札幌市 様
IPKNOWLEDGE 文書管理システム

政令市の挑戦!
自治体DX実現に向けた公文書事務のデジタル化と電子決裁運用の定着を実現

札幌市役所庁舎外観

札幌市様では、導入から10年以上が経過した文書管理システムや公文書館システムなどをリプレースし、2021(令和3)年7月からIPKNOWLEDGE文書管理システムが本格稼働を始めました。導入においては、①ICTを活用した電子化の推進、②業務の効率化、③文書の適正管理を目的にさまざまな施策を行っています。札幌市と富士通Japan(以下、富士通と表記)が一丸となり、機能面と運用面の双方の観点を軸に検討を重ねました。パッケージシステムを生かし使いやすさを追求した機能検討、電子決裁を原則とした運用ルールの策定、1万人を超える職員のシステム利用率向上をめざした周知・研修を実施。結果、旧システムと比較して電子決裁率(注)は推定10%程度から90%へ、電子起案数は20倍以上に増加しました。システム導入の目的を達成し、さらなる向上をめざしています。業務主管課である札幌市の行政部総務課とプロジェクト推進およびインフラ基盤担当課である情報システム部システム管理課の職員様にお話をうかがいました。
(注)文書管理システム登録文書における電子決裁率

課題
効果
課題 旧システムではシステムの利用率が低く、電子決裁率が推定10%程度であった。多様な働き方の確保や業務の効率化の観点から、システム更新を契機に電子化を推進・定着させることが求められた
効果 機能面と運用面の双方の観点を軸に時間をかけて検討を行い、機能面での使いやすさの追求とシンプルな運用ルール策定により、全庁的なシステム利用の定着と、電子決裁率90%以上を実現した
課題 運用が変わることに不安を感じ、電子決裁に消極的な職員も多かった
効果 1万人を超える各職員の動機付けができるように周知や研修を工夫した。急遽中止となった集合研修に代わり、豊富なコンテンツの活用と、工夫を凝らした自席研修により自主的な学習が進み、稼働開始当初から電子決裁が広く利用された
課題 紙起案での決裁は事前準備や持ち回りの手間や時間がかかっていたほか、文書の逸失のリスク、保存場所の確保も問題となっていた
効果 起案・決裁を電子化することで、印刷など紙起案にかかっていた準備時間の削減と、場所を問わない決裁処理による決裁のスピードアップが実現。起案時にシステム内のフォルダを指定することで確実な管理が可能になり、将来的な保管場所不足の懸念も払拭された

背景

札幌市様のデジタル化の取り組みについてお聞かせください

札幌市では、1990年代からまちづくりへの積極的なICT活用を推進してきました。2021(令和3)年12月には新型コロナウイルスなどにより顕在化した新たな社会課題に対応するため「札幌DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進方針」を策定しています。本方針では、ICTやデジタル技術を活用し、オンライン手続きなどによる行政サービスの効率化や庁内業務の変革を図るような行政のデジタル化だけでなく、スマートシティの取り組みや地域産業も含めた地域のデジタル化を両輪として進めることで、市民目線によるデジタル改革を地域社会全体で計画的に進めることを目的としています。最近はモバイル端末を活用したリモートワークや会議運営の改善など、デジタル化による働き方改革にも取り組んでいます。

文書管理システム更新の背景や狙いについてお聞かせください

2006(平成18)年に導入した文書管理システムのサポートが切れて更新時期を迎えたことから、2017(平成29)年から検討を開始しました。以前の文書管理システムは、決裁途中に修正できない、電子決裁した文書を見読性を維持したまま電子的に保存できないなどの課題があり、電子決裁率は10%程度にとどまり、システム利用率も非常に低い状態でした。将来的に文書の保存場所不足も想定されていたため、システム更新を機に、電子起案・決裁率を向上・定着させ、業務の効率化と文書の適正管理、ペーパーレス化を実現したいと考えました。

選定においてIPKNOWLEDGE文書管理システムをどのように評価されましたか

総合評価方式でIPKNOWLEDGEの採用が決まったのですが、文書管理システムそのものだけでなく、文書分類の見直し、新運用ルールの作成や庁内周知の支援など、電子決裁が実際に使われるようにするための取り組みである「電子決裁加速化アドバイス」を高く評価しました。この点については仕様として明示していなかったので、富士通独自の特徴的な提案であり、システム更新でめざす電子決裁率の向上・定着の原動力になると期待しました。

