは?ITで小売業のDXを推進!3つの活用メリットを解説
サービス業態の多様化により、「◯aaS」というサービスが増えています。ざっくり言えば、何らかの仕組みをパッケージングし、サービスとして提供するというもので、主にIT関連の人材・技術不足を解消するために生まれました。今回は、そんなサービスの中でも小売業・リテール業の新たなプラットフォーム「RaaS」についてご紹介します。
- RaaSとは
- RaaSが生まれた背景ー消費者行動の変化
- RaaS活用で期待できること
- RaaSのメリット
- RaaSでデジタル化・DXを柔軟に実現できるサービスの紹介
- RaaSの活用でCX/EX向上やDXを推進しよう
RaaSとは
RaaSとは、「Retail as a Service(=小売のサービス化)」の略で、小売業・リテール業に関するデータ、ノウハウなどのナレッジと、IT技術を組み合わせてサービスとして提供することを指します。
従来の小売業界では、店舗の設計や運営、店舗システムなどを自社で構築したり、システムベンダーに外注して開発してもらったりする手法が主流でした。しかし、RaaSでは小売業の事業者が持つナレッジと、IT事業者の持つテクノロジーを協業して掛け合わせ、共通の課題を持つ小売事業者に対して新たなサービスを開発・提供します。
また、RaaSと略される言葉には、「Robotics as a Service(主に物流関係)」、「Ransomware as a Service(主にITシステム関係)」の2つもあります。
Robotics as a Service
クラウド環境を利用し、ロボティクスの機能をネットワーク経由で利用する
Ransomware as a Service
パソコンなどのファイルを不正に暗号化し、利用できるようにするためには金銭を要求する、といったサイバー攻撃を容易とするパッケージ
いずれも小売のサービス化とは全く別の言葉なので、間違えないよう注意しましょう。
RaaSが生まれた背景ー消費者行動の変化
RaaSが生まれた背景として、デジタル化やサブスクリプションの台頭など、消費者の行動や価値観の変化が挙げられます。ECサイトや個人間取引サービスの増加など、消費者の購入経路はより多様化・複雑化してきたほか、感染症対策やキャッシュレス決済の普及などで購買体験そのものも大きく変化しています。
こうした中、小売・リテール業において、顧客体験の向上や新たなサービス提供を迅速かつスムーズに展開したいニーズを受けて誕生したのが、リテール業界に特化したサービスを提供する概念の「RaaS」です。
RaaS活用で期待できること
DX推進
消費者の変化に対応し、購買体験を向上させる手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されていますが、小売業のDXはまだ発展途上です。
DXが進んでいない背景には、自社でシステムを設計したり、外注して開発・運用してもらったりする必要があり、リソース不足の問題などもあって、システム導入へのハードルが高かったことが大きな原因として挙げられます。
しかし、消費者の購買経路・行動が多様化している以上、小売事業者も消費者の行動や価値観の変化に対応していく必要があります。RaaSによってシステム導入のハードルが下がれば、DXを推進できる可能性が高まります。
CX/EXの向上、D2Cビジネスの躍進
RaaSの活用で、店舗業務のデジタル化が進み、顧客体験の向上に繋げることができます。例えば、テクノロジーの導入で店舗スタッフの業務負荷が軽減されれば、店舗スタッフは顧客のフォローに注力することが可能です。
また、実店舗での顧客行動を収集・分析し、取得したデータをマーケティング活動に活用することも可能です。このようにRaaSによって人的リソースの有効活用、データの活用が進めば、CX(顧客体験)/EX(従業員体験)の向上、ひいては顧客満足度の向上からLTV(顧客生涯価値)の底上げにもつながるでしょう。
近年増えているD2Cビジネスにとっても、RaaSは追い風となります。D2Cビジネスとは、メーカーや個人が消費者に直接販売する手法のことで、多くは企画・生産の段階からストーリー的に消費者に訴えかけるマーケティングを行います。D2Cビジネスでも、小売業のノウハウとテクノロジーを効率的に導入できるRaaSは非常に有用だと言えるでしょう。
