吹田市様ーIPKNOWLEDGE文書管理・電子決裁システム

自治体DXを加速する「ペーパーレスな市役所」の礎を構築
庁内の合意形成を円滑に行い、文書の電子化・電子決裁の定着を実現

吹田市様では、コロナ禍に対応するためのテレワーク導入をきっかけに、文書管理と決裁の電子化に向けた検討を具体化し、2023年(令和5年)1月にIPKNOWLEDGE文書管理・電子決裁システムを導入されました。各部署と運用に向けた調整・合意形成を円滑に行い、稼働当初より文書の電子化率は目標の70%を超えて推移し、電子決裁率も99%となっています。現在は、ペーパーレス化や業務の効率化などのメリットが職員に広く認識されたことで、さらなるDX推進への機運が高まっています。文書管理業務を所管する吹田市総務部法制室のご担当者にお話を伺いました。

背景

吹田市では1990年代後半から情報化推進計画を策定し、業務プロセス改善や各種のICT化の取組に段階的に取り組んでいた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機にDX推進への期待がこれまでになく高まったことから、2021年(令和3年)6月の政策調整会議で、「ペーパーレスな市役所」「キャッシュレスな市役所」「サステイナブルな市役所」をDXで目指すという全庁的な方向性を確認し、取り組みを加速している。文書管理、電子決裁システムの導入は「ペーパーレスな市役所」の一施策として位置付けられている。

課題

  • 庁内では書類が増え続け、管理の手間や保管場所が課題となっていた。また、コロナ禍に対応するためのテレワーク導入に当たり、紙の運用・押印決裁の見直しが喫緊の課題となった。
  • 導入を担当する法制室はシステム導入の経験がなく、遅滞なく導入作業を進められるか心配だった。
  • 電子化に対しては庁内から不安の声があった。

効果

  • 文書と決裁の電子化により、テレワークにおける業務範囲が大きく拡大した。
  • 要件定義、設計、テスト、研修などの工程ごとに行うべきことのメニュー及びスケジュールがしっかり用意され、また、文書管理の電子化に伴う新しい運用ルールの策定について必要な情報提供や支援サービスがあったことで、スムーズかつ予定どおりに稼働に至ることができた。
  • 各部署に丁寧なヒアリングや説明会を実施して、懸念点や疑問を洗い出す事前の対応により、各部署が納得して電子化を進めることができた。導入当初は電子化対象外だった文書を電子化したいという要望も出るなど、電子化へのニーズが高まっている。
前列左から吹田市総務部法制室主幹 佐藤 浩一 様、同参事 由利 宏樹 様、同主査 武田 賢治 様、
後列左から富士通Japan 安藤、儘田、根橋、月井、関、山内
再開発の進む北大阪健康医療都市(健都)
再開発の進む北大阪健康医療都市(健都)

吹田市様のご紹介

大阪市に隣接する吹田市は、2020年(令和2年)に市制施行80周年を迎えました。アジアで初めての国際博覧会である日本万国博覧会(EXPO’70)の開催地であり、その会場跡である万博記念公園は観光スポットとして有名です。公園内には、Jリーグの名門クラブチーム・ガンバ大阪のホームスタジアム「市立吹田サッカースタジアム(Panasonic Stadium Suita)」や複合施設「EXPOCITY」などもオープンし、新たなスポットとして人気を集めています。
EXPO’70を機に市北部の開発が進み、千里ニュータウンが建設されるなど大阪市のベッドタウンとして発展してきました。近年は、吹田駅の隣・岸辺駅周辺で健康・医療をコンセプトにした街づくり「北大阪健康医療都市(健都)」の再開発を進めるなど、都市のさらなる魅力向上に取り組んでいます。また、市内には5つの大学が立地しているため学生数も多く、人口は増加傾向が続いており、2020年4月には中核市に移行しました。2025年(令和7年)には大阪・関西万博(EXPO2025)も控え、注目度が高まっています。

背景

吹田市のデジタルトランスフォーメーション(DX)の方針や取組についてお聞かせください

吹田市では、1990年代後半から市民の利便性向上や行政運営の効率化を目指して情報化推進計画を策定し、業務プロセス改善や各種のICT化の取組に段階的に取り組んできました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に、DX推進への期待がこれまでになく高まったことから、2021年(令和3年)6月の政策調整会議において、「ペーパーレスな市役所」「キャッシュレスな市役所」「サステイナブルな市役所」をDXで目指すという全庁的な方向性を確認し、取組を加速させています。文書管理・電子決裁システムの導入は、「ペーパーレスな市役所」の一施策として位置付けられています。

DX化の必要性を職員の皆さまはどのように感じていましたか

どの役所でも同じだと思いますが、やはり書類が非常に多く、事務室や書庫の狭あい化が課題となっていました。文書管理・電子決裁システムの導入以前は文書目録管理システムを運用し、文書管理業務の効率化に取り組んできましたが、文書自体は紙での運用のため、文書の保管場所の確保、所在管理等の課題を抱えていました。特に所管する文書の多い部署からは、文書をペーパーレス化し、紙の原本を廃棄することはできないかについて相談を受けている状況でした。また、先に導入されていた庶務事務システムで各職員は電子決裁を利用しており、起案文書等について電子決裁を導入する土壌はありました。とはいえ、コロナ禍以前に、公文書を電子化すること、及び電子決裁の導入の必要性について、職員が強く意識することはなかったと思います。システム導入についてのヒアリングに際しても、各部署から紙文書の電子化について不安の声が多く上がるような状況でした。