札幌市 総務局行政部 総務課 文書事務担当係 係長 佐々木 俊晃 氏の写真札幌市 総務局行政部 総務課
文書事務担当係
係長 佐々木 俊晃 氏
札幌市 総務局行政部 総務課 文書事務担当係 上井 響平 氏の写真札幌市 総務局行政部 総務課
文書事務担当係 上井 響平 氏
札幌市 総務局行政部 総務課 文書事務担当係 清野 達哉 氏の写真札幌市 総務局行政部 総務課
文書事務担当係 清野 達哉 氏
札幌市 総務局情報システム部 システム管理課 総合行政開発担当係 係長 今泉 大輔 氏の写真札幌市 総務局情報システム部
システム管理課
総合行政開発担当係
係長 今泉 大輔 氏
札幌市 総務局情報システム部 システム管理課 総合行政開発担当係 平塚 倖太 氏の写真札幌市 総務局情報システム部
システム管理課
総合行政開発担当係
平塚 倖太 氏

導入時の工夫

システム更新にあたって懸念されていたことはありましたか

これまでのシステムは長年にわたり利用されていたため、新システム導入による操作方法や使い勝手の変化に職員が戸惑わないかが懸念されました。特に、これまで行われていなかった電子起案、決裁を導入するため、慣れるまでは職員に負担感が出ることが予想されました。実際、電子決裁推進について庁内アンケートを取ったところ、運用が変わることへの不安からか約半数は消極的でした。これらの機能が活用されるためには、パッケージ活用による新システムの使いやすさや、負担感を上回る利便性が鍵になると考えました。そのため、システム導入にあたっては、機能面と運用面の双方の観点を軸に、時間をかけて市と富士通のSEで検討を行いました。
機能面では、パッケージシステムのためフィット&ギャップ分析を入念に行いました。500以上の機能要件について認識のズレの有無、パッケージでの対応可否を確認しました。機能にないものはカスタマイズのほか、パラメータの設定やデータの工夫で回避できる方法などを綿密に打ち合わせました。開発期間中にコロナ禍に見舞われましたが、ビデオ会議システムを用いたオンライン体制に迅速に移行、その後も状況の変化に応じて臨機応変に対応してもらえたため、スケジュール通りにプロジェクトを推進することができました。

現場にシステム利用を浸透させるために、どのような工夫をしましたか

システム稼働後も現場で紙運用を続けてしまうと本来の目的を達成できないため、いかに職員にシステムを活用してもらうかを一番に考えて2つのことを工夫しました。一つ目は、さまざまなタイプの職員の動機付けができるよう、多角的なアプローチで周知しました。二つ目は、文書管理ルールをシンプルにしてわかりやすく使いやすいシステムにすることを考えました。文書規程を見直し、文書分類も1万2000ほどあったものを整理して最終的に1000以下にまで減らしました。
通常、現状の運用を優先して機能としてないものはカスタマイズ対応に流れてしまいがちですが、今回の導入ではできない場合に、運用や設定の工夫で対応できないかも併せて検討しました。例えば、当初は予定していなかった特別職(市長・副市長)の電子決裁を、途中で実施する方向に変更したのですが、それに対して、秘書課からは決裁を回すタイミングなどをコントロールしたいという要望が出ました。システムの機能としてはなかったものの、富士通から設定の工夫による対応を提案してもらいクリアすることができました。ほかにも、行政委員会や監査部門など外部の方の決裁が必要な場合の運用案を提案いただくなど、多くのアドバイスを得られたことにより全庁で活用できるシステムにすることができたと思います。各課が納得できる提案・支援をいただけたことで、人口200万人に迫る規模の都市でも市長・副市長を含めた全庁的な電子決裁を滞りなくできるようになりました。

職員に対する周知・研修はどのように行いましたか

早期段階から、庁内ポータルサイトでシステム更新に関する記事を定期的に発信し、常に目にしてもらうことを心がけました。特に、市長に電子決裁をレクチャーした様子の写真つきレポートや、市長にシステム活用の庁内メッセージを出してもらったことは、職員の意識付けに大いに役立ったと思います。
研修は、システム構築の集大成であり、大所帯の当市にとってシステム利用定着の要となる重要イベントだったため、念入りな準備をしていました。しかし、コロナ禍により直前で集合研修ができなくなる事態に陥りました。このピンチに対し、富士通からの提案もあり自席研修に切り替え、操作マニュアルや音声・アニメーションを付けた教材、FAQなど、さまざまなコンテンツを急遽用意してもらいました。次なる懸念は、集合研修に比べ自主性が問われる自席研修にいかに取り組んでもらえるかでした。これに対しては、職員の提案により、研修カリキュラムを小出しに分けて週次で庁内アナウンスをしていく宿題方式に変更しました。年度初めの忙しい時期と研修が重なったのですが、職員の皆さんのご協力もあり、1回のカリキュラムの単位が小さいことから隙間時間に取り組んでもらうことができ、多くの職員に自席研修を実施してもらえました。自席研修では、各自がやる気のあるときや必要になったときに能動的に学習できるため、むしろ集合研修よりも効果が大きいかもしれません。各自が自分に合った方法で取り組めた効果は大きく、本稼働後、全庁的にシステムを利用してもらうことができ、同時に、ヘルプデスクへの問い合わせ件数を大幅に減らす効果につながりました。