RaaSのメリット
RaaSのメリットはさまざまですが、ここでは主にコスト削減、データ活用、DXの3つのポイントに絞って解説します。
システム導入コストの削減
RaaSではノウハウやシステム構築が包括されているため、デジタルツールやシステムの導入コストを抑えられるのが大きなメリットです。特にIT関連の人材が足りず、そこに割ける予算が少ない中小企業やスタートアップ企業において、これまでのように一から自社で開発する必要がないRaaSは有用なサービスです。
既に成功した実績を持つ企業が見出したノウハウやテクノロジーを利用できるため、試行錯誤を繰り返すための人的・金銭的・時間的リソースを抑えることができます。コストも時間も工数も少なく始められるだけでなく、サービスの提供・停止・終了なども自由に決められるため、ロスを極力抑えて柔軟にビジネスを進められます。
ビジネストレンドに則った顧客データの収集・活用
RaaSはIT事業者が提供する最新テクノロジーを駆使し、ビジネストレンドに基づいた、さまざまな顧客データを収集できます。例えば、店内に設置したカメラから個人情報と紐づかない顧客の行動データを取得したり、スマホアプリでパーソナライズデータを取得したり、それらを統合管理したりすることが可能です。
オンライン・オフラインの顧客データを統合して分析・活用することにより、新たなマーケティングや商品開発につなげられます。例えば、店内行動から適切な店内レイアウトや商品の配置、パーソナライズデータからより詳細なニーズの把握につなげられるでしょう。
DXの推進とCX/EXの向上
RaaSを利用すれば、これまでDXが進まなかった企業でも、DXが進めやすくなると考えられます。前述のように導入コストの削減になることに加えて既に成功した企業のノウハウやテクノロジーを活用でき、導入リスクが少ないことから、DXに対する心理的・リスクマネジメント的なハードルが下げられるためです。
DXを推進することは、CX/EX向上にもつながります。購買体験の向上で最もわかりやすいのはキャッシュレス決済などの決済方法の改革。これまでにもQRコードやNFCなどを利用した、現金を介さない決済方法が普及してきました。
さらに今後は、商品を手に取って退店するだけで、あらかじめ登録しておいたクレジットカードでの決済が完了できたり、スマホアプリを使った、その場での決済が可能になったりといったことも、RaaSのテクノロジーを利用すればスピーディな提供が可能になるでしょう。
RaaSでデジタル化・DXを柔軟に実現できるサービスの紹介
RaaSには、ソフトウェアのみサービスとして提供される「SaaS(Software as a Service)」系と、サーバーやストレージからプラットフォームごとサービスとして提供する「PaaS(Platform as a Service)」系の2種類があります。 SaaS系は管理がほぼ不要な反面、自由度やカスタマイズ性は低いのが特徴です。 一方、PaaS系はインフラ構築の手間がなく、サービスやアプリケーション開発の自由度が高くなっています。
富士通が開発したリテール向けRaaSソリューション「Brainforce」は、プラットフォームごとサービスとして提供するPaaS系RaaSのひとつ。カスタマイズ性が高く、企業やサービス・ブランドのスタイルに合わせたリテールビジネスのデザインができます。
プラットフォーム上で展開可能なウォークスルーチェックアウト、オンラインショッピングなどリテール業界の最新トレンドに対応した業務テンプレートを提供しており、お客様の目指すリテールビジネスをスピーディに展開していくことが可能となります。さらにデータが一元管理されることで顧客、商品のマーケティング活動を強化していくことも実現できます。
RaaSの活用でCX/EX向上やDXを推進しよう
RaaSは、小売業者のノウハウとIT事業者の技術を掛け合わせて新たなビジネスモデルを推進するサービスの一つです。既に成功したシステムやノウハウを利用できるため、コストやリスクを軽減しながらDXを推進できます。RaaSを上手に活用し、デジタル化の推進はもちろん、その先のCX/EX向上につなげましょう。