文書管理システム・電子決裁導入の経緯についてお伺いします

コロナ禍におけるテレワーク推進をきっかけに文書管理と決裁の電子化が決まり、文書管理を担っている総務部法制室が導入を担当することになりました。メンバーは全員がシステムについてはまったくの素人のため、必要な要件を漏れなく調達仕様書に落とし込めるかなど不安はありましたが、最新の文書管理システムについて調査し、複数のベンダーにデモをしてもらい、また、ほかの自治体を視察するなどしてプロポーザルの手続に向けて準備しました。当初は2022年度(令和4年度)予算で進める予定でしたが、より早い導入を目指して、2021年9月に補正予算を提出し、スケジュールを前倒しした経緯があります。
プロポーザルに参加したベンダーのシステムは、機能的には各社とも高いレベルで実現できているとの評価でしたが、富士通Japanの提案は導入支援(電子運用定着に向けた取組である「電子決裁加速化アドバイス」)や研修計画の項目で高く評価され、IPKNOWLEDGE文書管理・電子決裁システムの導入が決定されました。2022年(令和4年)3月にキックオフし、約10か月の構築期間を経て2023年1月より本稼働を開始しました。

導入時の工夫

導入作業はスムーズに進みましたか

日常業務と並行しての作業のため打合せの時間の調整などは大変でしたが、プロポーザルでも評価されていた導入支援により、要件定義や設計、テスト、研修などの工程のメニューがしっかりと準備されていて、リードしてもらうことができたのでスムーズに進められました。また、「文書の原本は電子データか紙か」といった文書の電子化に伴う新しいルールの策定が懸念事項でしたが、国の資料や行政文書管理に関するガイドラインなどの情報提供が大きな助けとなり、ルールを形にできたとともに、庁内の理解を得ることができました。
庁内では電子化への期待と同時に不安もあったのは事実で、紙をなくすことについて反対意見も出てくると想定していましたし、法制室としても当初は各部署の仕事のしやすさを優先し、紙を電子化するかどうかを各部署の判断に委ねるということもありうると考えていました。しかし、市長・副市長が電子化を全面的に支持していたこと、それに伴いペーパーレス化を強力に進めるとの意識が庁内に醸成されてきたことから、法制室としても、一定の例外を除いて原則として文書は電子化するという方針に変更して進めることになりました。

電子化を定着させるための導入支援はいかがでしたか

基本的にノンカスタマイズでの導入のため、定着に向けた検討・調整に時間を費やすことができ、各部署へのヒアリングやアンケートを通じて実務における懸念事項を事前に相談できたのは有意義だったと思います。例えば個人情報が記載された文書の電子化への不安など、さまざまな声が寄せられましたが、一つ一つに対して解決策を話し合うことができました。なかには紙として残すことになったものもありますが、丁寧に対応したことが合意形成につながったと思います。
また、研修は、特別職向け、室課長級向け、文書取扱責任者向けなど、ポイントを押さえた実施提案をいただきました。監査委員事務局など、特殊な事務が発生する部門へも説明会と研修を行っています。実施した方がよいと思いつつも最初は予定していなかった特別職向けのレクチャーは、富士通Japanから背中を押してもらったことで実施することができました。稼働後は市長・副市長も電子決裁を行っていますが、順調に運用されており、効果的であったと思います。

導入効果

本稼働から3か月が経過しましたが、システム導入の効果はいかがですか

日常業務においては、他部署や市民から提出される文書の収受業務が非常にスピードアップしました。特に庁内からシステムを通じて送付された文書は、数回のクリック操作を行うだけで収受登録及び供覧できるため操作時間が大きく短縮しています。紙では多い日で1〜2時間かかっていた収受業務が、電子化により20〜30分で完了していると思います。各部署に1、2人の庶務担当者がいるので、庁内全体での効率化は相当なものです。起案の作成も電子化によりPC上で完結します。法制室では紙の運用はほぼなくなり、溜まった起案を定期的に文書キャビネットに移すという作業もなくなりました。
現在は、署名押印された文書や一部の職員だけが閲覧可能な文書など、例外的に電子化しない文書もいくつかありますが、それ以外の文書は電子化することとしており、電子決裁率も99%となっています。事前ヒアリングでは、「この文書はこういう事情があるので、電子化しなくてもよいか」という質問が結構あったのですが、実際に稼働して軌道に乗ると電子化のメリットが実感されるようで、今は反対に「電子化例外文書になっているようだが、電子化できるようにならないか」という問合せが寄せられています。また、決裁のスピードも上がっています。市長・副市長決裁など多人数の決裁者が関わる起案について、決裁に要する期間が短縮していることを実感しています。

ほかのIPKNOWLEDGEシステムが先行稼働していたことでメリットはありましたか

財務会計と人給・庶務のIPKNOWLEDGEをすでに庁内で利用しており、ユーザーインターフェイスや操作性に慣れがあったことや、庶務システムと同一画面で電子決裁ができることもあり、導入当初の職員の戸惑いは少なかったと思います。また、職員・所属情報を共有できることも大きいです。システム連携がなければ、年度末には人給・庶務システムからもらった人事異動の情報を加工して文書管理システムに取り込み、エラーを手作業で修正するという作業が発生しますが、今回は文書管理システムとしての法制室の作業はなく、3月31日の午後には人事異動の情報が自動的に反映され、とても助かりました。

今後の展開/富士通Japanへの期待

今後の取組についてお聞かせください

文書の電子化に対する抵抗感や懸念は、文書管理システムの稼働により払拭されたと感じています。電子化のメリットが職員に実感され、積極的に電子化を進めようという方向に潮目が変わってきました。現在の電子化の例外をより縮小していく方向で、ルールを見直していこうと考えています。長期的な取組としては、システム稼働により高まった電子化への機運を、市民からの各種申請の電子化などにもつなげ、自治体DXをさらに推進していきたいと思います。

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