導入効果

導入後の電子決裁の状況はいかがですか

以前は、電子決裁は月に1000件もなかったのですが、現在は月に2万件、平日1日平均で1000件を超える電子決裁が行われています。稼働から6か月半の電子決裁による効果を試算していますが、紙の削減枚数は推計で270万枚となっています。総務課では、紙の文書を綴るフォルダが年度末の現時点(令和4年3月)でもほとんど使われていません。電子化により起案1件あたり業務時間を4分削減できるとして、1万時間の削減、人件費換算で3800万円の削減効果があると試算しています。
また、電子決裁では文書を承認者・決裁者のところへ持っていく必要がなく、業務効率の向上を実感しています。特に、職場が離れている部署にとっての効果は大きいです。さらに、電子決裁ではタイミングが合えばすぐに決裁できるため、リモートワークでも決裁が滞留することがありません。加えて、システム画面で決裁の進捗状況がわかるため、電話での決裁所在確認の問い合わせがなくなったとの声も寄せられています。起案の書式に迷わないこと、決裁スピードが上がったこと、決裁の進捗状況が画面で一目で確認できること、決裁後の起案文書の保管場所が不要なことなど、上手に効率化が図れていると感じます。

ほかにはどのようなメリットがありますか

紙の運用では、起案文書を綴じるのに適切なフォルダがなく暫定的に綴じることもあり、どこかに紛れたり逸失したりするリスクがありましたが、システムでは起案時にフォルダを指定するため確実に管理できるようになりました。一起案者の感想としては、決裁後の文書の整理・保管作業がないことや、検索がシステム上でできることがここまで便利だとは思いませんでした。稼働から1年が経過すれば(注)、登録した文書の活用や置換え作業などで、さらに有用性を実感すると思います。
今回のパッケージシステムの導入は、自分たちの文書事務を見直すきっかけにもなりました。パッケージの思想と違いを認識することで、文書事務を客観的に見直し、よりよいものにする機会を得られたと思っています。
(注)2022年3月の取材実施時点で稼働8か月

今後の展開/富士通への期待

今後の取り組みや電子化の見通しをお聞かせください

コロナ禍で延期となっているモニタリングを実施し、さらなる電子起案・決裁率の向上をめざしていきます。部署によって利用状況に差があるため、富士通の力を借りながら現場の不安を解消し、よりよい運用を提案して、てこ入れを図っていきたいです。また、要望などをフィードバックすることで、パッケージシステムの改善や開発に役立ててもらえればと思います。
2023(令和5)年にはIPKNOWLEDGEの財務会計システムが更新予定となっています。現在の財務会計は紙での運用が多いのですが、文書管理システムで電子決裁の下地が醸成できたと感じており、財務会計システムでも電子決裁が進むと期待しています。

札幌市の皆様の集合写真左から札幌市総務局行政部総務課 清野 達哉 氏、同 上井 響平 氏、同 係長 佐々木 俊晃 氏、
札幌市総務局情報システム部システム管理課係長 今泉 大輔 氏、同 平塚 倖太 氏

札幌市様 概要

所在地北海道札幌市中央区北1条西2丁目
代表者札幌市長 秋元 克広
人口1,970,470人(2022年3月1日現在)
職員数22,320人(2021年4月1日現在)
ホームページhttps://www.city.sapporo.jp/
札幌市のご紹介札幌市は今年、令和4年8月で市制施行100周年を迎えます。市制100周年記念キャッチフレーズ「札幌が、もっとはじまる。」は、歴史と新しさ、自然と文化が調和する札幌が、人々の愛着と誇り、そして希望に根ざした平和的な力によって、北海道全体とともに素晴らしい未来へ向かってゆく姿と勢いを表現しています。次の100年も豊かで魅力と活力を創造し続ける街をめざし、「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」の実現に向けて取り組んでいます。

札幌市制100周年記念キャッチフレーズ&ロゴマーク札幌市制100周年記念キャッチフレーズ&ロゴマーク

[2022年7月14日 掲載]

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